著者
木村 弘 御園生 義良
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.855-859, 1974-12-10

開腹手術後の患者の健康管理は医師として常に気を配つているところである。特に体力回復については補助的に注射して栄養補給を行なつているとはいえ,その主力は食物の経口摂取に頼つているのが現状である。1959〜1962年にLavenstein1,2)らが枯草熱の治療にペリアクチンを投与していたところ,偶然に食欲が増進し,体重が増加することに気づき,さらに喘息患者にこれを用いてその両効果を確認して発表以来Bergen3)など多くの人たちがペリアクチンの食欲増進,体重増加の効果を認めている。 わが国においてはペリアクチンは昭和36年3月より抗アレルギー剤として市販され,広く一般に使用されてきたが,昭和44年頃より小児科や結核科領域において抗アレルギー剤としてのみでなくさらに食欲増進,体重増加効果をも認める発表がなされはじめ,昭和46年1月からは食欲増進剤としても市販されるようになり今日におよんでいる。
著者
水野 肇
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.53, 1965-04-10

許可基準内なのだが… アンプル入りカゼ薬「強力パブロン」(大正製薬)「強力テルミックス」(大正製薬)「エスピレチン」(エスエス製薬)が,2月27日からいっせいに販売中止となった。厚生省の要請を受け入れて業者側が自シュクしたものである. アンプル入りカゼ薬が販売中止となったいきさつは,新聞紙上に報道されたとおりで,わずか10日間に5人がこの薬を飲んで死に,重大な関係があるとみられたためである.目下,その原因を調査中のため,かるがるしく言うべきではないが,死亡した5人の状態をみると,過敏体質,くすりののみすぎ,体力の衰え,他の薬との併用が,表面的には問題になってくるようだ.そして,昨年はアンプルのカゼ薬で死んだ人は3人,34年から38年の4年間で,ピリン剤で死んだのは11件ある.
著者
原田 隆之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.277-283, 2019-03-15

抄録 ICD-11で新たに追加されることになった「強迫的性行動症」は,かつての「過剰性欲」を行動や衝動の制御に焦点を移してとらえ直したものである。強烈で反復的な性的衝動の制御の失敗によって,望ましくない結果が生じているにもかかわらず,性行動が継続されている状態を指し,重大な苦悩や社会的問題を引き起こしているものをいう。その病因や態様は嗜癖性障害(アディクション)との類似が指摘されているが,エビデンスが不十分であるとして,嗜癖性障害のカテゴリーではなく,衝動制御の障害にリストアップされた。まだ研究が十分ではない部分が多いが,治療を求める人々にとっては,治療へのアクセスが高まり,社会的な偏見を是正する契機となる。
著者
成田 心 岩橋 和彦 永堀 健太 沼尻 真貴 吉原 英児 大谷 伸代 石郷岡 純
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.229-235, 2014-03-15

抄録 抗うつ薬の一種であるセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)は,そのターゲット部位の1つであるノルアドレナリントランスポーター(NET)に作用し精神症状を安定させる効果がある。このことから,NETがパーソナリティに影響する可能性が考えられる。インフォームド・コンセントの得られた健常者201人のDNAを対象にNET遺伝子の2多型を判定し,対象者にNEO-FFIを実施して,NET遺伝子多型がパーソナリティに関与しているか検討した。-182T/C多型において,全体で開放性(O),男性で外向性(E)に有意差が認められた。さらに,1287G/A多型において,男性で神経症傾向(N)に有意差が認められた。よって,NET遺伝子多型がパーソナリティに関与している可能性が示唆された。
著者
久保 義郎 長尾 初瀬 小崎 賢明 加藤 礼子 中村 憲一 塩沢 哲夫 下平 耕司 中元 洋介 橋本 圭司
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.921-928, 2007-09-10

要旨:〔目的〕脳外傷者の不適応行動の構造を明らかにし,その程度を測定する「脳外傷者の認知―行動障害尺度」の構成を目的とした.ただし,専門的知識がなくても評価できるよう,質問項目を生活上観察可能な事項に限定した.〔対象・方法〕脳外傷者について,家族,もしくは本人の生活をよく知る福祉施設の支援員に調査を依頼した.〔結果〕因子分析の結果,7因子31項目が抽出された.因子は「健忘性」,「易疲労性・意欲低下」,「対人場面での状況判断力の低下」,「固執性」,「情動コントロール力の低下」,「現実検討力の低下」,「課題遂行力の低下」と判断された.〔結語〕本尺度の構成により,脳外傷者の不適応行動の構造が示され,定量的な測定が可能となった.このことで脳外傷リハビリテーションの標的が明らかになり,効果判定が可能となった.今後は本尺度に加え,障害への対処スキルを明らかにし,その修得度や頻度を評価する方法の開発も必要であろう.
著者
山本 真一 中山 雅之
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.190-195, 2021-05-01

