著者
小原 丈明
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.504-520, 2006 (Released:2018-01-06)
参考文献数
42

There are many theories that deal with the processes of urban formation from the viewpoint of land-use and the location of services. Although it is also important to consider the processes from the viewpoint of land rights, not many studies have attempted this until now. Therefore, the purpose of this study is to consider the formation and the change of the area around Osaka Station through the analysis of transfers in land-ownership.The analysis in this study had three phases. First, the author investigated the transfer of land-ownership in the study area from 1945 to 1999. There were 4,063 transfers, of which 2,695 were land trades. Immediately after World War II, many lots were bought by individuals from land-owners who had possessed them before the war. The numbers of lots purchased by individuals decreased as time passed.Many corporations actively bought lots from the late 1960s to the first half of the 1970s and from the mid-1980s to the early-1990s. As these two periods represented booms in land trades, the same phenomena occurred throughout Japan. Moreover, the author believes that urban development around the study area stimulated land trades in the region. As a result, corporations owned 75% of the land in the area by 1999.Second, the author investigated where the buyers were located and their type of business. Many individuals who bought lots immediately after World War II lived in the same neighborhood. However, many of the real estate companies that bought a large number of lots in the late-1960s were companies that were located in Tokyo. In the late-1980s, real estate companies bought lots again, but this time many were located in Chou Ward, Osaka City. After the bubble economy burst, Tokyo companies again increased their ownership of land.Third, the author considered the acquisition processes of lots by Hankyu Corporation and Hankyu Realty Co., Ltd (real estate division of the Hankyu Corporation Group). These companies obtained many lots after World War II. Hankyu Corporation owns more than 10% of the land in the area. The lots that these companies own are unevenly distributed within the area. They commonly own many lots in Chayamachi. They have acquired these lots in order to enforce urban redevelopments. In particular, Hankyu Corporation has acquired the lots strategically, by