著者
武田 雅子 岡村 眞紀子 岡村 眞紀子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.117-122, 2012-01-31

原著Ryme's Reason [Rhyme's Reason]は、詩、特に英語の詩・韻文の法則、またその特質を、実際に詩を使って分かりやすく説明した書である。「詩」で「詩」を、「韻文」で「韻文」を説明するところが、本著の特色であり、面白くユニークなところである。そこがまた翻訳を困難にしてもいるのであるが。本稿はその冒頭「詩とは何か」から「韻律について」の前半部分の翻訳である。「詩」は、我々の生に不可欠なものとして確と存在するが、その定義は不可能に近い。一方、「韻文」はまず、その韻律から説明が可能になる。英詩はヨーロッパ古典の伝統に則りつつも、言語の特質の違いから、韻律の拠って立つところが、音節の「量」(quantity)から「強さ」(stress)へと大きく変化し、独自性を形成した。その独自性を活かした韻律をiamb(弱強格)、trochee(強弱格)、spondee(強強格)、dactyl(強弱弱格)、anapest(弱弱強格)と分類する。また行における「歩」の数からも説明が可能となり、iambic pentameter(弱強五歩格)といったふうに詩型は定義付けられる。
著者
塚口 眞佐子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.159-173, 2013-01-31

1920-30年代の社会背景からモダンデザイン史を読み解くシリーズの7稿目である。今稿は英国のモダン住宅事情を取り上げる。30年代を迎える頃に、英国では最初のモダン住宅がようやく姿を見せ始める。大陸ヨーロッパとは周回遅れと言ってよいだろう。特に伝統的住宅に強く固執する国民性の中、どのような層が設計者として住まい手として計画に加わったのか。そこにはコスモポリタニズムという共通項が、極めて明白に浮かび上がる。さらに、集合住宅が労働者階級向けと概念されていた大陸と異なり、進歩的知識人の入居を想定して計画された集合住宅が、初期の頃から誕生する特異性がみられる。入居者もまたコスモポリタニズムへの親和性を見せる層であった。前稿で取り上げたナチスを逃れ英国に亡命した左派芸術家やユダヤ人建築家が移り住んだのも、これらの集合住宅であった。今稿では、ハイポイント、ウィロウロードの家、ローンロード・フラッツ、この3件の事例を紹介し、稿を改めて事例を追加し総括を行うこととする。
著者
白川 哲朗
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.43, pp.230-244, 2006-03-08

本稿は、一九三六年(昭和一一)八月から一九三八年(昭和一三)三月までの間、樟蔭学園から発行された広報誌『樟蔭學報』を取り上げ、当時の樟蔭学園の状況について具体的に明らかにしようとしたものである。 まず、『樟蔭學報』創刊号冒頭に載せられた伊賀駒吉郎校長の「発刊の辞」、および『職員會誌』(樟蔭女専教授会議事録)一九三六年七月八日記事から、その発行の目的が、在学生とその保護者のみならず緑蔭会(高女同窓会)・緑翠会(女専同窓会)という二つの同窓会組織をも含み込む形で一体感を醸成し、樟蔭学園を支える集団としての結びつきの強化を目指したものであったことを指摘した。 次に、『樟蔭學報』全十九冊の表紙を一覧した。その中でまず、創刊号表紙のセーラー服と深緑色の袴を着した二人の女生徒の画像に注目し、それが昭和戦前期、とりわけ昭和一桁代の頃の樟蔭生の典型的なイメージを画像化したものであることを指摘した。さらに、第一巻第四号表紙に用いられた運動会の写真に注目し、『樟蔭學報』の運動会記事を検討することで、一九三七年七月の日中戦争勃発を境に、一九三六年度運動会に比べて一九三七年度運動会では極めて戦時色が強まることを明らかにした。 以上のように、『樟蔭學報』を検討することで、昭和戦前・戦中期の樟蔭学園の実態をより生き生きと描き出すことができる。そしてそれによって、当時の学校現場や女子教育の実態を考える上で重要な情報を提供することができるであろう。
著者
徳永 正直
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.9-18, 2005-01-31