Point・気管支鏡の指導は知識,手技ともに段階的に行っていくことが望ましい.・教育用コンテンツを充実させ,学びの場を提供してくことが重要である.
著者
樋口 佳則 青柳 京子 岡原 陽二 和泉 允基
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.799-809, 2021-07-10

Point・淡蒼球刺激術は,パーキンソン病,ジストニアなどの運動過多を生じる不随意運動症の治療オプションである.・淡蒼球の内側には内包,腹側には視索が存在し,淡蒼球内節(GPi)の腹外側部2/3が感覚運動領域で視床へ投射する.・パーキンソン病症例では,視床下核(STN)刺激との違い(ジスキネジア抑制効果など)を理解し選択する.
著者
梅村 淳
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.787-798, 2021-07-10

Point・視床下核刺激療法(STN-DBS)は,進行期パーキンソン病の運動合併症(wearing offやジスキネジア)に対して最も広く行われている標準的手術療法である.・手術は定位脳手術の方法で行う.MRIガイドでのターゲティングに微小電極記録を併用してSTNを同定し,そこにDBS電極を留置する.・DBS電極の留置は局所麻酔下で行われ,術中の試験刺激により効果や副作用を確認しながら行う.
著者
椎野 泰明 白浜 正人 大宇根 浩一 大田 近雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.597-603, 1998-07-25

はじめに われわれが切迫早産の理学療法に取りかかったのは16週間臥床したのち,帝切後9日目の褥婦に出会ったことに始まる。この患者は歩きはじめたところ,「膝の関節痛,足に力が入らない」と訴えて,産婦人科医から紹介された。たまたまこの産婦人科医が整形外科でなく,われわれのリハビリテーション科に紹介してきてくれたことが,新しいチーム医療を生んだ。すなわち,産婦人科医,助産婦に,リハビリテーション科医と理学療法士が加わった。リハビリテーション医学の視点からみると,この患者はまさに廃用症候群であった。筋力低下を生じていたが,助産婦は一生懸命励まし,とにかく歩かせようとしていた。このことがいわゆるover load(過負荷)を引き起こした。 では,なぜ筋力低下が問題なのかというと,女性のライフコースを考えた時,周産期に生じた筋力低下は膝関節の支持性を弱める。この状態のまま高齢化し,もし肥満になるようなことがあると,変形性膝関節症を発症することにもなりかねないからである。近年,インフォームドコンセントが認識されるようになった。胎児のためには安静が必要で,その結果長期臥床による廃用症候群を起こす。このことを精神的に不安をもつ妊婦に,訓練のリスクを含めていかに説明するか,難しい問題である。
著者
黒木 由夫 山添 雅己 澤田 格 有木 茂
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.851-859, 2008-08-15

肺サーファクタントは,肺胞Ⅱ型細胞で合成され,肺胞腔に分泌される脂質蛋白質複合体で,その物理化学的表面活性作用により肺胞虚脱を防ぐことにより安定な呼吸を維持する生理活性物質である.肺は常に外界に開放しているので,肺サーファクタントによる生体防御機能は重要である.肺サーファクタント蛋白質のSP-AとSP-DはC型レクチンのコレクチンに属しており,レクチンドメインとコラーゲン様ドメインを有するハイブリッド分子で,肺における自然免疫機能を担っている.in vivoおよびin vitroの研究により,肺コレクチンによる免疫調節機能の分子機構が明らかになってきた.
著者
平林 秀裕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.782-785, 2021-07-10

人間万事塞翁が馬 “Stereotactic Imaging Functional Neurosurgery” 2014年5月,Vårpromotion(Umeå University)でPh.D.を授与された.人生で最も感激した瞬間である.
著者
田中 美知子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.438-440, 1996-06-25

分娩後の乳汁分泌は徐々に増加し,産後7〜8日目では500ml/日前後の乳汁分泌がある(図1)。しかし,この時期以後,母乳分泌が過剰となり,母乳育児に困難をきたす場合がある。その原因として考えられることには,高エネルギー食,催乳剤の乱用,大量の輸液,過激な乳房マッサージによる乳房への刺激,等がある。特にⅡb型・Ⅲ型(橋口精範氏による分類より)等の乳房では,これらの影響を特に受けやすい。 その他,特殊例ではあるが,筆者が指導援助をした高プロラクチン血症の褥婦さんで乳汁分泌過多の人がいた。
著者
下村 登規夫 小谷 和彦 村上 文代
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.391-396, 2002-06-10

