著者
松村 茂樹
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.25, pp.33-36, 2015-01-01 (Released:2020-03-14)
参考文献数
4

「文系不要論」が論議されている.どうしてこういった状況に至ったのであろうか.また,この状況を打開するには,どうしたらいいのであろうか.一度,「文」の字義という原点に立ち戻って考えてみたい.「文系」は役に立たないと言われるが,ビジネスの現場でも,就職でも大いに役に立つ.というより,「文系」の学問なきところ,ビジネスも就職も成功しないのである.こういった「文系」のすばらしさをもっと積極的に喧伝すれば,「文系不要論」を克服できるのではないか.
著者
坂本 憲治 本多 千賀子 永山 由貴 木内 理恵 成田 奈緒子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2016, no.26, pp.595-609, 2016

<p>本研究の目的は,専任カウンセラー不在の学生相談機関の問題を明らかにし,今後の研究に示唆を得ることである.X大学保健センター相談室を対象に後向調査を行った.まず,保健センター年報や会議録をもとに年間延べ相談件数,学生の来談率,実質カウンセラー数等の推移を調べた.次に,学生相談機関充実イメージ表(福盛ら,2014)を用いて学生相談機関としての発展レベルの推移を評価した.最後に,学内関係者への面接調査を実施し,各時期の状況を把握した.X大学の学生相談室は開設以後10年間に「充実しつつある段階(充実度3)」まで発展し,相談機関としての要件を整えた(第Ⅰ期).年間相談件数は開設11~25年に「右肩上がり」の傾向を示したが(第Ⅱ期),開設27年,3年の任期付雇用導入を境に「短期増減」に転じた(第Ⅲ期).専任カウンセラーの先行研究では「右肩上がり」の後に学生相談機関の充実がみられたが,X大学では33年間を経てもなお「充実しつつある段階(充実度3)」にとどまった.その背景には,相談室内部における相談運営のありようや,学生相談室と学内他部署との関係性が関与していた.以上から,専任カウンセラー不在の学生相談機関に起こりやすい問題として(1)年間相談件数推移の不安定さ,(2)学生相談機関としての発展の停滞,(3)学生相談機関における密室性の高まりを指摘した.今後は,前向調査によってデータを蓄積し,問題の一般化を図る必要がある.</p>
著者
大喜多 紀明
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.768-773, 2019
被引用文献数
1

<p> ヨハネによる福音書には七つの「しるし」と呼ばれる七つの奇跡物語が配置されている.このことから当該福音書は「しるし福音書」と呼ばれてきた.七つの「しるし」は独立した小さな物語群であり,連続して配置されているわけではない.本稿では,かかる七つの「しるし」の構造的関連性を,裏返し構造の観点から検証した.</p>
著者
小林 洋子 湯淺 洋子 新堀 多賀子 伊藤 由加里 明渡 陽子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.120-124, 2014 (Released:2014-07-25)
参考文献数
5

子宮頸がん発症が20歳代からと低年齢化しており,また乳がんの高い罹患率などから,若い世代から女性特有のがんに関する知識を持ち,健康への意識を高めることは重要である.そこで,本学女子大生で同意の得られた164名に子宮頸がん,乳がんについての知識調査を実施し,知識の普及啓発と自己管理能力の向上を目的とした.子宮頸がん,乳がんの知識調査では,子宮頸がんの知識がある学生は,有意に乳がんの知識もあり,また子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の接種を受けていた.HPVワクチン接種の有無別による子宮頸がんの知識の平均正解数は,ワクチン接種ありの正解数が有意に高かった.全体でHPVワクチンの接種率は25.0%で,接種理由は家族や友人などの勧めが58.5%と最も多かった.子宮頸がん検診の受診率は8.5%と低く,HPVワクチンを接種した学生においても9.8%と同様に低い結果であった.乳がんの知識のある学生は,自己触診法の経験があるものが有意に多かった.また,自己触診法の認知度は高かったが,実際に自己触診法の経験のある学生は全体のわずか14.7%に過ぎなかった.しかし,自己触診法の具体的な方法を知りたいと希望する学生は81.6%と多かったことから,今後乳がん自己触診法の指導と女性のがんについての啓蒙教育を実施していきたい.
著者
大喜多 紀明
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.28, pp.610-618, 2018-01-01 (Released:2019-07-26)
参考文献数
28
被引用文献数
2

