著者
南山 泰之 照井 健志 村山 泰啓 矢吹 裕伯 山地 一禎 金尾 政紀
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.147-156, 2017-06-01 (Released:2017-06-01)
参考文献数
20

「データジャーナル」は従来の「出版」の枠組みを活用しながら,データの保存や再利用を促すために有効な手法と考えられているが,国際的にも概念形成の途上である。本稿では,国内におけるデータジャーナル構築,運用に向けた具体的な検討材料を提供するため,国内での実践例として2017年1月に創刊されたデータジャーナル『Polar Data Journal』を紹介する。具体的には,背景としての国立極地研究所におけるデータ公開の歴史,構想から創刊に至るまでの合意形成プロセス,「データジャーナル」を通じてデータを適切に取り扱うために必要な要件やワークフロー,およびそれらと連携する基盤構築について示す。
著者
安岡 孝一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.487-495, 2005 (Released:2005-11-01)
参考文献数
27

日本の漢字情報処理における難題のひとつに,異体字処理の問題がある。当用漢字表およびそれに続く常用漢字表が,固有名詞を埒(らち)外としてしまった結果,人名における漢字と,地名における漢字が,それぞれ異なる字体を持つに至った,という現実が,この問題をさらに複雑なものとしている。この問題を解決するには,Unicodeのような「漢字統合」を主眼とする文字コードでは力不足であり,むしろ日本国内向けに特化された文字コードが望ましい。本稿で紹介するAdobe-Japan1-6は,Adobe Systems社が日本向けに開発した文字コードだが,日本市場でのニーズ,特に異体字処理を,非常に強く意識した文字コードとなっている。
著者
クリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.387-391, 2006 (Released:2006-10-01)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

昨今のWeb2.0と呼ばれるユーザーの参加性が高い情報サービスのネットワークの隆盛は,オープンソースとオープンコンテントが交差することによって生じた結果であると考えられる。この稿では,オープンソースからいかにオープンコンテントの概念が生まれ,そしてクリエイティブ・コモンズというシステムが開発され,展開しているかということについて,基礎的な紹介と解説を行う。
著者
野崎 光昭
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.78-83, 2013-05-01 (Released:2013-05-01)
参考文献数
2

最初に高エネルギー物理学ならびにその研究手法やコミュニティーについて簡単に紹介する。次に,SCOAP3が進められた背景と参加の呼びかけに対する日本の取り組みならびに当時の日本発の高エネルギー物理学関連のジャーナルの状況についてまとめる。次に,高エネルギー物理学研究分野の特徴との関連性について触れてSCOAP3が他分野に適用できるかについて述べる。最後に情報発信戦略を担う司令塔の必要性と,情報の管理・流通部門と研究者やIT部門との連携の必要性を強調する。
著者
中山 正樹
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.715-724, 2012 (Released:2012-02-01)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

本稿では,国立国会図書館(NDL)のデジタルアーカイブ構築の現状と,「知識の共有化」が目指す「新たな知識の創造と還流」に向けた活動の方向性について述べる。NDLは,納本図書館として,冊子体資料だけでなく,政府系インターネット情報等のデジタルコンテンツを含めて収集保存する責務を持っており,それらをいつでもどこでも利用できるようにすることが望ましい。NDLは,あらゆる資料や情報を可能な限り収集・保存し,NDLデジタルアーカイブを構築する。しかしながらすべてを収集することは不可能であるので,他の機関と併せて網羅的な知識の蓄積を図り,分散デジタルアーカイブを構築する。それらNDLが収集できていないものも含めて,分散したデジタルアーカイブの情報を一元的にナビゲートし,かつ,意味的に関連付けて知識として利用できるようデータプロバイダーの役割を果たすNDL Searchを構築する。このような既存の情報を知識として再利用して新たな知識の創造を可能にする知識インフラを構築する。
著者
飯野 勝則
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.99-108, 2014-05-01 (Released:2014-05-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

