著者
ツネカズ ユゲ
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.721-732, 1961-06-15

8.カクサンノボゥスイサンセイニタイスルカンヨ ボウスイハ,カクマク,スイショウタイノホカニコウサイオヨビモウヨウタイニヨッテトリマカレテイル。 コゥサイデハボゥスイハカコゥヲトォシテチョクセツニコウサイノジッシツニセッシ,モウヨウタイデハ,コトニモゥヨゥタイトッキデハ,ジョゥヒノマシタニタクサンノケッカンガブンプシテイテチョウドジンゾゥノシキュウタイガウスイナイヒサイホウヲヘダテテハイセツカンクゥニセッシテイルノトニテイル。シカシシキソジョウヒトケッカントノアイダニハウスイケッゴウシキ(ウサギ)マタハガイキヨウカイマク(ヒト)ガアル(Holmbe—rg13)。
著者
広石 拓司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.78-82, 2021-01-15

新型コロナウイルス感染予防のために、地域での活動やイベントの多くが中止や延期になったことは、「地域のつながり」や「高齢者の健康」などに影響を与えている。筆者は、東京都の地域包括ケアシステムにおける生活支援コーディネーター向けの研修や活動支援、千代田区など都心部のコミュニティ醸成に携わっており、数多くの地域づくりの現場の声を聴いてきた。それを踏まえて、COVID-19が「地域」に与えた影響と今後のあり方と、そのなかで専門職に求められることの一考察を行いたい。
著者
五味 玲
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.505-506, 2014-06-10

手術は弓を引くことに似る. 弓道の基本動作が「八節」である.「足踏み」「胴造り」「弓構え(ゆがまえ)」「打起し」「引分け」「会(かい)」「離れ」「残心」である. これを破裂脳動脈瘤の頚部クリッピング術にたとえてみたい.
著者
山本 祐
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.700, 2021-06-15

患者:66歳、女性。朝食後に休憩していたところ、突然右手の指に痛みが走った。手を見てみると右第3指全体が真紫に変色していたため、不安になり受診した。3週間前にも同様のエピソードがあったが、その際は第3指根部掌側のみが紫になり、1週間ほどで自然に軽快した。既往歴に特記すべきことはない。内服薬・喫煙歴はなし。寒い所で手指の色調が変化することはない。右第3指は全体に紫斑を認め、軽度腫脹している(図1)。手指冷感はなく、橈骨動脈拍動は良好に触知する。血液検査で血小板数は基準範囲内であり、凝固異常も認めない。
著者
兼森 良和
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.2317-2320, 2004-12-15

麻痺性兎眼に対して下眼瞼瞼板の水平短縮と下眼瞼形成術を同時に行うKuhnt-Szymanowski法では,高度の下眼瞼下垂と外反がある場合には修正が不十分である。その改善法として,筆者の考案した下眼瞼皮膚切開線を側頭部の外側上方まで延長して外側上方に引き上げ,下眼瞼前葉を眼窩外側縁骨膜にanchor sutureで固定する骨膜固定法(Kuhnt-Szymanowski変法)を4例に行い,奏効した。この方法は特別な材料を必要とせず,高度の下眼瞼下垂と外反がある麻痺性兎眼に対して有効である。
著者
星野 豊
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.455-457, 2020-05-25

事例 実習受入先の病院では、4種混合、結核およびB型肝炎の予防接種を済ませていることが学生の受け入れの要件になっています。学生に接種状況を確認したところ、未接種の学生が数名いました。それぞれ理由を尋ねると、「病原体をあえて注射するなど拒絶する」「隠れた副反応が怖いので接種したくない」「自費での接種は経済的に厳しいので、感染リスクは自己責任で負う」「自分の信じる宗教でワクチンを禁止している」などと言って、接種を拒否しています。予防接種をしない場合、実習未履修となって卒業ができなくなります。学校としてどのように指導すべきでしょうか。
著者
竹内 翔子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.936-937, 2018-12-25