Alice Miller hat konsequent eine flammende Anklage gegen die Padagogik erhoben. Wenn die Erziehung die Verletzung der Rechten des Kindes ware, wurde sie die schwarze Padagogik genannt. Das kind hat eigentlich Sehnsuchtiges Verlangen nach der Liebe der Eltern. Sie haben oft mit der Angst des kindes vor Verlust seiner Eltern manipuliert und auf das gute fur sie gunstige Kind aufziehen lassen. Das ist nichts anderes als Verbrechen. Deshalb hat sie vorgeschlagen, die schwarze Padagogik in eine weisse Padagogik umzuwandeln. Hier handelt es sich um den Dialog mit dem Kind. Aber der ist nicht so einfach, nicht nur weil Lehrer oder Erzieher den Schulern Uberlegen sein mussen, sondern auch weil sie von der Seite der Schuler aus nicht verstehen konnen.
著者
堀 裕
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.232-226, 2010-01-29

大阪樟蔭女子大学による奈良市?城寺の調査の一環として、近現代における?城寺の「縁起」に関わる資料を三点取り上げて紹介する。一つは、一八七九年(明治一二)の『寺院明細張』である。もう一つは、一九七四年(昭和四九)に録音されたと考えられる、先々代の住職故下間松甫氏による、?城寺の解説である。三つ目は、一九八八年(昭和六三)に、?城寺が主体となって境内に設置された?城寺解説板である。これら三点の資料それぞれについて、「縁起」を生成していく過程を示すとともに、各時代ごとの特色があることを示した。とくに、明治期の行政と?城寺による「縁起」をめぐるやりとりや、現代には、下間松甫氏や現在の住職によって、文化財への高い関心をもって新たな「縁起」が生成している点について指摘した。
著者
石川 義之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
no.4, pp.105-127, 2005-01

