著者
原田 基弘
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.131, pp.4-22, 1987
著者
梅澤 俊
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.131, pp.2-3, 1987
著者
矢崎 康幸
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.101, pp.5-19, 1980
著者
中村 慎吾
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.73, pp.22-23, 1973-08-20
著者
岩崎 郁雄
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.220, pp.35-46, 2009-07-15
被引用文献数
2

(1)本種は、2007年から2年連続発生しているが、その分布拡散には違いが見症れた。(2)幼虫から蛹の前期については耐寒性が強いが、蛹後期から羽化にいたる過程で死亡する個体が急増した。(3)2008年春季は、宮崎県内において、極少数の個体が越冬したと見症れるが、それが夏季の発生につながった可能性は極めて低い。
著者
加藤 義臣 大日向 健人 中 秀司
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.1-8, 2009-01-10
参考文献数
19
被引用文献数
1

A nymphalid butterfly Hestina assimilis assimilis, which was recently discovered in Kanagawa prefecture in Japan, undergoes larval diapause and show a seasonal change in wing color pattern: summer and spring (white) morphs. In the present study, temperature and photoperiodic conditions responsible for the control of seasonal morph determination was investigated. First, when post-diapause larvae were reared under various temperatures (15℃, 20℃, 25℃ or 28℃) at a long photoperiod (16L-8D), most of the eclosed adults were of white morph (spring morph). Second, larvae were initially exposed to a short photoperiod (10L-14D), and then transferred to 16L-8D to avoid diapause occurrence. Resulting adults were white morph. Third, individuals were reared at various temperatures (15, 20 or 25℃) under a long photoperiod (16L-8D) through larval and pupal stages. Low temperatures of 15℃ were quite effective for white morph production, but moderate (20℃) or high (25℃) temperatures were not effective, and all butterflies produced developed black veins on the wing (summer morph). Fourth, in experiments where different rearing temperatures were combined during the larval life, a temperature of 15℃ combined with 20℃, but not with 25℃, was effective for producing some intermediate or white morphs. Fifth, the temperature-sensitive stage for white morph production was mostly located in the 3rd and 4th instars (in partiular, 4th instar). In these experiments, white morph production was closely linked with extremely delayed larval development. The results strongly suggest that not only a short photoperiod, but also a relatively cool temperature including 15℃ is quite effective for white morph production even without an intervening larval diapause. Probably, an unknown neuro-endocrine mechanism may be responsible for the seasonal morph regulation as in the case of other butterfly species.
著者
小林 隆人 北原 正彦
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.201-212, 2005-06-20

ゴマダラチョウとオオムラサキは同じ寄主植物を利用し, 寄主植物の根元で越冬するなど似たような生活環を持つチョウである.本研究では, これら2種について, 越冬幼虫の密度と様々な環境要素との関係を, 落葉広葉樹二次林(以下, 二次林)の断片化が進んでいる都市部と二次林が広く残存する都市郊外において調べた.オオムラサキの幼虫の密度は都市部よりも郊外において有意に高かったのに対し, ゴマダラチョウの幼虫の密度は郊外と都市部の間で有意な差がなかった.調査地と種を独立変数とした二元配置の分散分析の結果から, オオムラサキは都市化による二次林の減少に敏感であるのに対し, ゴマダラチョウはオオムラサキよりも二次林の減少への適応力が優れているなど, この2種は互いに異なる生活史戦略を持っていると思われた.寄主植物周囲の森林および二次林の面積とオオムラサキの幼虫の密度の間には都市と郊外の双方において正の相関が認められた.これに対し, ゴマダラチョウの幼虫の密度は木の周囲の森林や二次林の面積とは有意な相関がなかった.オオムラサキの幼虫の密度が周囲の二次林の面積の減少とともに低下したことには, 二次林面積の減少によって雌成虫による産みつけられる卵の密度が低下したこと, もしくは若齢あるいは中齢幼虫の死亡率が高くなったことが関係していると思われる.一方, ゴマダラチョウの幼虫の密度と周囲の二次林面積との間に有意な相関が見られなかった理由の一つは, 雌成虫が周囲の二次林面積に関係なく餌植物に産卵を行っていたことと思われる.この他に, 幼虫の死亡要因がオオムラサキと異なっていて, 死亡率が周囲の二次林面積に関連しないことも考えられる.本研究により, 両種が日本において地理的にはある程度共存するものの, 局所的には分布地域が異なる原因を明らかにするために有効な手掛かりが得られた.
著者
小林 隆人 北原 正彦
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.201-212, 2005
参考文献数
14

