著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.3-14, 2014-01-31

心理学は領域の広い学問である。そして、心理学という学問内での領域が細分化されているため、"心理学"という1つの学問体系としての基礎知識がどの範囲のものを指すのかは、極めて曖昧であると言える。心理学教育においては、こうした心理学領域での、特に初学者に対しての教育の"エッセンス"を用語の形で明らかにすることが必要である。本研究では、心理学テキストの索引をテキストデータとして扱い、そのデータベース化を行う。今回のデータでは2006年から2010年に刊行された35冊の心理学テキストを参照したパイロット・スタディの結果を報告した。
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.67-82, 2008-01-31
被引用文献数
3

近年,携帯電話上でのメール(携帯メール)によるコミュニケーションが一般化するに伴い,メール上での感情表現のための顔文字の使用もまた一般化している。本研究では顔文字自体が表す感情,強調を調べることにより顔文字のデータベースを作成することを目的とする。顔文字が有する文脈依存性を鑑み,"どの感情を表しているか"という観点ではなく,"それぞれの感情をどの程度表しているか"という観点から,顔文字が表す感情についてのデータベースを作成した。またこれに加えて,当該顔文字が"どの程度文章を強調するか"という強調度についてもデータベース化した。 調査対象として31個の顔文字が選択された。調査参加者には,喜び・哀しさ・怒り・楽しさ・焦り・驚きのそれぞれの感情ごとに1(全く表れていない)から5(とてもよく表れている)までの5段階で,強調度については1(全く強調されない)から5(とても強調される)までの5段階で各顔文字に対する評定を行うことが求められた。これらの結果は図1および図2に示されている。本調査の結果は,顔文字を対象とした心理学的調査を行う際の顔文字が表す感情に関する評価を提供する基準となる。
著者
坂田 浩之 佐久田祐子 奥田 亮 川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.29-37, 2013-01-31

大学生活が十分に機能するためには、大学生自身が大学生活に主体的にコミットし、充実感を感じることが重要であり、大学教育を向上させるためには、大学生活充実度を適切に測定し、大学生活充実度を規定する要因を明らかにすることが必要である。そこで本研究では、先行研究(奥田・川上・坂田・佐久田,2010a)の知見を踏まえて、1回生〜4回生を対象に大学生活充実度尺度、その修正版、および大学生活充実度尺度短縮版(SoULS-21)を実施し、大学生活充実度が学年進行に伴いどのように推移するのかについて、4年度分の1〜4回生の縦断データから分析を行なった。その結果、4回生時に充実度全般が最も高まることが明らかになり、奥田他(2010a)の知見の妥当性が支持された。また、学業に対する満足感については、コホートによって学年変化が異なることが明らかにされ、カリキュラムやプログラム、学科編成、あるいはコホートの特性によって影響される可能性が示唆された。
著者
高橋 晴子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.173-189, 2007-03-20

本稿は、現在、作成しようとしている身装電子年表に関する論文の最終稿である。本年表は、近代の日本を対象とした画像を含む電子年表であり、最終的にはWeb上での公開を目的としている。この年表の特色のひとつは、記載事項の選択基準をはっきりと謳っていることである。その選択基準とは、1)同時代の身装イメージの忠実な再現に役立つような内容(おもに画像によって示される)、2)80年間の身装の変容のステップを具体的に示すような内容、ということである。 本稿の目的は、上記の選択基準を前提として、同時代資料より年表記載事項を選択していくために必要な<重要テーマ>について論議し、<重要テーマ>を確定することである。最終的に33の重要テーマを抽出したが、その抽出方法は、身装をなり立たせている主たる要因を物的要因と社会的要因にわけて列挙し、それぞれの内容を時系列に添って分析するという方法を用いた。抽出した33の重要テーマは「身装の社会的評価」、「衣服改良・改良服」、「衛生、健康観」、「身体観」、「着装」、「衣服の構造、制作技術」、「素材」、「子供服、通学(服)」、「(和洋)アンダーウェア」、「フォーマルウェア」、「女性の和装一般」、「男性の和装一般」、「学生、女学生」、「装飾一般」、「副装品一般」、「男女の髪型一般」、「束髪」、「化粧一般」、「美容業、美容師」、「道路、街」、「照明」などである。
著者
奥田 亮 川上 正浩 坂田 浩之 佐久田 裕子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-14, 2010-01-31

