著者
平石 界 中村 大輝
出版者
The Philosophy of Science Society, Japan
雑誌
科学哲学 (ISSN:02893428)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.27-50, 2022-03-31 (Released:2022-03-31)
参考文献数
126

It has been almost ten years since Bem published the psi study in a prestigious social psychology journal, which ignited the replicability crisis in psychology. Since then, drastic and systematic changes in research practices have been proposed and implemented in the field. After a decade of such controversy and reformation, what is the current status of psychology? We provide an overview of the 10 years of credibility revolution in psychology by taking the perspectives of “researcher's degree of freedom” and “specification space.” Based on the view, we propose possible future directions for psychology to proceed as a scientific discipline.
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.89-97, 2023-07-31 (Released:2023-07-31)
参考文献数
24

幼少期の自然体験と将来の学力変数の関連を指摘する先行研究は多いが,その多くは観察研究であり,因果関係を検討する上での重大な問題を抱えている。因果関係を検証するための理想的な研究デザインはランダム化比較試験であるが,参加者が自然を体験するか否かをランダムに割り当てる研究の実施は倫理的に難しい。そこで次善の策として,本研究では傾向スコアを用いた統計的因果推論の手法に着目し,観察研究のデータから幼少期の自然体験の因果効果を推定した。具体的には,東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が実施した縦断調査の公開データを用いて,小学校1年生までの自然体験が小学校4年生時点での理科学習への動機づけに及ぼす因果関係を検討した。傾向スコア分析の結果,幼少期の単発的な自然体験の効果は認められないが,幼少期の日常的な自然体験は小学校4年生時点での理科学習への動機づけを向上させることが明らかになった。
著者
中村 大輝 原田 勇希 久坂 哲也 雲財 寛 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.3-22, 2021-07-30 (Released:2021-07-30)
参考文献数
90

近年,教育学を含む多くの学問分野において過去の研究知見が再現されないという再現性の危機が問題となっており,その原因の1つとして問題のある研究実践(Questionable research practices, QRPs)の存在が指摘されている。本研究では,国内の理科教育学分野におけるQRPsの実態を明らかにし,再現性問題への具体的な対応策を提案することを目的として,『理科教育学研究』に掲載された過去4年間の論文におけるQRPsの状況を分析した。その結果,8種類のQRPs(妥当性の確認不足,母集団の未定義,出版バイアス,誤った多重比較,検定力不足,HARKing,過度の一般化,記載情報の不足)が行われていることが示唆され,理科教育学分野の実証研究における研究方法の問題点が明らかになった。また,再現性問題の解決に向けて,QRPsを防止するために,本誌に関わる研究者,実践者,編集委員会が取り組むべき対応策として「追試の積極的な実施」「適切な研究方法の普及」「事前登録制度の導入」「オープンサイエンスの実施」の点から4つのアイデアを示した。
著者
中村 大輝 藤原 聖輝 石飛 幹晴 川崎 弘作 小林 和雄 小林 優子 三浦 広大 雲財 寛
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.137-154, 2023 (Released:2023-07-08)
参考文献数
124

The purpose of this study was to derive the types, characteristics, historical evolution, and issues for future research on assessment methods of understanding of the Nature of Science (NOS). The assessment methods for NOS understanding were extracted from an article database, and 69 assessment methods were identified. These assessment methods differed in response format and subjects, and there was some bias in the elements measured. Finally, we summarized issues for future research from the three viewpoints of “What should be assessed as NOS understanding,” “What methods should be used for assessment,” and “What is the purpose of assessment”.
著者
中村 大輔
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.6, pp.346-354, 2020-06-05 (Released:2020-10-14)
参考文献数
39