ゴマダラチョウとオオムラサキは同じ寄主植物を利用し, 寄主植物の根元で越冬するなど似たような生活環を持つチョウである.本研究では, これら2種について, 越冬幼虫の密度と様々な環境要素との関係を, 落葉広葉樹二次林(以下, 二次林)の断片化が進んでいる都市部と二次林が広く残存する都市郊外において調べた.オオムラサキの幼虫の密度は都市部よりも郊外において有意に高かったのに対し, ゴマダラチョウの幼虫の密度は郊外と都市部の間で有意な差がなかった.調査地と種を独立変数とした二元配置の分散分析の結果から, オオムラサキは都市化による二次林の減少に敏感であるのに対し, ゴマダラチョウはオオムラサキよりも二次林の減少への適応力が優れているなど, この2種は互いに異なる生活史戦略を持っていると思われた.寄主植物周囲の森林および二次林の面積とオオムラサキの幼虫の密度の間には都市と郊外の双方において正の相関が認められた.これに対し, ゴマダラチョウの幼虫の密度は木の周囲の森林や二次林の面積とは有意な相関がなかった.オオムラサキの幼虫の密度が周囲の二次林の面積の減少とともに低下したことには, 二次林面積の減少によって雌成虫による産みつけられる卵の密度が低下したこと, もしくは若齢あるいは中齢幼虫の死亡率が高くなったことが関係していると思われる.一方, ゴマダラチョウの幼虫の密度と周囲の二次林面積との間に有意な相関が見られなかった理由の一つは, 雌成虫が周囲の二次林面積に関係なく餌植物に産卵を行っていたことと思われる.この他に, 幼虫の死亡要因がオオムラサキと異なっていて, 死亡率が周囲の二次林面積に関連しないことも考えられる.本研究により, 両種が日本において地理的にはある程度共存するものの, 局所的には分布地域が異なる原因を明らかにするために有効な手掛かりが得られた.
著者
小林 隆人 北原 正彦 中静 透
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.152-160, 2009-03-30

オオムラサキの個体群を保全する目的で餌植物の植林を行う際の効果的な植林方法を明らかにするため,本種の保護を目的としてクヌギとエノキが交互に列状に植林された場所とその周囲の天然林で,エノキとクヌギの密度・大きさ,オオムラサキ幼虫の木当たり密度を調べた.植林区林内では枯死したエノキがある程度見られたが,クヌギの枯死は見られなかった.植林区のエノキのdbh(胸高直径)は周囲の天然林のエノキよりも有意に小さかった.しかし,植林区の林縁のエノキに限っては,dbhは林内のエノキよりも大きく,周囲の天然林のエノキと差がなかった.周囲の天然林においても,林縁のエノキのdbhは林内のエノキよりも大きかった.植林区のエノキにおける木当たり幼虫数は天然林よりも有意に少なかった.植林区でも周囲の天然林でも木当たり幼虫数は林内よりも林縁で有意に多かった.ただし,植林区の林縁のエノキにおける木当たり幼虫数は天然林の木当たり幼虫数と有意に異ならなかった.本種を保護するには植林予定地の内部にクヌギを,林縁にエノキを植えるべきである.
著者
塩田 正寛
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.209, pp.37-47, 2006
参考文献数
95

・暖冬現象は、最寒期間の平均最低気温が、ある値(茨城県日立市では、ほぼO℃)以下にならないことを示した。・暖冬現象は1987年から始まった。・2005年までのデータによって、暖冬現象が始まると、次の5種が茨城県に侵入し2種が定着したことが確認された。種名 状況 侵入年クロコノマチョウ 定着 1993ムラサキツバメ 定着 2000ウスイロコノマチョウ 1990ツマグロヒョウモン 1地点定着1998ナガサキアゲハ 2000(幼虫)2004(成虫)・侵入した5種の分布は、暖地性植物分布境界線以南の地域である。・クロコノマチョウとムラサキツバメは、茨城県の太平洋岸北上回廊を経て、東北地方南部の太平洋岸(福島県浜通り)に侵入した。ムラサキツバメは、2001年に侵入していたことが確認された。
著者
船越 進太郎 山本 輝正
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.201-208, 1996-09-05

