著者
水野 博介
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.167-174, 2014

1 問題意識2 『ガールズ&パンツァー(略称:ガルパン)』聖地巡礼①「聖地」をめぐる概要②まち歩き③「大洗町商工会」へのインタビュー3 『耳をすませば(略称:耳すま)』①「聖地」をめぐる概要②まち歩き③「せいせき観光まちづくり協議会」へのインタビュー4 結語:
著者
辻 絵理子
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.97-103, 2021

ヴァティカン図書館所蔵ギリシア語写本1927番は、ビザンティン世界で制作された挿絵入りの詩篇写本である。全289葉に145もの図像を有する貴重な作例だが、その独特の図像体系には比較対象となる写本が現存しない。そのため1940年代のモノグラフ出版の後は、旧約の王ダヴィデの表現に着目した分析などは見られたものの、写本全体を取り上げて各挿絵と対応する本文を詳細に検討する包括的な研究は為されてこなかった。本稿では同写本のテクストと挿絵を突き合わせ、同じ章句に挿絵を有する他の詩篇写本作例と比較しながら、紙幅の許す限り分析を進めていく。
著者
佐藤 雅浩
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.53-74, 2021

本稿の目的は、「うつ」で通入院経験のある人々を対象とした社会調査によって得られたデータを分析することで、精神疾患に関する医学的知識が、どのような経路を辿って社会に普及し、また人々に受容されているのかについて、その実態を明らかにすることである。佐藤(2019)においては、上記調査における回答者の属性的特徴や通院・治療経験、医療情報の取得経路、診断前後の意識変化などについて、主として計量的な観点から分析を行った。本稿では上記論文の問題意識を引き継ぎつつ、特に「うつ」で通入院経験のある人々が、受診前から接触していた医療情報の取得経路について、より詳細な検討を行う。具体的には、調査対象者らが、自身の「うつ」に気が付くきっかけとなったと考えている各種の情報源について、その概要と媒体の特徴を考察する。この作業により、精神疾患の流行と関連するI. Hacking の言う「ループ効果」について、その過程の一端を経験的な水準から明らかにすることが、本稿の最終的な目標といえる。
著者
権 純哲
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.71-104, 2013

はじめにI 『朝陽報』についてII 『朝陽報』連載「論ニ十世紀之帝国主義」について 1. 翻訳者不明 2. 抄訳かつ未完訳 3. 訳文体裁の刷新 4. 連載中断の理由 (1) 朝陽報社の方針との関係 (2) 幸徳秋水の韓国認識 (3) ビスマークに対する認識 (4)『愛国精神』III 翻訳の特徴 1. 固有名詞の翻訳 2. 誤訳の例 3. 文脈に従う意訳むすび
著者
ロジャー H. ブラウン
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.103-126, 2019

日本政治思想史研究では昭和初期における安岡正篤と内務省のいわゆる「新官僚」との関係が長く重視されてきた。また近年の研究において内務官僚の「牧民官」意識の重要性が認められている。しかし、この官僚の意識と安岡の官治論との関係、そして歴史的意義は明らかにされていない。本稿は、安岡と内務官僚の交流に焦点を当て、当時「東洋的な牧民思想」と呼ばれた安岡の官治論を考察する。この思想は、儒教の徳治主義的観点により政党政治を非難し、日本の国体に相応しい政治とは優れた「官」による国民の教化であるということを唱えたのである。安岡の「東洋思想」におけるこの牧民思想は内務官僚から支持を継続的に受け、戦間期に政党内閣の凋落を促進し、国民精神総動員運動に至った教化総動員運動の一要素になった。したがって、近世の牧民思想に基づいた近代の内務省の「牧民官」意識とそれらを取り入れた安岡の「東洋的な牧民思想」が、近代日本の官僚政治思想の一つの重要な要素であったと言える。
著者
杉浦 晋
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.259-273, 2020

石川淳の短篇「山桜」(一九三六)に死んだ女性の幻影があらわれるのは、「わたし」が「ネルヴァルのマント」を想起したことをきっかけ=入口としている。それはテオフィル・ゴーチェらの回想や、唯物史観に照応したアーサー・シモンズの文学史から石川が受け取った、ジェラール・ド・ネルヴァルの「文学的形象」に基づく。それは自殺、狂気、夢というロマン的なシニフィエをはらみ、象徴主義につらなる一九世紀の文学を表象し、フランス革命後の小市民共和主義者によるロマン主義文学運動を想起させるものであり、長篇「普賢」(一九三六)にも投影され、小林秀雄、坂口安吾なども共有していた。そして、物語の最後で幻影は消滅し、あとに立ちすくむ「わたし」が残される。その姿は、こうした「文学的形象」を克服し、二〇世紀の新しい文学にむかう決意のあらわれとみなされる。石川は、そのためのきっかけ=出口を、まずポール・ヴァレリーに、また近世文学史の見取図をふまえて上田秋成に認めていた。
著者
岡崎 勝世
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.33-49, 2019