片頭痛患者においてはmagnetic resonance spectroscopy(MRS)による検討で,脳内の好気的代謝に障害が存在する可能性が指摘されるようになっている。また,ミトコンドリア酵素の活性低下も認められ,ミトコンドリア遺伝子異常の報告も加わり,ミトコンドリア機能異常が片頭痛患者に存在する可能性が指摘されるようになってきた。これらのミトコンドリア機能異常のみならず片頭痛患者においては,superoxide dismutaseの低下などのように後天的にもミトコンドリア機能障害をきたす可能性が存在することが指摘されている。また,治療面ではミトコンドリア機能を改善するような治療を行うことにより頭痛発作の軽減が認められている。これらのことは片頭痛が全身的ミトコンドリア機能障害を伴っていることを示唆するものであり,今後の治療薬の開発にも関わるものである。

1 0 0 0 ジストニア

著者
山田 和慶
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.770-781, 2021-07-10

Point・ジストニアの治療戦略において,定位・機能神経外科は不可欠の治療手段である.・ジストニアに対する定位・機能神経外科の主な治療ターゲットは,淡蒼球内節(GPi)と視床吻側腹側(Vo)核である.・脳深部刺激療法(DBS)が主流であるが近年,神経核凝固術が再評価されつつある.
著者
康永 秀生
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.362-365, 2021-04-25

はじめに このたび、「はじめての医療経済学」というタイトルで、医療経済や医療政策に関する連載をさせていただくこととなりました。筆者は現在、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻において、おもに臨床疫学と医療経済・政策学の教育と研究に携わっています。 経済学というとカネの話か、と誤解されることも多いのですが、経済学は時間・人・モノなどを含めた資源を効率的に使うことを考えたり、人々の意思決定の根本にある原理を考えたりする学問です。医療に関しては、過剰な受診をする患者や不必要な処方を行う医師などをどうすれば減らせるか、といったことも研究の対象です。なお、経営学とは異なります。 読者の皆さんの多くは、看護師養成学校の教員をされていると思います。すでに医療経済や医療政策に関する知識をおもちの方もいるでしょうし、逆に「経済」「政策」といった言葉に苦手意識をもつ方も少なくないかもしれません。本連載は、まずは医療経済や医療政策に興味をもっていただき、その基本知識を身につけていただくことを主眼とします。 大学や専門学校では、カリキュラムの大部分が医学・看護の基礎知識や看護技術などの習得にあてられ、学生が医療経済や医療政策について深く学ぶ機会は少ないかもしれません。なかにはメディアによってやや歪められて伝えられている「医療崩壊」や「医療現場の疲弊」というワードに敏感に反応し、不安をいだいている学生もいるでしょう。そういった不安は、知識の不足に起因することもありますので、ある程度の基礎知識を身につけておくことは、今後ますます必要となっていくと思われます。 これまで日本では、医療経済や医療政策は政府や職能団体に任され、現場の医療従事者は決められたシステムの枠内で、日常臨床を最適化することに終始してきました。しかし多くのシステムは老朽化し、変化する医療需要に対応しきれず、それ自体が機能不全に陥りつつあります。これからは、個々の医療従事者が医療経済や医療政策の基本を理解したうえで、医療現場でまさに生じている課題を認識し、その改善や是正に向けた提言を発していくことが重要になるでしょう。 このような状況の変化に伴い、読者の皆さんは、看護教育者として、学生に医療経済や医療政策の正しい知識を伝えるよう求められる機会が増えるかもしれません。現状を冷静に分析し行動することの重要性を伝えていくために、教育者自らが素地を身につけておくことは今後きっと役に立つでしょう。本連載で得られた知識を、各学校の授業で学生に解説していただければ大変ありがたく思います。 本連載では、医療従事者になじみの深いテーマを各回に設定し、それらについて医療経済・政策学の基礎知識をまじえて解説します。第1回のテーマは「なぜ国民皆保険なのか」です。中学校や高校の教科書にも、日本が国民皆保険制度をとっていることが書かれていますが、その理由までは書かれていません。なぜそうしているか、結論を簡潔に言うと、企業や個人の合理的な行動に任せていると、保険本来の機能が果たせなくなってしまうからです。 今回はまず保険の理論をわかりやすく解説してから、海外(特にアメリカ)の医療保険制度を俯瞰して、日本の国民皆保険制度のどこがいいのか、国民皆保険でないとどうなるのかなどを解説していきます。
著者
笠井 実人
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.17-21, 1956-06-15

はしがき ある種の薬剤を筋肉内に注射するとき,それが末梢神経内に浸潤して麻痺を起すことはよく注意されている所であります。 看護学の教科書を見ますと,注射部位は,身体の血管や神経の分布が出来るだけ少く,大きい筋肉のある部分がえらばれ,通常大臀筋,上腕三頭筋,大腿四頭筋などが用いられる。即ち臀部,上腕外側,大腿外側などに於て行われると書いてあります。
著者
神尾 陽子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.884, 2016-10-15