強磁場マグネットと聞いて多くの方が思い浮かべる装置は,研究室での運用が可能で1~10 T程度の磁場を発生できる,市販の電磁石や超伝導マグネットではないだろうか.国内では,それ以上の強磁場は東北大学金属材料研究所の31 T定常ハイブリッドマグネットや,東京大学物性研究所等の75 T非破壊パルスマグネットによって発生できる.これらはソレノイドコイルに電流を流して繰り返し磁場発生ができるマグネットである.物性研究所では,これらとは全く異なる発想で,磁場発生後にマグネットが破壊されることと引き換えに100 T以上の磁場発生が可能な「破壊型」パルスマグネットの開発に長年にわたって取り組んできた.中でも,300 T以上の磁場を発生できる電磁濃縮法を用いた装置は物性研究所でしか運用されていない世界唯一の装置である.電磁濃縮法では数mmの空間に再現性良く磁場を発生できるため,1,000 T級の磁場を用いた物性研究を目標とした技術開発が1970年代から進められてきた.その結果,1995年には550 T,2002年に620 T,2008年には730 Tの最高磁場に到達し,これまでに600 Tに至る磁場下において磁性体やナノカーボン物質を対象とした物性研究が行われた.しかし,1,000 Tを凌駕する超強磁場の発生には,磁場発生電源(コンデンサバンク)の根本的な見直しと,信頼性のある超強磁場測定法の確立という,2つの大きな壁を乗り越える必要があった.そのため,2010年度より開始された新プロジェクトでは,コンデンサバンク電源,電源からの電流が集約される集電板,主コイルのクランプ装置など電磁濃縮法装置の構成要素すべてを刷新し,1,000 T級の磁場発生が可能な総エネルギー5 MJの装置が2018年に完成した.これらの大規模な装置開発と並行して,筆者は1,000 Tを超える磁場の効率的な発生方法を提案した.最適な実験パラメータを数値計算によって探索した結果,磁束濃縮前の初期磁束を抑制することによって,磁束濃縮を行うライナーの最終的な内径がより小さくなり,発生する最大磁場が増加することが示された.しかし,磁場計測に使用されてきたピックアップコイルによる誘導起電力測定では,電磁ノイズの影響や測定リード線の絶縁破壊などにより,従来より小さい径に発生する超強磁場を計測することは困難であった.そこで,筆者は磁気光学的手法であるファラデー回転法を用いた磁場計測プローブを開発した.総エネルギー5 MJの新型電磁濃縮法装置を用いて初期磁束がある程度抑制された下での実験を行ったところ,2018年4月18日に1,200 Tの磁場発生・計測に成功し,電磁濃縮法によって1,000 Tの壁を越えるという長年の宿願が成就した.1,000 T級の超強磁場による効果は,室温の熱エネルギーや物質中でのファンデルワールス結合エネルギーを凌駕し,電子のサイクロトロン運動が原子間隔程度にまで小さくなる.そのため,超強磁場特有の新現象・新機能が現れるだけでなく,既存の強磁場物質科学研究の枠組みを超えて,化学反応や生命科学などの分野との融合的な研究が芽生えることが期待できる.
著者
中村 大輝 田村 智哉 小林 誠 永田 さくら 大森 一磨 大野 俊一 堀田 晃毅 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.215-233, 2020 (Released:2021-02-05)
参考文献数
65

This study aims to determine the expected effect size of intervention studies in science lessons through meta-analysis. Intervention studies were collected from education-center websites in every Japanese prefecture to calculate the average effect size and examine the moderation effect. The results of the quantitative analysis showed that the mean effect size of multi-valued items was g=0.594 [0.557, 0.630] (k=626, N=9122). The moderator analysis revealed relatively low effect sizes for learning in the geology domain, and differences in effect size for various types of academic indicators. In addition, we provided basic statistics to help determine the sample size needed for future studies.
著者
中村 大輝 雲財 寛 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.215-233, 2021 (Released:2021-07-16)
参考文献数
58

