著者
岩城 忍 涌井 絵美 高橋 美貴 四宮 弘隆 森本 浩一 齋藤 幹 丹生 健一
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.152-158, 2017 (Released:2017-05-31)
参考文献数
19
被引用文献数
3 5

高齢者の音声障害に対してStemple(1994)らが提唱した原法どおりの方法でVocal Function Exercises(VFE)を施行したので,その結果と有効性について報告する.対象は2013年10月以降に発声困難を訴え神戸大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科を受診した高齢者のうちVFEを行った21例.年齢は67~80歳(平均72.4歳).男性13例,女性8例.6~8週間のベースプログラムの完遂率は85.7%,引き続いて行う約7週間の維持プログラムの完遂率はベースプログラム完遂者中66.7%であった.ベースプログラム終了後には,GRBAS法の嗄声度G(G),maximum phonation time(MPT),mean flow rate(MFR),上限,声域,VHI-10が有意に改善し,maximum expiration time(MET)は延長傾向を示した.練習前と維持プログラム後を比較するとG,MPT,MFR,VHI-10が有意に改善し,上限は拡大傾向を示した.以上より,高齢者の音声障害に対してVFEは有効な音声治療の一つであると考えられた.
著者
都築 建三 深澤 啓二郎 竹林 宏記 岡 秀樹 三輪 高喜 黒野 祐一 丹生 健一 松根 彰志 内田 淳 小林 正佳 太田 康 志賀 英明 小早川 達 阪上 雅史
出版者
Japan Rhinologic Society
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-7, 2009 (Released:2009-12-18)
参考文献数
9
被引用文献数
12 14

We evaluated a 20-item self-administered odor questionnaire for assessing olfactory function, proposed in 2003 by the Japan Rhinologic Society committee on olfaction tests. The 20-items selected based on results of olfactory studies in Japan were steamed rice, miso, seaweed, soy sauce, baked bread, butter, curry, garlic, orange, strawberry, green tea, coffee, chocolate, household gas, garbage, timber, stercus (shit), sweat, flower, and perfume. Subjects were 302 people —179 men and 123 women (average age: 35.7 years)— having no history of nasal or paranasal disease and tested between December 2004 and December 2007. Subjects were asked to score items as follows: “always smelled” (2 points); “sometimes smelled” (1 point); “never smelled” (0 points); or “unknown or no recent experience” (no score). Scores were calculated and represented using a percentage. Response was 99.3% (300/302), with two subjects excluded for reporting more than 10 “unexplainable” items. The mean score was 95.2% (n=300). Of the 302, 281 (93.0%) agreed on the number and 252 (83.4%) on the content of items. Scores correlated statistically significantly with those of a visual analogue scale (rs=0.501, p<0.0001, n=300). We concluded that the self-administered odor questionnaire is useful in assessing olfactory function in normal subjects. The next step will be to administer the questionnaire to diseased or otherwise compromised subjects to determine whether it is useful for clinically diagnosing such olfactory dysfunction.
著者
藤田 岳 上原 奈津美 山下 俊彦 西川 敦 河合 俊和 鈴木 寿 横井 純 柿木 章伸 丹生 健一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会会報 (ISSN:24365793)
巻号頁・発行日
vol.126, no.3, pp.181-184, 2023-03-20 (Released:2023-04-01)
参考文献数
12

頭頸部外科領域にロボット手術が保険適応となり, 耳鼻咽喉科医にとってもロボット手術は身近な存在となってきた. しかし泌尿器・消化器領域で発展してきた手術ロボットを, そのまま耳や鼻の手術に応用することはまだ難しい. 私達は経外耳道的内視鏡下耳科手術 (Trans-canal Endoscopic Ear Surgery : TEES) を支援するロボットの研究・開発を複数の大学の工学部と共同で行っている. 手術ロボットの研究を通して, 自分たちの手術の特徴や問題点を改めて見直す機会が得られている. 本稿では, これまでの耳科手術用ロボットや内視鏡保持ロボットについて概略を述べ, 現在研究中の TEES 支援ロボットのコンセプトと試作機について述べる. また, 将来ロボット自身が自律的に手術を行うことを目標とした, ロボットの自律レベル向上に向けた研究についても紹介する.
著者
丹生 健一 志水 賢一郎 大津 雅秀 石田 春彦 菅澤 正 石橋 敏夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