前稿では,新約聖書に収納された「ルカによる福音書」にみとめられる裏返し構造を紹介した.本稿では,前稿を踏まえ,「ルカによる福音書」の約三分の一の範囲を占めるルカによる福音書9章51節~19章46節をテキストとし,裏返し構造の特徴を照合することにより得られた知見を資料として紹介する.
著者
真家 和生 鳴瀬 麻子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.97-100, 2013-01-01 (Released:2013-05-17)
被引用文献数
1 1

日本の旧石器時代は極めて特殊な特徴を有している.それは,旧石器が出土する遺跡からは人骨すなわち旧石器時代人が伴出されず,旧石器時代人が発見された遺跡からは石器が出土しない,ということである.これは旧石器使用者がどのような人々であり,現在の日本人につながる人々であるのかどうかという判定ができないということを意味しており,日本の旧石器時代研究の足枷となっている.本報告では,人類学および考古学の最新情報を整理し,現時点でのこれら情報の整理を行った.なお本報告は,平成24年度大妻女子大学人間生活文化研究所共同研究として「東国の旧石器時代文化の再考と復元」の題名で研究費をいただいて行った作業のまとめであり,オリジナル研究ではないことをお断りしておく.
著者
下田 敦子 大澤 清二
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.610-620, 2017

<p>ミャンマー最深部に居住するカヤン人(カレン族のサブグループ,カヤン語を母語とする)女性は頸部に真鍮製のコイル状の重く長大な首輪を生涯に亘って装着し続けるという伝統を今もなお継承している.カヤン人の多くが暮らすミャンマー東部のカヤー州ディモソー地区(T村,S村,R村,P村)においては,全女性人口の10.6%が首輪を装着している(下田,2015).しかしながら,この奇習の理由ははっきりとせず,定説があるわけでもない.一方で,近代化による急激な生活様式の変化により,この習慣は徐々に消失しつつある.「人は何故,苦痛を伴ってでも身体に装飾を施すのか?」「美を装うために人は身体変工をするのか?」本研究では,この地区において「首輪を装着しているカヤン女性」「首輪を装着していないカヤン女性」「カヤン男性」という3群を設定し,首輪装着についての美醜観について聞き取り調査を行い,主成分分析により探索した.その結果,以下のことが明らかになった.<br>1)首輪を装着している女性たちは自分たちの身体変工について非常に肯定的であり,美しいと意識している.<br>2)首輪を装着している女性はモノとしての首輪についての負担感を持っている.</p>
著者
勝部 愛美
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.181-194, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
7

これまで,文構造の記述には,主に語からのアプローチと型からのアプローチが用いられてきた.しかし,これらの方法には問題も見られる.語からのアプローチの記述法は,当該の語がどのような型で用いられるのか,どのような意味で用いられるのかを示す点では優れている.しかし,他のどのような語が同じ型をとるのかはわからない.他方,型からのアプローチの場合,どのような型がどのような語に対応するのかを示す点では,優れている.しかし,その語のグループが,他にどのような型をとることができるのかは示されない.本稿では,このような問題を打破すべく,ハイブリッド文法を提案する.ハイブリッド文法は,語と型からのアプローチの利点を組み合わせた枠組みである.資料はコーパスの資料と母語話者による判定を利用する.コーパスの資料のみを利用する場合,問題がある.コーパスは豊富なデータを供給するという利点を持つ一方,文法的か非文法的かという判定はできない.ハイブリッド文法では,コーパスから抽出したデータを基に,母語話者に判定を依頼し,その結果を資料として利用する.ハイブリッド文法は,コーパスと母語話者による判定の利点を組み合わせている点でもハイブリッドである.本稿では,同じa + 動詞的名詞を従える軽動詞have / takeにハイブリッド文法を適用し,その有用性を例証する.
著者
松村 茂樹
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.603-609, 2017

<p>ボストン美術館東洋美術展示場に掛けられている呉昌碩「与古為徒」扁額は,同美術館中国・日本美術部長であった岡倉天心が呉昌碩に依頼したものと考えられて来たが,実は,天心の友人で,当時上海在住の漢学者・長尾雨山が,隣人関係にあった呉昌碩に揮毫を依頼し,黒漆木額に仕立ててボストンの天心宛に送ったものである.この頃,雨山は,天心より,ボストン美術館鑑査委員を委嘱されており,その就任記念に,この扁額を贈ったと筆者は考えている.天心のボストン美術館における活動は高く評価されているが,その背景に呉昌碩と交流した雨山という中国の正統的学問を受け継ぐ学者の協力があったことは,これまでほとんど指摘されていない.本稿は,これを分析し,近代において画期的成果を収めた日・中・米文化交流の意義を明らかにすることを目的とする.</p>
著者
土肥 麻佐子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.26-32, 2017 (Released:2017-05-12)
参考文献数
9
被引用文献数
5

