著者
上原 二郎 吉田 豊和
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.251-254, 1995-01-20
被引用文献数
2

Euthalia byakko sp. n.♂.前翅長51-52mm.翅形:前翅,前縁は滑らかに湾曲する;外縁は第4脈付近でやや抉れ,各翅脈端で突出し鋸歯状を呈する;後縁は直線状.後翅,前翅同様外縁は各翅脈端で突出し鋸歯状を呈し,とりわけ第4脈端が顕著に突出する.表面:前翅,地色は暗緑褐色;基部付近の本属特有の環状斑群は明瞭;外中央白紋列はよく発達し,とりわけ第5室紋は長く特異;各白色紋は黒色に縁どられる;前縁には白色鱗が侵入しない;亜翅端部の白色紋は明瞭で外中央白紋列に接近する;第7室に白色鱗が僅かに侵入する;亜外縁部第2室から6室まで黒色のくさび型紋列があり,第1b室に黒色の2つのだ円形紋がある;縁毛は白色で翅脈端は黒色.後翅,地色は暗緑色で前縁部はやや青味がかる;中室端の2本の黒条はよく目立つ;外中央白紋列は弧を描きながら内縁に向かい,徐々に狭まる;各白色紋は矢尻型で黒色に縁どられる;外中央白紋列の外側には淡青色帯がある;亜外縁部には第1b室から4室にかけて半円形,第5室から7室にかけて円形の黒色紋列を有す;外縁は黒色;縁毛は前翅同様白色で翅脈端は黒色.裏面:前後翅の地色は淡緑青色,外半分は黄土色条が各翅脈上に現われる;外中央白紋列は表面と同様だが後翅第1b室にも小斑が現われる;亜外縁部にはくさび型の黒色紋列が有る;後翅,基部の不正形環状斑は明瞭.翅脈:後翅中室端は弱く閉じる.触角:表面は黒色;裏面黒褐色;先端に黄褐色部はない.♂ゲニタリア:uncusは中間部が太くなり先細る;valvaは細長く,先端部分は刺があり外方向に巻いてよじれる.♀.未知 分布.ラオス北部. 完模式標本. ♂,Oudomxay, Laos, 27. IV.1994(上原二郎採集),上原二郎所蔵.副模式標本.1♂, Oudomxay, Laos, 27. IV.1994(吉田豊和採集),吉田豊和所蔵.近似種との区別.本種は前翅表面外中央部の縦に伸びる白帯が前縁に近づく程広がるという,きわめて特異な斑紋パターンを有しており,本属のいかなる種とも一見して区別しうる.また,交尾器の形態から本属の中では,Euthalia durga(Moore,[1858])に近縁と考えられるが,本種は次の諸点で区別出来る.1)前翅表面亜翅端部の白色紋列と外中央白紋列が接近する,2)前翅表面前縁に白色鱗が侵入しない,3)前翅表面第7室には白色鱗が侵入する,4)外縁が著しく鋸歯状になる,5)後翅表面外中央白帯は弧を描きながら内縁に向かう,6)valvaの先端は腹方に垂下した形の突起物はなく,外方向に巻いてよじれる.種名byakkoは白虎の意.謝辞.本記載をするにあたり,御指導いただいた猪又敏男,植村好延,長田志朗,増井暁夫の各氏に御礼申し上げます.
著者
小木 広行
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.192, pp.40-41, 2002-03-31
著者
高橋 真弓
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.107-110, 1976-10-01

南米コロンビアのサンタ・マルタ山群において採集されたジャノメチョウ科のPronophilini 2種の記録を報告する.Sabatoga nevada (Kruger)は,この山群西北部のセロ・ケマードの高地帯のダケの1種やィネ科草木をまじえる灌木原で,Lymanopoda caeruleata Godman & Salvinは,同山群西北部のサン・ロレンソおよび東南部のドナチュイ川流域の雲霧林周辺の陽地で採集された.これらの2種はいずれもサンタ・マルタ山群の固有種である.
著者
白水 隆
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.23-29, 1961-10-20

1961年6〜7月の台湾旅行の際に,埔里の木生(モクセイ)昆虫採集所の余清金氏の蒐集品中に台湾より未記録の美麗なアゲハチョウ科の1種を見出し,幸にこれを譲り受けて研究することが出来た.調査の結果,本種は支那大陸より知られるIphiclides alebion (GRAY,1852)の顕著な1新亜種と認むペきものであることを知ったので,次に新名を付して記載したい.また和名は余清金氏の功績を記念するため,同氏の経営になる木生昆虫採集所に因んでモクセイアゲハと呼ぶことにしたい.
著者
岡本 央 広渡 俊哉
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.15-26, 2002-01-10

