著者
山田 雅保 内海 恭三 湯原 正高
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.39-47, 1978

幼若ラット過排卵卵を用いて,排卵卵母細胞をヒアルロニダーゼ・低温処理により,第2極体放出を抑制することによって,2倍体胚へ発育しうる活性卵を作出することを目的とし,さらにそれらの着床前における発育性を卵管in-vivo培養に続くin-vitro培養によって検討した. 卵令20-23時間卵において卵をヒアルロニダーゼ30-60分処理後5℃又は8℃のいずれかの低温にさらすことにより高率に第2極体放出抑制活性卵が得られ,そのほとんどは,"2前核"卵であった. 次に第2極体放出抑制活性卵作出に及ぼす卵令の影響について検討した結果,最適卵令20-23時間の結果とは異なり,卵令18時間では,活性化は誘起されなかった. 卵令26-27時間卵では,fragmentation卵と多核を有した卵が非常に多く観察された. この結果より卵令は活性化誘起に対し,Critical factorであることが示された. 本実験で得られた. "第2極体+1前核"卵は,2細胞期あたりで発育を停止したが,しかし,"2前核"卵は,桑実胚あるいは胚盤胞へ発育することがわかった. また,得られた単為発生胚盤胞の倍数性は40の染色体を持つ2倍体と判定された. 以上の結果より,ラット単為発生胚の着床前発育にとって,2倍体胚の重要性が示された。
著者
池田 長守 宇渡 清六 最相 市蔵 南方 定夫
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.16, 1960-09

ハッカ種子の発芽力保存のために,炭酸ガス濃度の高い空気中で種子を貯蔵することは,有効とは認めがたく,長期貯蔵では,かえつて有害と認められた.低温貯蔵は,採種後1年間は,発芽力保存に有効であつたが,その後,急激に,効力を失つた.乾燥剤と共に貯蔵することは,もつとも有効であつた.さらに,乾燥剤と共に,ハッカ種子を低温貯蔵すると,両処理の単独効果の和より,いつそう大きい発芽力保存効果を示した.筆者等はこの方法で,採種後2カ年半,3年目の春まで,完全に,ハッカ種子の発芽力を保存した.もつとも,ハッカ種子は,室内常温貯蔵では,採種の翌年の秋には,発芽歩合が低下して,実用価値を失うが,その頃までの発芽力保存には,風乾種子を密封貯蔵するだけで,可なり効果があつた.また,採種後最初の播種期である,翌春までのハッカ種子の貯蔵においても,低温湿潤積層して,後熟を促進し,休眠期間の短縮をはかるのでなければ,むしろ,風乾種子を乾燥剤と共に密封して,低温貯蔵することが好ましい。
著者
竹上 静夫 笹井 一男
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.24, 1964-10

(1)本実験は甜菜の移植にあたり分岐根,いわゆる"たこ足"と称する太い分岐根の発生と苗令との関係を調査するために,特別の根箱にて苗を養成し,一定の苗令に達した時期に根を切断して分岐根の発生状況を調査した.実験期間は昭和36年10月より翌37年6月までとし,なお冬期間はビニールハウス内にて生育を促進せしめて行なったものである.(2)根箱は縦30cm,横60cm,深さ30cmの木箱の前面の板を取りはずしのできるようにし,これに篩別土壌(65kg)を填充した.その際,箱の地表面より10cmの深さの位置に箱の内側に接して巾3cmの亜鉛鉄板にて60×30cmの中空の矩形の框を水平に埋没した.幼植物が所定の葉数に達した時に前板をはずし,この埋没框を前方に抜き取ることにより,土中10cmの深さの位置にて直根を含むすべての根を切断し,その後再びそのまゝ生育を続けさせるようにした.(3)供試甜菜は10月10日播,1箱8本立とし,根部切断期としては本葉2葉期(11月10日),局4葉期(11月16日),同6葉期(11月27日),同8葉期(12月7日)の4回とし,これらを翌年2月26日~3月8日,4月24~30日,6月6日の3回に根部を調査した.(4)上記葉位の範囲内での直根の切断により,その切断部位より太い分岐根が群生し,その数については葉位の進んだ時期の断根ほど多数に再生発根するが,その太さは比較的細く,しかも各分岐根間の太さの差が少ない.(5)再生した分岐根の太さについては,発根数の場合とは反対に,きわめて太い分岐根は生育の幼少な本葉2~4葉期の直根切断においてみられ,それより生育が進むと分岐根数は増すが太さは細くなる.(6)以上の断根は地表面より10cmの深さの部位での結果であり,それより浅い部位または深い層での断根についての反応は将来の研究にまつところである。
著者
Potjanapimon Chaiwat Fukuda Fumio Kubota Naohiro
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.99, no.1, pp.35-42, 2010-02-01