The purpose of this study is to redevelop the Need for Cognition Scale in Science Education (NCSE) and provide basic data for its application. We define NCSE as the intrinsic tendency that allows one to engage in and enjoy cognitive activities; these are scientific inquiries through observation and experimentation. This study is divided into four parts. In Study 1, we conducted a questionnaire survey on 1,875 elementary and junior high school students and clarified the structure of the scale based on item response theory (IRT). Several IRT model fits were compared, and finally, we identified the characteristics of each question item based on the graded response model (GRM). In Study 2, we verified the validity and accuracy of NCSE. In addition, we showed that there was no differential item functioning (DIF) of gender. In Study 3, we examined gender and grade differences. We found that NCSE tended to be higher in males than in females and may decrease as the grade progresses. In Study 4, we divided the questionnaire into two groups based on item parameters estimated in Study 1. These two sets, known as the horizontal test, will contribute to future investigations using the pre-post design approach.
著者
森川 大地 石飛 幹晴 中村 大輝
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.61-69, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
26

本研究は,問題事象から変数を見いだす力に着目し,その測定方法を開発することを目的とした。研究の目的を達成するために,当該能力を「目の前の問題事象の中から,変化し得る要素を特定する力」と定義した上で,複数の調査問題を作成した。作成した調査問題を用いて,小学生1044名(第3学年195名,第4学年96名,第5学年382名,第6学年371名)を対象とした調査を実施し,項目反応理論の2母数モデルに基づく分析を行った。その結果,開発した問題は十分な識別力を持っており,当該能力が平均よりやや低い集団において高い弁別性を有していることが明らかになった。また,測定した能力値を学年ごとに比較した結果,問題事象から変数を見いだす力は,上位の学年ほど高い傾向にあることが明らかになった。
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.279-292, 2018-03-19 (Released:2018-04-06)
参考文献数
47
被引用文献数
8

理科における問題解決や探究の入り口として, 学習者自身に仮説を立てさせることの重要性が指摘されている。一方, 仮説設定に関する先行研究においては, 学習者が仮説を設定する際の思考過程の実態が明らかにされてこなかった。そこで本研究では, 仮説設定を求める調査問題を6問作成するとともに, 大学生・大学院生を対象とした面接調査を実施した。結果の分析に際しては, まず, 発話プロトコルから思考過程を推定し, その内容によって6つのカテゴリーに分類した。次に, それらのカテゴリー間の推移を集計し, 仮説設定には共通した思考過程が存在することを明らかにした。また, 思考過程の合理性を得点化し, 思考過程との関係性を検討した結果, 変数の同定過程においては複数の変数の吟味が, 因果関係の認識過程においては因果関係の慎重な検討が合理性に正の影響を及ぼすことが明らかになった。
著者
松宮美奈 向山ゆう子 小林寿絵 中村大輔 髙木寛奈 上杉上 水落和也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
第49回日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
2014-04-29