ホソヒゲマガリガ科(改称)Prodoxidaeは全北区,特に新北区を中心に分布することが知られている.日本では本科に含まれる種としてヘリモンマガリガGreya marginimaculata 1種のみが知られていたが,筆者らは本科に含まれる2属4種を日本から新たに確認した.Lampronia Stephens,1829マダラマガリガ属(新称)L.altaica Zagulajev,1992アルタイマガリガ(新称)開張9-10mm.前翅は暗い黄褐色で金色の弱い光沢を帯び,特徴的な白斑をもつ.雄交尾器のvalvaは中央で著しくくびれ,腹面側には刺毛が櫛歯状に並ぶ.雌交尾器のcorpus bursaeに一対の放射状のsignaをもつ.1998年7月に杉島一広氏によって北海道の大雪山で採集された.L.corticella(Linnaeus,1758)キマダラマガリガ(新称)開張10-11mm.前翅は暗い灰褐色で,淡黄色の細かいまだら状の斑紋をもつ.雌交尾器の産卵管の先端は平たく,corpus bursaeに一対の放射状のsignaをもつ.北海道の糠平で採集された雌のみを確認した.L.flavimitrella(Hubner,1817)フタオビマガリガ(新称)開張11-12.5mm.前翅は暗褐色で赤褐色の弱い光沢を帯び,2本の白い帯紋をもつ.雄交尾器のvalvaは中央で著しくくびれ,先端には鋭く尖った硬化部をもつ.雌交尾器のcorpus bursaeに一対の放射状のsignaをもつ.北海道および長野県で採集されている.Greya Busck,1903モンマガリガ属(新称)G.marginimaculata(Issiki,1957)ヘリモンマガリガ開張12.5-14.5mm前翅は黄褐色で金色の光沢を帯び,縁に白い斑紋をもつ.本種はIssiki(1957)によってLamproniaの種として記載されたが,Kozlov(1996)が本種をGreya属に移した.雄交尾器のvalvaは太く,腹面側に1-2個のpollexをもつ.長野県および石川県の白山で採集されている.G.variabilis Davis and Pellmyr,1992アラスカマガリガ(新称)開張16mm.前翅は黄褐色で金色の光沢を帯び,縁に白い斑紋をもつ.斑紋は非常に多くの変異をもつ(Davis et al.,1992).雌交尾器のcorpus bursaeにはsignaをもたない.本種はこれまでアラスカを中心とした北米ならびにシベリア東部(チュクチ半島)に分布することが知られていたが,平野長男氏が1986年9月に長野県の安房峠で採集した雌一個体を確認した.
著者
村山 修一 吉阪 道雄
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, 1959

Aus Formosa war bisher Erynnis montanus BREMER noch nicht gefunden. Diesmal haben wir 2♂♂ in Sammel materialien, die von M. WATANABE in Sakai uns gegeben wurden, entdeckt. Weil diese Exemplars sich in folgenden Punkte von typischer Form unterscheiden, schlagen wir neuen subspezifischen Name vor.
著者
飯島 一雄
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, 1959-07-30
著者
林 久男
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.203, pp.35-36, 2004-12-25
著者
宮田 彬
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.103-108, 2005-03-20

50年にわたり収集した標本を整理中に,ビーク・マークのついたヤガ科の標本が15種27例,ジャノメチョウ類2種2例見つかった.ヤガ科のうち7種14例はCatocala属の蛾で,残りはシタバ亜科の4属4種6例とクチバ亜科の4属4種7例であった.ヤガ科の場合,鳥の攻撃により出来る最も特徴的な傷は同じ側の前翅と後翅に一つずつ合計二つ見られ,翅の位置を静止時の形に戻すと前・後翅の傷が重なることから,静止時に攻撃を受けたことが分かる.また後翅だけに傷を受けている例も多く,このような傷は攻撃直前に蛾が翅を開いて後翅の斑紋を敵に見せて威嚇した結果,生じたものらしい.明らかに後翅の斑紋が,鳥の攻撃をそらし,生存率を高めていると考えられる.筆者はCatocalaが静止したまま後翅を示して敵を威嚇するかどうか未観察である.しかしアケビコノハやムクゲコノハは後翅を開いて後半身を持ち上げるような姿勢をとり威嚇することを観察している.おそらくキマエコノハの後翅の傷は威嚇中に後翅に攻撃を受けたものと思われる.今回ビーク・マークが見つかった蛾は,いずれも九州では個体数が少ない種である.そうでなければ翅が破損している蛾をわざわざ展翅することはない.それゆえ一部の種では,今まで出会った総個体数に対するビーク・マーク出現率を計算することが出来た.その結果,灯火に飛来する蛾のうち20%から40%は,鳥の攻撃から生還した経験を持っていると推定された.ジャノメチョウ類2種の傷は,左右の翅に生じた対称傷で,この場合も翅を背中で閉じている状態で鳥の攻撃を受けたことを示している.
著者
平田 将士 宮川 崇
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.256-260, 2004-09-30