「昭和12年要目」の時代(1937、昭和12~1943、昭和18)はまた本格的ファシズムの時代、日中戦争開始からアジア・太平洋戦争前半の時代にあたり、歴史教育も皇国史観とそれに基づく国家主義的な「國民道徳」の注入を目指すものとなった。歴史教科書と授業の内容を細部に至るまで指定し、さらに「五種選定」を強行して教科書の種類数を削減するなど、国家統制が強化された。東洋史の比重が高まりイスラム地域の記述が顧みられたり考古学的記述も現れたが、他方、元寇の記述では「神風」の語が出現し、「倭寇」の語の削除なども行われた。また欧米諸国は学ぶべき対象ではなくなり、西洋史も西欧諸国のアジア侵略の批判を重視し、革命や国民性の批判的記述等を通じて「日本國民ノ自覚ヲ啓培」することのほうに重点が置かれ、その地位が低下して記述の簡略化が行われた。はじめに第一章 三分科制確立期に於ける世界史教育 (1902、明治 35~1931、昭和 6)第一節 明治後期の世界史教育 (1902、明治 35~1911、明治 44)1.教育・研究体制に於ける三分科制の確立2.「中學校教授要目」(明治 35)と教科書3.世界史の試み(1) ―「世界史」の登場 ―第二節 大正デモクラシー期の世界史教育(1911、明治 44~1931、昭和 6)1.「中學校教授要目」 (明治 44)と教科書2.世界史の試み(2) ― 齋藤斐章の場合 ― (以上、第 53 巻 第 2 号)第二章 「ファシズム期」における世界史教育(1931、昭和 6~1945、昭和 20)第一節 昭和初期(戦前期)の世界史教育 ― 昭和 6 年の「中學校教授要目」と教科書 ―(1931、昭和 6~1937、昭和 12) (以上、第 54 巻 第 2 号)第二節 大戦期の世界史教育(1937、昭和 12~1945、昭和 20)1.「中學校教科教授及修練指導要目」(昭和 12)と教科書 (以上、本号)2.国定教科書の時代3.マルクス主義の浸透おわりに
著者
岡崎 勝世
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.1-15, 2019

アジア・太平洋戦争前の日本では世界史教育は主に中学校で行われ、1872 年に始まる「万国史の時代」から 1902 年以後は国史・東洋史・西洋史の三教科からなる「三分科制の時代」に移行し、ファシズム期(1931 ~ 1945)になると、国史は勿論、東洋史、西洋史に対しても皇国史観が支配を確立していった。その出発点となったのが、昭和 6 年に定められた「中学校教授要目」であった。そこでは国民精神の涵養が唱えられ、皇国史観に基づいた日本史が中心のカリキュラムが組まれた。そのなかで東洋史は殆どその独立性を奪われたが、また西洋史も従来になかった規制を受けるようになった。但しこの規制に対して東洋史の教科書はなお伝統的中国王朝史を守ろうとし、また西洋史教科書にも対応にばらつきが見られた。この意味で、ささやかだがなお執筆には自由が残されていた。はじめに第一章 三分科制確立期に於ける世界史教育 (1902、明治 35~1931、昭和 6)第一節 明治後期の世界史教育 (1902、明治 35~1911、明治 44) 1.教育・研究体制に於ける三分科制の確立 2.「中學校教授要目」(明治 35)と教科書 3.世界史の試み(1) ―「世界史」の登場―第二節 大正デモクラシー期の世界史教育 (1911、明治 44~1931、昭和 6) 1.「中學校教授要目」(明治 44)と教科書 2.世界史の試み(2) ―齋藤斐章の場合― (以上、第 35 巻 第 2 号)第二章 「ファシズム期」における世界史教育 (1931、昭和 6~1945、昭和 20)第一節 昭和初期(戦前期)の世界史教育 ―昭和 6 年の「中學校教授要目」と教科書― (1931、昭和 6~1937、昭和 12) (以上、本号)第二節 大戦期の世界史教育 (1937、昭和 12~1945、昭和 20) 1.「中學校教授要目」(昭和 12)と教科書 2.国定教科書の時代 3.マルクス主義の浸透おわりに
著者
岡崎 勝世
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.31-72, 2018

はじめに第一章 三分科制確立期に於ける世界史教育(1902、明治35~1931、昭和6)第一節 明治後期の世界史教育(1902、明治35~1911、明治44)1.教育・研究体制に於ける三分科制の確立2.「中學校教授要目」(明治35)と教科書3.世界史の試み(1)-「世界史」の登場-第二節 大正デモクラシー期の世界史教育(1911、明治44~1931、昭和6)1.「中學校教授要目」(明治44)と教科書2.世界史の試み(2) -齋藤斐章の場合-(以上本号)第二章 「ファシズム期」における世界史教育(1931、昭和6~1945、昭和20)第一節 昭和初期(戦前期)の世界史教育(1931、昭和6~1937、昭和12)1.「中學校教授要目」(昭和6)と教科書第二節 大戦期の世界史教育(1937、昭和12~1945、昭和20)1.「中學校教授要目」(昭和12)と教科書2.国定教科書の時代3.マルクス主義の浸透おわりに
著者
ブラウン ロジャー H.
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.103-126, 2019

