著者
出口 拓彦
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
pp.1705, (Released:2017-09-08)
参考文献数
38
被引用文献数
2

授業中の私語を規定する要因について,個人レベル・集団レベルの変数に着目して検討した。中学生を対象とした質問紙調査を実施し,439名から有効回答を得た。質問紙では,自分および他者の「規範意識」と,自分および他者の「私語の頻度」などについて測定した。自分自身の私語の頻度を従属変数とした重回帰分析を行ったところ,自分の規範意識には負,他者の私語の頻度には正の関連が示された。さらに,行動基準(「遵守」「逸脱」等と態度をタイプ分けしたもの)の影響についても検討した。個々人が持つ行動基準(個人レベル)および各クラスにおける行動基準の割合(集団レベル)を投入した階層線形モデリングによる分析を実施した。その結果,個人レベルでは,「遵守」に負の関連,「逸脱」に正の関連が示された。一方,集団レベルにおいては,「遵守」の行動基準を持つ生徒の割合(31%)は比較的低かったにもかかわらず,クラス全体の私語の頻度を規定している可能性が示された。また,「同調」の割合(47%)は「遵守」に比べて高かったにもかかわらず,顕著な関連は見られなかった。これらのことから,教室内の一部の成員が,クラス全体における私語の頻度を規定しうることが示唆された。
著者
出口 拓彦
出版者
藤女子大学
雑誌
藤女子大学紀要. 第II部 (ISSN:13461389)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.45-51, 2007-03-31
被引用文献数
2

本研究は、「私語をすること」と「私語をされること」の相違や視点取得の高低に着目して、教室における座席位置と私語の頻度との関連について検討することを目的とした。東海地方・北海道における2大学の学生418名(男子108名,女子297名,不明13名)を対象に、質問紙調査を行った。その結果、視点取得が高い学生は、低い学生に比べて私語の頻度と被私語頻度の相関が高い傾向が示された。このことから、視点取得が高い学生は、他者ないし友人から私語をされた場合に、「私語をしないことで友人に不快感を生じさせる可能性」(出口・吉田,2005)を感じやすくなることが一因となっている可能性が考えられた。なお、座席位置については、教室後方ほど、「授業と無関係の私語」の頻度および被私語頻度が高い傾向が示された。また、友人の数についても教室後方ほど多い傾向が見られた。さらに、友人の数と私語の頻度・被私語頻度の間には、全般的に弱い正の相関が示された。
著者
出口 拓彦 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.160-169, 2005-11-30 (Released:2017-02-07)
被引用文献数
8

The purpose of the present research was to investigate the relationships among normative consciousness, individual traits, and the frequency of private conversations, in the form of whispering, amongst students during a college lecture. In the first study, the relationships among normative consciousness against whispering, perspective taking, social skills, and the frequency of whispering were examined through a questionnaire survey consisting of 251 respondents. The results showed that students who whispered frequently indicated high perspective taking or social skills. In the second study, the relationships among the goals of college life, normative consciousness, and the frequency of whispering were focused upon. The relationships between whispering and feelings of adjustment were also investigated. A questionnaire survey was conducted, and 369 responses were obtained. The results showed the following. (1) Despite having a high normative consciousness, students who valued the development of interpersonal relationships during college life were more likely to have conversations irrelevant to the lecture. (2) There were positive relationships between whispering and feelings of interpersonal adjustment.
著者
出口 拓彦
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.219-229, 2001-06-30

本研究は, グループ学習に対する指導を独立変数, グループ学習の効果および問題点に対する児童の認知を従属変数として, 複数の指導の組み合わせの効果について検討することを目的とした。16名の小学校高学年の教師にはグループ学習に対する指導について尋ね, 495名の児童にはグループ学習の効果および問題点に対する認知について尋ねた。グループ学習に対する指導をクラスター分析により「討議に関する指導」と「参加・協力に関する指導」に分類し, 各指導の効果を分散分析によって検討した。その結果, (a)「討議に関する指導」と「参加・協力に関する指導」を共に行っている学級において, 最も肯定的な認知がなされていること, (b)「討議に関する指導」のみを多く行い「参加・協力に関する指導」はあまり行わなかった学級において, 最も否定的な認知がなされていること, などが示された。このことから, グループ学習の指導の際には, 「討議に関する指導」と「参加・協力に関する指導」を共に行うことの重要性と, 「討議に関する指導」のみを行うことの問題が示唆された。
著者
出口 拓彦
出版者
奈良教育大学教育実践開発研究センター
雑誌
教育実践開発研究センター研究紀要 (ISSN:21865841)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.81-88, 2014-03-31

