- 著者
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小原 丈明
- 出版者
- 地理科学学会
- 雑誌
- 地理科学 (ISSN:02864886)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.2, pp.65-89, 2005-04-28 (Released:2017-04-15)
- 参考文献数
- 36
- 被引用文献数
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本稿の目的は, 大阪市天王寺区上本町六丁目(上六)地区で行われた再開発の事例から, 都市再開発の社会的意義を考察することにある。上六地区コミュニティは, 太平洋戦争終戦直後に不法占拠という形で形成された闇市に端を発する。上六地区は戦災復興土地区画整理事業の施行区域に指定されたため, 地区住民は行政から立ち退きを迫られていた。そのため, 地区住民は立場の安定の獲得を企図して, 上六地区再開発を実施した。再開発に至る過程, 再開発の実施過程, 再開発実施後に区分し, それぞれの期間における権利関係の動向や地区住民と行政との関係の変化, あるいは地区住民の証言を分析した結果, 以下の都市再開発の社会的意義が明らかとなった。1)地区住民にとっては, 土地の権利を獲得することで立場の安定が得られ, また, 社会や行政に容認される存在となった点に意義があった。2)行政にとっては, 戦災復興区画整理の施行や不法占拠地区の清算という点で, 戦後処理が進展したことに意義があった。3)社会にとっても, 住民主導の再開発のあり方, その成功の要因が示された点に意義があった。以上から, 上六地区再開発は, 上六地区住民が自らの立場を守る目的で, 自らの手で実施した再開発であり, 地区住民のための都市再開発であったと結論づけられる。