1 0 0 0 OA 日浦勇氏略歴

出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
vol.1985, no.119-120, pp.36, 1985-03-10 (Released:2017-08-19)
著者
Takahashi Mayumi
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.108-116, 1981-09-20

筆者は,"第1次静岡大学コロンビア・アンデス学術調査,1967"(静岡大学理学部・静岡大学山岳会)および"第1次奥アマゾン調査"(日本アンデス会議・共同通信社)に参加したが,そのときに採集したジャノメチョウ科のスカシジャノメ亜科Haeterinae(11種)とオナガコノマチョウ亜科Biinae(2種)の記録を報告する.この中には,コロンビア在住のレオポルド・リヒター博士(Dr. L. RICHTER).が1972年にコロンビア南端部のコトウエ川(Rio Cotuhe)で採集された数頭の標本のデータも含まれている.調査した場所は,ペルーのディンゴ・マリア(Tingo Maria)を除いては,いずれもコロンビア領に属し,コロンビア北部のサンタ・マルタ山地(Sierra Nevada de Santa Marta),大平洋岸のキブド市(Quibdo)に近いラ・トゥロへ(La Troje),その南側のサバレタス(Zabaletas),カリマ川の下流(Bajo Calima)付近などブエナヴェントゥーラ(Buenaventura)市の周辺,カウカ川に沿うラ・ピンターダ(La Pintada),東コルディエラ山脈(Cordillera Oriehtal)の山麓の小都市フロレンシア(Florencia)に近いサン・ホセ(San Jose),コロンビア南端部のアマゾン河に沿うレティシア(Leticia),それにペルーのウアジャガ川(Rio Huallaga)に沿うティンゴ・マリアである.これらのうち,すくなくとも,サンタ・マルタ山地,ラ・トゥロへ,サン・ホセなどのスカシジャノメ亜科とオナガコノマチョウ亜科に関しては,まだ発表されたことがないので,ここに発表されたこれらの地域に関するデータは,分布上の新知見といえよう.上記の地域の中で,これらの蝶がもっとも豊富に見られたのは,サン・ホセ付近の熱帯降雨林である.このサン・ホセというところは,ちょうどアンデスの一部・東コルディエラ山脈がアマゾンの大平原と接する位置にあり,大部分は牧場になっているが,ところどころに残されている熱帯降雨林には,おどろくほどのスカシジャノメ亜科の蝶が見られることがある.ここでは1973年8月26日から27日かけて,計6種21頭の個体を採集することができた.同地ではさらにオナガコノマチョウ亜科に属するもの1種1頭を採集した,この両亜科の蝶は,いずれも南米の熱帯降雨林の林床にすむもっとも代表的なものである.スカシジャノメ類は,林床の地表すれすれの低いところを活発に飛びまわり,ときどき地表や下生えの葉上に翅を半ば開いた状態で静止するが,感覚は鋭敏で,人の気配を感じるとすぐ飛びたち,下生えの内部をくぐるようにして飛び去る習性がある.CithaeriasやHaeteraに属するものは,翅の大部分が透明で,うす暗い熱帯降雨林の内部では,後翅の赤色斑や黄色斑のみがよく目立つ.食草は未知であるが,おそらくイネ科の草本ではなく,ヤシ科そのほかの林床性の単子葉植物ではないかと思われる.このリストに含まれる13種の中でもっとも注目されるものは,Pierella hortona HEWITSONである,この種は属Pierellaの中でも比較的まれな種であり,エクアドルのアマゾン地域から原名亜種hortona HEWITSONが,ブラジル北西部のネグロ川Rio Negro流域から亜種hortansia C. et. R. FELDERが知られている.このリストの中に含まれているものは,筆者がサンホセで採集した1♂1♀と,リヒター博士がコトウエ川で採集された1♂であるが,これらは原名亜種hortonaに比べて,雌雄ともに前翅中室端の青紫色斑が小さく,またその外縁部が直線的になり,その青紫色斑は原名亜種のように楕円形にならずに半月形となる.また,後翅の青紫色斑の位置は,亜種hortensiaのように内側にずれることがなく,原名亜種と大差がない.おそらくコロンビア南部に分布する新亜種に相当するものと思われるが,材料が十分でなく,変異の傾向も明らかでないので,ここでは新亜種としての記載を保留する.
著者
宮崎 俊一 石井 実
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.88-96, 2004-03-20 (Released:2017-08-10)
参考文献数
17
被引用文献数
1