【はじめに】線維筋痛症は原因不明の全身疼痛が主症状で,うつ病など精神神経症状・過敏性腸症候群など自律神経症状を随伴する疾患である。2013年の線維筋痛症診療ガイドラインによれば,有病率は人口の1.7%(日本推計200万人)であり,80%が女性で40~50代に多く,10歳前後に多い若年性線維筋痛症(Juvenile Fibromyalgia:JFM)は4.8%のみである。発症要因として外因性と内因性のエピソードがあり,治療はプレガパリンを中心とする疼痛制御分子の標的療法が中心で,運動療法は,成人例に対して長期間に渡り有酸素運動を行い疼痛が軽減した報告がある(エビデンスIIa)が,JFMでは,いまだ確立した治療法がない。JFMでは患児と母親の相互依存性や,まじめ・完璧主義・潔癖主義・柔軟性欠如などコミュニケーション障害を伴う性格特性が特徴であるとも言われており,当院では,小児リウマチセンターにおいてJFMの集学的治療を実践している。その内容は,生活環境からの一時的な隔離を意図した短期入院による母子分離,臨床心理士による心理評価と小児精神科によるカウンセリング,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン®)点滴静注を中心とした薬物療法,そしてリハビリテーション治療である。【目的】本研究の目的は,JFMに対する理学療法(PT)の実施状況と集学的治療による効果を明らかにし,JFMに対するPTの課題を明確にすることにある。【対象と方法】2007年4月から2012年12月までにJFMと診断され当院小児科に入院し,PTを行った症例を対象とし,患者属性,発症要因,入院期間,PT実施期間,PT内容,PT開始時及び退院時の運動機能と移動能力を診療録より抽出し後方視的に調査した。【倫理的配慮,説明と同意】当院では入院時に臨床研究と発表に対する同意を文書で得ている。【結果】調査期間に小児科に入院したJFM症例は33名であった。33名のうち6名は調査期間内に複数回の入院があり,これを別の入院例とみなして,対象を42例としたが,診療記録不十分のため調査項目の確認ができなかった3症例を除外し,39症例(30名)を対象とした。平均年齢は12.2歳(7~16歳),平均発症年齢12.1歳(7~15),性別は男児7例,女児32例であった。入院期間は中央値17日(7~164日),PT期間は中央値12日(1~149)だった。発症の誘因としては,内因性誘因では家族関係のストレス27例,学校関係のストレス22例であり,外因性誘因と内因性誘因の重複が11例にみられた。主症状は筋・関節痛39例,左上肢の慢性疼痛1例であり,ほぼ全例に睡眠障害や冷感,起立性調整障害など自律神経系合併症状を認めた。PT内容は,独歩可能な症例には歩行練習(屋外歩行やトレッドミル,水中歩行),自転車エルゴメーターなどを実施し,歩行困難な症例には下肢自動運動や座位・立位練習,車いす自走や歩行補助具を使用した段階的歩行練習を行っていた。また,キャッチボールやサッカーなどレクリエーショナルアクティビティも随時行われていた。PT中は疼痛が増強しない範囲で負荷を設定し,疼痛を意識させずに運動できるよう配慮し,受け入れのよい課題を選択し,目標を本人と相談しながら実施するなどの配慮がうかがえた。PT実施率は高く,疼痛や体調不良でPTを欠席したものは1症例,1日のみであった。入院中の疼痛の変化は改善28例,変化なし5例,悪化6例であり,移動能力は入院時に歩行(跛行なし)20例,歩行(跛行あり)9例,車いす移動10例が,退院時は歩行(跛行なし)28例,歩行(跛行あり)6例,車いす移動5例であった。【考察】成人の線維筋痛症では手術や感染などの外因が誘因となることがあるが,今回調査した小児では全例が内因性誘因を有していた。PTの介入は母子分離環境による心理社会的効果と薬物療法による疼痛軽減に合わせて,できる範囲の運動を導入することで,気晴らし的効果と身体機能維持改善の効果が期待できると思われた。PTの効果のメカニズムとして,JFMではセロトニン欠乏が睡眠障害や疼痛を引き起こすという知見が最近得られており,歩行などのリズム活動がセロトニン神経を賦活化し疼痛の悪循環を断ち切る可能性もある。疼痛で活動性が低下し,休学を余儀なくされている症例も多く,生活機能障害に対するPTの予防的・回復的・代償的な関わりはJFMの集学的治療に重要な役割を果たすと思われる。【理学療法学研究としての意義】線維筋痛症に対する運動療法の効果は成人では文献が散見されるが,小児では少ない。今回の調査は,JFMに対して症状の改善に運動療法が寄与した可能性を示唆している。
著者
深澤 百合子 細谷 葵 中村 大 クレイグ オリバー
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の成果は、擦文人が擦文土器を使用してサケやヒラメをはじめキュウリウオなどの小型魚類やとオオムギ、キビなどの栽培された雑穀類を主食素材として調理を、調理においては吹きこぼれが多く生じていたことが証明できた。このような雑炊、汁物メニューは食材、調理方法において後続するアイヌ文化に継承されたと言える。このことから物質文化の変化がみられる土器から鍋への調理用具の変化やカマドから炉への調理施設の変化が起因する要因を研究する必要がある。調理実験の有効性が確認できたことも成果と言えるため土器に付着した吹きこぼれ痕は鍋に痕跡が観察されるのか、具材と穀類の調理割合が異なるのかなど今後の研究課題となる。
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告 (ISSN:18824684)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.21-24, 2022-03-06 (Released:2022-03-03)
参考文献数
14