The effects of temperature on budbreak of cuttings obtained at different stages of dormancy from 'Pione' grapevines (Vitis labrusca × V. vinifera) grown in open field were investigated. Cuttings were collected at monthly intervals from July to March. Judging from the number of days to initial and 60% budbreak after treatment, indicating promotion and the uniformity of budbreak, respectively, 30℃ was the most effective in budbreak, followed by 25 and 20℃ in that order in all treatment times. However, the effect of temperature on budbreak was markedly affected by treatment time. The number of days to initial budbreak (NDIB) increased gradually from July to October, peaked in December and thereafter decreased gradually towards March. The periods from July to September, from October to December, and from January to March were assumed to correspond to paradormancy, endodormancy, and ecodormancy of 'Pione' grapevines, respectively. Final percentage of budbreak was less than 100% until endodormancy for all temperatures. It was below 60% at 20℃ treatments of July to September. On the other hand, a uniform budbreak was observed in the treatments after the middle of endodormancy for all temperatures, resulting in almost 100% of final percentage of budbreak. There was a significant negative correlation between NDIB and cumulative chilling hour (CCH) of exposure to below 7.2℃ in the treatments after November, and also between NDIB and cumulative temperature (CT, ℃・h), a summation of temperature and hours of exposure to above 0°C from November 1 to each treatment time and hours of exposure to 20, 25, or 30℃ from start of treatmentto budbreak in each plot. The results suggest that besides CCH, CT can also be used to estimate the completion of dormancy in 'Pione' grapevine bud.露地栽培されているブドウ'ピオーネ'について,休眠の深さが異なる7月から翌年3月まで約1か月間隔で枝を採取し,1芽を有す挿し穂を調整した後,20,25および30℃に制御したインキュベーター(いずれも14時間日長)に入れ,経時的に発芽を調査した.発芽の早さを示す発芽所要日数と発芽の揃いを示す60%発芽所要日数から発芽に及ぼす温度の影響を評価した.実験期間中の温度を測定し,休眠完了と温度との関係を考察した.いずれの処理時期においても30℃の発芽が最も優れ,次いで25℃,20℃の順であった.しかし,発芽に及ぼす温度の影響は処理時期によって大きく異なった.すなわち,発芽所要日数は7月から10月までは徐々に増加し,11月に最大に達した後,3月に向けて少しずつ減少した.このことから,'ピオーネ'では7月から9月が条件的休眠期,10月から12月が自発休眠期,1月から3月が他発休眠期と推察された.自発休眠期までの最終発芽率はいずれの温度も100%未満であり,また7月~9月の20℃処理では60%未満の発芽率であった.一方,自発休眠期の中期以降の処理ではいずれの温度とも均一な発芽を示し,最終発芽率はほぼ100%であった.11月以降の処理において,発芽所要日数と7.2℃以下の温度に遭遇した時間数(CCH)との間に有意な負の相関があった.また,11月1日から各処理時期までの0℃以上の温度に遭遇した時間数と20,25または30℃で処理を始めた日から各処理区の発芽までの時間数との積算(CT, ℃・h)との間にも有意な負の相関が認められた.以上のことから,'ピオーネ'の芽の休眠完了の予測には低温遭遇量だけでなく,0℃以上の積算温度による方法も有効と考えられた.
著者
志茂山 貞二 小合 龍夫 笹井 一男
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.3, pp.31-45, 1953-09