2000年5月から2002年5月にかけて,京都府西南部の西山公園予定地(以下,西山)および大原野森林公園(以下,大原野)の2調査地において,トランセクト法によりテングチョウLibythea celtis celtoides Fruhstorfer成虫の季節消長を調査した.西山は海抜約90mの丘陵地で,谷あいには畑,水田,ため池,屋敷,社寺があり,その周辺はコナラ,アカマツなどを主体とする雑木林とモウソウチク林に囲まれていた.大原野は海抜約600mの稜線と海抜400-450mの渓谷を含む山地で,コナラやアカマツを主体とする雑木林,ケヤキ林,スギ・ヒノキの植林などで被われていた.本調査の結果,本種成虫の季節消長には,羽化直後の活動期(I期),越夏期(II期),秋期の活動期(III期),越冬期(IV期),越冬後の活動期(V期)という5期が認められた.羽化直後の活動期(I期):5月下旬から6月中旬.成虫の密度は他の期と比べて最も高く,成虫密度(ルート1kmあたりの目撃個体数)は,西山では2000年が10,2001年が40,大原野では両年とも30-40個体であった.成虫は田畑や雑木林の周辺で群がって吸水するなどの行動が顕著であった.また,ナタネの花から吸蜜する個体が見られた.越夏期(II期):6月下旬から9月下旬.夏眠期と考えられ,ごく少数の成虫しか観察されなかった.7月にクリから吸蜜する個体が見られた.秋の活動期(III期):10月上旬から11月上旬.成虫密度はI期の数%から20%程度であった.田畑や雑木林の周辺に少数が集合したり,ノコンギク,セイタカアワダチソウから吸蜜するのが観察された.越冬後の活動(V期):3月中旬から6月上旬.このうち4月下旬までは密度が高く,I期の1-30割程度のピークを示した.5月上旬以降は密度が低下し,一部は6月上旬まで確認された.両調査地ともに2001年の成虫密度が高く,周辺地域と連動した発生密度の高まりが考えられた.しかし,2000年は両調査地で成虫密度に差があったことから,密度変動の様相は隣接地域でも異なることがわかった.本種の生息には食樹ばかりでなく,新成虫の集合する田畑や雑木林の周辺などの明るいオープンスペース,越夏と越冬のための樹林などが必要であることがわかった.本種は,それらの要素を含む里地里山のような適度な撹乱がくりかえし加わる環境を放浪する性質をもつものと考えられる.
著者
高橋 真弓
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1-2, pp.17-37, 1970-04-30 (Released:2017-08-10)
被引用文献数
1

