著者
山下 裕之
出版者
一般社団法人 日本臨床リウマチ学会
雑誌
臨床リウマチ (ISSN:09148760)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.216-223, 2014-09-30 (Released:2015-01-28)
参考文献数
28
被引用文献数
1

リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia rheumatica;PMR)は,時に鑑別診断に苦慮することがある.我々は,FDG-PET/CTを用いて,PMRが坐骨結節・大腿転子部・脊椎棘突起に高いFDG集積を認め,それらの所見が2つ以上あるとき,感度85.7%,特異度88.2%であることを見出した.また,大血管炎症候群を有するPMR群と有さないPMR群に分けると,前者は滑膜炎や滑液包炎の所見に乏しい事が分かった.さらに,高齢発症血清陰性脊椎関節炎(SpondyloArthritis;SpA)のPET所見との比較も行ったところ,坐骨結節・大腿転子部・脊椎棘突起におけるFDG集積はSpAとPMR間で有意差はなく,前者は同部位の腱付着部炎,後者は滑液包炎を反映しているものと考えられた.一方,仙腸関節炎におけるFDG集積はSpAの方が有意に高く,鑑別に有用と考えられた.さらに時に鑑別が非常に難しい高齢発症関節リウマチ(Elderly-onset rheumatoid arthritis;EORA)のPET所見との比較を行ったところ,PMRはEORAに比較して坐骨結節,脊椎棘突起にFDG集積を高く認める傾向がある一方,手関節のFDG集積が低い事が分かった.さらに肩・股部のFDG集積を注意深く観察すると,EORAでは滑膜炎を反映し,上腕骨頭を取り囲む全周性かつ線状の集積が見られるのに対し,PMRでは滑液包炎を反映し,限局性かつ非線状の集積がみられる傾向にあっ.また,PMRでは,腸恥滑液包炎を反映した股関節前方の集積を有意に認める傾向にあり,非常に有意な鑑別材料と考えられた.今後,PETによる特徴的な罹患部位同定によりPMRの診断だけでなく,病態解明に近づくことを期待したい.
著者
山下 裕之 上田 洋 高橋 裕子 三森 明夫
出版者
社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.306-309, 2012-05-20 (Released:2013-04-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2 5 1

The patient was a 74-year old male who presented with a skin rash, cough, and impaired consciousness. Adiffuse, systemic, dark red rash was observed and he was admitted. Varicella infection was diagnosed based on the varicella-zoster virus (VZV)-IgM levels. The extremely high VZV- IgG levels observed were unlikely to be present inaninitial infection and the infection was thought to be a reoccurrence. Diffuse nodular shadows measuring ≤5mm indiameter were observed on chest computed tomography (CT) ; this was consistent with the typical imaging findings of varicella pneumonia. The cerebrospinal fluid (CSF) was positive for CSF VZV-IgM antibody, CSF VZV-PCR, and CSF antibody titer index. A diagnosisofvaricella meningitis was made. When both respiratory and neurological symptoms are observed inpatients with varicella infection, it is necessary to consider a combined diagnosis of varicella pneumonia and varicella meningitis/encephalitis and perform chest imaging and a CSF examination. Repeated asymptomaticre-infection isconsidered necessary in order to maintaina life long immunity to varicella ; however, the opportunities for asymptomaticre-infection are decreasing with the declining birth rate and trend toward small families. As a result, reoccurrences of varicella infection in the elderly are expected to increase with rapidlyincreasing longevity.
著者
峯村 万貴 泉 克明 山下 裕之 塚原 一幸
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.115-122, 2009-01-15
参考文献数
17
被引用文献数
3

'ナガノパープル'は,長野県果樹試験場において四倍体ブドウの'巨峰'と二倍体ブドウの'ロザリオ ビアンコ'の交雑組み合わせから選抜された三倍体ブドウであり,2004年に種苗法に基づき品種登録された.1990年に交雑し,交雑胚は胚珠・胚培養により養成した.成熟期は育成地で9月上旬(満開後85日頃)である.果房は160~170 g程度の大きさ,果粒は円形で5~6 g程度の大きさであり,果粒の一部に種子の含有が認められる.果皮色は紫黒色である.果皮と果肉の分離は難で,果肉特性は崩壊性である.果汁の甘味は強く,酸含量は少なく,フォクシーフレーバーがある.裂果の発生がみられる.満開時と満開後14日頃の2回のジベレリン処理(25 ppm液)により480~490 g程度の果房と13~14 g程度の果粒が得られ,果粒は完全に無核となる.ジベレリン処理果では無処理果に比べて裂果の発生が少ない傾向であった.花穂の着生は良好であり,短梢剪定による安定的生産が可能と考えられた.<br>
著者
山下 裕之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.8, pp.1555-1563, 2017-08-10 (Released:2018-08-10)
参考文献数
10