Research Question 妊娠中の会陰マッサージは,分娩時の会陰裂傷のリスクを減少させるのか,させないのか。 Answer 初産婦が妊娠34週以降に会陰マッサージを実施した場合,実施しなかった場合と比較して縫合が必要な会陰損傷や会陰切開のリスクが減少した。経産婦においては,会陰損傷のリスクは減少しなかったものの,会陰マッサージを実施したほうが産後3か月の時点での会陰部の痛みが少なかった。さらに1週間あたりの会陰マッサージの回数別で比較した結果,1.5回/週未満の場合のみ縫合が必要な会陰損傷や会陰切開のリスクが減少した。 このレビューの結論では,妊娠中の会陰マッサージは会陰損傷(特に会陰切開)のリスクの減少や会陰部の痛みに効果があり,女性の受け入れも良好であるため,利点や具体的な方法を妊娠中の女性に提供するべきとしている。
著者
前田 耕太郎 花井 恒一 佐藤 美信 升森 宏次 小出 欽和 松岡 宏 勝野 秀稔 野呂 智仁 本多 克行 塩田 規帆 遠藤 智美 松岡 伸司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1496-1499, 2011-11-20

【ポイント】 ◆フルニエ症候群は会陰部,外陰部に発生する激症壊死性感染症で,急速に進行する予後不良な疾患である. ◆多くは糖尿病やアルコール中毒などの合併症を持ち,肛門周囲膿瘍などの直腸肛門・泌尿器科疾患に起因する. ◆早期診断,早期の壊死部除去,十分な排膿,ドレナージ,適切な抗菌薬投与,栄養管理が必要である.
著者
宮﨑 景
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.820-825, 2020-05-10

Point◎スクリーニングはプロセスである.◎スクリーニングの評価としてWilson基準やFrame & Carlsonの基準が有名であるが,最近では潜在的な利益と害の大きさのバランスを比較する基準が推奨されている.◎スクリーニングの害として,スクリーニング検査による負担,偽陽性,陰性ラベリング効果,過剰診断とヒューマン・シールド,偶発的腫瘍について知っておくとよい.◎健診には定期健康診断,特定健康診査,一般健康診査があり,一方代表的な検診である癌検診は対策型癌検診と任意型癌検診に分けられる.◎人間ドックの多くの項目は,規定もなく任意に定められている.
著者
清水 郁夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.635-636, 2019-04-10

診療背景 卒後5年目の糖尿病内科医が担当した症例.症例 75歳男性.
著者
吉岡 奈月 井上 瑶子 小島 隆浩 犬尾 千聡
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.392-397, 2019-05-25

