著者
林 邦好 冨田 誠 田中 豊
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.89-101, 2008-01-31 (Released:2017-05-01)
参考文献数
11

主成分分析(PCA)は,変量の次元を縮約する多変量統計解析の代表的な手法である.主成分の意味付けをするために,固有ベクトルを解釈することになるが,特に主成分数を多くとる場合など,しばしば主成分の解釈が困難な状況に遭遇する.解釈を容易にするために,因子分析の場合のように軸を回転させることができれば便利である.先行研究では,主成分係数を回転対象とする方法と主成分負荷量を目転対象とする2つの立場がある.本論文ではPCAを次元縮約の方法と捉え,縮約された低次元空間の中で解釈し易いように座標軸を導入するという立場で,Jolliffe(1995)の提唱した3つの基準化の方法及び回転対象として主成分係数・主成分負荷量のどちらを選ぶかという問題を整理し,2組の実データ及び因子分析モデルに従って生成した人工データに適用して数値的検討を行った.その結果,基準化3(分散が1に等しくなるように基準化した場合)では,主成分負荷量を直交回転する方が対比が形成されにくく,く1つの軸に1つの意味が付与できることが明らかになった.
著者
高橋 正憲 羅 明振 栗原 考次
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-16, 2022 (Released:2023-01-25)
参考文献数
23

COVID-19 (2019年に発生した新型コロナウイルス感染症) は, 2019年12月31日に中華人民共和国湖北省・武漢市で最初の症例が確認され, WHO (世界保健機関) が2020年3月11日にパンデミック (世界規模の大流行) 宣言をする事態となった. COVID-19の初感染が観測されるまでの時間に影響を与える要因を理解することは, 次回パンデミックが起きた際に各国が初期段階で取るべき行動指針を考える一助となることが期待される. 本研究では, 初感染までの時間を複数の社会経済的要因の関数として表現した2成分混合回帰モデルを提案する. 分析の結果, 感染初期は飛行機での人の移動が原因となり中国から距離の近いアジア国々やヨーロッパやアメリカなどの先進国に感染が広がっていったことが示唆された. また, 感染中期以降は, アフリカや南米などの人口が多い国に感染が広がっていったことが示された.
著者
廣瀬 慧
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.45-60, 2019 (Released:2020-07-17)
参考文献数
58

因子分析およびその一般化である構造方程式モデリングは, 変数の因果関係を推定する有効な手法として古くから用いられている. 近年, これらのモデルにおけるL1正則化法が注目されている. 本稿では, L1正則化法に基づく因子分析および構造方程式モデリングの最新の研究について報告し, 今後の展望について考察する.
著者
石岡 恒憲
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.3-13, 2006-06-30 (Released:2017-05-01)
参考文献数
15
被引用文献数
6

K-means法の逐次繰り返しとBICによる分割停止基準を用いることで,クラスター数を自動的に決定するアルゴリズムx-means法を改良した.その手続きは,分割順序に起因する好ましくないと考えられる分割クラスターを併合するものである.この併合操作により,さまざまな事例に対して,適当と考えられるクラスター数を得ることのできる事例の数が大幅に増加することが確認された.この方法は,クラスター数未知のときに発見的な方法に拠らずに情報理論的に最適と考えられるクラスター数を求めることができる.その計算量(computational complexity)は標本サイズをN,クラスター数をkとしたとき,ο(N log k)となる.
著者
種市 信裕 今井 英幸 関谷 祐里
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.11-17, 1998
参考文献数
6

回帰分析ではあるデータが回帰係数の推定に及ぼす影響を評価するために回帰診断が広く用いられている.Andersen (1992)はセル確率が未知パラメータにより表現される多項モデルのパラメータ推定において,各セルが推定に与える影響力を評価するために回帰診断におけるCook距離(Cook & Weisberg, 1982)に類似した指標を提案した.この指標はセルの観測値が0であるという条件付分布のもとでの推定量を用いて各セルがパラメータ推定に与える影響を評価するために,統計モデル的な意味での解釈が難しい.そこで本論文においては統計モデル的に意味のある影響力評価のための指標の提案を行い,さらにその指標の近似指標を与えた.
著者
岩崎 学
出版者
日本計算機統計学会
雑誌
計算機統計学 (ISSN:09148930)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.41-56, 1991-12-01 (Released:2017-05-01)
被引用文献数
3

射影追跡は,多次元データのもつ特徴的な構造を,直線あるいは平面などの低次元空間に線形射影することによって探るデータ解析手法であり,コンピュータの計算能力およびそのグラフィック機能を活用するものである,本論文では,射影追跡の考え方ならびに実際の計算法を概観し,いくつかの例に適用した結果を報告する. 射影追跡は,射影の興味深さを表す射影指標と呼ばれる関数の最大値を与える射影を探し出すという手順で実行される.そして,射影の興味深さを非正規性としてとらえる点に特徴がある.また,射影追跡ならびにその考えに基づく多変量解析手法は,高次元空間ではデータ点間の距離が大きくなってしまうという「次元の呪い」を回避できる利点をもっている.