著者
三谷 靖
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.338-341, 1969-03
著者
田崎 民和 西村 治夫 薬師寺 道明 松村 隆 東島 博 森崎 秀富
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.353-359, 1990
被引用文献数
3

特異的な卵巣間質の増殖で特徴づけられるKrukenberg腫瘍の腫瘍形成までの過程を明らかにする目的で, ほとんど卵巣の腫大を認めない10例のKrukenberg腫瘍を転移の初期病巣と考えて病理組織学的に検討し, 以下の結論を得た. 1) 初期転移巣の組織形態としては, リンパ管侵襲のみの像, 充実性胞巣像, びまん性浸潤像の3種の基本形態に分類された. 2) 全例に卵巣門部のリンパ管侵襲がみられた. 3) びまん性浸潤型では, 印環細胞がリンパ管を介して卵巣門部より皮質に向かって, びまん性放射状に広がる像がみられ, さらに末梢においてリンパ管より間質に腫瘍細胞が漏出し浸潤していく所見が確認された. この時期では卵巣間質の反応は比較的軽度で, 浸潤の末端部において印環細胞がより豊富に存在していた. 4) 充実性胞巣を示すものでも, 充実性胞巣の中に間質の介在がみられ, 腫瘍の未分化な性格が示唆された. 5) 対側の腫大卵巣の組織形態は, 著明な卵巣間質の増生を伴う肉腫様像, 硬性癌像を呈するものがほとんどであった. 6) ABC法によるCEA染色では, 一見腫瘍細胞の存在が不明瞭な, 増生した間質の中にもCEA陽性の腫瘍細胞が多数存在していた. 以上の結果からKrukenberg腫瘍の腫瘍形成過程を考察すると, 転移経路は卵巣門部より侵入するリンパ行性転移であり, 門部から均等に卵巣全体への腫瘍細胞の浸潤がまずおこり, その後印環細胞の破綻による粘液の間質内漏出が引金となって間質の浮腫と増生が始まると考えられた. 卵巣腫大の大きな因子はこの卵巣間質の増生と浮腫であり, 卵巣間質のsarcomatousな変化は, そこに埋もれるように存在する未分化で上皮性性格に乏しい腫瘍細胞と, 増殖した卵巣間質によって形成されると考えられた.
著者
尾上,敏一
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, 1980-07-01

我々は,BBT表のみによる簡易かつ客観的排卵日推定法として次の様な方法を検討した.月経周期第1日より第10日までの基礎体温の平均値を求め,この上下0.1℃以内を低温相の変動範囲とした.4日連続してこの範囲を越えた場合高温相に入ったと考え,高温相に入る前日を排卵目と推定した.この方法の正確度を確認するため高感度赤血球凝集反応により連日早朝尿中LHを測定し,尿中LHピーク日(day0)を求めこれを基準として検討を加えた.なお尿中LHピークと血中のそれはよく相関することを確かめた.この方法により求められた推定排卵日は排卵の起こり得る確率の最も高いday0からday+1の2日間に36周期(69%),前後1日のズレを加えた4日間に46周期(88%)が一致した.従来の報告でも基礎体温より排卵目を推定した場合ほぼ同程度のばらつきを示し,黄体ホルモン以外の他の因子の影響を受ける基礎体温の限界とも考えられる.しかし我々の方法は,基礎体温のみから排卵日を推定せざるを得ない場合,簡易かつ客観的であるため,他の不明確な基準による排卵日推定法よりも有用であると考えられる.
著者
沢住 和秀 隣 雅晴 酒井 公平
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.p589-593, 1982-05

