著者
村田 良二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.577-586, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
9

多様な資料をコレクションとして扱う博物館では,資料の情報を適切に組織化して管理することが必要である。博物館資料の情報は,対象となる分野が多岐にわたるためさまざまな資料を扱うこと,資料自体から得られる情報が少ないこと,またすべての資料がユニークであるといった特徴がある。多様な要求を満たすために,コレクション情報の整備のための標準が国際的なレベルでいくつか提案されている。実際の情報の整備には調査研究が欠かせないが,学芸員が日々の業務を遂行する中で自然に情報を蓄積していけるような環境を整えるのが効果的である。整備された情報は,博物館業務だけでなく一般の観覧者向けの情報提供にも用いられる。
著者
金野 秀敏
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.498-505, 2013-11-01 (Released:2013-11-01)
参考文献数
31

複雑系のモデル化や数理解析の進展と応用への期待がもたれて久しい。しかし,複雑系研究の現状や今後の可能性は適切に語られていない。本報では,複雑系数理モデルが「現実の問題を解くことがどの程度可能であると考えられるのか」を現実のシステムの実測と数理モデルとの対比を通して論ずる。まず,「複雑系の数理モデル」とは,現実のシステムをありのまま詳細を再現するものではないことを述べる。次に,複雑系数理モデルのベイズの定理に根ざしたいくつかの成功実例や,巷(ちまた)で話題になっているビッグデータ解析の諸問題との関連性にも言及する。さらに,今後の複雑系の数理モデルの可能性に言及する。
著者
谷藤 幹子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.372-384, 2015-08-01 (Released:2015-08-01)
参考文献数
22

オープンアクセスという新たな論文配信を転機として,日本政府は,日本発学術誌の国際発信力強化を支援し,同時に日本発論文のオープンアクセス化を後押ししている。学協会,図書館,大学・研究機関は,この政府方針を受けて何らかのオープンアクセス化に取り組み,何らかの方法でその成果を示す期待の中に置かれている。本稿では,投稿者負担金(APC)を含めオープンアクセスジャーナルの今後の課題や可能性を視野に,物質・材料研究機構(NIMS)が支援する材料科学分野でのゴールドオープンアクセスジャーナル『Science and Technology of Advanced Materials(STAM)』誌を例に,前稿からの5年の歩みに学ぶ安定的運営と発展するための出版条件を考察する。
著者
松尾 豊
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.597-605, 2015-11-01 (Released:2015-11-01)
参考文献数
19

本稿では,人工知能の近年の発展,特に最近大きな注目を集めているディープラーニングに焦点を当て,その研究の動向を解説する。画像認識等に用いられる畳み込みニューラルネットワーク,リカレントニューラルネットワーク,あるいは強化学習との組み合わせについて述べる。さらに,今後のディープラーニングの発展について述べる。そして,データ共有におけるディープラーニングの適用の可能性について,データベースの統合,画像認識の活用という2点から説明する。最後に,ディープラーニングを活用することによる日本のものづくりの可能性を述べ,本稿をまとめる。
著者
沖山 翔
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.650-657, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)
参考文献数
4

医療情報はインターネット上にあふれているが,その信頼性は必ずしも高いとはいえない。オンライン病気事典MEDLEY(メドレー)は数百名の医師が共同編集する医療情報提供Webサイトである。ここでは医師のみが記事を記し更新することでその正確性を担保し,年間10万回の改訂によって最新の知見が集められる体制をとっている。また疾患,症状,医薬品,医療機関,医学論文といったデータベース同士の関係性を定義することで,症状や年齢,性別から,それに合致した疾患を演繹する「症状チェッカー」などのツールを開発している。MEDLEYとそのツールについて概括するとともに,情報処理アルゴリズムについて,種類ごとの特徴と医療にもたらし得る価値について考察した。
著者
細川 聖二
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.156-164, 2016-06-01 (Released:2016-06-01)
参考文献数
27

電子ジャーナルの安定的利用と長期的保存に対応するため,世界中の図書館や出版社がさまざまなアーカイブ・プロジェクトに取り組んでいる。本稿では,グローバルなダーク・アーカイブの代表的な事例として,学術コミュニティー(大学図書館,出版社)による共同運営事業であるCLOCKSSについて,どのような仕組みでアーカイブを実現しているのか,その概要を説明するとともに,日本において国立情報学研究所や大学図書館がCLOCKSSに参加し,電子ジャーナル等の長期的保存の一翼を担うに至った経緯について紹介する。
著者
石井 夏生利
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.271-285, 2015-07-01 (Released:2015-07-01)
参考文献数
3
被引用文献数
1

本稿は,「忘れられる権利」をめぐる一連の議論から明らかになった論点と,今後の課題を論じることを目的とする。具体的には,グーグルに検索結果からのリンク削除を命じた欧州司法裁判所の判決,英国貴族院の報告書,第29条作業部会の指針,グーグルの諮問委員会意見書の概要,および日本のヤフーが公表した有識者会議報告書および同社の対応方針を取り上げた。欧州司法裁判所の判決は,EUと米国のプライバシー保護に関する対立軸の中で下されたものであり,権利者保護に偏った判断といわざるをえない。同判決の判断基準が日本の法解釈に大きな影響を与えるともいいがたい。また,過去の情報の暴露は古典的なプライバシー侵害の問題であり,「忘れられる権利」は過去の議論の延長線上の問題としてとらえるべきである。他方,本判決およびその後の一連の議論は,検索エンジン事業者に削除基準を検討させる契機を与えるとともに,表現の自由や知る権利との関係で,削除した旨をWebサイト管理者や検索エンジン利用者に通知すべきか否か等の問題を提起した点において意義が認められる。