1.キマダラヒカゲNeope goschkevitschii (MENETRIES,1855)の中には,"平地型"と"山地型"とが知られているが,両者は,たがいに別種としてあつかわれるべきであり,前者をサトキマダラヒカゲ,後者をヤマキマダラヒカゲとよぶことにしたい.学名については,さらに慎重な検討が必要である.2.両種とも,日本列島に広く分布し,サトキマダラヒカゲは北海道中部から九州南部にいたる地域の平地および山地に,ヤマキマダラヒカゲはサハリンから九州南方の屋久島にいたる地域の,おもに山岳地帯に分布している.3.両種の成虫の差異は,翅形,縁毛の分岐数,および斑紋などにあらわれるが,たがいにきわめて近似であるために,同定のさいには,多くの特徴から総合的に判断する必要がある.これらの特徴は,山地種指数I(♀♂に共通)および山地種指数II(♂のみ)によって,かなりよくあらわすことができる.裏面の黒化の状態を黒化指数で示すと,一般にヤマキマダラヒカゲでは黒化がすすみ,また両種とも春型では夏型よりも黒化する傾向がみられる.黒化指数は,山地種指数にくらべて環境の影響をうけやすい.4.幼虫はおもに5令,一部は6令に達してから蛹化するが,各令期において両種の差がみとめられ,ことに2令幼虫においていちじるしい.両種の差は,形態のみでなく,習性にもみとめられる.5.両種とも落葉中で蛹化し,懸垂器によって尾端を枯葉に付着させる.蛹の形態には,両種間に大きな差はみられない.6.両種とも低地では年2回,高地では年1回の発生となるが,ヤマキマダラヒカゲでは,年2回発生の上限(標高)が高くなる傾向がある.サトキマダラヒカゲは,各種のタケ・ササ類の群落に発生するが,ヤマキマダラヒカゲの発生地はササ属Sasaの群落に限られる.成虫の習性にも,両種のちがいがみとめられる.
著者
高橋 昭 石田 昇三
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3-4, pp.61-65, 1969-12-30 (Released:2017-08-10)

ナガサキアゲハPapilio memnonは東南アジアに広く分布し,幾つかの地理的亜種や型が記載されている.本種の♀は無尾型と有尾型の2型があるが,その斑紋の多形態性の規模の大きさと擬態のために,変異に基づく分類学あるいは動物地理学,遺伝学の研究対象として報告が多い.わが国は本種の棲息分布域の最北端に相当し,九州本島や奄美大島,沖縄本島に産することは古くから知られており,九州本島産はsubsp. thunbergii SIEBOLD, 1824として,奄美群島や沖縄本島産はsubsp. pryeri ROTHSCHILD, 1895としてそれぞれ別亜種とされ,この両地域の♀は例外的な記録を除きすべて無尾型である.一方台湾産は♀は有尾と無尾の2型をもち,また♂は翅表の青白色鱗がよく発達することからsubsp. heronus FRUHSTORFER, 1903と命名されているが,沖縄本島と台湾との間に点在する先島諸島からは本種の採集記録が乏しく,特に♀の明確な採集記録がなく,従って分類学的な検討も石垣島産の1♂についてなされたのみであった.筆者の一人石田は大林延夫氏とともに1964年先島諸島を訪れ,西表島で本種1♂2♀♀を採集することができたので報告する.ここに発表する♂は先島諸島産としては4頭目のものであるが,♀は最初の記録である.
著者
Mironov V. GALSWORTHY A. C. 薛 大勇 矢崎 克己
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.39-57, 2004-01-20
被引用文献数
5

中国のEupithecia属に関しては,Vojnitsによる多数の論文(過去30年間に114新種4新亜種が記載されている)があるが,その全容については未解明の部分が多く残されている.筆者らはAlexander Koenig博物館(ボン)のHoneコレクション,およびロンドン自然史博物館,中国科学院動物研究所などに所蔵されている本属の標本を調査し,多数の新種を見い出した.本報ではそれらのうち以下の12新種を記載した.E.amicula Mironov&Galsworthy(四川,雲南,陜西),E.honestaMironov&Galsworthy(雲南),E.albimedia Mironov&Galsworthy(四川,雲南),E.salubris Mironov&Galsworthy(山西,陜西),E.antiqua Mironov&Galsworthy(雲南),E.tibetana Mironov&Galsworthy(チベット),E.citraria Mironov&Galsworthy(雲南),E.russula Mironov&Galsworthy(チベット),E.brunneilutea Mironov&Galsworthy(雲南,ネパール),E.luctuosa Mironov&Galsworthy(福建),E.apta Mironov&Galsworthy(雲南),E.fortis Mironov&Galsworthy(雲南).
著者
長崎 二三夫 山本 毅也 北方 健作 脇坂 昇
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.5-16, 2014-04-25 (Released:2017-08-10)

