著者
福島 俊一 藤巻 遼平 岡野原 大輔 杉山 将
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.543-554, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
30
被引用文献数
3

機械学習技術を用いることで,過去の事例・観測データからの学習に基づく,モノやコトの判別・分類,予測,異常検知等の知的な判断をコンピューターで実現可能になる。ビッグデータの活用と相まって,さまざまな問題解決に機械学習技術の適用が広がっている。本稿では,問題解決への適用という視点から重要と考える技術的チャレンジの方向性として,(1)学習結果の解釈性の確保,(2)機械学習から意思決定まで通した解法の実現,(3)深層学習の高速化・高効率化,(4)機械学習型システム開発方法論の確立,という4点について述べる。
著者
池上 高志
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.809-813, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
8

インターネットという情報の巨大な伝送装置を得,おびただしい量の情報に囲まれることになった現代。実体をもつものの価値や実在するもの同士の交流のありようにも,これまで世界が経験したことのない変化が訪れている。本連載では哲学,デジタル・デバイド,サイバーフィジカルなどの諸観点からこのテーマをとらえることを試みたい。「情報」の本質を再定義し,情報を送ることや受けることの意味,情報を伝える「言葉」の役割や受け手としてのリテラシーについて再考する。第9回は,生命進化の観点から情報を考える。いま世界のいたるところで,人工システムが生命的な様相を呈している。単なる自己複製にとどまらない人工生命化。その進化の先にある世界とは。
著者
波多野 澄雄 大野 太幹
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.465-471, 2016-10-01 (Released:2016-10-01)
参考文献数
2

国立公文書館アジア歴史資料センター(アジ歴)は2001年11月に設立され,2016年で16年目を迎える。その間,日本とアジアにかかわる近現代の歴史資料(デジタル化資料)約200万件・約3,000万画像をデータベース化して,広く利用者に提供している。本稿では,アジ歴の現状および最近の取り組みを紹介するとともに,大規模な歴史資料のデータベースを,専門家以外の利用者に対しても,いかに利用しやすく提供するかについて,特に,センター独自の目録データ(メタデータ)項目,およびそれら目録データから抽出した検索用のキーワードをより理解しやすくするための新規作成コンテンツ「アジ歴グロッサリー」について,詳しく紹介する。また,他機関との連携など,アジア歴史資料のハブとしての機能を充実させるための取り組みについても,いくつかの事例を挙げて紹介する。
著者
吉原 博幸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.767-778, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
8

EHR(Electronic Health Record)の始まりは1995年の医療情報共通規格(MML: Medical Markup Language)の検討開始にさかのぼることができる。2001年に,MMLをデータベース構造としたEHRが開発され,熊本,宮崎,東京,京都へ拡大していった(Dolphin Project)。その後,国家レベルでの医療情報管理の必要性が認識され,医療情報の2次利用のニーズとも相まって,2015年にDolphin Projectの国レベル版である「千年カルテプロジェクト」が始まった。2018年度までの4年間で接続病院を十分に増やし,2019年度から始まる医療情報の2次利用に備える。2次利用の収益による補助金に依存しないEHR部門も含めた独立採算を目指している。
著者
狩野 芳伸
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.10, pp.658-665, 2017-01-01 (Released:2017-01-01)
参考文献数
9

対話システムの利用は近年産業界でも注目を浴びており,一般ユーザーが利用可能な対話システムも数多く提供されている。本稿では対話システムの概要について,実際のいくつかの対話システムの動作結果や対話システムの仕組みの概略,関連するタスクの内容を通じて,専門外の読者にもわかりやすく紹介する。そのうえで,一研究者の視点から,対話システムの現状と将来について議論する。
著者
植村 八潮
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.403-413, 2013-10-01 (Released:2013-10-01)
参考文献数
5
被引用文献数
2

電子書籍の登場と普及が,印刷技術と物流,物販を基本構造とした産業構造に変革を迫っていることは疑いもない。同時に出版物が担ってきた重要な役割である学術情報の流通や文化的蓄積にも影響を与え,ひいては図書館のあり方や制度設計も変わらざるを得ない。本稿の目的は,普及が進まないと指摘される電子書籍の現状について解説した上で,普及のためになすべき制度整備や検討が始まっている著作権法改正について述べ,さらに図書館サービスに及ぼす影響や求められる対応について検討することにある。電子書籍がビジネス競争の単なる道具として利用されるのではなく,学術と文化の発展に寄与するためにどのような方策をとるべきか。現状分析により課題を明らかにし,その上で目指すべきあり方を検討する。
著者
黒沢 岳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.284-292, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)
参考文献数
8

大宅壮一文庫は,雑誌の収蔵と雑誌記事索引の作成を主な事業として活動している。ここでは評論家大宅壮一が雑草文庫と呼んでいた時代から振り返り,その成り立ちを紹介する。一般書籍とは異なる雑誌ならではの記事の索引について,大宅壮一の考えを引き継ぎ,当文庫の特徴となる「人名索引」「件名索引」とは何か,利用者のニーズや世相を反映した索引とは何かを紹介する。そして手で繰る索引カードから『雑誌記事索引総目録』刊行という流れ,現在の主流であるインターネット上のWeb OYA-bunkoの検索方法を解説する。
著者
天野 絵里子 岡野 恵子 稲石 奈津子 今井 敬吾
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.83-91, 2015-05-01 (Released:2015-05-01)
参考文献数
2
被引用文献数
1