日本政治思想史研究では昭和初期における安岡正篤と内務省のいわゆる「新官僚」との関係が長く重視されてきた。また近年の研究において内務官僚の「牧民官」意識の重要性が認められている。しかし、この官僚の意識と安岡の官治論との関係、そして歴史的意義は明らかにされていない。本稿は、安岡と内務官僚の交流に焦点を当て、当時「東洋的な牧民思想」と呼ばれた安岡の官治論を考察する。この思想は、儒教の徳治主義的観点により政党政治を非難し、日本の国体に相応しい政治とは優れた「官」による国民の教化であるということを唱えたのである。安岡の「東洋思想」におけるこの牧民思想は内務官僚から支持を継続的に受け、戦間期に政党内閣の凋落を促進し、国民精神総動員運動に至った教化総動員運動の一要素になった。したがって、近世の牧民思想に基づいた近代の内務省の「牧民官」意識とそれらを取り入れた安岡の「東洋的な牧民思想」が、近代日本の官僚政治思想の一つの重要な要素であったと言える。
著者
川野 靖子
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.37-50, 2020

「塗る」等の動詞は、「壁にペンキを塗る/壁をペンキで塗る」のように、格体制の交替を起こす。従来から指摘されているように、こうした交替動詞は位置変化と状態変化の 2 つの意味を持つと考えられる。しかし一方で、交替動詞が表す位置変化の意味(e.g., 壁にペンキを塗る)と状態変化の意味(e.g., 壁をペンキで塗る)は、「別義」と言うには似すぎていることから、通常の多義語における意味間の関係とは異なる関係にあると考えられる。本稿では、それが具体的にどう異なるのかを考察し、以下のことを指摘した。交替動詞:「~ニ~ヲ塗る」と「~ヲ~デ塗る」は現実世界の同一事態を指示している。両表現の意味の違いは、その同一事態を位置変化として捉えているのか、状態変化として捉えているのか、という点にある。多義語 :多義語の各意味が指示する事態は、関連はするが同一事態ではなく、別の事態である。上記のように多義語との違いを詳らかにすることにより、交替動詞の特徴を明確にした。
著者
岡崎 勝世
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.1-17, 2020

アジア・太平洋戦争開始2 年後の1943(昭和18)年、軍部の教学刷新要求を反映した「中等學校令」と「中學校規程」、「昭和18 年要目」が公布され、「皇國の道」に則った教育、四年制への移行、国定教科書の使用、軍事教練強化等が定められた。欧米諸国のアジア侵略を厳しく批判し、「大東亞史」としての東洋史を軸とする世界史の国定教科書、『中等歴史一』(昭和19)が刊行され、歴史教育も「大東亞戦争」へと生徒を駆り立てるものとなった。だが皇国史観を鼓吹する国史教科書(『中等歴史二、三』)は学徒動員による教育崩壊で殆ど使用されず、続編も未刊行のまま敗戦を迎え、戦時教育体制が瓦解した。
著者
水野 博介
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 = Saitama University Review. Faculty of Liberal Arts (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.159-164, 2014

1 はじめに2 リキッドモダンとは何か? ~近代史の現段階の比喩~ ① 近代の流動性 ② 自由と解放 ③ 個人化 ④ 人間的絆のネットワークの解体3 リキッドモダンにおけるメディアの現状4 リキッドモダンにおける「監視」の概要 ① パノプティコン時代 ② ポスト・パノプティコン時代5 結語
著者
佐藤 雅浩
出版者
埼玉大学教養学部
雑誌
埼玉大学紀要. 教養学部 (ISSN:1349824X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.51-70, 2019

本稿の目的は、「うつ」で通入院経験のある人々を対象とした社会調査の結果を分析することで、精神疾患に関する医学的知識が、どのような経路を辿って人々に受容されているのか、またその結果として、人々の意識や行動にどのような影聾を及ぼす可能性があるのかについて考察することである。これまで「うつ」をはじめとする各種の精神疾患の流行現象については、理論的・実証的な諸研究が蓄積されてきたが、精神疾患に関する大衆的な知識の普及という現象に着目し、当該の過程を精緻に検討した研究は少ない。本研究では、上記の人々を対象としたアンケート調査の結果を分析することで、精神医学的知識の普及過程とその自己への影聾について、社会学的な観点から考察を行った。またこのことにより、精神疾患の流行に関するI.Hackingの「ループ効果」概念の妥当性を、経験的なデータに基づいて検証することを目指した。