この論文は、A県在住の男女を対象に実施したドメスティック・バイオレンスの調査データを統計的に解析したものである。統計解析は、女性調査と男性調査の2つがある中で、男性調査を中心に行われた。 分析によると、女性のDV被害経験率は男性のそれに比して顕著に高い。また、男性のDV加害経験率は女性のそれよりも高い。以上から、ドメスティック・バイオレンスは、事実上、男性から女性に対して向けられた暴力行為を指す現象であると捉えることができる。ただし、女性のDV被害経験率と男性のDV加害経験率との比較から、男性は自らの行ったDV加害行動の多くをそれとして自覚していないことが知られる。 無自覚的行為を含む男性のDV加害諸行為(DV加害経験)を規定する基礎要因を統計解析によって探った。この点に関して、以下のことが明らかとなった。 1.男性のDV加害経験と男性の現在の年齢 : 比較的に年齢の高い層のほうが低い層よりも男性のDV加害経験率が統計的に有意に高い。 2.男性のDV加害経験と男性の現在の仕事 : 男性の現在の仕事が「家族従業者」である場合男性のDV加害経験率は最も高く、「勤め人」である場合それが最も低い。 3.男性のDV加害経験と男性の現在の雇用形態(「勤め人」の場合): 男性の現在の雇用形態が「パートタイム、アルバイト、嘱託、臨時など」の非正規労働である場合のほうが「正社員、正職員」という正規労働である場合よりも男性のDV加害経験率は高い。 4.男性のDV加害経験と現在の同居家族の状況 : 「3世代以上の家族」に所属する男性においてDV加害経験率が最も高く、「同居家族なし」の単身男性においてそれが最も低かった。 5.男性のDV加害経験と現在の居住地域 : 居住地域による男性のDV加害経験率に統計的な有意差は認められなかった。このことは、DVが都市化現象であるとする見方に対する反証となる。 6.男性のDV加害経験と現在の家族の経済状況 : 「下」の経済階層に帰属する男性のDV加害経験率が最も高く、「上」の経済階層に帰属する男性のそれが最も低かった。 7.男性のDV加害経験と現在の妻(パートナー)の年齢 : 相対的に高年齢層に属する妻(パートナー)を持つ男性のほうが低年齢層に属する妻(パートナー)を持つ男性よりもDV加害経験率が高かった。 8.男性のDV加害経験と妻(パートナー)の現在の仕事 : (1)妻(パートナー)の現在の仕事が「家族従業者」である場合において男性のDV加害経験率が最も高く、「自営業主」である場合にそれが最も低い。(2)妻(パートナー)の現在の仕事が「雇用労働者」である場合と「家事専業」である場合とを比較すると、「雇用労働者」である場合のほうが男性のDV加害化率が高かった。 9.男性のDV加害経験とと妻(パートナー)の現在の雇用形態(「勤め人」の場合): 妻(パートナー)の 現在の雇用形態が「パートタイム、アルバイト、嘱託、臨時など」の非正規労働である場合のほうが「正社員、正職員」という正規労働である場合よりも男性のDV加害化率は高い。 10.男性のDV加害経験と妻及び夫の教育歴(学歴): 男性のDV加害経験率が最も高かったのは教育歴が「妻のほうが夫よりも長い」場合で、次いで「両者の教育歴はほぼ同じくらい」、「夫のほうが妻よりも長い」場合は最も低率となっている。 11.男性のDV加害経験と現在の回答者(夫)の家族の収入や家計の状況 : 夫・妻の「両者の収入はほぼ同じ」場合において男性のDV加害経験率は最も高く、次いで「妻の収入のほうが夫よりも多い」、「夫の収入のほうが妻よりも多い」場合にはそれが最も低くなっている。In this paper we made attempts to analyze statistically the data of domestic violence from the survey which was conducted on the subject of men and women in A prefecture. We conducted two kinds of survey, namely men's survey and women's survey. Our statistical analyses were based mainly on men's survey data. According to our statistical analyses, the victimized experience rate of women is extremely higher than that of men, and the assaulting experience rate of men is far higher than that of women. For this reason, in fact, domestic violence means the violent actions from men against women. However, from comparison of women's victimized experience rate and men's assaulting experience rate, it is obvious that men are not well aware that many of their own behavior are domestic violence. We made the relations between the following pairs of variables clear by chi-square (X2 )tests.1.The relation between men's assaulting experiences and men's present ages. 2.The relation between men's assaulting experiences and men's present works.3.The relation between men's assaulting experiences and men's present employment terms.4.The relation between men's assaulting experiences and the present situations of living together family members.5.The relation between men's assaulting experiences and the present dwelling regions.6.The relation between men's assaulting experiences and the present economic situations of their families.7.The relation between men's assaulting experiences and their wives' (partners') present ages. 8.The relation between men's assaulting experiences and their wives' (partners') present works.9.The relation between men's assaulting experiences and their wives' (partners') present employment terms.10.The relation between men's assaulting experiences and men's and their wives' educational backgrounds.11.The relation between men's assaulting experiences and the present situations of their family finances.
著者
上田 秀樹 木村 雅浩 村上.ゆき
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.43, pp.115-131, 2006-03-08