京都大学では,2011年度より研究推進に携わる専門職としてリサーチ・アドミニストレーター(University Research Administrator: URA)を任用し,学術研究支援室と8つの部局URA室,2つのユニット付きURAからなるURAネットワークを構築してきた。URAによる主要な研究推進業務の1つとして研究資金獲得支援があげられる。本稿では,URAネットワークで実施している科研費申請支援,人文・社会科学系(人社系)研究者のための支援,ICTを活用した情報の集約と分析について紹介する。また,支援業務の中で浮かび上がってきた,学内でのナレッジの共有,よりプロアクティブな支援の必要性,人社系研究支援の検討などの課題について述べる。
著者
蔵川 圭 武田 英明
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.622-631, 2012 (Released:2012-01-01)
参考文献数
18
被引用文献数
3 1

本稿では2009年より始まった国際的な研究者識別子付与活動であるORCID(Open Researcher and Contributor ID)について解説する。ORCIDは世界中の研究者に一意の識別子を与えることで,さまざまな学術コミュニケーションを円滑にすることを目的としている。このために学術コミュニケーションに関与する出版社,大学,研究助成機関等が集まって非営利法人ORCID Inc.を設立して,活動の母体としている。現在300近い組織が参加している。ORCIDのIDは個別の研究者にとっては自己の研究業績の集約や他の研究者の業績の発見に役立つ。大学にとっては組織の業績をまとめるのに貢献する。出版社には著者や査読者の同定に貢献する。研究助成機関にとっては,応募者の同定に役立つ。ORCIDのサービスは2012年の初頭に最初の機能限定版が公開され,2012年中にはより多くの機能を含んだサービスが公開される予定である。
著者
岡本 真
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.808-818, 2012 (Released:2012-03-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

東日本大震災で被災した博物館・美術館,図書館,文書館,公民館への支援活動を行うsaveMLAKの活動を,図書館に特化して紹介する。saveMLAKはWikipedia等で用いられている共同編集ソフトMediaWikiを用いた被災・救援情報のまとめサイトであり,情報の集約と共有による情報支援・間接支援・中間支援である。また,集約・共有した情報に基づき,宮城県図書館と共同して実施している被災地の図書館支援の事例を紹介する。これまでの活動の経緯と課題を示すとともに,saveMLAK以外の図書館支援活動に対する建設的な批判や提言をあわせて展開する。その上で来るべき大災害に対応するために,平常時から非常時への備えを行う恒久的な機関・機能を常設することを提案する。
著者
東 浩紀
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.624-628, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
2

インターネットの利便性をこれまでになく享受し,ネット上に拡散する情報の力が革新的な発想を後押しすることも多い21世紀初頭は,同時に情報漏えいや権利侵害,依存といった弊害や危うさを露呈し始めた時代でもある。不可視だが確実に存在する脅威,ネットにつながっているゆえの不自由さをも見極める必要がある。現代の環境を冷静に認識し,今起きていることに対してどうふるまうべきか。現代思想・法曹・警察行政・迎撃技術・情報工学・サイバーインテリジェンス等のスペシャリストが,6回に分けて考える。第1回は,サイバースペース(情報空間)やインターネットが浮き彫りにした「人間の本質」と「未来」について,哲学者・東浩紀氏が語る。
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
サイエンスウィンドウ (ISSN:18817807)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.1, 2022 (Released:2022-03-18)

発明は身近なところにヒントがあるようです。アイデアを実現して、社会を変革し、ありたい未来を築こうとする発明家たちをご紹介します。自由、ひらめき、創る喜び・・・一緒にワクワクしましょう。 特集:未来を創る発明家たち 【コラム】誰でも発明を生み出せる加減乗除のテクニック 「発明楽」とは 1.「発明楽」、気づきをためて引き出す発想法《植木賢さんインタビュー》 2.プログラミングで創造的な人材育成を《福野泰介さんインタビュー》 3.共有により人生の体験を増やすボディシェアリング《玉城絵美さんインタビュー》 4.AR を通して、多様な価値観を受け入れる社会を《川田十夢さんインタビュー》 5.一人の高校生の願いから生まれた「だれでもピアノ」《新井鴎子さんインタビュー》 6.乳がんの早期発見・治療を目指して起業《東志保さんインタビュー》 【コラム】北陸3 都市で開催された「かにロボコン」
著者
樋口 知之
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.2-11, 2013-04-01 (Released:2013-04-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3 5

ビッグデータの活用によりイノベーションを引き起こすことが産業界からアカデミアまで幅広く期待されている一方,その成功の鍵となる人材の不足についてはあまり真剣に議論されていない。データ・サイエンティストと呼ぶ,統計学や機械学習の高度な知識と,ビッグデータの取り扱いに関する十分なスキルを持った人材の養成は焦眉の急である。すでに産業界においては優秀な人材の争奪戦が相当激しいものとなっている。国際的競争力の維持の観点から日本の人材育成上の問題点を指摘するとともに,アメリカで始まった新しいポスドク・インターンシップ制度を紹介し,データ・サイエンティストを増やす方策を考えてみる。
著者
伊藤 啓
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.307-317, 2012-08-01 (Released:2012-08-01)
参考文献数
6
被引用文献数
3 3

遺伝子の変異や目の疾患によって色の知覚が異なる人が,日本には500万人以上存在する。これらの人は,特定の組み合わせの色が識別しにくい以外に,赤い表示を見落としやすい,色名がわからないなどの不便が生じる。フィルターやパソコンソフトで提供されているツールを使うと,こうした色の見分けにくさを疑似体験できる。色を使ったデザインを行う際は,これらのツールで確認しながら,できるだけ見分けやすい配色を選ぶ,形の違いなど色以外の方法を併用して情報を伝える,色名を表記するなどの工夫を行い,伝えたい情報が誰にでも理解してもらえるようなカラーユニバーサルデザインに配慮する必要がある。