著者
数馬 広二
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

この研究は、江戸時代を通して、関東(上野国(群馬県)、武蔵国(東京)、常陸国(茨城県)、安房国、下総国、上総国(ともに千葉県))の農村において剣術流派がどのように存在し、継承されたかを調査することで、農民の身体観を明らかにしようとする試みである。特に剣道場の場所(上野国群馬郡金古村・小野派一刀流中澤清忠、上野国・馬庭念流の江戸道場)、門弟の援助(馬庭念流20世樋口定廣の例)、流派による奉納額(中沢清忠、樋口定廣の奉納額)を調査した。また、下野国の剣術流派の分布をみた。また武蔵国八王子犬目村の八王子千人同心家、斎藤家が所蔵した文書を整理し、2013年までに、4,600のリストを作成した。
著者
数馬 広二
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、「江戸時代関東農村における剣術流派の存在形態に関する基礎的な研究」である。17世紀初頭に関東(上野国(こうづけ)・下総国(しもうさ)・上総国(かずさ)・安房国(あわ)・常陸国(ひたち)・相模国(さがみ)・下野国(しもつけ)・武蔵国(むさし))に存在した剣術流派は、江戸時代、帰農した中世武士によって農村で武芸が伝承された、と考えられている。この仮説において、(1)馬庭念流(まにわねんりゅう)(群馬県)(2)新当流(しんとうりゅう)(茨城県)(3)新影流(しんかげりゅう)(群馬県)(4)外他流(とだりゅう)(千葉県)をとりあげ、分布と内容を明らかにすることを目的とし、以下の点が判明した。1.上野国で馬庭念流を中興した友松氏宗(ともまつうじむね) (偽庵(ぎあん))は彦根藩で「未来記念流」を指導した。友松の弟子、永居新五左衞門が、柳生新陰流(やぎゅうしんかげりゅう)と未来記念流(みらいきねんりゅう)の2流を併せた「江武知明流正法兵法」を創始しているので、友松が念流(ねんりゅう)を彦根藩と上州農村へそれぞれ伝えた。技法においても「犬之巻」「象之巻」「虎之巻」などの内容が両者で共通する。2.下総国、常陸国に興った新当流、神道流は16世紀に関東の上野国農村にも普及していた。今回調査した新当流文書は岐阜県大垣市立図書館・桜井家文書、山口県防府市毛利博物館蔵文書であった。3.常陸国の新当流の真壁氏幹(まかべうじも)と(暗夜軒(あんやけん)・1550-1622)は真壁(まかべ)城の城主であったとともに鹿島神宮(かしまじんぐう)の「鹿島大使」役を務めた。このことから関東農村のみならず関西方面へも鹿島信仰を弘めることも視野に入れ、新当流を普及したことが考えられる。4.上総国安房国に普及した外他流は、伊藤一刀斎が(いとういっとうさい)、1580年(天正8)頃、外他(とだ)一刀斎景久(かげひさ)と名乗り、南総里見家家臣の宇部壱岐守弘政(うべいきかみひろまさ)、石田新兵衛(いしだしんべえ)、御子神助四郎(みこがみすけしろう)、古藤田勘解由(ことうだかげゆ)などへ指南した。その内容を文書にみると、「五点」「殺人刀(せつにんとう)、活人剣(かつにんけん)」「卍(まんじ)」など、一刀流との共通術語が確認される。また、神前儀式や神饌などが記されていた点できわめて中世的な兵法を表していた。また武器絵図には、里見家の水軍が水上戦で用いた武器(熊手、長刀、突く棒、さす又など)も描かれている。5.近江国堅田(おうみかただ)(滋賀県大津市堅田)は、外他流を創始した伊藤一刀齋の出身地という説がある。その堅田で居初(いそめ)家は1100年続く琵琶湖船頭頭の家。ここで外他流の祖流、冨田流文書(寛永年間)が所蔵されており、堅田水軍と伊藤一刀斎そして関東の里見(さとみ)水軍への伝播へ結びつく可能性もでてきた。6.幕末期上総国・下総国・安房国など現在の千葉県農村で普及した不二心流(ふじしんりゅう)開祖・中村一心斎(なかむらいっしんさい)(中村八平)の江戸における動向を伺うことができた。すなわち、関東における農村と江戸の剣術流派をつなげたのは江戸で活動していた剣術家たちであった。7.江戸幕末期、関東農村にもひろがった、「しない打ち込み試合稽古法」導入の理由の一つとして、外国船の着船によることが、弘前(ひろさき)藩文書(文久2年「御自筆の写」)に読み取ることができた。
著者
市原 恭代
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

