著者
石田 明日香 高柳 昌芳 保科 架風 岩山 幸治
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.99-126, 2023 (Released:2024-01-11)
参考文献数
16

現在, バスケットボールの選手評価に使われる指標には, 評価値の信頼性に関する情報を得ることや選手同士の相乗効果に関する評価が難しいという問題がある. これに対し本論文では, チームメイトや対戦相手など同時に出場している選手の能力や, チームメイトとの相乗効果を考慮に入れたモデルをベイズ推定することでそれらの問題を解決する選手評価が可能になることを示した. また, 選手の攻撃・守備能力などの事後分布を解析的に導出することで, 選手の能力評価値やそれらのアフィン変換で得られる指標のベイズ信用区間を構築し, 能力値の推定の不確実性についても評価できることを示した. これは, マルコフ連鎖モンテカルロ法を利用するよりも計算コストを抑えることが可能である. また, アメリカ National Basketball Association (NBA) のデータを利用し, 既存手法との比較検証を実施し, 提案手法は既存手法よりも妥当な選手評価を提供することを確認した.
著者
村上 征勝
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-74, 1997-05-30 (Released:2017-05-01)
参考文献数
23

近年のパソコンをはじめとするデータ処理機器の発達と,多変量解析などを中心とする統計手法の進歩に伴い,著者や成立時期などが不明の文献に対し,文の長さ,品詞の使用率,単語の使用率などを計量分析することによって,そのような問題の解決を試みる新しい文献研究の分野が確立されつつある. これまで,『新約聖書』の中の「パウロの書簡」,『源氏物語』,『ジュニアス・レター』,『連邦主義者』,『紅楼夢』など多くの重要な著作物が分析されており,それらの研究を通じて,文献の計量分析における問題点は次第に明らかになってきた.この論文では,まず文献の計量分析の歴史を簡単に紹介し,次にこれらの研究から明らかになった計量分析の課題を,特に日本語文献の計量分析に重点を置き論ずる.
著者
大谷 隆浩 菅澤 翔之助 野間 久史
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.17-33, 2018 (Released:2019-02-27)
参考文献数
41

過去十数年の間に世界中で行われたゲノムワイド関連解析 (genome-wide association study; GWAS) の成果により, 様々な形質に関連する数千の一塩基多型 (single nucleotide polymorphism; SNP) が同定されている. これまでのGWASでは, 集団内におけるマイナーアレル頻度がある程度高いSNPを対象として研究が行われてきたが, 近年のDNAシークエンシング技術の飛躍的な発展に伴い, 頻度が極めて低い希少変異 (rare variant) に注目した研究が行われるようになっている. 統計学的な観点からも, 希少変異の関連解析は頻度が高いSNPの解析に比べてより困難となることから, GWASで一般的に採用されている単一のSNPによる単変量の関連解析ではなく, 注目する遺伝子やDNA領域内にある複数の変異の情報を集約した上で, 表現型との関連を検定する手法が提案されている. 本稿では, 近年の様々な方法論的研究で提案されている, 希少変異を対象とした関連解析手法のレビューを行う.
著者
村上 征勝
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-74, 1997
参考文献数
23

近年のパソコンをはじめとするデータ処理機器の発達と,多変量解析などを中心とする統計手法の進歩に伴い,著者や成立時期などが不明の文献に対し,文の長さ,品詞の使用率,単語の使用率などを計量分析することによって,そのような問題の解決を試みる新しい文献研究の分野が確立されつつある. これまで,『新約聖書』の中の「パウロの書簡」,『源氏物語』,『ジュニアス・レター』,『連邦主義者』,『紅楼夢』など多くの重要な著作物が分析されており,それらの研究を通じて,文献の計量分析における問題点は次第に明らかになってきた.この論文では,まず文献の計量分析の歴史を簡単に紹介し,次にこれらの研究から明らかになった計量分析の課題を,特に日本語文献の計量分析に重点を置き論ずる.
著者
亀岡 瑶 宗像 昌平 八木 圭太 山本 義郎
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.181-188, 2016 (Released:2017-05-01)
参考文献数
4