筆者等は水稲の出穂6日前,出穂始,開花期,開花後5日及び開花後10日の5時期に風害及び風雨害を与へて之が水稲の生育特に子実の発育に及ぼす影響を調査し,次の結果を得た. (1)実験は風速15~17m/secの人口風洞内に於て行はれ,雨風処理の場合には更に80mm/hの雨量に相当する撒水を行つた. (2)処理開始直後株附近の気温は外気温より1.0~1.2℃降下したがその後は余り変化しなかつた. (3)処理に依つて株はすべて倒伏し,葉先は細裂し,穂は擦傷を蒙つた.穂の擦傷部は1~2日後褐変し,著しいものは黒褐色乃至灰白色に変じた. (4)黄色乃至黄褐色の籾には完全粒が高かつたが,黄褐色乃至褐色の籾は不完全粒となり褐色乃至黒褐色或は灰白色の籾はすべて粃であつた. (5)籾の擦傷は開花期に近いものほど大きく変色の程度も著しかつたが,雨を伴えばその被害は著しく軽減された. (6)穂重は処理時期別の差が顕著でなかつたが,開花期のものは明らかに軽かつた. (7)穂上粒着位置別に調査した結果に於ては不完全粒歩合は処理期の遅いものほど高く粃歩合は開花期処理のものが最高であつた.尚降雨は被害軽減に効果があつた. (8)開花期別の粒の調査によれば開花当日処理のものは被害が最大で5日以内のものも被害が大きかつた。
著者
安田 勲 安井 公一
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.25, pp.25-29, 1965-03

これまでの実験で朝顔の開花に人工光線の波長の差がかなりの影響があることが分ったので,今回は赤,黄,青及びそれらの組合せがどんな影響を与えるかを知ろうとして3色のカラード螢光灯(20w)を終夜照明し,開花現象を完開,半開及び不開の3段階に区別してその結果を報告する.また,朝顔の開花にはごく弱光の前夜照明でも影響のあることが知られているので,電灯からの距離を変えることによってどのくらいの距離まで離せば光の影響を受けなくなるのか,その限界を知ろうとして電灯は2cp.5w,10w.の3種,距離は0.5~3mの2~6段階にして実験を行なったので,その結果をも報告する.(1)赤色灯は完開を抑えて半開または不開花を増し,青色灯はほとんど完開花のみを生じた.黄色灯は赤と青との中間的の影響力を示した.(2)同じ色の電灯が重複すると,赤と黄の電灯は完開花を皆無にし,青の電灯は若干の完開を生じた.(3)赤+黄や赤+青のように赤色光が他の色に加わると完開はなくなり,不開花を多くする.青+黄のように赤が加わらない場合はわづかながら完開花を生じ,不開花が減っただけ半開を多くする.(4)赤+黄+青になると,完開は皆無となり半開花をかなり多く生じた.(5)青は開花に一番影響を与えない光であるが,重複の場合はかなり完開をわるくする.その程度は赤の単独よりは影響が少なかった.(6)電照により開花にほとんど影響を与えなかった距離の限度は室内と戸外とで異なり,室内実験では2cp.なら1~3m,5wで3mであり,戸外実験では2cp.で3~0.75m,5wで3~1m,10wでは3mであった。
著者
本多 昇 岡崎 光良 藤原 重彦 中尾 宏量 渋鍬 啓
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.37, pp.27-41, 1971-03

1.1964年6月15日および8月1日に,岡山県山陽町でMuscat Bailey Aの28園について採葉して葉分析をおこなった. N含量については6月15日に2.63%(100)であったものが8月1日には2,16%(82)となっていることは不当な栽培法によるものと思われる. Mg含量は6月15日に0.19%(100),8月1日には0.33%(174)であるから,本品種は6月15日に"早期潜在的苦土欠乏"に陥っているということができる. 2.8月29日から10月16日までに4回にわたり,葉の片側から,その下方と上方から合計4切片(1切片当り1cm2)を打ち抜いた. 10月29日現在無処理の半面と他の半面との間でN,P,K,CaおよびMgの含量については,Ca以外にはほとんど差が認められなかった. 3.8月29日,9月29日および10月29日の葉内N含量は2.11%(100),1.90(90)〔100〕および1.49(71)〔78〕であって,10月末までに葉中N化合物が樹体内に移行する量は多くはない. Kは9月下旬の多雨による溶脱のためか,9月29日に1.10%〔100〕となったが,10月29日には1.87%〔170〕となった. 9月29日から10月29日の間のMg葉量の増大率(66%)はCaのそれ(21%)より大である. 葉内P含量は9月15日から10月29日の間でほとんど差がない. 4.10月29日現在,クロロシス発現葉の右側半分および左側半分の脈間部のMg含量は0.34%および0.30%であったが,健全葉のそれらは0.40%および0.33%であった. Muscat Bailey AのMg欠乏症発現についての8月の葉中Mg含量の安全限界濃度は0.30%と推定された。
著者
堀 慧 鳥海 徹 田辺 昭
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.31-36, 1965