2色覚者,多数派とは色の感覚が異なる者にとって赤は明るく目立つ色ではない。しかし情熱の色は赤だと知っている。また悲しみの色が青系の色であることもわかっている。それは後天的な学習によるものである。となれば色名による文字の刺激と色による色刺激では受ける印象に乖離があるはずである。また多数派と同士でも1型と2型では印象が異なることが予想される。この研究では色感覚が異なる者の色世界を感覚的に知るため、文字刺激と色刺激を用いてSD法による印象調査を行った。被験者,1群:1型2色覚者(以下P型強度と呼ぶ)20代~60代の男性13人,2群:2型2色覚者(以下D型強度と呼ぶ)30代~60代の男性9人,刺激:基本色名11色の色刺激と文字刺激因子分析を行った結果、今回の実験では最も因子負荷量が大きい値は全て正の値になった。第1因子は「にぎやかな、派手な、暖かい、明るい」第2因子は「濃い、重い、強い」第3因子はD型では「硬い」P型では「乾いた」の形容詞群に影響を与えていた。P型D型ともに第1因子は同じ成分であった。それぞれの形容詞群からそれぞれ第1因子に「感覚性」第2因子に「物量性」という因子名を付けた。P型D型ともに青の色刺激と青の文字刺激は似た傾向が出ていない。色刺激では第一因子さみしい、冷たい、地味な、暗いの感覚性因子が大きいが文字刺激ではこれらの因子は現れず、代わりに薄い、弱い、軽いの物理性因子が大きい。また、ピンクの色刺激と文字刺激も大きく異なる。ピンクの色刺激は第2因子物理性が大きい。しかし文字刺激では感覚性因子が大きい。また、緑は茶色系と似た傾向がでており、紫とも近い位置にある。P型に関しては、図3より青と緑とピンクのそれぞれ第1因子、第1,2因子、第1,3因子に大きく差が見られた。また、白、オレンジ、紫のそれぞれ第1因子、第3因子、第1因子にわずかながら傾向に差が見られた。
著者
黒瀧 悠太 椎塚 久雄
出版者
工学院大学
雑誌
工学院大学研究報告 (ISSN:03685098)
巻号頁・発行日
no.109, pp.143-146, 2010-10-30

This paper discusses our listening evaluations of the affective values of different percussive rhythms consisted bytwo kinds of MIDI timbre. Two-way analysis of variance (ANOVA) (pattern×BPM) were used to analyze. The resultsconfirmed that affective values changed with changes in rhythms. The applicability of this study to music therapy isalso examined.
著者
吉田 司雄 中沢 弥 谷口 基 小松 史生子 牧野 悠 清水 潤 今井 秀和 乾 英治郎 末國 善己
出版者
工学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

サブカルチャー領域を中心に、日本発の「忍者」「探偵」イメージは広く世界に浸透している。「忍者」表象に関する国内研究者の共同研究を推進する一方、「探偵」表象に関する研究ネットワークを海外の研究者と構築し、「忍者」と「探偵」とを接合させる形で、日本および東アジアにおける大衆的なイメージの生成過程を分析した。複数の表象が絡まり合いながら、ジャンル横断的に新たな物語コードが生成される様を明らかにした。