はじめに オオムラサキは,最も大きなタテハチョウの1種であり,日本,朝鮮,中国,台湾等に分布している.通常年1化で,幼虫越冬をする.翅表は黒褐色を基調に,♂は翅表の基部を広く紫色が被い,♀では紫色を欠く.日本のオオムラサキの♂の翅表については,紫色が少し薄い北海道から黒みを帯びる九州まで,微妙な地方変異が知られている.海外に目を転じると,台湾において青く輝くオオムラサキが知られており,また最近,長野県産の輝きの強い個体が提示されており(小舘,2009),これも青いオオムラサキの1型である可能性が高い.著者の一人は大分県北部から1頭の青みを帯びた輝きの強い♂を飼育により得ている.そんななかで滋賀県の同好者の間で(ブルー)と呼ばれているオオムラサキの存在を聞くに及んだ.同産地の越冬幼虫をたまたま累代飼育していたところ,青いオオムラサキの出現を記録し,遺伝形式を解明すべく累代実験を行うこととした.最初の越冬幼虫は,2005年に滋賀県の鈴鹿山地より得たものである.飼育はそれぞれの著者の庭に植えてあるエノキを用い,ナイロンネットの袋掛けを行い,越冬幼虫を4月のエノキの芽吹きに合わせて放ち行った.成虫の羽化後♂は約10日経ち成熟してから,♀は羽化後2日目から7日目までを交配に用いた.交配はハンドペアリング法で行った.採卵はエノキの袋掛けネット内で行った.12月上旬に越冬幼虫が木を降りる頃を見計らい回収し,土を入れた植木鉢に保管した.2005年12月に野外採集で得られた越冬幼虫からF2世代まで3世代累代して青い異常個体を得,その後出現した青い異常型個体から世代を重ねて純系作成を試みた.内交配を繰り返し,得られる翅色彩についてすべての組み合わせによるペアリングをして,純系の作成を目指した.一腹から得られた次世代の全個体が青色異常型となった後には,純系であることの確認のために純系個体同士の交配を行った.青い異常型が出現する遺伝形式を見極めるために,青純系と新たに野外から得た幼虫より羽化した正常型との間で交配実験を計画した.2010年原産地より5km離れた地点から得た30頭の正常型と青純系の2頭の♂,2頭の♀との間で4組の交配を行った.飼育結果 1.青い異常型個体の出現 Table 1の通り,2005年12月採集の同一産地に由来する正常型の1♂1♀を交配し,内交配による累代飼育の結果,2008年6月に3世代目として羽化した3頭の♂のうち2頭が青く輝く異常型であった.2.青の純系の作成の試み 累代を続けた結果,3世代後の組み合わせの一つから羽化した♂は,30頭すべてが青で,F5世代で青の純系が誕生したことが示唆された.これらが本当に純系であるかどうかの確認を行うため,純系と思われる2家族同士の交配を2011年6月から7月にかけて行った.翌年2012年6月から7月にかけて,Cross11#1,#2それぞれから38頭と91頭の青の♂のみが羽化し青の純系であることが確認された.3.青純系と野外の正常型との交配実験 前節で得られた青の純系♂と♀を,野外の正常型と交配させた.これらの4組の組み合わせから,翌年2012年6月から7月にかけて,正常型の紫の♂46頭のみが羽化した.青が1頭も羽化しなかったことより青は劣性であることが強く示唆され,羽化した♂,♀ともすべて青の遺伝子をヘテロの状態で保持していると考えられた.最後に2012年7月に上記のF6-3,4,5,6同士の間で交配を行った.すなわち青のヘテロ同士で交配を行ったことになる.2013年6月から7月にかけてCross12#1-4のそれぞれから青と紫の両方が羽化した.上記の交配に用いた両親は,いずれも青に関してはヘテロでありまた青の遺伝子は劣性と想定していたので理論的に導かれる交配の結果は次のようになるはずである.♂Aa x ♀Aa→AA+2Aa+aa→3紫+1青 ここでA:優性の紫の遺伝子 a:劣性の青の遺伝子 AA:ホモの紫 Aa:ヘテロの紫 aa:ホモの青 すなわち理論的には青対紫の分離比は1:3であり,青出現率は0.25(1/4)のはずである.そこで実験結果につき統計学的検討を行うこととした.Cross12#1-4それぞれについて理論的な分離比から仮定される青出現率(p_0)に対し実験で得られた比率(p)が有意に異なるかを正規近似を用いて検定したところ,4組ともメンデル遺伝の理論分離比で劣性遺伝すると判断された(Z検定:Cross12#1-4それぞれ|Z_0|=0.425,p=0.67;|Z_0|=0.994,p=0.32;|Z_0|=0.478,p=0.63;|Z_0|=0.266,p=0.79).考察 以上の飼育実験より青い異常型はメンデルの劣性遺伝をすることが確かめられた.飼育実験を重ねるうちに集積された標本を検討すると,青の青さにスカイブルーから比較的暗いダークブルーまで,連続した微妙なバラツキのあることに気付いた.青と正常型の決定的な違いは,青は斜めに傾けて翅表を観察すると強く金属的に輝くことである.この金属色は構造色とよばれ鱗粉の微細構造に由来するものである.正常型オオムラサキの鱗粉は大きく2種類に分けられ,そのうちの1種類が櫛状構造に外皮様のヒダが何層にも重なってついており,これが構造色を生み出しているという(Matejkov-Plskova et al.,2009).鱗粉の櫛状構造の櫛についている多数のヒダの間隔が正常型では103nmに比し青では169nmと広く,この広いことが光学的研究により,青く輝く原因となっていることが突き止められている(永井ら,2009).この間隔が169nmより少し狭いと,濃い青へ,広くなるとスカイブルーの方ヘバラツクのではないかと想像される(吉岡,私信).スギタニ型にも青い遺伝型が出現し,スギタニ型での青はギラツキ感がやや弱く,また青みが暗い傾向がある.これらの微妙な変異をまとめてFig.7からFig.38まで提示してみた.連続した変異が理解されるものと思う.青い異常型の存在は,各地でささやかれてきた.先に示した大分県をはじめとして,福岡,京都,山梨からは報告は無いものの知られており,栃木,北海道からは最近報告されている.栃木県の報告では,同一のエノキから得られた8頭の越冬幼虫より青が2頭出現しており,遺伝の関与を示唆している(瀬在,2012).北海道では2011年と2012年のオオムラサキの大発生の年に,計6頭の青い異常型が採集されたと報告しており(上野・高木,2013),それぞれの年に,500〜600頭のオオムラサキが容易に捕獲できたとのことである(高木,私信).そうであればおおざっぱであるが,青の出現率は約0.5%(6頭/600×2年)となり極めて稀であることが理解される.オオムラサキは、蝶の愛好家の間では最も人気ある蝶の一つであり,過去半世紀以上数知れぬ越冬幼虫が飼育されてきた蝶である.にもかかわらず青い異常型の報告は,上記のように最近の数例しかない.それほど稀な型ということであろう.この青い異常型は極めて稀で,分布が限られており,保護が計られねばならない.その理由で詳しい産地の公表は控えさせていただいた.その一方で保護の目的で著者たちは累代の努力を継続中である.
著者
渡辺 康之
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.238, pp.2-7, 2013-09-25
著者
阿江 茂
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.107, pp.41-43, 1982
著者
宮田 渡 小山 長雄
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
日本鱗翅学会特別報告 (ISSN:05495210)
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-27, 1971-08-31