はじめに 近年,新生児のスキンケア方法について,さまざまな方法が検討されている1−3)。アレルギー疾患のハイリスク群ではない一般集団の1カ月健診において,皮膚の異常所見を4割近く認めたこと3)や,新生児の皮膚ケアについて不安を抱いている母親が約3割いたこと4)が報告されており,新生児のスキンケア方法は改善が望まれる状況にある。しかし標準的なスキンケアの方法は定まっておらず,方法の選択は各施設に委ねられているのが現状である5)。 新生児の従来の一般的な沐浴方法は,児を片手で保持しながらもう一方の手で洗浄し,桶に汲んだお湯で石鹸を流すといった方法である6−9)。具体的には,まず沐浴槽にお湯をため児に沐浴布をかけ,頸部と臀部を保持し湯の中に入れる。仰臥位の姿勢を片手で保持し,もう片手に洗浄剤をつけて顔,頭髪,胸腹部,四肢の順に洗う。次に腹臥位の姿勢にし,背部を洗い,再度仰臥位にしたら陰部を洗う。最後に児を沐浴槽より持ち上げてかけ湯をするといった方法である。 新生児の沐浴では,頸部や腋窩などの皮膚の重なり合う部分は,汚れや石鹸成分が落ちにくく皮疹の原因となりやすいため十分に洗い流す必要があると言われている7)。しかし,従来の沐浴方法のように沐浴槽につかりながら洗浄する場合,片手で児を洗浄するため皮膚の重なり合う部分を丁寧に洗浄することは困難である。 また産後入院中の母親に対する調査では,沐浴方法について不安を感じる初産婦は33%,経産婦は25%であった10)。母親にとって従来の沐浴方法のように,片手で保持し,もう一方の手で洗浄する方法は容易ではない。沐浴指導内容を検討する際には,児の安全性や養育者にとって難しい手技ではないという視点も重要である。 この30年間のわが国の入浴に関する環境は大きく変化している。家庭のシャワーの普及率は1985年に70%,2005年にはほぼ100%となり11),どの家庭でも新生児の沐浴にシャワーを利用することが可能になった。かけ湯よりシャワーで洗浄剤を流す方が退院後の生活環境に類似しており,手順が少なく実施しやすいと考えられる。 アレルギー疾患のハイリスク児に対して保湿剤を毎日塗布することでアトピー性皮膚炎の症状出現率が有意に低下したことをHorimukaiら12),Simpsonら13)が相次いで報告した。またヨーロッパの正常新生児のスキンケアの勧告14)では,適切な組成の保湿剤は皮膚バリア機能を良好に保つため,一般集団の新生児に対しても保湿剤の塗布を推奨している。 以上より,養育者が不安なく丁寧に洗い,洗浄剤を十分に流し,保湿剤塗布をするスキンケアが,1カ月健診における皮膚状態に良好な影響を与えるのではないかと考えた。 A病院ではこのような背景を元に,2015年から児を寝かせた状態で両手を用いて洗い,洗浄成分をシャワーで流し,保湿剤塗布を行う沐浴指導内容に変更した。そこで,1カ月健診における皮膚異常の有症率を変更前と変更後で比較し検討した。
著者
屋宜 晃 設楽 哲也 岡本 牧人 佐野 肇 樋口 彰宏
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.955-959, 1987-11-20

I.はじめに インフルエンザワクチンは広範な接種が行われているにもかかわらず副作用の報告は少なく,とくにHAワクチンに変更してからは安全なワクチンといわれている。しかし稀ながら神経系の副作用の報告は散見され,とくに米国で多発したGuillain-Barré症候群の例は有名である1〜3)。最近われわれはインフルエンザワクチン接種後に生じた興味ある突発性難聴2症例を経験したので,若干の文献的考察も加え報告する。
著者
岩﨑 公平
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.511, 2002-06-01

●母なる地球 宇宙の無数にある惑星の中で,地球のように水のある惑星は数少ない.誰かの恋心と違って,水はあらゆる物質の中でも一番熱しにくく冷めにくい.水は優れた温度調節機能を持っている.地球表面の最高温度は40℃,最低温度は−30℃程度で温度差は高々70℃だ.比べて,お隣の水のほとんどない火星は最高が25℃,最低が−120℃と温度差は地球の2倍の145℃もある.母なる地球の海・湖・川の水,水蒸気は,体液だ.
著者
神田橋 條治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.486-491, 1970-06-15