既製服を簡便にカスタマイズするシステムの開発を目指して,人が着装した衣服をモデル化することを目標とする.第一段階として,人が着装した衣服の身頃部分をモデル化するための方法を検討した.20~35歳の成人女性55名の人体3次元形状データの体幹部上半身を切り出し,身頃部分の凸閉包形状を生成した.次いでランドマークに基づいて相同モデルを生成し,左右対称の身頃モデルに変換した.55体の身頃モデルを主成分分析した結果,「肥り-痩せ」,「身体の厚い-薄い」,「いかり肩で反身傾向-なで肩で屈身傾向」,「乳房の大きさとバストラインからウエストラインにかけての身体の傾斜」,「前肩-後肩」の5つの主成分軸で衣服の身頃部分の形態特徴を説明することができた.いずれも衣服パターン補正のポイントとなる要因である.さらに身頃モデルのメッシュを布目にあわせて修正することにより,人が着装した密着型の衣服の身頃部分をモデル化できることがわかった.
著者
中川 麻子 森田 舞 嶺野 あゆみ 浅田 晴之 前田 明洋 大澤 清二
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.26, pp.535-541, 2016 (Released:2016-11-26)
参考文献数
9

女性の選好からみたオフィス環境およびアメニティ空間における家具に関して,「かわいい」の語をキーワードとし調査研究を行った.326脚の椅子のサンプル写真から,印象・形態・所有意識に関する37項目を設定し女子大学生による評価を行い,結果を統計的手法によって分析した.その結果,評価項目「かわいい」と「座りやすそう」の双方の評価が高い椅子は見ることはできなかった.またサンプル写真の評価を集計し,クラスター分析したところ,6つのクラスターを構成することが明らかとなった.「くつろぎ感」と「ボリューム感」の2軸を用いて,椅子の位置付けをポジショニングマップに示すことができた.
著者
鳴瀬 麻子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.242-245, 2013 (Released:2013-12-16)

本報告は,平成24年度大妻女子大学人間生活文化研究所共同研究「昭和初期の博物館資料を用いた介護予防のための回想法の試み」として,回想法の博物館における取り組みの実態調査を行い,また研修会にも参加し,その理論を学ぶ中で考察した回想法の応用について報告するものであり,現時点では試論の段階であることを付記致します.近年,回想法は高齢者の介護・認知症予防の一環として医療福祉施設で取入れられてきており,博物館においても昭和期に用いられてきた日常生活用品を用いて,この回想法を取入れるところが増えてきている.本研究は,医療福祉施設と博物館における回想法の取組みについて調査を行い,またそれによって得られる情報から更なる回想法の応用の可能性を探ることを目的とした.その結果,回想法を応用することによって,シニア世代と若者世代のコミュニケーションを高めることにより,両世代の文化伝播をより円滑に図れること,またさらに,失われつつある諸民族の文化を伝える方法論についても応用することが期待できると考えられることから,博物館が新たな機能を発揮できる可能性が示唆された.
著者
酒井 朗 上山 敏 永田 晴子 長谷川 秀一 米山 泰夫 伊藤 茂樹 保坂 亨
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.246-257, 2013 (Released:2013-09-19)
参考文献数
3

本学教職総合支援センターでは,本学ならびに首都圏にある他の3つの大学で教職課程を履修する学生を対象に,教職に対する意識と学習への取り組みに関する質問紙調査を2012年秋に実施した.具体的な調査項目は,教職への動機付けの高さ,学習に対する取り組み,教員に期待される資質や能力の修得の度合いの3点についてである.回答した7割の学生は教職に就くことを志望しており,3割は高校生の頃に教職を志望するようになったと回答した.また,大半の学生は専門科目の授業も教職科目の授業も熱心に取り組んでいるが,自ら情報を得たり教育関連の本を読むことは少ない.さらに,学生たちは,同僚教員からの意見やアドバイスに耳を傾ける姿勢や担当教科の内容の修得度などについて,自身の力量を高く評価していることが分かった.