1.diaveridineを飼料に最高0.01%から最低0.0001%までの各種の濃度になるように添加して,これを連続投与して本病の感染予防試験を行なった.その結果0.01%ならびに0.005%添加区においては感染が認められなかったが0.0025%以下の添加濃度では感染鶏が高率に認められた.従って本剤の最低有効濃度は一応0.005%の附近にあると思われる.しかしながら1964年度は,全国的に本病の予防剤としてpyrimethamineが発売されたため,岡山県下でも本病の発生が少なく,岡山大学農学部構内の鶏舎でも本病の感染率が一般に低かった.すなわち第1区の無添加対照区の感染率は35.0%であり,同時に行なった他の試験でも,薬剤無添加区での感染率は20~30%が普通であって,第1試験でみられたような濃厚感染は認められなかった.第2試験の0.001%添加区で81.3%の感染率を示したのはむしろ例外的現象と考えられる.従って第2試験の0.005%添加区がもしさらに濃厚な感染に曝された場合,果して完全に本病の感染を防ぎ得るか否かは疑問であるので,本剤を実地に応用する場合,最低有効濃度は0.005%より上にあると考えた方が安全と思われる.2.試験期間中における試験鶏の体重,産卵率,卵重等の推移を各区別の平均値で図示したように,いずれの場合も本剤がニワトリに対して毒性を示しているとは認められなかった.ただし第1図で,8月1日以後第3区および第4区の平均体重曲線が降下しているのは,第3区で2羽第4区で1羽がそれぞれ内臓型淋巴腫症に罹患し,体重が900gないし660gに減少したものが出たためであるが,8月29日現在の体重で,無添加対照区との間でF検定を行なっても5%の水準において有意の差は認められていない.第2図の平均産卵率の曲線についても,同様な傾向が見られるが,これも前記と同じ理由によるものと考えられ,期間中の総産卵個数について,対照区と各区の間でF検定を行なったが,いずれの場合も有意の差は認められなかった.3.ニワトリのcoccidium症に対するdiaveridineの効果は,前記の通りM. L. Clark3)によれば,sulfa剤と混じた場合0.001%であるといい,同じくpyrimethamineの効果は,S. B. Kendall&L. P. Joyner5)によると,sulfa剤と混合した場合0.004%が適当と認めている.従って,この両者はニワトリのcoccidiim症に対してはほぽ同等の効力を有しているものと見られるが,ニワトリのleucocytozoon病に対するpyrimethamineの最低有効濃度は著者ら2)の成績では0.00005%であるのに反し,diaveridineは前記の通り0.005%であるとすると,本病の予防効果では両者の間に100倍の開きが認められるわけであって興味深いことである.4.以上の試験により本剤単味の場合の最低有効濃度がほぼ0.005%であると判明したが,この濃度では実際の野外での応用の場合薬価の点で問題を生ずる恐れがある.したがってsulfa剤と混合投与した場合その相乗効果によりさらに投与濃度をさげる研究が行なわれないと本剤単味では応用範囲が限定されると考えられる。
著者
竹上 静夫 笹井 一男
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.19, 1962-03