日本産のSphingidae,Saturniidae,BrahmaeidaeおよびBombycidaeの4科55種の後頭形態を研究し,それによって類縁関係を検討した.1.上記4科の後頭部はいずれも,側溝部,縁毛帯および内側板を備え,PPP・PPA・PAA・APP・APA・AAAの6後頭型に分けられる.2.スズメガ科の後頭型はPPP,PPA,PAA,APA,AAAの5型からなる.本科は節板に分枝をもつ点において他の蛾類といちじるしく異なっている.また,Macroglossum,Gurelca,Cephonodes,およびHemarisの4属は小個眼部をもつ点でスズメガ科の他の種と異なっている.3.スズメガ科を除く3科は後頭形態に共通性があり,なかでもイボタガ科(PPA型)とカイコガ科(APA,APP型)が近縁である.4.各科における各種の類縁関係は図19〜20に示した通りである.分類上問題になる属はスズメガ科ではPsilogrammaとMeganotonで,この両属は後頭形態からみるとたがいに同属である.ヤママユガ科ではRhodinia属のR.fugax fugaxとR.jankowskii hattoriaeとは別属としてよい程異なっている.カイコガ科では,OberthueriaがBombyxとまったく異なるものであることはまちがいないが,これとPseudandracaまたは他の科との類縁関係は未詳である.
著者
吉本 浩
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.27-30, 1994-03-30