本学では、平成14年度から管理栄養士養成施設として、厚生労働省から認可を受けて、食物栄養学科では、その教育・養成のカリキュラムに沿った教育を行っている。管理栄養士養成施設は増加することが予想されており、管理栄養士養成施設の外部評価として、国家試験の合格率が重要視されることが考えられる。以上の観点から、食物栄養学科では、国家試験対策に特化した科目を設け、合格率の向上を図っている。このような状況から、管理栄養士国家試験対策の一環として、各学生の学力や理解力に応じた学習システムの構築が必要であると考えられる。本研究では、学内ネットワーク機器を活用した管理栄養士国家試験対策の学習システムを構築することを目的とする。学生の学習を支援するツールとして学内ネットワークを利用したWebシステム構築に関して、データベースの設計とユーザーインターフェースを検討した。国家試験の過去の問題や模擬試験問題をデータベース化することにおいてはほぼその基本形が定まったと考える。また、ユーザーインターフェースや結果出力についても一定の基準に達していると考える。 今後は、1)利用状況によるサーバーのCPUやメモリー等ハードウェアのパフォーマンスの評価 2)ユーザーインターフェースの評価 3)ASPページ内のコードのデバッグ 4)結果出力様式の検討など、小数のモニターからの評価を元に本システムの最適化を図ってゆきたい。
著者
仲谷 兼人
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.57-69, 2006-01-31
被引用文献数
1

絵画表現の本質は2次元の平面上に3次元の空間を再現するところにある。このことと、網膜像に基づいて立体的な空間を認知している我々の視知覚システムの機能との間には強い類似性が指摘できる。本稿では絵画に見られる各種の遠近表現法、特に線遠近法をとりあげ、ルネサンス期以降の西洋絵画と江戸期の浮世絵を比較して論じている。知覚心理学と芸術心理学の立場から、単眼性の「奥行き知覚の手がかり」が芸術表現の意図とどのように調和し、利用されているか、例を示しながら紹介した。 初期の浮世絵の中にはルネサンスの線遠近法の直接的・間接的影響を受け、紙面上に構成された奥行きのイリュージョンを楽しむものがみられた。これを浮絵と呼ぶ。浮絵はくぼみ絵の別称が示すように奥行き感の表現を重視したが、次第に線遠近法の制約、限界を意識し、最盛期には洗練された独自の空間表現が見られるようになった。葛飾北斎は伝統的な日本画の表現と線遠近法に基づいて構成される近代的な風景表現を画面上に描き分け、観察者を窮屈な幾何学的枠組みから解放した。また直線を用いず、多くの同心円で構成された画面から新たな幾何学的遠近法の可能性を示した。安藤広重は伝統的な俯瞰図を遠近法と調和させ、観察者の視線を誘導することによって空間の広がりを表現することに成功した。同時期西洋では印象派がルネサンス以来の空間表現の限界を打破すべく台頭し始めていたが、幕末の開国以降、浮世絵は西欧、とくにフランスでよく知られるようになり、ジャポニズムの流行とともにロートレック、セザンヌ、ドガ、ゴッホをはじめとする後期印象派に強い影響を与えた。
著者
中井 歩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
no.6, pp.191-203, 2007-01

1990年に施行された改訂入管法は,日系南米人,とくに日系ブラジル人を中心とする新しい移 民現象をもたらした。彼らは集住し,エスニック・コミュニティーを構成する。そうした中で,地方 政府はどのような政策対応をするのであろうか。浜松地域における新しい移民現象とそれに起因する 諸問題対する政策対応について,垂直的協業と水平的協業という 2 つの側面から分析する。
著者
中田 節子 中田 一志
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