(1)本実験は岡山大学農学部圃場において,普通栽培した甜菜について,昭和35年8月15日を移植期として同7月15日播の株を大苗(草丈約30cm,本葉数12~14枚,根長12~13cmに切断)とし,7月21日播の株を小苗(草丈約15cm,本葉数4~6枚,根長6~7cmに切断)として移植栽培試験を行つた.(2)本圃における元肥施用の有無は小苗にとつてはその活着にきわめて密接な関係を生じ,元肥施用後に移植すると活着障害をおこして枯死株を続出するが,大苗では元肥施用の有無に無関係に活着する.(3)移植当時の切わら被覆は本試験の範囲ではその活着に見るべき差異を生じなかつた.(4)大苗区は小苗区より収穫根重が大きい傾向がみとめられる.(5)移植栽培の収穫期における肥大根体の長さは,用いた苗の直根の長さによつて決定せられ,直根の長い苗よりは長い根体が得られる.したがつて長い無傷の直根を有する苗を移植することが,移植栽培成功の第一の鍵となる.この状態の幼若苗を得る手段としてのペーパーポット法は合理的である.(6)移植栽培にあたつて生ずる太い分岐根は苗令と密接な関係が察知せられ,幼令苗の直根切断がその原因となるようである.この苗令は本実験では4~6葉またはそれ以下の苗と推定できるが,これについては別途検討中である.(7)移植区と直播区との根体の比較について,地上へ抽出する冠頸部にも顕著な差異が認められ,移植株において地上抽出部が著しく大きい.たゞしこの抽出現象は秋播栽培のものでは春季になつてもみられないので,秋播のものには当てはまらない。
著者
益田 忠雄 林 清史
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.45-54, 1956

1) 葱頭の開花は5月31日に始まつて6月28日に終り,従つて開花期間は29日間であつた. 2) その中で開花数の多かつたのは,6月8日から22日の15日間で全開花数の84.9%であつた. 3) 開花は開花前日及び開花当日の日照量によつて影響されるものの如くである. 4) 1花球に於て最も多く咲いた花数雄842で平均は291であつた. 5) 1花球当りの開花数の多いものは,開花始めも早く,開花期間も長い. 1) 葱頭の花柱の伸長竝に雌蘂の授精力保有期間について実験した. 2) 葱頭の花柱は開花後徐々に伸長するが,その伸長は変異があり,一定の傾向は見られなかつた.最大の長さに達するのは,開花の翌日以後であつて,又葯が全部開葯してからであつた. 3) 雌蘂の授精力は開花2日目より生じ,6日目に終つた. 4) 結局,形態的にも,機能的にも葱頽の雌蘂は開花当日には成熟していなくて,雄蘂先熟の性質をもつていた。
著者
清久 正夫 佃 律子
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-11, 1966

大豆と金時の豆をそれぞれ主体とし,エビオス,アスコルビン酸および防腐剤を加えて寒天で固めた半合成飼料により,ハスモンヨトウを飼育した.1.かような半合成飼料で飼育した場合は蛹化率や生育率などがサツマイモの葉で飼育した対照区より劣り,幼虫の発育期間が長くなるが,発育した蛹の体重や,成虫の産卵率,その卵の孵化率,蛹の期間,卵の期間は対照区との間に概括的にいえばそれほど大きい相違がない.2.大豆と金時-寒天飼料との間に多少の相違はあるが,どちらがよいかは決定しにくく,両飼料とも人工飼育用の飼料として適当と思われる.3.これらの飼料で飼育した幼虫はサツマイモの葉で飼育したものよりその期間がやや長くかかり,大部分のものが6回の脱皮を行ない,7令を経過した.4.累代飼育した結果蛹化率や生育率などは初期世代では低いが,世代の推移に伴ない増加し,幼虫期間が短かくなる.これに対し産卵率や孵化率はかなり低下することがある.前者の原因はこの昆虫が新食物に適応することと新食物による個体群の淘汰により,後者の原因は必然的に生ずる同系交配の害に起因するものと推論した。
著者
久保田 尚浩 ポジャナピモン チャイワット 福田 文夫 藤井 雄一郎 小野 俊朗 倉藤 祐輝 尾頃 敦郎 功刀 幸博 小林 和司 茂原 泉 山下 裕之 藤島 宏之
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.9-16, 2009-02

