著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.47-53, 2013-01-31

言語の認知過程研究においては、視覚呈示された単語のみならず、それと正書法的に類似した単語である類似語(Coltheart, Davelaar, Jonasson, and Besner, 1977)も同時に活性化することが示唆されている。この問題の検討に際しては実験者は何らかの語彙基準を参照し、類似語数を操作することになる。しかし、こうした操作そのものの妥当性を受け入れる前に、辞書などの外在基準に基づく類似語数が実験参加者の心的辞書における類似語数と対応していることを確認しておく必要がある。本研究では、川上(1997)が報告している資料に基づく漢字二字熟語の類似語数と、漢字一文字を手がかりとして、実験参加者が産出可能な漢字二字熟語の数とが対応しているのか否かが吟味された。229名の実験参加者を対象とした実験の結果、川上(1997)に基づく類似語数と実験参加者が産出した漢字二字熟語の数との間に対応が認められた。この対応は、川上(1997)が参照した辞書である岩波広辞苑第四版と実験参加者が有する心的辞書との間に対応があることを示していると解釈された。
著者
川上 正浩 小野 菜摘 佐々木 美香 西尾 麻佑
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.95-103, 2012-01-31

本研究では、読み(音韻)から漢字(形態)への対応について、人間の反応に基づいたデータベースを構築することを目的とした。具体的には、仮名一文字で表記される特定の音韻(読み)から想起される漢字のバリエーションについて明らかにすることを目指した。実験参加者169 名を4 つの群に振り分け、それぞれの群に、仮名一文字で表される15 個の音韻を呈示した。30 秒の制限時間内に当該音韻から想起される漢字一文字のデータベースを作成した。集計の結果、本研究で対象とした仮名一文字のうち、もっとも多くの漢字が想起されたのは「か」(4.98)であり、もっとも少ない漢字が想起されたのは「ぬ」(0.80)であった。これは各実験参加者の想起漢字数であるが、想起された漢字のバリエーションについては、「か」(46)がもっとも多く、「せ」(3)がもっとも少なかった。
著者
小西 瑞恵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.55-68, 2002-03-06

大山崎は,戦前から中世の油商人である八幡宮大山崎神人の根拠地として知られ,「離宮八幡宮文書」を中心に商業史研究が積み重ねられてきた。戦前・戦後にかけて,原田伴彦が大山崎を中世都市として論じているが,離宮八幡宮の門前町と分類していた。大山崎を都市とする研究が本格的に始まったのは,『島本町史』と『大山崎町史』の編纂を通じて史料調査が行われ,新出の史料が見出だされたことにより,大山崎の内部構造を明らかにすることが可能になってからである。このような研究としては,小西瑞恵・脇田晴子・今井修平・仁木宏・福島克彦のものがあるが,どのような都市として大山崎を規定するかについて,まだ統一的な見解が成立しているとはいえない。都市のタイプを規定するために,これまでの諸研究を検討して問題点を提起し,港湾都市としての大山崎の実態を明らかにすることを試みた。また自治都市大山崎が京都や淀をはじめ,西日本各地と密接な連関性をもっていたことを再検討し,商業・流通の拠点としての実像を明らかにした。中世都市大山崎の近世都市への変化については,秀吉の城下町化が画期であると結論し,近世都市としての大山崎については,惣中の構成者が離宮八幡宮の社家として中世以来の階層構成を維持し,江戸幕府による保護を背景に,離宮八幡宮の神領として変容していく限界性について論じている。
著者
野中 亮
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.155-177, 2007-01-31

本稿の目的は,堺市鳳地区のだんじり祭りに関するデータベースを作成し,今後の同地域・祭礼研究の礎とすることである。祭礼を通じた地域構造の解明を課題として研究に着手したが,初年度の調査でこの地域と祭に関する先行研究が皆無であるばかりか,基本的なドキュメントデータすらもほとんど存在しないことが判明した。したがって,今後研究を進めて行くための基点の作成を目的に,聞き取りと観察を中心に同祭礼・地区の概要をまとめたのが本稿である。 祭礼の詳細や運営,地区の特性などを項目ごとに整理したが,紙数の問題もあり,インデックスを網羅的にすることを重視して各項目の記述は最低限のものにおさえてある。また,最後に現段階での研究の方針をまとめている。岸和田だんじり祭りの影響を受けて変化しつつある祭礼と,いまだ未分化な状態にある祭礼組織と自治会組織の問題の2点が今後の研究課題となるだろう。
著者
山本 一成
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.43-50, 2015-01-31

本論文は、保育者と子どもが経験世界を共有することが可能であるかという問いについて、自然実在論に基づく哲学から応えていこうとするものである。実在論の哲学と実践との関係は、知覚の問題に焦点を当てることで結ばれることとなる。本論では、ギブソンのアフォーダンス理論を自然実在論的に解釈することで、私たちが「そこにあるもの」に直接知覚するリアリティが、協働的に確証されるプロセスにあることについて論じる。私たちは「そこにあるもの」の実在を共有しつつ、異なる仕方でそれを経験している。共通の実在を手掛かりに異なる経験世界を共有していくことで、お互いの理解と変容が生じることとなる。以上の議論から、環境の意味と価値は共有可能である一方、多様で汲みつくせないことが導かれる。結論として、保育者は、子どもがそれぞれの仕方で知覚するアフォーダンスに注意を向けることによって、子どもの経験世界を探求することが可能になることについて論じる。
著者
小西 瑞恵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.233-246, 2008-01-31