Ⅰ.まえがき 境界例患者の精神力動とその問題点については,他の論者によって述べられるところであろうし,また研究の歴史的発展についても詳細に述べられるであろうからここでは触れない。ただ,これまでのさまざまな研究で得られた結果を,治療,ことに精神療法という角度からまとめると,ほぼ次に述べる4つの点に要約できるであろうと考える。すなわち,1)境界例は,一般の神経症とは異なった重大な性格障害をもっている6)(自我歪曲)。いいかえれば,より早期の人格形成期に問題がある。2)そのため,精神療法に必要な,いわゆる治療同盟ができにくいし,また,しばしば激しい破壊的な行動化を起こしたり,精神病状態をあらわしたりする。3)したがって,一般の神経症の治療に用いられるような,自己の心的内界に対決させ洞察に導く技法は時に危険である。陽性感情転移を育てながら,現実指向的なアプローチを行なってゆくべきである。4)また,境界例の精神力動は思春期心性との関連を含んでいる。すなわち,一方に家庭からの分離,独立,他方に社会における自己の位置づけ,自己評価などの問題をもっており,これらが治療の中で重要な問題となる8)。 こうした結論がもたらされるに至った先人の治療的経験と理論的発展については,小此木7),河合2)によりすでに詳細に報告がなされているので,それを繰り返すことはさけて,ややちがった態度で,この特集のわたくしの役割にかかわってみようと考える。それは,「理論づけ,体系化したい」欲求を抑え,境界例患者の治療を試みてきた経験の中でのわたくしの主観的な「感じ」をできるだけありのままに述べてみることである。そうした試みをするのは,境界例の治療それ自体まだ発展の途上にあり,次の発展のためには,治療者と患者とのかかわりの場の中で動いている「何か」がとらえられねばならないと考えるからであり,また,境界例の治療においては,一見客観的な理論も,その中に治療者の逆転移を含んでいる場合が多く,外見の客観性が立派であればあるだけ,新しい発展を妨げる危険が大きいと「感じ」はじめているからである。したがって,これから,患者を語りながら同時にわたくし自身を語り,そこに新しい客観性のよりどころを求めたいと思うのである。
著者
阿部 隆明
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.727-734, 2018-07-15

はじめに 双極Ⅱ型障害という病名が臨床で用いられるのは,1994年発刊のDSM-Ⅳ6)で正式に取り上げられて以降である。この病態は,一昔前であれば単極うつ病と診断されていたし,ICD-1033)では採用されていない。したがって,同障害とパーソナリティ障害との合併が話題になるのも,1990年代後半以降である。現在では,DSM-57)の診断基準が採用されることが多いと思われるが,軽躁病エピソードの評価は案外難しく,過小診断の一方で過剰診断の恐れも指摘されている。また単極うつ病との境界も不明確であり,長期経過を見ると,うつ病から双極Ⅱ型障害に,あるいは双極Ⅱ型障害からⅠ型障害に診断が変更されるケースも稀ではない。したがって,臨床特徴も単極うつ病と双極Ⅰ型障害の中間的な所見になることが多い。 双極Ⅰ型障害,すなわちかつての躁うつ病の病前性格に関しては,対照群と変わらない35)とされていたが,DSMなどの操作的診断でcomorbidityという観点が導入されて以来,双極性障害とパーソナリティ障害の合併が報告されるようになった。双極Ⅰ型障害では22〜62%11)にパーソナリティ障害が合併するとされているが,双極Ⅱ型障害に関しては報告が少なく,筆者が調べた限りでは,Vietaら31)の研究くらいである。それによると,双極Ⅱ型障害の32.5%にDSM-Ⅲ-Rのパーソナリティ障害を合併していたという。内訳としては,境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorders:BPD)が12.5%で最も多く,強迫性パーソナリティ障害3.75%,演技性パーソナリティ障害3.75%,自己愛性パーソナリティ障害2.5%,シゾイドパーソナリティ障害1.25%の順だった。パーソナリティ障害合併群で感情障害の発症年齢が若く,自殺念慮も高率だった以外は,パーソナリティ障害の合併の有無で社会人口学的なデータに差はなく,他の臨床的な変数,すなわち,軽躁ないしうつ病相の数,精神病的な特徴,急速交代,季節性,精神疾患の家族歴にも有意な差はなかったという。また,双極Ⅱ型障害におけるBPDの合併に関しては,Benazzi8)も12%という数字を挙げている。 パーソナリティ障害ではなく,気質やパーソナリティという観点から,Perugiら26)は気分循環気質(cyclothymic temperament)が双極Ⅱ型障害の中核的な要素かもしれないと報告している。また,単極うつ病の患者に比べて,双極Ⅱ型障害の患者では,外向性が高く,神経質が低く,易刺激性が高いとする研究がある一方で,依存性,強迫性,演技性の特徴が多く,報酬依存的,受動回避/依存的という単極うつ病の患者と似たパーソナリティが認められるという研究もある9)。この矛盾した所見は,前者では双極Ⅰ型障害寄りの,後者は単極うつ病寄りの双極Ⅱ型障害が対象になっていたことを示唆するのかもしれない。結局,これまでの諸研究からは,双極Ⅱ型障害では他のパーソナリティ障害に比べて,BPDが多いというのが,唯一の最も一貫した所見である。逆に,BPDと診断された患者を調べると,約66%が感情障害の診断を合併していて,双極Ⅱ型障害が特に多い20)。そこで,以下では双極Ⅱ型障害とBPDとの関係を中心に論じてみたい。
著者
山下 大介 丹生 健一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.679-683, 2010-09-20