膠原病の中でも,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)の神経精神症状はneuropsychiatric SLE(NPSLE)と総称され,その病態も多岐にわたる.NPSLEのうち,中枢神経系症状は局所徴候とびまん性徴候に大別されるが,診断基準は確立しておらず,諸検査で総合判断するしかなく,ステロイドによる精神症状との鑑別が非常に難しい場合がある.また,neuromyelitis optica(NMO)や進行性多巣性白質脳症(progressive multifocal leukoencephalopathy:PML),薬剤性脳症等も鑑別に挙がり,診断は困難を極める.治療は病態に応じて免疫抑制療法と対症療法を組み合わせて行う.
著者
山下 裕之 宇羽野 惠 上坂 義和 國本 雅也
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.576-580, 2012 (Released:2012-08-27)
参考文献数
27
被引用文献数
3

脳症を呈した猫ひっかき病(CSD)の一例を経験した.症例は34歳女性,約1カ月前より微熱および鼠径部リンパ節腫脹を自覚していた.発熱および嘔気・嘔吐をともなう頭痛出現後,意識障害が出現し,受診した.髄液検査で大きな異常なく,頭部MRI正常であったが,骨盤造影CTにて壊死性リンパ節炎の所見をみとめ,外科的リンパ節生検にて肉芽腫様変化をみとめた.猫を飼っているという生活歴を考慮し,生検組織をもちいてCSDの病原体であるBartonella HenselaeのPCR検査施行し,陽性であることが判明しCSD脳症と診断した.本邦ではCSD脳症の報告が非常に少なく,見逃されている可能性があるため注意が必要である.
著者
峯村 万貴 泉 克明 山下 裕之 塚原 一幸
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.115-122, 2009 (Released:2009-01-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 3

‘ナガノパープル’は,長野県果樹試験場において四倍体ブドウの‘巨峰’と二倍体ブドウの‘ロザリオ ビアンコ’の交雑組み合わせから選抜された三倍体ブドウであり,2004年に種苗法に基づき品種登録された.1990年に交雑し,交雑胚は胚珠・胚培養により養成した.成熟期は育成地で9月上旬(満開後85日頃)である.果房は160~170 g程度の大きさ,果粒は円形で5~6 g程度の大きさであり,果粒の一部に種子の含有が認められる.果皮色は紫黒色である.果皮と果肉の分離は難で,果肉特性は崩壊性である.果汁の甘味は強く,酸含量は少なく,フォクシーフレーバーがある.裂果の発生がみられる.満開時と満開後14日頃の2回のジベレリン処理(25 ppm液)により480~490 g程度の果房と13~14 g程度の果粒が得られ,果粒は完全に無核となる.ジベレリン処理果では無処理果に比べて裂果の発生が少ない傾向であった.花穂の着生は良好であり,短梢剪定による安定的生産が可能と考えられた.
著者
種本 翔 藤野 雅広 山下 裕之 西本 哲也 兒玉 拓 長尾 光城
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.214-217, 2013

生活習慣病などの改善を目的に実施される運動は,強度や時間の設定次第で,活性酸素種の発生増加を引き起こす.簡便な指標による検討が少ないため,心拍数で強度規定し,酸化ストレス度および抗酸化力の変化について検討した.対象は,運動習慣のある男子学生7名(20.3±2.3歳)とした.漸増負荷での自転車エルゴメータを用いた運動を行い,その後30分の安静を設けた.運動前,60%HRR時,80%HRR時,終了後30分の計4回採血し,酸化ストレス度および抗酸化力を測定した.運動に伴い,d-ROMs testは増加傾向を示した.また,BAP testは運動により有意な増加を認めた.抗酸化力において認められた変化は,酸化-抗酸化の均衡が破綻した状態である可能性が示唆された.一定の運動強度を上回る負荷には注意が必要であることが考えられる.[Purpose] The aim of this study was to examine changes of oxidative stress and antioxidant status during incremental load exercise prescribed by a simple index. [Subjects]Seven students participated in this study. [Method] Subjects performed incremental load exercise on a cycle ergometer. Blood samples were taken at 4 time points: before exercise(Pre), at 60%HRR, 80%HRR, and 30 minutes after exercise, to analyze oxidative stress(d-ROMs) and antioxidant status(BAP). [Results] d-ROMs showed a tendency to increase. BAP were significantly higher in 60%HRR and 80%HRR compared with Pre. [Conclusion] These results suggested that more attention should be paid to load than on constant intensity.
著者
山下 裕之 堀内 昭作 平 知明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.249-255, 1993 (Released:2008-05-15)
参考文献数
16
被引用文献数
3 7