佛教大学図書館では,2011年4月よりウェブスケールディスカバリーのSummonを導入している。ウェブスケールディスカバリーは,ディスカバリーサービスの次世代型といえる存在である。導入当初,検索対象のコンテンツは,雑誌記事索引に由来するデータが中心であった。このため,利用者は冊子体の所蔵へのアクセスを目的として,論文検索を行っていたが,CiNii Articlesの登載後には,電子コンテンツへのアクセスが優勢になった。現状,電子ブックについては,国立国会図書館デジタルコレクションのコンテンツが圧倒的多数を占めている。そのほか,学内イントラネット専用の新聞コンテンツとの連携も,利用者サービスの改善につながった。今後ディスカバリーサービスにおけるビッグデータの活用が進むだろう。ディスカバリーサービスを情報発信ツールとしてどうデザインし,利用するか,図書館やデータベースベンダーの手腕が問われるに違いない。
著者
新保 史生
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.9, pp.629-637, 2012-12-01 (Released:2012-12-01)
参考文献数
3

スマートフォンの利用者数が急激に増加する一方で,利用者が不安を覚える問題の発生も増加している。スマートフォンを介してどのような情報が取得され利用されているのか,利用者が認識することができないまま,不透明な情報の取扱環境が存在する。不正アプリによる,スマートフォン内部に記録されているさまざまな個人情報の不正取得および外部送信が問題となる事件が発生している。そこで,本稿では,現行の個人情報保護法に照らして,スマートフォンを介して取得し利用される個人情報の取扱いにあたって,具体的にどのような対応が求められるのか整理をした上で,スマートフォンを安全・安心に利用するにあたっての指針として,セキュリティとプライバシー・個人情報保護の両面からの取り組みを紹介する。
著者
萩谷 昌己
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.472-478, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)
参考文献数
8

高等学校情報科の現状を具体例として,日本における情報教育の格差について議論する。政府が導入を計画している小学校におけるプログラミング教育についても,格差が新たに生み出される危惧について触れる。そして,そのような格差をなくすためには,情報教育の重要性を現場の教員や教育委員会が認識することが重要であることを指摘する。情報教育の親学問である情報学を明確に定義することがその認識のための一つの前提であると述べ,日本学術会議により公開された「情報学分野の参照基準」について報告する。最後に,初等中等教育から大学・大学院までの情報教育全体を体系化する「情報教育の参照基準」の必要性について指摘する。
著者
小谷 允志
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.262-272, 2012-07-01 (Released:2012-07-01)
参考文献数
7

米国,カナダは記録管理の先進国である。両国においては国立公文書館が現用から非現用のアーカイブズまでのライフサイクル管理を,強力なリーダーシップにより一元的に管理しているのが特徴である。最近,これら両国立公文書館を視察する機会を得たので,その時の見聞をもとに両国の公文書管理の最新動向を紹介する。両国とも,記録管理の専門職体制がしっかりと根付いていること,また電子記録管理に対する新しい取り組みを積極的に展開しているのが印象的であった。
著者
吉見 俊哉
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.491-497, 2013-11-01 (Released:2013-11-01)
被引用文献数
1 1

5世紀前のグーテンベルク革命に比べられる今日のデジタル革命は,社会の記憶構造を大きく変化させる可能性がある。過去が消えなくなり,無限に集積されていく情報資源となりつつある。この情報資源を保存し,再利用可能にしていくには,以下の4点の基盤整備が重要である。第1は,新たな知識コンテンツの公共的再利用に必要な法システムの整備である。とりわけ著作権者や所有権者が不明な知的資源を公的に再利用できるようにすることが喫緊の課題である。第2に,新しい知識循環型社会のプロデューサーとなっていくことができる専門職人材の雇用を生み出す必要がある。第3は,日本やアジアの文化を世界に向けて発信・再活用していく基盤となるナショナルアーカイブの構築である。第4に,新しい知識循環型社会では,ローカルなレベルで「わが町・わが村・わが地域」の記憶を呼び戻していく開かれた仕組みが整備されていかなければならない。
著者
加藤 文彦
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.307-315, 2017-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

DBpediaは主にWikipediaから構造化データセットを抽出してリンクトデータとして再公開するコミュニティープロジェクトである。まず,DBpediaやDBpedia日本語版の成り立ちについて解説する。その後にデータモデルやデータ抽出といったDBpediaの技術的側面について述べる。現在日本語版のトリプル数は1.1億程度である。また,Wikipedia内でのテンプレート出現数に対するマッピングのカバー率は49.1%である。日本語版の利用調査を2015~2016年にかけて行った結果,日本語版にリンクするデータセットが18件,日本語版のアプリケーションが26件,研究利用が65件あることがわかった。また,DBpediaとウィキデータの関係も述べる。