entrusting other companies with their purchase.The significance of this study is to clarify the changes in land-ownership, which happened before land-use changes. After World War II, the structure of land-ownership in the study area changed from individual-based to one based on corporations. This change is highly likely to influence the development of the area as a business and commercial district. Judging from the number of land trades, the author suggests that the late-1960s were the turning point in that change, and supposes that the corporations that bought lots at that time developed the area.
著者
小原 丈明
出版者
日本都市地理学会
雑誌
都市地理学 (ISSN:18809499)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.162-172, 2019-03-15 (Released:2020-04-22)
参考文献数
7
著者
小原 丈明 天野 太郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.107, 2007

<BR>I はじめに<BR>1.背景と目的<BR> 1990年代以降,社会経済情勢の変化(バブル経済の崩壊,少子化)や法制度の改正(「工業(場)等制限法」の改正・廃止等の規制緩和)など大学を取り巻く環境は著しく変わってきた。そのような環境の変化は,大学院重点化や国公立大学の法人化,専門職大学院の設置,大学の統合といった大学の再編をもたらしつつある。そこで本研究では,大学再編に伴う変化を主として空間的な側面から分析・考察することを目的とする。今回の発表では,その予備的考察として,大学に関する基礎的なデータの分析や,大学の立地の変化についての分析を中心に行う。<BR> 大学立地に関しては,これまでに教育学(教育政策学,教育社会学)を中心に地理学や都市計画学等の分野で研究が行われてきた。既往研究の内容は,(1)法制度の影響,(2)立地のシミュレーション,(3)大学設立・移転のプロセス,(4)地域社会への影響に大別できる。立地自体を扱うのは(1)~(3)の研究であるが,それらの多くは1990年頃までを分析の対象としている(例えば,矢野・小林(1989)など『大学研究』第4号所収の諸論文)。それ以降について体系的に扱っているのは羽田(2002)などわずかであり,近年の大学再編が空間的に明らかにされているとはいいがたい。<BR>2.研究の対象と方法<BR> 分析の資料として,各年度版の『全国大学一覧』(財団法人文教協会)および『全国短期大学・高等専門学校一覧』(同協会),文部科学省のHP,各大学のHPを使用した。それら資料(主として『全国大学一覧』)から,大学ごとの学部数や学生数,キャンパスの所在地,設立年次,設立母体等の項目を抽出してデータベースを作成し,GISを用いて地図化および分析を行った。<BR> 1990年代以降の動向を分析することが中心ではあるが,それ以前の動向と比較して考察する必要から,第2次世界大戦以後を幾つかの期間に区分し,各期間の動向も併せて分析している。<BR> <BR>II 分析および考察<BR> 終戦直後や1960年代後半と並び,1990年代後半から2000年代にかけて大学数が急増している。国立大学は大学間の合併により微減となっているが,公立と私立大学は,短期大学が四年制大学へと改組した分を受けて大幅に増加している。<BR> 専門職大学院の所在地(2006年4月現在144箇所)は首都圏と京阪神圏に多い。特に東京都区部には全体の1/3強が集中し,アクセスの良い場所にサテライト・キャンパスが志向されていることが分かる。<BR> 当日の発表では様々な指標を基に詳細な分析を行う。なお,今回の発表を踏まえ,今後はキャンパス移転の動向や大学間の連携について空間的な分析を行う予定である。<BR><BR>付 記 本研究は平成18年度同志社女子大学学術研究助成金の一部を使用した。<BR><BR>文 献<BR>羽田貴史 2002.縮減期の高等教育政策―大学統合・再編に関する一考察.北海道大学大学院教育学研究科紀要85:99-115.<BR>矢野眞和・小林信一 1989.大学立地の分析―偏在性と階層性.大学研究(筑波大学)4:129-164.
著者
小原 丈明
出版者
地理科学学会
雑誌
地理科学 (ISSN:02864886)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.65-89, 2005-04-28 (Released:2017-04-15)
参考文献数
36
被引用文献数
1