この研究は、因果関係を表す構文について、日本語と英語のような西欧語との意味論的統語論的類似性と相違性を明らかにすることを目指している。特に、条件文に焦点をおいて研究を行った。なぜなら、条件文は、どの言語においても、その言語の構造的特徴を反映した特異な現象を示すからである。多くの条件文に関する意味論的研究は、西欧語の統語的特性に根ざした研究である。そこでは、realisとirrealisの問の対立が文法の中に表されている。それゆえ、反事実的条件文の扱いが長く議論されてきた。それに対し、日本語には、条件節あるいは帰結節の命題が偽であること、すなわち、反事実性の明示的なマーカーはない。この研究をとおして、われわれは、日本語の条件文のきわめて重要な特性を明らかにした。そのうち、二点をとりあげる。一つめは、日本語では、条件節命題の真偽が定まっている(settled)であることを文法的にマークする。西欧語のように、命題の偽あるいは命題成立に関する高い仮定性を文法的にマークすることはない。二つめは、日本語では、話し手が、条件節命題の真偽を知らないことを文法的にマークする。西欧語のように、条件節命題の偽を話し手が知っていることを文法的にマークするのではない。われわれは、このような日本語条件文の意味論的特性をKratzer流の様相意味論の枠組みで説明することを提案した。残された問題もあるが、目指したことの多くを達成できたと考えている。以下に研究成果の公表のための活動を要約する。1 平成17年に、成果の一部を国際学会等で発表した。特に、有田は、京都大学で開催された国際ウークショップ「Language under Uncertainty : Modals, Evidentials, and Conditionals」で口頭発表を行った。また、平成18年に、ロンドン大学SOASで開催された、国際ワークショップ「Revisiting Japanese Modality」で口頭発表を行った。2 平成18年には、成果の一部が出版された。特に、有田は、様相意味論の枠組みを援用した英語と日本語の条件文の対照的研究が、『条件表現の対照』(益岡隆志編、くろしお出版)の一つの章して公表した。また、有田は、日本語条件文の時制とモダリティに関する研究を単著『日本語条件文と時制節性』として出版した。
著者
モーザー ジェイソン
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.189-201, 2009-01-31

This paper introduces an experimental concept called the production cluster. The production cluster is a unit for measuring language complexity in open-ended pair work tasks. Current task-based studies often rely on units that when applied by the researcher involve breaking down learner production rather than looking at it holistically. The production cluster is a holistic macro-unit comprised of AS-units (Analysis of Speech Unit) that reflects concentrated learner engagement in his/her oral production and learning.
著者
川端 康之
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.77-82, 2005-03-08

基礎科目から専門科目への連続性を確保するため、食物栄養学科1回生春学期必修科目の「化学」と「食品学総論」の授業について、1セメスターを前半・後半に分割し、前半を「化学」後半を「食品学総論」にあて、週2回の授業を試行的に行った。小テスト、期末試験、試験後アンケートの結果から、基礎から専門への連携がとりやすくなる、ゴールデンウィーク前に授業回数を確保できる、学生・教員ともに集中して授業が行えるなどの利点がある一方で、他学科からの履修生を受け入れにくい、再履修生を出したときの対応が難しい、授業の進み方が早く感じられる、などの欠点があることがわかった。新教育課程で学習した学生の入学時には、現在よりも学力格差の拡大が予想されるため、従来からの授業内容である「専門基礎科目としての化学」のほかに、化学を選択してこなかった学生を救済する目的の「高校化学の補習」を新たな科目として設定する必要があると感じた。
著者
西木 忠一 池田 良子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.232-223, 2002-03-06

平安末期または鎌倉初期に,『源氏物語』愛読者により,「夢の浮橋」の巻後日譚として創作されたのが,「山路の露」である。文章は至って流麗。『源氏物語』に精通した読者の筆になる作品であって,近時「世尊寺伊行」の女「建礼門院右京大夫」を,その作者とする説が提出されている。本注釈は流布本(『続群書類従』物語部所収)を底本にし,「補記」の頂にいささか重みを置いた。本稿に収めた各段の梗概は次ぎのごとくである。髪をおろした浮舟を前に,乳母子の右近は胸のうちを涙ながらに語り,いかなる折にも,決して姫君に遅れまいと心にきめていたものをと,尽きることのない深い悲しみに泣きくずれるのであった(二十八 五重)。右近から薫の愛情の深さに聞くにつけ,浮舟は薫・匂宮という二人の男性の間をゆれ動いたわが心のうちを思い見,これも前世からの報いであったのだと,しみじみ悟るのである(二十九 人目)。いよいよ下山するに至って,浮舟の母は娘を都に連れて帰ろうと言う。だが,浮舟は今更の思いがして帰京の話にのって来ない(三十 客人)。
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