本書は成人自閉症スペクトラム障害(ASD),それも高い言語能力を持つ患者,あるいはASDと診断されるほど極端ではないが強いASD特性を持つ成人患者(閾下ASD)を対象としている。発達障害への感度が上がった今なお,言語を流ちょうに話すASD(閾下ASDも)の人々は幼児期に「発達の遅れ」という分かりやすい要素がないがために,周囲に理解されない長い孤独の時間を過ごし,社会に居場所を求めて苦闘している。そして精神科臨床にはこうした成人ASDが一定の割合で潜在する。診療時間を十分に取れない精神科医にとって,通常の医師—患者関係を築きにくいこうした一群の患者の深刻なニーズはわかるものの,どのように彼らの訴えを理解し,対応するのがよいかはすぐにでも知りたいところであるだけに,ASDの精神内界に迫る本書はその先鞭を付けた待望の一冊と言える。精神病理学者として多数の名著を世に送ってきた著者の手になる初のASD論である本書は,精神病理学をベースとしているが精神病理学だけに閉じられていない点ですべての読者にとって読みやすくかつ刺激的な内容となっている。発達障害に苦手な印象を抱いている精神科臨床医には開眼の衝撃を与え,また発達障害の知識を持つ読者には自らの臨床経験に立ってその前提を批判的に検討することを促すに違いない。 第1章で取り上げられたのは,「定説化」している自閉症の「心の理論」仮説である。この心理学的仮説は1980年代に脚光を浴びたのち主役の座から降りたものの今なおASDの脳画像研究などでは前提とされることが少なくないが,著者はこれを正面から批判的に検証し,自閉症仮説以前に,そもそも人が他者を理解する際の仮説として間違っている,と一蹴する。先ず自己ありきという「心の理論」仮説に対して,他者からの志向性に対して立ち上がってこない自己をASDの問題の本質と捉え,既成の発達心理学の発達論や自閉症の症候論を広く展望した上で他者に対する了解,という観点から論を展開する。そしてASD者は発達過程のいずれかの時点で自己にめざめるが,そのめざめこそが成人ASD者の固有の問題を形作る,とする。このような議論は,著者の視線がASD者,定型発達者双方に向けられ,これまで見る側であった定型発達のありようを容赦なく問い直し相対化した結果,生まれたものである。成人ASD者のエビデンスのピースをつなぎ合わせることができないでいた評者の立場からは,文献を展望した上でご自身の豊富な臨床経験を素材として内海先生ならではの論考を加えてこうした精神病理学的臨床論を提示してくださったことに心から感謝したい。女性ASDのアンメット・ニーズの奥底に光を当てたという点も,本書の試みは新しい。これを機に精神医学においてASD,そして発達障害をめぐる架橋的な治療論が活発となることを期待する。
著者
谷 直樹 押野 悟 細見 晃一 Khoo Hui Ming 貴島 晴彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.760-768, 2021-07-10

Point・本態性振戦に対する定位的外科治療法として,脳深部刺激療法,高周波視床凝固術,集束超音波視床破壊術,ガンマナイフ視床凝固術が利用できる.・破壊術,刺激術ともに視床中間腹側核(Vim核)が標的核であるが,刺激術ではposterior subthalamic area(PSA)も有力な標的核となる.・刺激術はRCTの結果より凝固術と比べ効果・安全性に優れると考えられるが,近年,凝固術の技術的な進歩がみられる.
著者
稲冨 徹 福地 君朗 三上 正憲 小松崎 早子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.161-163, 2012-04-10

要約 背景:フィナステリド(プロペシア®)はテストステロンがジヒドロテストステロンに変換されるのを阻害することで,男性型脱毛(androgenic alopecia:AGA)に対し有効性を示す.方法:フィナステリド内服歴が6か月以上の成人男性AGA患者34例を対象に,内服による頭毛,体毛の変化についてアンケート調査した.結果:平均年齢は44歳,フィナステリドの平均内服期間は1mg/日×18か月であった.体毛が濃いと感じているのは対象患者群の50%に当たる17例であり,濃い部位は下腿や髭が多かった.AGAへの効果は,やや改善以上が全体で34例中21例,62%だった.やや改善以上の比率を体毛の濃さによって比較すると,濃い群では15/17例(88%)だったのに対し,薄い群では6/17例(35%)と有意差をもって濃い群でフィナステリドの有効性が高かった.フィナステリド内服によって体毛への影響を感じた患者はいなかった.結語:AGA患者の約半数は髭やすね毛が濃く,またそれらの体の濃いほうがフィナステリドのAGAに対する有効性が高い.