1992年および1993年,6月から10月にかけて,長野県乗鞍高原(東経137°37',北緯36°06',標高1,450m)および石川県白峰村市ノ瀬(東経136°37',北緯36°10',標高830m)の登山センターなどの建物の下でコウモリに食された蛾の翅を集め,同定するとともに前翅長を測定した.乗鞍高原の建物の天井部分はクビワコウモリEptesicus japonensis,ヒメホオヒゲコウモリMyotis ikonnikovi,ウサギコウモリPlecotus auritus,コキクガシラコウモリRhinolophus cornutus,カグヤコウモリMyotis fraterが夜間休憩場所として使用しており,中でもクビワコウモリが多く,時には200頭を数えた.ここでは餌となった8科114種の蛾を同定したが,小型の種が多く,未同定個体も含め前翅長は19.3±6.53(x^^-±S.D.)mmであった.これに対し,市ノ瀬の建物天井部分には主としてキクガシラコウモリRhinolophus ferrumequinumが多く,わずかにカグヤコウモリが含まれていた.ここでは10科42種の蛾を同定したが,ヤママユガ科,スズメガ科などの大型種が多く含まれていた.前翅長は47.3±15.56(x^^-±S.D.)mmで,乗鞍高原のものとは大きな差があった.乗鞍高原で見られるコウモリは小型種が多く(前腕長33-45mm;優占種クビワコウモリ38-43mm),市ノ瀬で見られるコウモリはそれより大型種が多かった(前腕長36-65mm;優占種キクガシラコウモリ56-65mm).昆虫食のコウモリの中でキクガシラコウモリは他の種より大型であり,大型の蛾(前翅長の最大は81.6mmのヤママユ)から小型の蛾までを捕っていた.これに対し,クビワコウモリは小型種であり,より小さな蛾(前翅長の最大は42.4mmのシロシタバ)を捕っていた.キクガシラコウモリは餌を捕まえるとき腿間膜(足の間の膜)を使用することが知られる.そのため,大型種から小型種までさまざまな大きさの餌を効率よく捕っているのかも知れない.また,コウモリの休憩場所で夏眠するAmphipyra属のシマカラスヨトウA.pyramidea,オオウスヅマカラスヨトウA.erebina,ツマジロカラスヨトウA.schrenckiiがコウモリの餌の中に含まれていたが,資料の収集した日時から夏眠が終了して,夏眠場所を離れた個体であると推測された.
著者
Fiedler Konrad SEUFERT Peter MASCHWITZ Ulrich AZARAE Hj. Idris 石井 実
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.287-299, 1995-01-20
参考文献数
24