Ⅰ.はじめに 線維素性唾液管炎とは,1879年,Kussmaul1)によって初めて報告された発作性反復性に唾液腺腫脹をきたす疾患である。末梢腺組織ではなく主に導管系が閉塞し,唾液管開口部からは白色の索状分泌物が排出されるのが特徴的である。この線維素塊の中には多数の好酸球が認められる。唾液腺造影では,主導管の高度な拡張像を呈する。これまで国内外からの報告は約40例と決して多くはないが,Pearson2)は耳下腺の反復性腫脹を伴う患者104名中16例(15.4%)に本疾患を認めたと報告している。このように本疾患に対する認識の低さから臨床上,見逃されている可能性もあると考えられる。そこで反復する唾液腺腫脹を主訴とする場合には,本疾患を念頭に入れておくことが重要であると思われる。
著者
立岡 弓子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.866-871, 2005-09-01

はじめに ビスフェノールA(BPA)は,内分泌撹乱物質として環境庁よりリストアップされた物質の1つであり,その国内生産量は約50万トンにも及ぶ。BPAを原料とするポリカーボネイト(PC)樹脂は,電気・電子機器,自動車の製造原料として使用されており,人が直接体内に摂取する可能性のあるものとしては,食器類や医療機器があげられる。 同様に,BPAを原料としたエポキシ樹脂は,缶詰製品の内側のコーティング材質に使われている。その他には,歯科治療用のレジンにも混入されている可能性が指摘されている。 BPAの化学構造は,女性ホルモンと類似している部分があり(図1),体内に取り込まれたBPAも女性ホルモンレセプター(エストロゲンレセプター)に結合してしまう可能性があり,人の内分泌環境を混乱させる危険性が危惧されている。動物実験では,マウスの胎児に自然環境中に存在する量のBPA(2.4μg/kg)を負荷した結果,性的早熟が観察されたという研究報告がある1)。 しかし,このBPAは,女性ホルモン活性の1万分の1以下の活性化しかないことから,実際には,体内に取り込まれても肝臓での代謝作用によって“抱合体”となり,尿中や糞便中に排泄されていく。これまでに報告されているヒトサンプルのBPA濃度の測定結果を表1に示す。 筆者は,初乳検体からBPAを抽出し,また,その濃度が臍帯血や羊水,成人血清中のBPA濃度と比較して高い濃度であることを明らかにし,授乳行為により母乳を介して母乳を飲む児にBPAが移行していることを報告した5)。また,そのBPA濃度が,缶コーヒーやカップめん,コンビニ弁当などのBPAが溶出する食器包装容器をより多く摂取した母親から分泌された初乳に,多く含まれる傾向があることを報告した5)。 とくに缶コーヒー飲料では,食品への金属の溶出や味の変化を抑制するために,内面がBPAを使用したエポキシ樹脂や塩化ビニル樹脂による塗装,またはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの貼り合わせがなされている。そのうち,エポキシ樹脂には原料として,塩化ビニル樹脂には安定剤としてBPAが使用されていることから,BPAが塗膜中に残存しコーヒー飲料中に移行している6)。 今回,BPAが体内に摂取されてから乳汁中への移行,および尿中に排泄されるまでの体内動態を明らかにする研究に取り組んだので報告する。