Nagadeba indecoralis Walker, [1866], is recorded from Japan for the first time based on a female specimen secured at Ishigaki-jima I., the Ryukyus. The male and female genitalia of this species are figured and described, and type specimens of N. indecoralis and N. ianthina Swinhoe, 1890, a junior synonym of indecoralis, are illustrated.
著者
津吹 卓
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.245-248, 1993-03-30

Characters of wing pattern, veins and flight motion in aberrant form were described in Idea leuconoe clara (Butler) from Okinawa Island.
著者
長岡 久人
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.178, pp.2-18, 1998-10-10
被引用文献数
1

日本のベニヒカゲ(Erebia niphonica)は,本州では標高の高い山岳地帯に生息している一方,北海道では比較的低標高の場所に生息している如く,国内での分布は広い。またその産地もミクロ的視点に立てば,数は限りなく多い。また,各産地毎で若干の斑紋変化があり,斑紋の差等でいろんな亜種名が付けられてもいる。従って,日本のベニヒカゲの産地をことごとく取り上げると,産地の数は,かなりの数にのぼるものと思う。全ての産地を自らの足で廻ることは不可能であろうし,また,日本の全ての産地のベニヒカゲをコレクションしようとしても,これまた,不可能ではなかろうか。ラベル集めという楽しみに入れば迷宮に迷い込んでしまう危険性もある。しかし,ベニヒカゲの世界は,若い女に狂うよりは,大人の「いぶし銀」の世界があるように思う。貴方は若い女を選ぶか,渋い世界で一人人生を楽しむか,どちらを選びますか。さて,以下では,ベニヒカゲについて,最低限コレクションしたり,観察してまわるべき(?)産地を整理してみた。無論,標題も産地も筆者の自己中心的な選定であるので,ピント外れの際はお許し下さい。さて,一生の内,どれ位廻れるでしょうか。深田久弥氏の名著「日本百名山」の山を1年で登破した方がいたが,このベニヒカゲ百名山を,必死で廻れば何年かかるでしょうか。
著者
福田 宏樹
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.116-119, 2003-03-30

キイロスズメTheretra nessus(Drury,1773)は,インドからニューカレドニアにかけて広域分布するが,亜種は知られていない.筆者は今まで記録の無かったフィジー産の本種を入手し,インド北部,タイ,日本,フィリピン,ボルネオ,ニューギニア,ビスマーク諸島,ソロモン諸島の個体と比較した.その結果,前翅が広く白味がかった褐色になる,後翅の中央にある黒色紋の発達が悪いため,白味がかった褐色の地色は広く明瞭になる,裏面は前後翅とも黄色味がかった褐色に覆われ,前翅の基部から中央部にかけてある黒褐色の紋を欠く,などの点から新亜種と認め,Theretra nessus albata ssp.n.として記載した.亜種名albataはラテン語で白衣の意.
著者
中村 正直
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.85-92, 1998-04-10

The eversible cervical glands of 90 species of Japanese noctuid larvae were examined and their existence was confirmed for all the species examined except Rivula. Chemical substances found in the glands are formic acid and C_<13> ketone.