本研究は4倍性品種と2倍性品種を用いて交配を行い,その雑種個体獲得効率の低い原因を明らかにするとともに,3倍体作出の効率を高めるための胚培養を行った.交配親には4倍性品種の'巨峰と'マスカット•オブ•アレキサンドリア4倍体および2倍性品種の'マスカット•オブ•アレキサンドリア'と'ジュライ•マスカット'を用いた.1.交配により得られた種子の発芽率,胚形成率および胚乳の発育は自然受粉から得た種子と比べて著しく劣っていた.特に2倍体を種子親にしたものにおいて顕著であった.2.2倍体を種子親にした場合の種子の生育は,自然受粉の種子より勝り,逆に4倍体を種子親にした場合は劣っていた.一方,交配後9週間目における2倍体を種子親にした胚の大きさは,自然受粉の胚と比較してその発達程度に著しい差異は認められなかったが4倍体を種子親にした場合には自然受粉の胚に比べて著しく劣った.3.交配60~70日に胚を無菌的に摘出し,MSの基本培地に麦芽抽出物500mg•liter-1を添加した培地に植え付けた.3倍性胚を発芽させ,その後生長させることに成功した.4.実生個体の根端を観察したところ,57本の染色体が認められ,3倍体であることが確認された.5.ブドウの4倍体と2倍体を交配して3倍体を育成する場合,4倍体を種子親にする方が効率的である事が示唆された.
著者
久保田 尚浩 ポジャナピモン チャイワット 福田 文夫 藤井 雄一郎 小野 俊朗 倉藤 祐輝 尾頃 敦郎 功刀 幸博 小林 和司 茂原 泉 山下 裕之 藤島 宏之
出版者
岡山大学農学部
雑誌
岡山大学農学部学術報告 (ISSN:04740254)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.9-16, 2009-02

This study was conducted to investigate the relationship between completion of dormancy of grapevinebud and temperature. Canes of 'Kyoho' and 'Pione' grapevines (Vitis labrusca×V. vinifera) grown in 7 vineyards with different temperature conditions, in Nagano, Northern Okayama, Yamanashi, Okayama, Okayama University, Fukuoka and Miyazaki, were collected at three different chilling exposures,December, January and February. These were then sent to Okayama University all at the same time. Cuttings with one bud were put into growth chambers kept at 25 or 30°C with 14 hours daylength, and budbreak in each cutting was surveyed at two day intervals for 60 days. Cumulative chilling hours (CCH) of exposure to below 7.2°C in each treatment time was largest in Nagano, followed in order by Northern Okayama, Yamanashi, Okayama, Okayama University, Fukuoka and Miyazaki. The CCH in Nagano was 2.5 to 4.8 times larger than in Miyazaki depending on the treatment time. The later the treatment time and the higher the temperature, the fewer were the number of days to first budbreak (NDFB) after treatment, irrespective of cultivar. A similar trend was observed in the number of days to 60% budbreak. In 'Kyoho' the NDFB was short in Nagano, Okayama University and Miyazaki, and longer in Okayama, Yamanashi and Fukuoka. In 'Pione' the NDFB was short in Fukuoka and Okayama University, and longer in Yamanashi and Okayama. The result was a weak negative correlation observed between CCH and NDFB in 4 of 7 vineyards. However, there was a strong positive correlation between NDFB and cumulative temperature (CT), a summation of temperature and hours of exposure to above 0°C from November 1 to treatment time and hours of exposure to 25 or 30°C from start of treatment to budbreak in each plot, in 6 vineyards excluding Miyazaki. The importance of estimating the completion of dormancy in grapevine bud based on CT is discussed.ブドウの芽の休眠完了と温度との関係を調査するため,温度条件の異なる7園(中信農試,山梨果試,岡山農試,岡山農試北部支場,岡山大学,福岡農試および宮崎)で栽培されている'巨峰'と'ピオーネ'から低温遭遇量の異なる3時期(12月,1月,2月)に結果母枝を採取した.直ちに岡山大学に送り,1芽を持つ挿し穂に調整した後,25または30℃のインキュベーター(14時間日長)に入れ,2日間隔で60日間発芽を調査した.処理開始時の7.2℃以下の遭遇量は中信農試で最も多く,次いで岡山農試北部支場,山梨果試,岡山農試,岡山大学,福岡農試,宮崎の順で,中信農試と宮崎では処理時期により2.5~4.8倍の差があった.発芽所要日数は,両品種とも処理時期が遅いほど,また温度が高いほど少なく,60%発芽所要日数もほぼ同様の傾向であった.'巨峰'の発芽所用日数は中信農試,岡山大学および宮崎で少ない一方,岡山農試,山梨果試および福岡農試で多く,また'ピオーネ'では福岡農試と岡山大学で少なく,山梨果試と岡山農試で多かった.7園のうち4園で低温遭遇量と発芽所要日数との間に負の相関がみられたが,相関係数は低かった.一方,11月以降処理開始までの0℃以上の温度の積算値と処理開始から発芽までの25または30℃での積算値を合計した積算温度と発芽所要日数との間には1園を除き極めて高い正の相関が認められた.これらの結果を基に,積算温度によるブドウの休眠完了予測の可能性を考察した.