多くの先行研究が幼少期の自然体験と将来的な学業変数の関連を指摘しているが,そのほとんどは観察研究のデザインを採用しており,因果効果を検討する上での重要な問題を抱えている.因果効果を検討する上で最も望ましい研究デザインはランダム化比較試験だが,自然体験を行うか否かをランダムに割り付ける研究は実施困難である.このような状況における次善策として,本研究では傾向スコアを用いた因果推論の技法に着目し,観察研究のデータから幼少期の自然体験が持つ因果効果を推定することを目指した.東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が実施している縦断調査である「子どもの生活と学びに関する親子調査」の公開データを用いて,小学校1年生までの自然体験が小学校4年時の理科学習への態度に及ぼす因果効果を検討した.傾向スコアを用いた分析の結果,単発的な幼少期の自然体験の効果は認められない一方で,日常的に習慣化された幼少期の自然体験は,小学校4年時の理科学習への好意的な態度を向上させることが示された.
著者
中村 大介
出版者
関西学院大学
雑誌
関西学院哲学研究年報 (ISSN:02892928)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.17-34, 2004

大学から依頼があり、本文は非公開にした。
著者
中村 大輝 雲財 寛 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.183-196, 2018-11-30 (Released:2018-12-05)
参考文献数
64
被引用文献数
2

本研究は, 理科の問題解決における仮説設定に関する国内外の研究を収集・整理し, 国内外の差に留意しつつ, 研究の動向や課題を明らかにすることを目的とした。仮説設定に関する研究を, 「仮説の定義」「実態の評価」「思考過程」「指導」の4観点から整理し, 各観点における研究の動向や課題を検討した結果, 主に次の4点が明らかになった。1)仮説の定義の多様性は, 仮説の定義を構成する要素全体に見られるものではなく, 説明する対象の違いに由来するものであること。2)仮説設定の評価方法は, 国内外で用いられる方法に傾向差が存在すること。3)思考過程に関する研究では, 実際の理科授業における仮説を設定する際の思考過程を捉えられるよう改善を図る必要があること。4)国内における指導方法研究はその具体性で国外の研究に勝るものの, 各指導方法には課題も存在すること。
著者
中村 大介
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.129-147, 2020