分娩前のオキシトシン負荷試験(以下OCTと略), 血中エストリオール(以下E_Sと略), 子宮内での胎盤付着部位, 分娩後の胎盤所見, 新生児出産体重の関連を206例について検討した.1.妊婦血中E_3値とOCTの結果とは必ずしも一致しなかった.2.OCT陽性及び疑陽性例では新生児出産体重と胎盤重量が小さく,胎盤異常所見のあることが多かった.3.胎盤重量と新生児出産体重はよく相関するが,妊婦血中E_3値とは相関が低い.4.胎盤の右後壁付着にOCT陽性,疑陽性の頻度が高く,左前壁付着に低い傾向があった.
著者
菅 整一 頓瀬 愛彦 蜷川 映巳
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.952-958, 1987

母体尿中エストリオール(以下E_3)測定し、胎児情報の一つとして広く利用されている。しかし、MEの進歩にともない、胎児情報源として、超音波診断法、NSTなどが利用されるようになり、尿中E_3値とNSTの結果との間にdiscrepancyの存在が指摘されるようになった。しかしE_3測定は、NSTと比較して、より多数の妊婦に施行が可能であり、スクリーニングの価値を持っていると考えられる。尿中E_3には、蓄尿の繁雑さと不正確さが伴うことから、血中E_3の測定がより正確に胎児情報を提供すると考えられるが、尿中のE_3が主に16-glucuronateであるのに比し、血中のE_3には多くの抱合体があり、どの抱合体を測定するのがより胎児情報としての価値が高いのか、抱合体間の代謝、排泄はどうなっているのか等についての知見は乏しい。これらの点の解明を目的として研究を行った。 1. 尿中におkるE_3抱合形の組成を検討した。正常妊婦ではE_3-Gが90%以上を占めるが、妊娠中毒症妊婦ではG-S分画が正常妊婦に比し有意に高値であった。 2. 血中E_3を分娩前より経日的に測定した。分娩前にはE_3は全抱合形とも減少傾向を示したが、分娩直前に総E_3は上昇するが、それは主に抱合形の上昇によるものであった。妊娠中毒症と糖尿病合併妊娠の1例では、G-S分画の低下が著明であった。 3. 分娩時の尿、母体血、胎盤後血、臍帯血のE_3の抱合形を測定した。臍帯血中では60%がSで、胎盤後血、母体血では50%以上がG-Sであり、尿中では80%がGであった。 4. 胎盤潅流実験では胎盤は加水分解能のみをもち、抱合能をもつ結果はえられなかった。以上の結果および家兎腎潅流の予備実験から、母体肝が主たる抱合の部位であり、腎では抱合形のclearanceを行っていると考えられる。
著者
須田 稲次郎
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.10, pp.1197-1206, 1966-10

エレクトロニクスの一つである超音波診断法は, 胎児に対して無害であるとされるので, 産婦人科領域でも, 頻回に実施出来, 方法も簡単, 且つ正確度が高く, 患者に無害, 無痛の点から学会でも注目される様になつた. 日本無線製SSDII型診断器を使用し(振動子2.25及び5MC), (1)胎児児頭大横径計測, (2)妊娠早期診断(3)その他, 産婦人科で日常臨床上興味ある疾患の診断等について検討し, 種々の知見を得た. (1)本法による胎児大横径計測値は90%以上の例について実測値との差が±0.3cmであつた. 帝切, 及び骨盤位分娩例も, 同様の成績であつた. (2)正常妊婦に就いて, 妊娠経過に伴う胎児大横径計測値より, その胎児成長過程を知り, これと中毒症例の連続的な大横径値の変動とを比較し, 後者は, 殊に混合型では正常妊婦に比べて低値を示すものが多かつた. (3)本法により, 分娩前に測定した胎児大横径値とその児体重とは相関関係があり, その回帰直線により, 成熟児ではほぼ±200g程度の偏差で, 子宮内児体重の推定が可能であつた. (4) 妊娠早期診断(経腟法); 妊娠週数が進むにつれて子宮腔エコーの高さも増大の傾向を示し, 妊娠7週以後, 妊娠診断はかなりの精度で可能であつた. (5)その他卵巣腫瘍, 子宮筋腫, 胎位, 胞状奇胎等の診断及びその鑑別について検討し, 補助診断法として有意義である事を認めた.