国際港湾都市として知られる長崎は、1580年(天正8)から1587年(天正15)まで、イエズス会が支配する教会領の自治都市であった。この自治都市長崎の歴史については、1970年代に始まる安野眞幸氏の詳細な研究があるが、都市史研究者でさえ、それを熟知しているとはいえない。また、その歴史的位置についても、都市史の上で共通の理解が成立しているとはいえない。その理由は、最近の都市論がヨーロッパの自治都市と日本の自治都市との比較研究を軽視する傾向があるためである。しかし、私は16世紀から17世紀にいたる日本の歴史を考える上で、教会領長崎の検討が重要であると考える。15世紀から17世紀半ばにいたる大航海時代についても、従来のようなヨーロッパ中心の史観ではなく、アジアを主体として考えるという新しい研究動向をうけて、あらためて自治都市長崎を検討することが必要になっている。ここで安野氏の研究を中心に研究史をふりかえり、自治都市長崎の歴史と歴史的位置を検討した。その結果、自治都市長崎が安野氏や網野善彦氏が述べているように、同時代の堺や伊勢大湊と同じ公界である事実を確認し、詳細な比較検討が可能であることを例証した。たとえば、自治都市長崎の自治組織は10人前後の頭人たちが構成する「頭人中」「惣中」であったが、これは堺の会合衆が10人であったことと一致する。また、港湾の管理運営についても、長崎では大湊と同様、公界によって行われていたと推測した。このような比較検討を、さらに進める必要がある。教会領長崎の信仰・宗教の中心は、氏神神宮寺のイエズス会による破壊によってキリスト教(教会)になるが、権力による破壊と弾圧を経て、江戸時代には氏神としての諏訪神社の再建と回帰(長崎おくんち)にいたることも述べた。
著者
上野 矗
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.25-33, 2006-01-31

経験的現象学的方法から涙に関するこれまでの研究を通じて、勘が質的な意味分析法に基礎的かつ重要な認識方法として注目されてきた。勘は、人間科学の方法として直感的方法のひとつとして位置づけられるからである。黒田亮によれば、勘は覚=Comprehensionを、竹内によれば、第六感を意味する。勘は、黒田亮の心的立体感(psychical stereoscopy)、また黒田正典の人のゲシュタルト化された経験の総体の重心にある。筆者は、これを相反し合う経験の統合点にみる。いずれにもせよ、勘は、二分思考法にではなく、統合的思考法に依拠している。こうした意味及び実践の実際からも、勘は、臨床心理学の方法論上有意義で重要な認識方法と位置づけられる。と同時に、なお一層の検討が要請されよう。
著者
小西 瑞恵
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.3-14, 2013-01-31

鎌倉時代の堺荘の荘園領主はだれかを明らかにするのが、本稿の第一の課題である。前稿で摂津国堺荘の史料であることを明らかにした元亨3年(1323)7月の「堺御庄上下村目録帳」(海竜王寺文書)が、元亨3年5月11日の「西園寺実兼御教書」をうけて作成されたもので、このとき摂津国堺荘は、春日社祈祷料所として興福寺東北院覚円(実兼子息)が領家になったことを、初めて明らかにした。この2点が摂津国堺荘の史料で、豊田武以来の通説とは異なる。当時の和泉国堺荘(堺南荘)は、最勝光院領で領家は永福門院藤原鏱子(伏見天皇中宮、実兼女)で、西園寺実氏が亡父公経のために建立した天王寺遍照光院の寺役も勤めていた。第二に、南北朝時代の摂津国堺荘で現地代官の地位にあった渡辺薩摩入道宗徹を検討し、宗徹が摂津国住吉郡守護であった楠木正儀の守護代であったことから、楠木正成に遡って南北朝動乱期の摂津渡辺党(渡辺惣官家)の動向のなかで論じた。
著者
竹田 博信
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.190-196, 2011-01

「就職氷河期の再来か?」という記事が今年もマスコミで喧伝されている。昨年一年間の学生の就職活動を支援していて気付いた点が、視野が狭いために「情報」を取得できる情報が少なく、またその少ない情報に対してもリテラシーが低いために正しく活用できていないことだった。改めて企業側の視座からの意見を確認して、そこからの気づきについてまとめてみた。
著者
川上 正浩
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.75-83, 2007-01-31