漢代の遼東郡は楽浪郡とならんで、朝鮮半島や日本列島の社会に関連の深い地域である。さらに、王莽期頃から烏桓が塞内でも活動していたことが、発掘によってわかってきた。そこで、本稿では遼東半島の墓を軸に時期的変遷と交流関係について考察を行い、当時の交易活動について検討した。その結果、東の膠東半島と北の騎馬遊牧民との仲介者として貝墓を造営していた人々の活動が重要であることが理解された。訂正(1p)あり
著者
松宮 美奈 向山 ゆう子 小林 寿絵 中村 大輔 髙木 寛奈 上杉 上 水落 和也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0967, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに】線維筋痛症は原因不明の全身疼痛が主症状で,うつ病など精神神経症状・過敏性腸症候群など自律神経症状を随伴する疾患である。2013年の線維筋痛症診療ガイドラインによれば,有病率は人口の1.7%(日本推計200万人)であり,80%が女性で40~50代に多く,10歳前後に多い若年性線維筋痛症(Juvenile Fibromyalgia:JFM)は4.8%のみである。発症要因として外因性と内因性のエピソードがあり,治療はプレガパリンを中心とする疼痛制御分子の標的療法が中心で,運動療法は,成人例に対して長期間に渡り有酸素運動を行い疼痛が軽減した報告がある(エビデンスIIa)が,JFMでは,いまだ確立した治療法がない。JFMでは患児と母親の相互依存性や,まじめ・完璧主義・潔癖主義・柔軟性欠如などコミュニケーション障害を伴う性格特性が特徴であるとも言われており,当院では,小児リウマチセンターにおいてJFMの集学的治療を実践している。その内容は,生活環境からの一時的な隔離を意図した短期入院による母子分離,臨床心理士による心理評価と小児精神科によるカウンセリング,ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液(ノイロトロピン®)点滴静注を中心とした薬物療法,そしてリハビリテーション治療である。【目的】本研究の目的は,JFMに対する理学療法(PT)の実施状況と集学的治療による効果を明らかにし,JFMに対するPTの課題を明確にすることにある。【対象と方法】2007年4月から2012年12月までにJFMと診断され当院小児科に入院し,PTを行った症例を対象とし,患者属性,発症要因,入院期間,PT実施期間,PT内容,PT開始時及び退院時の運動機能と移動能力を診療録より抽出し後方視的に調査した。【倫理的配慮,説明と同意】当院では入院時に臨床研究と発表に対する同意を文書で得ている。【結果】調査期間に小児科に入院したJFM症例は33名であった。33名のうち6名は調査期間内に複数回の入院があり,これを別の入院例とみなして,対象を42例としたが,診療記録不十分のため調査項目の確認ができなかった3症例を除外し,39症例(30名)を対象とした。平均年齢は12.2歳(7~16歳),平均発症年齢12.1歳(7~15),性別は男児7例,女児32例であった。入院期間は中央値17日(7~164日),PT期間は中央値12日(1~149)だった。発症の誘因としては,内因性誘因では家族関係のストレス27例,学校関係のストレス22例であり,外因性誘因と内因性誘因の重複が11例にみられた。主症状は筋・関節痛39例,左上肢の慢性疼痛1例であり,ほぼ全例に睡眠障害や冷感,起立性調整障害など自律神経系合併症状を認めた。PT内容は,独歩可能な症例には歩行練習(屋外歩行やトレッドミル,水中歩行),自転車エルゴメーターなどを実施し,歩行困難な症例には下肢自動運動や座位・立位練習,車いす自走や歩行補助具を使用した段階的歩行練習を行っていた。また,キャッチボールやサッカーなどレクリエーショナルアクティビティも随時行われていた。PT中は疼痛が増強しない範囲で負荷を設定し,疼痛を意識させずに運動できるよう配慮し,受け入れのよい課題を選択し,目標を本人と相談しながら実施するなどの配慮がうかがえた。PT実施率は高く,疼痛や体調不良でPTを欠席したものは1症例,1日のみであった。入院中の疼痛の変化は改善28例,変化なし5例,悪化6例であり,移動能力は入院時に歩行(跛行なし)20例,歩行(跛行あり)9例,車いす移動10例が,退院時は歩行(跛行なし)28例,歩行(跛行あり)6例,車いす移動5例であった。【考察】成人の線維筋痛症では手術や感染などの外因が誘因となることがあるが,今回調査した小児では全例が内因性誘因を有していた。PTの介入は母子分離環境による心理社会的効果と薬物療法による疼痛軽減に合わせて,できる範囲の運動を導入することで,気晴らし的効果と身体機能維持改善の効果が期待できると思われた。PTの効果のメカニズムとして,JFMではセロトニン欠乏が睡眠障害や疼痛を引き起こすという知見が最近得られており,歩行などのリズム活動がセロトニン神経を賦活化し疼痛の悪循環を断ち切る可能性もある。疼痛で活動性が低下し,休学を余儀なくされている症例も多く,生活機能障害に対するPTの予防的・回復的・代償的な関わりはJFMの集学的治療に重要な役割を果たすと思われる。【理学療法学研究としての意義】線維筋痛症に対する運動療法の効果は成人では文献が散見されるが,小児では少ない。今回の調査は,JFMに対して症状の改善に運動療法が寄与した可能性を示唆している。