大学生活にさまざまな意義を認めるためには,大学に適応し充実感を感じることが重要であると考えられる。そこで本研究では,先行研究を踏まえて,1回生から4回生までを対象に大学生活充実度尺度を実施し,その因子構造について検討した上で,大学生活充実度が学年ごとにどのように異なるのかについて,縦断,横断を含めた複数の観点から分析を行った。まず大学生活充実度尺度については,因子分析によって"フィット感","交友満足","学業満足","不安"の4 因子が抽出された。そして複数年度の1〜4回生の横断および縦断データから,4回生時に充実度全般が最も高まることが明らかになった。一方,1〜2回生にかけては充実度にほとんど変化が見られず,2〜3回生にかけては部分的に充実度が高まるという結果と,ほとんど変わらないという結果の,相違する二つの結果が得られた。今後はさらにデータを集積し,上記の結果を再検討することや,大学生活充実度に学年差をもたらす要因を詳しく検討していくことが課題とされた。
著者
村井 尚子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.73-83, 2012-01

ユトレヒト学派の現象学研究の流れを継承するオランダの教育学者トン・ベークマンは、天賦の才を備えた学者にのみ可能であった現象学の方法を教育学を学ぶ学生にも可能にするために、「現象学の民主化」という試みを行っていた。本稿では、「現象学の遂行」と名づけられたユトレヒト大学での授業において彼とその共同研究者らが実施していた現象学的な記述の分析の手順について、論文「現象学的記述の分析」を参照しながら考察する。また、その手順に従って筆者のゼミで実施した「暗闇の中での恐怖」に関する状況分析について報告を行う。彼の提起した現象学的記述の方法は、哲学的な厳密性に関しては議論の余地があるものの、教師を目指す学生や教育を研究するものが子どもを理解し行為を方向づけるための重要な方策となるものと考える。
著者
Hollander John 武田 雅子 岡村 眞紀子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.119-125, 2013-01

原著Rhyme's Reasonは、詩、特に英語の詩・韻文の法則、またその特質を、実際に詩を使って分かりやすく説明した書である。「詩」で「詩」を、「韻文」で「韻文」を説明するところが、本書の特色であり、面白くユニークなところである。そこがまた翻訳を困難にもしているのであるが。本稿は、「John Hollander 著Rhyme's Reason 翻訳〔1〕」(『大阪樟蔭女子大学研究紀要』第2巻)および「John Hollander 著Rhyme's Reason 翻訳〔2〕」(『大阪樟蔭女子大学 英語と文化』第2号)に続くものである。連による分類の続きとして、tercet(三行連)、quatrain(四行連)[その中に含まれるballad stanza(バラッド連)、commonmeasure(普通律)、long measure(讃美歌調)]、ottava rima(八行連詩)、sapphics(サッフォー連)、rhyme royal(帝王韻)、Spenserianstanza(スペンサー連)、terza rima(三行連詩)の定義付けのあと、sonnet(ソネット)の定義に入る。これは、韻の踏み方により、大きくイギリス形式とイタリア形式に分かれるが、他にtailed sonnet(有尾ソネット)などの変形があげられ、最後に音節で数えられるソネットで終わる。
著者
林 彦一
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.40, pp.165-174, 2003-03-06

テロと長引く不景気で、疲れもでてきたのか、「ゆとり」とか「無用」とかいった「悟り」めいた言葉が持て囃されているようである。(心)まずしい私にはそういう贅沢は許されず、昔ながらに、「本気」・「真剣勝負」で孤剣を引っさげて生き続けている。従って常に生死の世界を彷徨っているためか、「おんな・こども」という存在が限りなく尊く且ついとおしく思えるのだ。戦いのあとの平和、砂漠のオアシスのようなもの、と言ってもいいだろうか。 こういう私に、真剣に応えてくれる小説、いや口幅ったいが「私」を映し出したような小説が『風と共に去りぬ』であった。私の与えたタイトルは「読解」であるが、実はわたし自身をこの小説に読み取っているのである。 Gone with the Wind、まるで唸る(Wの音)のような風の吹くなか、弔鐘とも除夜の鐘とも紛う響き(ゴーン)、大衆の一員でもある私には、「大衆小説」という蔑称も気に入っている。
著者
阿部 直美
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
no.5, pp.89-94, 2006-01