顧客の購買記録から何らかの基準で顧客を分類する意義のひとつに, 分類されたそれぞれの顧客群に対する各々の購入の特徴を見出すことで, 別個のレコメンドが考えられるという点がある. 自己組織化マップ (SOM) を用いることで, あらかじめクラスター数について議論する必要なく, 類似する観測データをまとめることができる. 本研究では, 会員制度を導入しているスーパーマーケットのPOSデータに対して, SOMに関するアルゴリズムを適用させ, 顧客の分類を行う. また, SOMによるマッピングの可視化を用いた顧客や店舗の特徴分析を行った.
著者
安川 武彦
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.41-55, 2015 (Released:2017-05-01)
参考文献数
42

単語文書行列によって表現されたテキストデータのように, 非負値しかとり得ないデータを分析する方法として非負値因子行列分解がある. これは, 非負の要素のみからなる行列を, 非負制約の下で2つの行列に分解するものである. 本稿では, テキストデータの解析を行う上で重要と思われる点に焦点を絞り, 非負値行列因子分解の概要を紹介する. さらに, 過去25年間の日本計算機統計学会和文誌の要旨を対象に, 非負値行列因子分解を用いた分析結果を報告する.
著者
石岡 恒憲 亀田 雅之
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-19, 2003-12-20 (Released:2017-05-01)
被引用文献数
4

アメリカで実施される適性試験のひとつであるGMAT(Graduate Management Admission Test)において,実際に小論文の採点に用いられているe-raterを参考にして,その日本語版ともいうべきJessを試作した.Jessは,文章の形式的な側面,いわゆる文章作法を評価する「修辞」と,アイディアが理路整然と表現されていることを示す「論理構成」と,トピックに関連した語彙が用いられているかを示す「内容」の3つの観点から小論文を評価する.毎日新聞の社説およびコラム(「余録」)を学習し,これを模範とした場合に適切でないと判断される採点細目に対して減点することで採点を行う.また書かれた小論文の診断情報を提示する.システムは現在UNIX上で動作し,800-1,600字の小論文を通常能力のパソコン(Plat'Home Standard System 801S; Intel Pentium III 800MHz; RedHat7.2)で1秒程度で処理する.
著者
上田 太一郎
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.171-175, 1996-05-31

判別分析は,多変量解析手法において,回帰分析とならんで使用頻度の高い有用な手法である.その際,判別分析の説明変数選択は重要なテーマであり,統計解析ソフトBMDP,SPSS,SASなどにおいてステップワイズ変数増減法がサポートされている. 一方,AT&Tベル研で開発され日本でも普及しているデータ解析言語Sでは,回帰分析における変数選択基準(leaps)はサポートされているが,正準判別分析(discr)における変数選択用の関数は標準で用意されていない. 本稿はS言語において,正準相関分析(cancor)と回帰分析の変数選択基準(leaps)を用いて判別分析の変数選択を試みたものである.
著者
山本 成志 田崎 武信 後藤 昌司
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-9, 1992-05-16
被引用文献数
1