本研究では、規範逸脱行動に関する行動基準・態度と逸脱頻度・規範意識の関連について検討した。大学生334名を対象に質問紙調査を行った。私語、メール、居眠り、秘密漏洩、ポイ捨ての5つの逸脱行為に対する態度について、「自分も周囲も遵守」「自分は遵守、周囲は逸脱」「自分は逸脱、周囲は遵守」「自分も周囲も逸脱」という4つの状況に対する態度について回答を求めた。これらの態度を基に、調査対象者を「遵守」「逸脱」「同調」「反対」および「中立」の5つの行動基準(e.g., Deguchi, 2013, in press)に分類した。そして、行動基準を独立変数、逸脱頻度ないし規範意識を従属変数とした分散分析を行った。その結果、「逸脱」の行動基準を持つ者は、全般的に「遵守」の行動基準を持つ者よりも逸脱頻度が高く、規範意識が低い傾向が示された。このことから、行動基準の分類方法には、一定の妥当性があることが示唆された。
著者
出口 拓彦
出版者
奈良教育大学次世代教員養成センター
雑誌
次世代教員養成センター研究紀要 (ISSN:21893039)
巻号頁・発行日
no.5, pp.49-59, 2019-03-31

「授業中の私語」の伝播過程に着目しつつ,規範逸脱行動について考えるための授業案を作成した。さらに,大学生を対象に授業を実施し,その効果を実証的に検討した。授業案は,主として心理学に関する知見を基にしたものであった。また,個人間の相互作用が集団全体に及ぼす影響についての理解を深めるために,研究で用いられたシミュレーション用のプログラムも教材として利用した。受講者は心理学関係の専修に所属する学生と教員であった。授業の途中と最後に計2 回質問紙を実施し,受講者28名から質問紙を回収した。分析の結果,授業後の規範意識の方が高かったことから,本授業によって規範意識を向上させうる可能性があることが示された。ただし,授業を「難しい」と感じている者の規範意識はさほど変化せず,規範意識が向上するのは「普通」と考えている者のみである傾向も示唆された。また,自由記述の回答から,シミュレーションに関する事項について興味・関心を持った受講者がいた一方で,その詳細に関する理解が困難であった者もいた可能性が示された。これらのことから,「個人間の相互作用に着目して規範逸脱行動について考える」という授業内容自体は変えずに,その難易度を下げる方法を検討する必要性が考えられた。
著者
出口 拓彦 吉田 俊和
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.160-169, 2005

The purpose of the present research was to investigate the relationships among normative consciousness, individual traits, and the frequency of private conversations, in the form of whispering, amongst students during a college lecture. In the first study, the relationships among normative consciousness against whispering, perspective taking, social skills, and the frequency of whispering were examined through a questionnaire survey consisting of 251 respondents. The results showed that students who whispered frequently indicated high perspective taking or social skills. In the second study, the relationships among the goals of college life, normative consciousness, and the frequency of whispering were focused upon. The relationships between whispering and feelings of adjustment were also investigated. A questionnaire survey was conducted, and 369 responses were obtained. The results showed the following. (1) Despite having a high normative consciousness, students who valued the development of interpersonal relationships during college life were more likely to have conversations irrelevant to the lecture. (2) There were positive relationships between whispering and feelings of interpersonal adjustment.
著者
出口 拓彦
出版者
奈良教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

授業における私語の発生過程について, コンピュータ・シミュレーションや質問紙調査等によって検討した。シミュレーションの結果, (1)周囲の状況を考慮せずに私語をする確率が10%程度であっても, 教室全体に私語が広がる可能性があること, (2)教室内の仲間集団の数が多いほど私語が広がりやすくなること等が示唆された。一方, 質問紙調査では, 友人の数と私語の頻度・被私語頻度との間に, 弱い正の関連があること等が示された。また, 私語の発生位置に関するシミュレーションと質問紙調査の結果は, ほぼ一致した。