This study was conducted to investigate the relationship between completion of dormancy of grapevinebud and temperature. Canes of 'Kyoho' and 'Pione' grapevines (Vitis labrusca×V. vinifera) grown in 7 vineyards with different temperature conditions, in Nagano, Northern Okayama, Yamanashi, Okayama, Okayama University, Fukuoka and Miyazaki, were collected at three different chilling exposures,December, January and February. These were then sent to Okayama University all at the same time. Cuttings with one bud were put into growth chambers kept at 25 or 30°C with 14 hours daylength, and budbreak in each cutting was surveyed at two day intervals for 60 days. Cumulative chilling hours (CCH) of exposure to below 7.2°C in each treatment time was largest in Nagano, followed in order by Northern Okayama, Yamanashi, Okayama, Okayama University, Fukuoka and Miyazaki. The CCH in Nagano was 2.5 to 4.8 times larger than in Miyazaki depending on the treatment time. The later the treatment time and the higher the temperature, the fewer were the number of days to first budbreak (NDFB) after treatment, irrespective of cultivar. A similar trend was observed in the number of days to 60% budbreak. In 'Kyoho' the NDFB was short in Nagano, Okayama University and Miyazaki, and longer in Okayama, Yamanashi and Fukuoka. In 'Pione' the NDFB was short in Fukuoka and Okayama University, and longer in Yamanashi and Okayama. The result was a weak negative correlation observed between CCH and NDFB in 4 of 7 vineyards. However, there was a strong positive correlation between NDFB and cumulative temperature (CT), a summation of temperature and hours of exposure to above 0°C from November 1 to treatment time and hours of exposure to 25 or 30°C from start of treatment to budbreak in each plot, in 6 vineyards excluding Miyazaki. The importance of estimating the completion of dormancy in grapevine bud based on CT is discussed.ブドウの芽の休眠完了と温度との関係を調査するため,温度条件の異なる7園(中信農試,山梨果試,岡山農試,岡山農試北部支場,岡山大学,福岡農試および宮崎)で栽培されている'巨峰'と'ピオーネ'から低温遭遇量の異なる3時期(12月,1月,2月)に結果母枝を採取した.直ちに岡山大学に送り,1芽を持つ挿し穂に調整した後,25または30℃のインキュベーター(14時間日長)に入れ,2日間隔で60日間発芽を調査した.処理開始時の7.2℃以下の遭遇量は中信農試で最も多く,次いで岡山農試北部支場,山梨果試,岡山農試,岡山大学,福岡農試,宮崎の順で,中信農試と宮崎では処理時期により2.5~4.8倍の差があった.発芽所要日数は,両品種とも処理時期が遅いほど,また温度が高いほど少なく,60%発芽所要日数もほぼ同様の傾向であった.'巨峰'の発芽所用日数は中信農試,岡山大学および宮崎で少ない一方,岡山農試,山梨果試および福岡農試で多く,また'ピオーネ'では福岡農試と岡山大学で少なく,山梨果試と岡山農試で多かった.7園のうち4園で低温遭遇量と発芽所要日数との間に負の相関がみられたが,相関係数は低かった.一方,11月以降処理開始までの0℃以上の温度の積算値と処理開始から発芽までの25または30℃での積算値を合計した積算温度と発芽所要日数との間には1園を除き極めて高い正の相関が認められた.これらの結果を基に,積算温度によるブドウの休眠完了予測の可能性を考察した.
著者
須藤 浩 内田 仙二 三宅 一憲
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.40, pp.25-33, 1972-10

エンバクをサイレージに調製する場合の刈取適期を知るため,穂孕(5月16日),出穂(6月1日),開花(6月14日),乳熟(7月1日)の4期に刈りとり,その収量を調査し,その成分を調査すると同時にサイレージを調製し,約3ヵ月後にこれを開き,品質を調査し,ヤギにより消化試験を行ない,飼料価値を査定した. 結果の要約はつぎのようである. 1)収量調査の結果,乾物の収量は,生育期が進むにつれて増大した. 粗タンパク質の収量は出穂開花の頃が最大になり,その後減少した. 2)各期収穫における材料のサイレージの品質は,いずれも良質のものが得られなかった. しかし穂孕・出穂期刈りとりのものが,開花・乳熟期のものに比較して多少良質の傾向にあったが,いずれも酪酸を相当含み,アンモニア態窒素率も高かった. 3)ヤギによる有機物の消化率は,穂孕期66%,出穂期56%,開花期41%,乳熟期サイレージ42%で,また粗タンパク質・粗繊維の消化率は,生育期が進むにつれて典型的に減少した. 消化率はサイレージの発酵的品質に支配されるが,材料草の生育時期が第一次的に支配因子になることが推定された. 4)エンバクをサイレージにした場合,単位面積あたりのDCPの収量は,穂孕期から開花期までは余り差がなかったが,乳熟期にはかなり減少した. TDNの収量は出穂期まで増加したが,その後の増加は余りなかった,出穂期またはその前後が収量・土地利用の両面から経済的で有利と思われる. 5)エンバクは一般には晶質良好なサイレージのできにくい材料であるので,調製上の基本的条件の充実,材料の混合埋蔵,添加物の工夫が必要であることが推定された。
著者
久保田 尚浩 田中 孝 島村 和夫
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.11-20, 1980