漢字二字熟語の認知過程に,その類似語(当該単語と一文字だけが異なる単語)が影響を及ぼすことが示されているが,漢字二字熟語においては,その類似語との間に形態的類似のみならず,意味的類似をも想定することができる.漢字二字熟語の類似語間の意味類似性の高低が,漢字二字熟語の類似語間で認められる促進的効果に影響を及ぼすか否かを検討するためには,当該漢字二字熟語の類似語間での意味類似性に関するデータベースが必須となる.本研究では,こうした類似語を対にして被験者に呈示し,その意味類似性に関して被験者の主観的評定を求めることにより,類似語間の意味類似性データベースを作成した.天野・近藤(2000)のデータベースから,JIS一種に含まれる2,965字のうちの二文字によって構成され,かつ普通名詞であると見なされている漢字二字熟語を頻度順に上位1,000番まで抽出し,これを基本語彙と見なした.これらを,まず前漢字を共有する熟語群に分類した.こうした熟語群は前漢字を共有する類似語群ということになる.同様の処理を後漢字の共有に注目しても行った.これらの熟語群内で,熟語二個のすべての組合せ(熟語対)が作成され,その結果2,530組の熟語対が作成された.これらを23種類のリストに分割し,質問紙調査の形式で類似性についての主観的評価を求めた.被験者として大学生1,133名(男子387名,女子745名,不明1名)が調査に参加した.被験者の平均年齢は19.5歳(SD=2.4)であった.各漢字二字熟語について,その類似語間での平均意味類似性評定値が算出された.この結果は報告書としてまとめ,また第3回日本認知心理学会において発表した.今後こうしたneighbor間の意味的類似性が,実際に当該漢字二字熟語の処理過程に影響を及ぼしているのかどうかを,実験的に検討することが望まれる.
著者
高瀬 英彦
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.143-150, 2002-03-06

学習とは「暗記」だと思っている学生が増えた。学習とは「工夫することを学ぶ」と気付いていないし,教員もそのことを指摘することがないようだ。フランス語を学ぶにあたって難しいとなげく前に,ノートの取り方,まとめ方を工夫しろと言いたい。フランス語はその形式・メカニスムに気付けば日本人には英語よりも学なびやすく,発音しやすい言語といっていい。「暗記」より「単純な基準」の理解とそれの「応用」,つまり「工夫することを学ぶ」ところにフランス語学習の醍醐味があることに焦点をあわせたメモ。1)教科書の問題点2)英語が唯一の外国語であるとの思い込み3)発音が難しいとの思い込み4)音節表の大切さ・見直しの提案5)アクセント6)名詞のジェンダー7)名詞の先行要素8)動詞の法と時制
著者
ジェイソン モーザー
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.191-201, 2010-01-29

In this paper I will discuss learner language complexity in oral tasks and how it has been conceptualized in task-based learning research. One of the key tools for measuring complexity in spoken discourse is the AS-unit (Analysis of Speech Unit). The AS-unit is a main clause and any attached subordinate clauses or sub-clausal units. I will first discuss the problems involved in codifying AS-units in data from communicative pair work tasks. I will demonstrate that subordination is not necessarily characteristic of communicative tasks, nor is it easy to identify in conversation, especially with beginner learners. In response I will argue that measuring learner productivity by words per AS-unit is an effective alternative. I will also demonstrate an AS-unit complexity benchmark based on AS-unit word count, in which units above a certain word count are deemed complex. The rationale for this benchmark will be discussed, and supported with examples from four beginner learners' data.
著者
佐橋 由美
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
no.9, pp.35-54, 2010-01