本報告では,二つの治療(薬剤)を二つの期で試験する2治療2期のクロスオーバ試験に限定し,臨床試験におけるクロスオーバ・デザインの適用の是非を再検討する.とくに,文献にみられるクロスオーバ・デザインの肯定論と否定論の系譜を提示する.そして,クロスオーバ・デザインのアキレス腱ともいうべき持ち越し効果の問題を配慮して,試験の「計画」段階における,第1治療期と第2治療期の間の洗い流し(wash-out)期間の設定,治療の被験者心理への侵襲性(治療の盲検化),応答(評価指標)水準の経時的な変化,被験者の治療順序群への割付けでのバランス,への注意を喚起する. クロスオーバ試験成績の「解析」段階で持ち越し効果が検出された場合に,事後的に対処できる一つの手段として,応答観測値の変換を考えた.実際に,ベキ変換と交替条件付き期待値(ACE)に基づいて5種の文献例を再解析した結果,持ち越し効果は変換によっても救済されにくいことが示唆された,したがって,クロスオーバ・デザインの適用では,計画段階での事前の検討がとりわけ重要となる.最後に,クロスオーバ試験が比較的に多用されている臨床分野について触れる.
著者
坂本 亘 井筒 理人 白旗 慎吾
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1-2, pp.55-94, 2009-05-31 (Released:2017-05-01)
参考文献数
100

スプラインによる平滑化の研究の近年の動向を概説する.平滑化(罰則付き)スプラインが混合効果モデルで表現できるという点が注目されている.打ち切りベキ基底を用いる罰則付きスプラインは,そのまま混合効果モデル表現に帰着され,スプラインや罰則項の複雑な計算を回避することから,とくに有用である.罰則付き回帰問題とBayes流接近法との関連も重要である.罰則付きスプラインの滑らかさを制御する平滑化パラメータの選定問題では,従来は(一般化)交差確認法の利用が主流であった.しかしながら,混合効果モデルの分散パラメータの推定問題に帰着されうることから,制限付き最尤推定法(REML)またはこれと同等な経験Bayes法がより有用であり,実際に主流になりつつある.罰則付きスプラインによる線形(多項式)回帰仮説の検定は,ランダム効果の分散が0であるか否かの検定に帰着され,制限付き対数尤度比統計量が有用とされている.ただし,その帰無分布は漸近的には得るのが困難であり,乱数を用いて再現される.シミュレーションにより,対数尤度比統計量よりも平滑化パラメータのREML推定量自体が高い検出力を与えることが示される.最後に,罰則付きスプラインは諸種の回帰モデルへの拡張が可能であり,その推測方法は混合効果モデル表現およびBayes流接近法により展開される.
著者
酒折 文武 山本 義郎
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.31-32, 2023 (Released:2023-08-18)
参考文献数
3
著者
阿部 貴行 稲葉 由之 岩崎 学
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.79-94, 2007-02-28 (Released:2017-05-01)
参考文献数
22

多くの分野(例えば,標本調査,医学研究,工業実験等)において,研究者はっ様々な理由により不完全データに直面することが多い.したがって,研究者は,研究の計画段階から不完全データの対処法を検討する必要がある.このようなニーズに応える形で,近年,不完全データの統計解析ソフトウェアが増えている.本論文では,不完全データの統計解析を提供する6種類のソフトウェアの機能や特徴の比較検討を行い,使用目的に応じたソフトウェア選択に対する提案を行う.不完全データの統計解析手法として,主にEMアルゴリズム(Dempster et al., 1977)及びMultiple Imputation法(Rubin, 1987)に焦点を当てる.最後ら擬似乱数データを用いて各ソフトウェアの出力結果の比較検討を行い,統計手法間の結果の違いについても考察を行う.
著者
宇佐美 慧
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.187-200, 2017 (Released:2020-09-12)
参考文献数
35

本報告では, 縦断デザインに着目して, 主要な変化のパターンを抽出して対象をグループに分類しながらグループ間差を説明する独立変数を同時に探索する方法である, 構造方程式モデル決定木 (SEMTree) の方法について紹介する. SEMTreeでは, 従属変数間の関係性を表現するモデルであるテンプレートモデルをSEMにより設定してモデル内の母数を推定しながら, 母数のグループ間差を説明するのに有効な独立変数を, 教師あり学習である決定木を用いて探索して対象を分割していく. そして, SEMTreeにおける方法論上の課題の1つである, テンプレートモデルの誤設定の問題について, 実際の分析例を踏まえながら説明していく.