ブドウ樹の生育と地温条件との関係を明らかにするために,接ぎ木1年生の鉢植えMuscat of Alexandria(H,F、台)について,新しょう伸長期にあたる4月4日から5週間、室温を16℃以上に保ったガラス室内で地温を6段階(12,15,20,25,30,35℃)に調節し,樹体各部の生長および数種の体内養分含量に及ぼす地温の影饗を調査した. 1)新しょう伸長は25,30℃の両区で最もすぐれ,処理終了時の伸長量は約150cmであった. 一方,12,15,35℃各区の生長は処理開始直後から著しく劣り,40~50cmの伸長量であった. 2)葉,茎および新根を合計した新生部分の生体および乾物重は25,30℃両区で最も多いのに対して,12,15,35℃の各区では著しく少なく,前者の1/3以下であった. とくに,12,15℃両区の新根発生量は極めて少なかった. 旧根の乾物重は20℃以下の地温区よりも生長のすぐれた25,30℃の両区で少なく,またその乾物率(乾物重/生体重)も低かった. 3)N含量は葉では地温が高いほど,また葉以外の茎,新根および旧根では25℃区で最も低かった. P含量は葉では25℃以上の区で低く,旧根では30℃以上の区で高かった. K,Ca,Mgは地温が高いほど新根での含量が高く,一方,葉のCa,Mg含量は35℃区でとくに低かった. 葉におけるこれら各養分の総含量(含量X乾物重)は25,30℃の両区で最も多かった. 4)新根の全糖およびデンプン含量は25℃区で最も高く,これ以上の地温区において低かった. 30℃以上の区では旧根のデンプン,全糖ともに少なかったが,12℃区ではデンプン含量が著しく高いのにくらべて全糖が低かった。
著者
本多 昇 岡崎 光良
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.5, pp.10-19, 1954-09

1,栗を含む14種果樹の葉汁のPH及び緩衝能を測定し植物生理上二三の考察を行つた. 2, initial PHが5.2~6.2の間にあつて最も普通の酸度を示すもの8種, PH6.54~7.13のものは菓子胡桃,ペカン,無花果の3種,PH3.21~3.69のものは欧州葡萄,間生葡萄,梅の3種である. 3,果樹は作物に比し緩衝能が極めて大である.PH4.6~4.8とPH6.4~6.6に於けるBuffer-indexと反応抵抗性との相関は認められない. 4, initial PHを中心として酸性側に於て日本栗が14種果樹中最も緩衝力が弱いが initial PHから0.2PH単位の巾の酸性側の Buffer-index(A)に対するアルカリ性側の同様なBuffer-index(B)の比較(B/A×100)は最も大である. 5,14種の果樹を Buffer-index curveにより酸性側の緩衝能の最も強い第Iグループ(L型カーブ)に属する夏橙,温州及び梅,第IIグループ(ほぼL型カーブ)に属する欧州葡萄,枇杷,桃,無花果,間生種萄葡及びオリーブと酸側緩衝能は最も弱いがアルカリ側の緩衝能が大で-U型カーブを示す第IIIグループに属する果樹即ちペカン,菓子胡桃,日本栗,柿,支那栗とに大別出来る. 6,日本栗と支那栗,間生種葡萄と欧州葡萄,温州と夏橙に於ける如くPH3.5~4.0と3.0~3.5に於けるカーブの型により各種間に大差が見られる. 7,アルカリ側に於ても日本栗と支那栗の Buffer-indexに大差がある.又日本栗がPH7.0~7.5にて14種果樹中最大の緩衝能をもち,且つPH6.83及び7.46に於てTitration curve上特異な変曲点をもつ.8,以上の諸事実は種によるメタボリズムの特性を示唆するものである。
著者
本多 昇 岡崎 光良
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.37, pp.17-26, 1971-03