本研究の目的は,2006〜07年に開発に取り組んだレジャー志向性尺度(試作版,2006;改定版,2007)の安定性,実際場面での使用を想定した使い勝手のよさや現象解析力などの有効性について検討することであった。これまで学生を対象として,尺度の有効性を評価する作業を進めてきたが,本研究では,学生も含め20歳以上,70歳代までの幅広い年齢層の成人女性にまで対象を拡大して調査を実施し(N=228),志向性尺度の因子構造の安定性やレジャー現象を的確に解明しうる分析枠組みとしての効能(判別力)等,有効性の問題について検討した。さらに今回,志向性尺度を"旅行"という新たなレジャー文脈のニーズ把握や行動予測に応用することにより,尺度の新たな意義を探る試みも行った。32の志向性項目を因子分析した結果,先行研究と同じく(1)長期的展望・向上(2)活動性(3)主導性(4)対人関係志向(5)利他主義(6)自然志向の6つの因子が抽出され,下位尺度の内的一貫性も充分に高かった(α=.839〜.706)。続いて,下位尺度ごとの因子得点に基づいてクラスター分析を実施,全体をレジャー志向性に関して様々な特徴をもついくつかのグループに分類した後,グループ間でレジャー参加度,レジャー満足度,内発的動機づけ,好みの旅行スタイル,旅行に求める要素,旅行経験,全般的wellbeing指標等を比較していった。レジャー生活の充実度,生活全体の充実度,旅行等,どの生活局面に関する比較結果にも,最も積極的・活動的な行動傾向を示す「最適型」から→「高活動-対人関係志向型」→「自己啓発型」「低活動-対人関係依存型」→最後に最も消極的・非活動的な姿勢が特徴の「消極型」という順序で,得点・水準が低下していくパターンが認められた。一連の統計分析の結果は,レジャー志向性の考え方が個人のレジャー生活や,ひいては生活全般の充実の程度を予測するのに有効であることを示しており,これを定量化する志向性尺度は,レジャー教育や支援等の実践場面において,効果的に個人のレジャー生活の現状を評価するツールとしての可能性をもつことが示された。
著者
野中 亮
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.161-175, 2003-01-31

本稿の目的は、エミール・デュルケームの社会学を、方法論を中心に再検討することである。 『社会分業論』『社会学的方法の基準』において呈示された方法論は、素朴な実証主義に基づいたものであり、『自殺論』やそれに続く『宗教生活の原初形態』において大きく改変されていった。その課程で、方法論としての象徴主義は理論へと変化していったのである。 『宗教生活の原初形態』で展開された方法論は、象徴論と儀礼論とを包含するものであった。本稿では、この方法論を、信念体系にかかわる象徴論と、行為にかかわる儀礼論とを接合したものととらえ、 『社会分業論』から『宗教生活の原初形態』にいたるデュルケームの理論体系の一貫性・整合性を強調した。 この作業によって、これまで懸案とされてきた集合的沸騰論をよりクリアなものにすることができ、これまで汲み尽くされてはいなかったデュルケーム理論の含意をより明確にすることができたのである。
著者
野中 亮
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.195-209, 2002-03-01

This paper is an attempt to reinterpret Emile Durkheim's Les formes elementaires de la vie religieuse. In this text, we can see a remarkable imbalance between theoretical significance of 'le sacre' and 'le profane'. This imbalance, however, is the solvable subject. First of all we investigate the cause of this imbalance by reinterpreting De la division du travail sociale, Les regles de la methode sociologique, Le suicide. In this work, we find a keystone for a solution of this imbalance, 'morphologie sociale'. These arguments which based on positivism were regarded as 'semi-behaviorist objectivism' or 'sociologistic positivism' by Talcott Parsons. Secondly 'morphologie sociale' varied with the time, but Durkheim's motif-Idealistic Social integration-did not change. Thirdly it was natural that the framework of the Durkheim's social theory was reconstructed in Les formes elementaires, Durkheim emphasized the importance of 'rite' and 'symbolism'. Imbalance between theoretical significance of 'le sacre' and 'le profane' represented Durkheim's dilemma that he had to give up his positivism or his idealism.