目的:甲状腺疾患は食生活や人種により発生頻度や病態が異なることは良く知られているにも関わらず、日本人のret/PTC遺伝子発現に関する報告は、これまでのところ、ほとんどない。本研究では、日本人の各種甲状腺疾患におけるret/PTCの有無を調べ、病理組織・臨床的事項との相関を検討し、本邦の甲状腺疾患におけるret/PTCの意義を研究した。対象と方法:東京大学附属病院耳鼻咽喉科および神戸大学附属病院耳鼻咽喉科において治療が行われた日本人の各種甲状腺疾患の手術標本を用いて免疫組織染色手法によりret/PTC遺伝子の有無およびp53遺伝子の過剰発現を調べ、得られた結果を、病理組織像ならびに臨床的事項と比較検討した。結果:対象となった症例は濾胞腺腫19例、濾胞腺癌2例、分化型乳頭癌40例、低分化型乳頭癌6例・未分化癌4例、髄様癌2例であった。Ret/PTC遺伝子は、分化型乳頭癌40例中14例に認められたが、他の組織型には全く認められなかった。一方、p53遺伝子の過剰発現は、分化型乳頭癌の中では1例にしか認められなかったが、低分化型乳頭癌6例中2例、未分化癌4例中4例に認められた。臨床的事項との関係を検討したところ、ret/PTC遺伝子は40歳以上34例中12例に認められたが、40歳未満の6例には一例も認められなかった。病期分類との関係では、T分類、N分類、いずれとも相関は認められなかった。一方、慢性甲状腺炎を合併した症例では9例中4例(44%)、慢性甲状腺炎を合併しなかった症例では31例中8例(26%)にret/PTC遺伝子が認められた。考察:ret/PTC遺伝子は日本人の甲状腺乳頭癌においても35%に認められた。低分化型や未分化型には全く認められないことから、分化度の低い乳頭癌では発生機序が異なると考えられた。
著者
山下 大介 丹生 健一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.679-683, 2010-09-20

Ⅰ.はじめに 線維素性唾液管炎とは,1879年,Kussmaul1)によって初めて報告された発作性反復性に唾液腺腫脹をきたす疾患である。末梢腺組織ではなく主に導管系が閉塞し,唾液管開口部からは白色の索状分泌物が排出されるのが特徴的である。この線維素塊の中には多数の好酸球が認められる。唾液腺造影では,主導管の高度な拡張像を呈する。これまで国内外からの報告は約40例と決して多くはないが,Pearson2)は耳下腺の反復性腫脹を伴う患者104名中16例(15.4%)に本疾患を認めたと報告している。このように本疾患に対する認識の低さから臨床上,見逃されている可能性もあると考えられる。そこで反復する唾液腺腫脹を主訴とする場合には,本疾患を念頭に入れておくことが重要であると思われる。
著者
藤尾 久美 井之口 豪 福田 有里子 黒木 俊介 古閑 紀雄 丹生 健一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.1, pp.38-43, 2018-01-20 (Released:2018-02-07)
参考文献数
16
被引用文献数
4 6

ほかの感覚器と同様, 嗅覚も加齢性変化を来すことが知られている. しかし, 本邦では年齢を考慮した嗅覚機能の基準が報告されていない. 本研究では嗅覚同定能力研究用カードキットであるオープンエッセンス (Open Essence: OE) を用い, 嗅覚の加齢性変化の特徴を明らかにすることを目的とした.【方法】50歳以上の健常ボランティア50名と50歳未満の健常ボランティア43名に対し OE を施行し, 各嗅素別の正答率について検討を行った.【結果】50歳以上の群では男女とも年齢とともに OE の正答率の低下を認めた. 各嗅素別では50歳未満と50歳以上の2群間で墨汁, メントール, みかん, ばら, 練乳, にんにくの正答率に有意差を認めた. 12嗅素の組み合わせの中で, メントール, みかん, 練乳の3嗅素の組み合わせで50歳以上の嗅覚障害を検出する感度が0.860と最も高くなり, 感度+特異度が1.767となった. この3つの嗅素を組み合わせた検査が加齢性変化を考慮した嗅覚機能のスクリーニングとして有用であると考えられた.
著者
丹生 健一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.121, no.7, pp.882-886, 2018-07-20 (Released:2018-08-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

わが国は世界に類を見ない高齢化社会を迎え, 今や頭頸部がん患者の3分の1を75歳以上の後期高齢者が占めるようになった. 加齢による身体機能の低下, 併存症・合併症, 認知障害などの制約の中で, 余命や社会的背景, 人生観などさまざまな要因を考慮して一人一人に最適な治療を提供することが求められる. 腎機能障害や心疾患を伴う症例ではシスプラチンの使用を, 肺疾患の既往がある症例ではセツキシマブの使用を控える. 外科的治療では術後に化学放射線療法を行わなくて済むよう, 原発巣・頸部ともに根治的な術式を選択し, 認知機能や全身状態が不良な症例では, 喉頭温存手術の適応は慎重に検討する. あえて治療しないという選択も含め, 自分らしく生きられる時間, 家族とともに過ごせる時間をできるだけ長く確保することも大切な目標である.
著者
香山 智佳子 後藤 友佳子 長谷川 信吾 藤田 岳 丹生 健一
出版者
Japan Otological Society
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.39-44, 2008-03-21 (Released:2011-06-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1