本稿の目的は, 大阪市天王寺区上本町六丁目(上六)地区で行われた再開発の事例から, 都市再開発の社会的意義を考察することにある。上六地区コミュニティは, 太平洋戦争終戦直後に不法占拠という形で形成された闇市に端を発する。上六地区は戦災復興土地区画整理事業の施行区域に指定されたため, 地区住民は行政から立ち退きを迫られていた。そのため, 地区住民は立場の安定の獲得を企図して, 上六地区再開発を実施した。再開発に至る過程, 再開発の実施過程, 再開発実施後に区分し, それぞれの期間における権利関係の動向や地区住民と行政との関係の変化, あるいは地区住民の証言を分析した結果, 以下の都市再開発の社会的意義が明らかとなった。1)地区住民にとっては, 土地の権利を獲得することで立場の安定が得られ, また, 社会や行政に容認される存在となった点に意義があった。2)行政にとっては, 戦災復興区画整理の施行や不法占拠地区の清算という点で, 戦後処理が進展したことに意義があった。3)社会にとっても, 住民主導の再開発のあり方, その成功の要因が示された点に意義があった。以上から, 上六地区再開発は, 上六地区住民が自らの立場を守る目的で, 自らの手で実施した再開発であり, 地区住民のための都市再開発であったと結論づけられる。
著者
野間 晴雄 香川 貴志 土平 博 河角 龍典 小原 丈明
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2011年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.48, 2011 (Released:2012-03-23)

1.目的・視角と本発表の経緯 大学学部専門レベルの地理学研究の知識と技術を網羅した教科書・副読本として1993年刊行の『ジオグラフィック・パル 地理学便利帖』(海青社)1)は,情報アップデート化2)を除いて,2001年に『ジオ・パル21 地理学便利帖』3)以降,大きな改訂をしてこなかった。この間,日本の大学地理学教育をめぐる環境変化,IT技術の急速な変化,高等学校での「地理」の未履修者の増加とその対応,隣接分野への地理学的アプローチの拡がりと地域学・観光などのコース・学科や学部の新設などにより,提供すべき知識・内容を抜本的に改訂・一新する必要が生じてきてきた。 本発表の目的は,2012年春の刊行をめざした全面改訂版である『ジオ・パルNeo 地理学・地域調査便利帖』(仮題)の要諦を,旧版と比較して解説し,現代の大学生が身につけるべき地理学の基礎知識や技術や情報について考察することである。副次的な意図としては,改訂内容への忌憚のない意見・情報を学会参加者から求め,最終稿へ導くことである。 2.大学の地理学教育をめぐる環境変化 この約20年間,アカデミック地理学の動きとしては、環境論が装いを新たにして再浮上してきたこと,計量・モデル志向の方法論の相対的後退,自然地理学の細分化,新しい文化社会地理学・政治地理学の隆盛,場所・地域論の見直し,地理思想の拡がりなどである。技術論としては,GIS,ITの目覚ましい発達,とりわけインターネットを通じた大量かつ広範囲の情報の入手,加工が容易になったことがあげられる。 日本の大学における地理学の立場も大きく変わった。大学「大綱化」による教養課程の廃止と専門科目の低学年次への繰り下げ,大学における組織改組,多様な(一部には意味不明な)専攻・専修・コースの設立や改称,地理学やその隣接分野を学べる専攻の多様化・分散化などがあげられる。高等学校「地理」が必修科目からはずれたことによる学生の基礎知識の低下と格差拡大,ゆとり教育の推進による常識・学力の低下,学生の内向化,フィールドワークや基礎的技術を疎んじるインターネット過信などの状況がある。 3.全面改訂作業の内容 ―旧版との比較を通じて― 旧版『ジオ・パル』の趣旨には,故・浮田典良氏の地理教育・地理学への高い志が凝縮されている。詭弁を排し,徹底して大学生が学ぶべき内容をコンパクトに盛り込む便覧を意図し,2~4年ごとの改訂によって最新情報の提供をめざした。その構成は,地理学史などの本質論から,地理学の諸分野,研究ツール,文献,分析手法,キーワードに及んだ。今回の全面改訂は,旧執筆者の意見を汲み込みながら,現役で学部の実習や演習を担当している若手・中堅4名の十数回にわたる討議・共同作業により,3部構成(イントロ,スタディ,アドバンス)に全体を組み替えた。 「イントロ」は,高校「地理」を履修せずに入学する多様な学生の注意をひき,現在の学生の最大の関心である就職や資格にも配慮した入口~出口解説である。本論が「スタディ」で,さまざまな授業で随時参照でき,かつ4年間あるいは卒業後も使える有用性をめざした。地図の利用と自ら主題図を作成する技術,地域データの入手法,地域調査事例,GISの入門などを充実させるとともに,学生がプレゼンテーションや卒業論文を書く際の注意事項などを追加した。その一方で,地理学史や著名学者,学会など,大学院をめざす人,より高い専門性を追求する学生向きの事項は「アドバンス」にまわした(図1)。 4.今後のよりよき改良と修正に向けて 研究発表時には野間が全体の概要とねらいを,香川が具体的な改訂版の新機軸や内容の一端を紹介する。まだ,全体に盛り込むべき内容が完全には確定していない。情報として盛り込むべき事項(専攻名称や地方学会の雑誌情報)も変化が激しい。会場入口に置いた追加資料に挟み込まれたアンケート(無記名)と情報提供について,ご協力を賜れば幸いである。 注・文献 1)浮田典良編『ジオグラフィック・パル 地理学便利帖』海青社,1993年[白表紙]。2)浮田典良編『ジオグラフィック・パル 地理学便利帖1998-1999年版』海青社,1998年[紫表紙]。3)浮田典良・池田碩・戸所隆・野間晴雄・藤井正『ジオ・パル21 地理学便利帖』海青社,2001年[赤表紙]。