Agrias aedonは南米北西部(コロンビア・ベネズエラ)から中米メキシコ南部まで分布する.原名亜種を含め2亜種に分類され,南米北西部に原名亜種,コスタリカからメキシコ南部にかけて亜種rodriguezi(模式産地は中米グアテマラ)が分布する.前者は大型(♂前翅長41.8mm),前翅赤紋はアーチ型に発達し,外縁に達する.前後翅ともに青紋の発達は良くない.後者はやや小型で(♂前翅長40.1mm),前翅赤紋は縮小しアーチ型とならず,発達した青紋によってその周囲を囲まれる.後翅の青紋は外縁部まで大きく発達する.南米北西部からは,コロンビアを中心にschultei,salvini,petitoensis,denheziといったいくつかの型が記載され,それらの中にはときに亜種として扱われるものもあるが,コスタリカ以北の個体群の斑紋は安定しているようで,rodrigueziの元に記載された型やrodrigueziに近縁として記載された亜種はなかった.筆者らは亜種rodorigueziの分布圏に近接するコスタリカ北西部より本種を得たが,その斑紋はrodrigueziとも原名亜種とも異なるので,新亜種Agrias aedon toyodaiとして記載した.本新亜種は亜種rodrigueziとほぼ同大.裏面も酷似しているが,前翅赤紋は原名亜種グループと同様にアーチ型に発達し,これに伴ってrodrigueziに見られる青紋は後角部に向けて幅狭くなる.後翅はrodriguezi同様に発達した青紋を有する.コスタリカにおいて本種は中央山脈のカリブ海側標高約600-1,200mに極めて局地的に亜種rodrigueziが産することが知られている.本新亜種の産地はそれらの既知産地とは異なり,太平洋側標高約300m地点である.なお,亜種名toyodaiは日本におけるコスタリカ名誉領事を勤められ,日本とコスタリカの友好関係に大きな貢献をされた豊田章一郎氏に献名されたものである.
著者
船越 進太郎
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.301-304, 2008-09-30
参考文献数
5

ライントランセクト法によりカノコガ Amata fortunei fortunei (Orza)の飛翔個体数を2年間にわたり調べた.成虫は曇天時に最も多く飛翔し続いて雨天時に多く飛翔していた.ただし強い雨の日は,ほとんど飛翔せず,よく飛んだのは小雨の時であった.晴れた日の飛翔個体数は,曇天時の半数ほどであった.1化の発生時期は,2年間で差がなかったが,2化の発生時期には差がみられた.発生総個体数は,2004年の1化では79個体,2化で209個体,2005年の1化では224個体,2化で176個体であった.気温と飛翔個体数の間には,24℃までは相関があり,22-24℃の間に,飛翔個体数のピークが見られた.湿度と飛翔個体数の間には,特に相関が認められなかった.以上のことから,東海地方でのカノコガ成虫の発生消長は,年2回,一ヶ月弱の期間であり,飛翔個体数には,大きな変動が見られるようである.また,晴天時より曇天・雨天時の活動が盛んであり,直射日光を好まず,強い光を避けて行動する蛾であると考えられた.
著者
中塚 久美子 広渡 俊哉 池内 健 長田 庸平 金沢 至
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.154-167, 2013-12-25

Species diversity of dead-plant feeding moths in various forest ecosystems in Osaka Prefecture was investigated from March to November 2011. The study sites included a beech forest (Site A), an evergreen forest (Site B), a suburban forest park (Site C), a university campus (Site D) and an urban park (Site E). For the extraction of the larvae, two methods 1) hand-sorting, and 2) the Tullgren apparatus, were used. We also collected some flying adults and case-bearing larvae on the dead leaves in each site. A total of 27 species belonging to 10 families of dead-leaf feeding moths emerged: 15 species belonging to 8 families at Site A, 13 species belonging to 7 families at Site B, 10 species belonging to 9 families at Site C, 4 species belonging to 4 families at Site D, and 3 species belonging to 2 families at Site E. Dead-plant feeding habits were newly confirmed by rearing the larvae of Opogona thiadelpha, Hypsopygia kawabei, Endotricha minialis, E. consocia and Bradina angustalis pryeri. The results indicate that further assessments of the characteristics of each dead-leaf feeding moth enables us to apply them as an indicator for the assessment of various forest ecosystems.
著者
岩野 秀俊 山本 嘉彰 梅村 三千夫 畠山 吉則
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.327-334, 2006
参考文献数
24
被引用文献数
2

関東南部においてトチノキが分布しない地域でスギタニルリシジミの分布範囲が拡大しているが,それらの地域での本種の食樹を明らかにするため現地調査を実施した.神奈川県津久井町および箱根町から数種植物の花や花蕾,幼蕾を持ち帰り、幼虫の発見に努めた.津久井町ではスギタニルリシジミの食樹として,ミズキならびにヤマフジを利用しさらに相模湖町ではハリエンジュも食樹の一つである可能性が高いことが判明した.また箱根町では新たにキハダの幼蕾から多数の幼虫が見つかったため,食樹と認定した.県内のトチノキ非分布域では新食樹に寄主転換することで,分布勢力の拡大を計っていることを示唆した.
著者
長田 庸平
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.235, pp.2-5, 2013-01-10