Gentian violet (Pyoktanin) is known to have a potent antibacterial activity against Gram-positive bacteria including methicillin-resistantStaphylococcus aureus (MRSA).From November 2000 to August 2006, we have treated 91 patients for intractable ear infected with MRSA by topical treatment with gentian violet. There were 99 infected ears: 44 chronic otitis media, 11 otitis media with effusion treated with tympanostomy tube, 10 repetitive suppurative otitis media, 10 otitis externa, 8 postoperative discharging mastoid cavity for cholesteatoma, 6 cholesteatoma, 4 eosinophilic otitis media, 3 acute otitis media, 3 myringitis. The pathogens detected in those ears during the treatment period were as follows: MRSA in 92 ears, MRSA andP. aeruginosa7 ears. Topical treatment with gentian violet was performed 7.5 times on average. In the 92 ears (92.9%), topical treatment was performed 5.4 times on average. Noteworthily, 23 ears required only one treatment and 16 ears required twice, and this fact was suggesting that frequent treatments were not necessary to control the pathogens sensitive to gentian violet. This high cure rate (92/99) of the ear infected with MRSA also suggested that this treatment was especially effective for the treatment of MRSA infected ears.
著者
岩田 健太郎 北村 聖 金澤 健司 丹生 健一 苅田 典生
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.358-363, 2013-10-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
7

背景 : 指導医講習会は「能動的,主体的」であるべきだが,神戸大学病院でのそれは受動的なものであった.方法 : 参加者がより能動的,主体的になるよう,内容をより現場にあい,自由なものに変更をしてきた.この変更内容をまとめ,変更前後(平成20年度と24年度)の受講者のアンケート結果を比較した.結果 : 講習会の内容はより自由な内容となり,KJ法などは用いられなくなった.参加者の評価をスコア化すると,以前に比べて概ね評価は高まったが,研修時間に関しては有意差がなかった.考察 : 指導医講習会の質的改善が試みられ,受講者の満足度は改善した.今後も質的改善を重ねていき,その質の評価も行うべきだと考える.
著者
丹生 健一
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科學會會報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.1, pp.7-14, 2011-01-20
参考文献数
6
被引用文献数
3 4

日本頭頸部外科学会が母体となり, 平成21年4月より耳鼻咽喉科専門医のサブスペシャルティーとして頭頸部がん専門医制度が発足した. 本制度の基本理念は, 耳鼻咽喉科・頭頸部外科に関する熟練した技能と高度の専門知識とともに, がん治療の共通基盤となる基本的知識と技術, 医療倫理を併せ持ち, 頭頸部がんの集学的治療を実践する能力を養成することにある. 頭頸部領域はQOLに大きく関わっており, 外科的治療, 薬物療法, 放射線治療などを組み合わせた治療が行われることが多い. 頭頸部がん専門医には, そのチームリーダーとしての役割が求められる. 診断から終末期まで, がん治療の全相における幅広い経験や知識, 患者とのコミュニケーション能力, そしてコーディネーターとしての調整能力が必要である. 一方, 外科的治療は依然として頭頸部がん治療の大きな柱であり, その治療を自ら担当する頭頸部がん専門医にとっては最も重要な能力である. 専門医の認定にあたっては, 頭頸部がんの入院治療100例以上, 頭頸部がんの手術経験50件以上 (術者として) に加え, 外科的治療の基本である頸部郭清術を特に重視し, 頸部郭清術を助手として20側以上・術者として20側以上と, 必要経験症例数を決定した. さらに, これらの技術を集中的に学べるように, 5年間の頭頸部がん診療研修中, 頭頸部がんの年間新患数100例以上の指定研修施設で2年間の研修を行うことを義務付けている. 本原稿執筆時点で, 257名が暫定指導医として, 127施設が指定研修施設として認定された. 昨年9月には第1回頭頸部がん専門医認定試験が行われ, 165名が受験した. 本制度の発足が, 頭頸部外科を目指す耳鼻咽喉科医の増加, 大学・施設横断的な頭頸部外科医育成システムの構築, 頭頸部癌診療施設の集約化など, 頭頸部がん診療の今後の発展につながることを大いに期待している.
著者
大月 直樹 丹生 健一 白川 利朗
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

HPV陽性扁平上皮癌の培養細胞株にE6およびE7に対するsiRNAを導入することにより、E6およびE7の発現が抑制され、p53およびRbの発現がmRNAレベル、タンパクレベルでともに増強し、結果として細胞の増殖は抑制され、アポトーシスが誘導されることがin vitroで確認された。現在in vivoでの実験を行い、解析中である。