子ども達が主体性を失いつつあるといわれる昨今、日々の保育の中での保育者の言葉がけひとつひとつが大きな役割を担っていると考えられる。本論文では様々な場面での保育者の言葉がけを四段階に仮定した。事例を挙げ、具体的な言葉を取り上げながら、各段階における保育者の言葉がけによって変化する「保育者の思い」と「子どもの思い」を比較検討した。結果、子どもの主体性を育むための保育者の言葉がけのあり方について一考察を得た。
著者
小西 端恵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
no.42, pp.49-64, 2005-03

最近の武士論では、代表的な論者の高橋昌明にみるように、武士は芸能人だったという見解にもとづく「職能的武士論」が中心となっている。従来から、武士論には、「職能的武士論」と「在地領主的武士論」があり、武士(武士身分)の成立について考える場合、前者が中心にならざるをえなかったが、高橋説は武士とはなによりも、「武」という芸(技術)によって他と区別された社会的存在であったと定義しているだけではなく、「在地領主的武士論」を武士論ではないとして全否定する内容であるところに問題があると考える。 10世紀の渡辺綱に系譜を引く摂津渡辺党二家(渡辺氏・遠藤氏)は、御厨経営・牧との関係・摂津渡辺津を本貫とする水軍・荘園の荘官、といった四つの特徴が三浦圭一によって指摘されていたが、河音能平の見解によりつつ、海陸にわたる能動的な武士団としての活躍を詳しく分析した。次に、渡辺党と比較されることが多い山城宇治の槙島惣官家を取り上げ、宇治網代・鵜飼等の漁業や交通・流通といった社会的分業を通じて王権や権門に奉仕しつつ、舞楽を家業とする芸能の専門家で、高句麗系の渡来人狛氏に系譜を引くことを明らかにした。狛氏は興福寺領狛野荘を本拠とし、戦国時代には、室町幕府管領家の被官・国人としての武士団を構成するが、南山城3郡における山城国一揆では、国人36人衆として主体となったことを実証した。このような中世武士の多面性を視野に、中世全般を通じた武士論を構築することが、これからの課題になると考える。
著者
山崎 晃男
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.73-81, 2013-01-31

音楽と絵画が同時に提示された時の音楽と絵画の相互作用について検討した。実験1では、25名の参加者が15種類ずつの音楽刺激と絵画刺激に対する印象評定をおこない、できるだけ印象がばらけるとともに音楽と絵画の印象の強さが揃うようにという基準で、実験者が5種類ずつの音楽刺激と絵画刺激を選択した。実験2では、それらを組み合わせて提示し、実験1に参加した23名の参加者が各刺激の印象評定をおこなった。実験の結果、明暗の印象に関して、音楽と絵画の印象が大きく異なっているときに、音楽の印象に近づく方向に絵画の印象が変化していることが示された。音楽が絵画の印象に与える影響の大きさと絵画が音楽の印象に与える影響の大きさを分散分析によって比較した結果、明暗の印象に関しては音楽の影響の方が絵画の影響よりも有意に大きく、迫力の印象に関しては音楽の影響の方が絵画の影響よりも大きい傾向が見出された。
著者
中 周子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-12, 2013-01-31

田辺聖子が樟蔭女子専門学校時代に書いた「十七のころ」の自筆原稿が発見され全文が公開された。従来、自伝小説『しんこ細工の猿や雉』の中に紹介されて題名だけは知られていたが、所在も全文も不明であった作品である。本論文は「十七のころ」の本文を分析し、後の田辺文学に通じる手法や主題が見いだせることを指摘した。すなわち、田辺聖子の得意とするユーモアに満ちた軽妙洒脱な文体、大阪弁を駆使した巧みな会話による人物形象、田辺聖子が一貫して書き続けた戦後の女性の生き方という主題である。さらに、十七歳で終戦を迎えた体験から、十七歳が田辺聖子にとって特別な意味を持つこと、自伝小説『欲しがりません勝つまでは』の中に描かれた、自らの意思によって真の人生を歩み始める十七歳の少女の原型が、「十七のころ」の主人公であることを指摘した。「十七のころ」は田辺文学の原点と位置づけられる作品であることを論じた。