1.高地温が光合成におよぼす抑制的効果について研究するために,1966年にコイトトロンに入れた鉢植えのブドウの地温を,流水によって冷却することより,たとえば気温は35℃にかかわらず地温を約28℃とした. さらに,第1日目には25℃区と40℃(鉢冷)区として処理した両ポットを翌日は25℃のコイトトロンに入れ高温が光合成におよぼす後作用について評定した. 2.Campbell Earlyの25℃:30℃:35℃(鉢冷)区の光合成能は533.8mg/㎡/h(100):209.7(39):367.1(70)であり,Muscat of Alexandriaについては同じ順序で,それぞれ497.8mg/㎡/h(100):202.8(40):312.2(65)であった. 3.Campbell Earlyの初日の25℃:40℃(鉢冷)区の光合成能比数は100:32であり,翌日の同順序の光合成能比数は100:75であるから高温の後作用が判然した. Campbell Earlyと同様に処理したMuscat of Alexandriaについては,初日の光合成能比数が上述の順序で100:14であるが,翌日は25℃区の光合成能が,Campbell Earlyの場合を考慮すると,期待に反して低かったために100:143となった. 4.高温の光合成に対する抑制作用を緩和するために,試験の前週にアスコルビン酸1,000ppm,アデニン20ppm,ビタミンB12100ppmの混合水溶液を4回散布したところ,この期待はCampbell EarlyならびにGros Colmanについてかなり満足された. (第3表) 5.ガラス室のMuscat on Alexandriaの地植えされたもの(90×180×45cm)では,対照区と散布区で,晴天で極めて暑い3日間の平均では,光合成能比数が100:324であったが,曇ったかなり暑いある1日には同様の比数が100:109であった. 前述の混合水溶液(Vitamin B12を除く)を土壌施与することは散布法よりも効果が劣るようである。
著者
安田 勳 横山 二郎
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
no.13, 1959-03

ダリヤを短日処理することによつて開花の状態,地上部の生育,特に地下部(球根)の生育が如何なる影響を受けるかを知ろうとして,1958年の春から夏にかけて実験を行つた.実験に用いた品種は中輪デコラチーブ咲の"花笠"という切花用のもので,短日処理の設計は次のようであつた.7時間日長区午前10時より午後5時まで浴光10時間日長区午前7時より午後5時まで浴光13時間日長区午前6時より午後7時まで浴光標準区自然日照のまま1区当りの球根数は12個,1球の重量は平均して100gのものを用いた.定植は4月15日で,遮光期間は6月1日より7月31日の2ヵ月とした.9月1日に圃場の全球根を掘上げ,9月6日より調査を行つた結果は次の通りであつた.1.9月1日までの総開花数は13時間区が最大で7時間区が最も少なかつたが,草丈と節数は各区とも大差がない.2.掘上げた根の重さの平均は10時間区,7時間区,標準区,13時間区の順に小さくなるが,球根が地上部の風乾重に対する比率では10時間と7時間の両区がはるかに大きく,13時間及び標準区は小さい.3.球根とならなかつた繊維根の数量及び重量は日照時間の少ない区ほど少なく,日照時間ののびるに従つて大となる.4.新球根の数は日長処理の時間数と特別関係はないようである.これは何か他の原因によるのではなかろうか。
著者
原 勝己 田辺 昭 川下 辰広 角山 宏 鳥海 徹
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.55-61, 1976

1.産卵鶏にEMCを投与し,同時にpenicillamineあるいはsodium selenate (SS)を投与して,水銀の卵への移行に対するpenicillamineとSSの影響をみた. 2.penicillamine投与は水銀の卵への移行,全血中濃度に影響しなかった. 実験終了時(31日目)の組織中水銀濃度にもpenicillamineの影響はほとんど認められなかった. 3.penici11amineはEMCによる産卵率の低下をやや改善した. 4.SS投与によって卵への水銀移行量は1/2~1/5に減少した. また全血の水銀濃度は約1/2に低下した. 実験終了時(32日目)においてSS投与2群の肝の水銀量はそれぞれ対照群の15倍,28倍であった. 一方腎,脳組織では対照群の約2倍,浅胸筋では殆んど差がなかった. 血漿では逆にSS投与群は対照群の約1/2,血球ではそれぞれ1/3,1/5,羽毛では1/9,1/6であった. 5.SS投与は産卵を低下させ,またSS投与期間中はかなり激しい緑色下痢便が認められた。