本研究では,授業時間内に認められる遅刻生起頻度と,個人の遅れに対する態度,主観的遅れ生起頻度,楽観性との関連が検討された。心理学科一回生春期配当の必修授業が調査対象授業として設定された。103名の調査参加者を対象に,当確授業の最初の回に,個人の遅れに対する態度(VODKA2005),主観的遅れ生起頻度,楽観性(MOAI-4)が質問紙調査により測定された。また,全8回の授業を通じて,各調査対象者の遅刻および欠席状況が記録された。授業終了後,授業場面で生起する遅刻,欠席の頻度あるいは時間と,個人の遅れに対する態度,主観的遅れ生起頻度,楽観性との関連が吟味された。相関係数に基づく分析の結果,授業場面における遅刻,欠席の生起頻度は,自分の遅れに対する罪悪感と関連することが示された。
著者
桶谷 弘美
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.120-128, 2011-01-31

音楽を学ぶ者の前に立ちはだかる大きな障壁は、音楽理論を正確に把握することである。難解な専門用語が簡単に理解できないからだ。コード-・ネームや音程や音階あるいは五度圏等の解説には、通常専門用語を用いて説明が施されるが、これがスタート早々に躓きになってしまう。そこで、これらの専門用語をすべて数字に置き換えてみることにした。端的に言えば、半音ずつ数えていく方法で、習得困難な専門用語を理解させる試みである。例えば、長3度は5、短3度は4として、その数字から長3度とか短3度という用語を頭に入れさせるのである。また、五度圏の説明で、♯或いは♭が完全5度ずつ移動するというところを、8の移動に変えるだけで成り立つことを納得させることができる。この小論は、音楽を学ぶ者や初心者に刺激と学習意欲を燃やす動機と効果をもたらす指導法として論じたものである。この数字の代替理論は、筆者の独創によるものである。ゲームを楽しむような仕方で学べることが救いであり、本来の専門用語に徐々に慣れ親しむようになることが特筆すべき点である。
著者
佐野 美奈
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.93-102, 2013-01-31

この研究の目的は、音楽的表現育成プログラムの実践過程で4歳児の「音への気づき」を起点とした活動の展開の特徴を考察することを通して、活動の要素の変容について明らかにすることである。4歳児のこの活動事例について、保育園で3年間の実践過程を検討した。その結果、実践2年目と実践3年目に活動の要素が増し、展開の可能性が示された活動の特徴が見い出されることがわかった。実践1年目で「音への気づき」については、生活音に限定されていた。実践2年目では、虚構体験がその活動の対象となった。特に、ストーリー化の過程において、パターン化された表現形式を経験することによって、子ども達に自発的表現が多く生じていた。同時に、動きから3段階目の音楽的諸要素の認識に向けた活動の特徴も見られた。実践3年目では、擬音語、擬態語のイメージによって歌詞を創造したり、クリエイティブ・ムーブメントを生じたりする展開が特徴的であった。
著者
坂田 浩之 川上 正浩 小城 英子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.91-98, 2009-01-31

本研究は,不思議現象に対する態度を研究する上での基礎作業として,現代の日本人女子大学生が実際に不思議だと感じていることを探索し,彼らにとっての"不思議"の潜在的な構造を明らかにすることを目的としたものである。20答法を応用した調査法を用いて記述データを収集し,それをテキストマイニング手法を用いて分析し,そこにどのようなキーワードが見出され,多く用いられているのか,またそれらのキーワードはどのようなクラスターを構成するのかについて検討を行った。その結果,"人間の不思議","自分の不思議","能力・可能性の不思議","好みの不思議","性の不思議","思考の不思議","差異の不思議","生理的欲求の強力さの不思議","心・感情の不思議","生・世界・文化の不思議","美・魅力に関連した事柄の不思議","身近な事柄の不思議",という12 のクラスターが抽出され,一般的傾向として,現代の日本人女子大学生が,実際には,身近で,普遍的で,自然なことに対して不思議という感覚を覚えることが明らかにされた。
著者
夏目 誠 大江 米次郎
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.93-105, 2003-01-31
被引用文献数
2

大阪樟蔭女子大学の学生のストレス度を知るために、447名の学生を対象に、我々が作成した72項目からなる大学生ストレス調査表(ライフイベント法による、大学入試を5点とし、これを基準に0-10点の範囲で、ストレス度を自己評価させた。各項目の平均値を求め、ストレス点数と仮称した)を用いて、調査を行った。 得られた結果と、対照群とした332名の国立大学女子学生と比較検討を行った。 得られた結果は以下の通りである。1.対象者の項目ごとの平均値(ストレス点数と仮称した)を求め、高得点順にランキングをした。第1位は「配偶者の死」で9.3点であり、最下位は「旅行やバケーションをとる」の2.0点であった。基準点である5点以上が56項目と多くに認められた。2.対照群との間に、全体や4群(大学、社会、家族、個人生活群)の間に有意な差を認めなかった。3.項目別で1.0点以上の差違が認められたものについて検討した。1.親や他者の自己評価への過敏性、2.対人関係トラブル、3.経済的なストレス、の3特徴が認められた。 以上の結果について考察を加えた。
著者
奈良﨑 英穂
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
樟蔭国文学 (ISSN:03898792)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.13-31, 2022-03-01

1 0 0 0 OA 夕霧と柏木

著者
森安 愛子
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
樟蔭国文学 (ISSN:03898792)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.53-67, 2003-03-10