クアラルンプールの北約20kmに位置するマラヤ大学Ulu Gombak野外実験所付近の二次林(標高200-300m)において,1988-1993年に2種のウラギンシジミCuretis bulisとC. santanaの生態の観察を行ない,卵や幼虫は実験室に持ち帰って,飼育と顕微鏡による観察も実施した.調査地においてC. bulisの雌成虫が川岸のMillettia属(マメ科)に産卵するのを観察したが,産卵はアリのいない新梢にアリとの接触なしに行なわれた. 2種の幼虫は,開けた日当りのよい場所に生育する種々のマメ科木本の新芽で発見された.幼虫期間は9-13日,蛹期間は10-12日であった.幼虫は背部蜜腺dorsal nectary organをもたず,アリ類に世話をされることもなかったが, Pheidole, Anoplolepis, Oecophylla属のアリとは共存していた.これに対して, Crematogaster属のアリは激しく幼虫を攻撃し,その際,幼虫は伸縮突起tentacle organを露出させた.この器官は2齢幼虫から見られ,走査電顕による観察から筒状突起tentacle sheathsの内壁で生産される分泌物を発散する一種の防衛器官と思われたが, Crematogaster属のアリを撃退できなかった.幼虫と蛹は,接触刺激を加えると耳には聞こえない振動音を数分にわたって発したが,その機能は不明である.また,蛹をピンセットなどで摘むと,摩擦発音器stridulatory organによってキーキーと発音した.2-4齢で採集した3頭の幼虫から,蛹化前にApanteles aterグループの多寄生性のコマユバチの幼虫が脱出してきた.光学顕微鏡で幼虫の脱皮殻を観察したところ,胸部第1節と腹部第7節表皮上の窪みperforated chamberには, "pore cupola器官"が密にあったが,腺性の構造は見られなかった.また,第7腹節の"dorsal pores"にも腺の開口や特殊化した刺毛はなかった.筒状突起の陥入部内面の表皮にはうねりながら平行に走るひだがあり,分泌物と思われる微小な暗色の結晶が多数見られた.走査電顕で蛹の体表を観察すると,大まかに4種類の刺毛が見られた.まず,前胸と第6腹節の気門付近には対をなして生じる機械感覚毛と思われる長い刺毛(>200μm)があり,また蛹の体表内に陥入する円形の小孔(約10μm)から生じる"窩状感覚子"様の短い刺毛(約20μm)も見られた.この他に特異な大小2種類のpore cupola器官も観察された.いずれも,窩状感覚子の形状をしており,ひとつは20-30μmの小孔から生じた刺毛の先端が20-50の繊維状に分かれている.もうひとつは,刺毛の先端は乳頭状で10-20μmの小孔から生じる.これらのpore cupolaは,ヨーロッパ産のPolyommatus属やLycaena属などのシジミチョウの幼虫や蛹に見られる同様の構造と相同かもしれない.上記の野外観察の結果は,Curetis属の幼虫がアリを誘って安定した共生関係を形成することはないものの,種々のアリの存在下で生存できることを示しており,この属が客棲性myrmecoxenousであると結論できる.また,顕微鏡による幼虫と蛹の体表器官の観察結果から,ウラギンシジミ亜科が数々の固有新形質をもち,系統的に隔離された位置を占めるグループであることが明らかになった.
著者
行成 正昭
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
やどりが (ISSN:0513417X)
巻号頁・発行日
no.178, pp.42-43, 1998-10-10
参考文献数
2
著者
森中 定治
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-148, 1988-07-10

バリ島には,Delias属belisamaグループに属する種として,Delias belisama balina FRUHSTORFER,1908およびD.oraia bratana KALIS,1941の2種が知られている.KALISはその原記載においてbalinaとのサイズや色彩の差による区別,bratana成虫の嗜好などについて簡単に述べている.しかし,両種の混棲状態や習性の相違などの詳細についてはほとんど報告がない.1984年に筆者はバリ島を訪れ,両種を採集する機会に恵まれた.以来,数度にわたってバリ島に旅行し,両種の成虫の採集および生態の観察を行った.その結果,これまでに知られていない若干の生態的知見が得られたので報告する.また,この両種の分類・命名の経緯,およびバリ島において互いに酷似する両種の分布,サイズ,形態の特徴についても実証に基づいて報告する.なお,成虫の形態の差異に関するより詳細な検討については,続報で発表する予定である.
著者
平井 勇
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, 1961-06-25

1960年5月31日に愛知県刈谷市広小路の道端に生えるナツミカン(高さ2m)より終令幼虫12頭を得,自宅にて飼育中,6月24日に雌雄型1が羽化したので報告いたします.
著者
井上 大成
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.23-28, 2008-01-05
参考文献数
14

2006-2007年にかけての冬に,茨城県つくば市でチャバネセセリの越冬幼虫を観察した.幼虫の密度は,建物の南側の壁に近い草地で高かった.ここではチガヤは冬の間緑色を保っており,幼虫は暖かい日中には活発に活動していた.直射日光の当たる建物の南側の越冬場所では,2月には日最低温度は0℃近くまで下がったが,晴れた日の最高温度は30℃前後にも達した.4月に野外から採集され網室で飼育された幼虫は,4月上旬-5月下旬に蛹化し,5月中旬-6月上旬に羽化した.幼虫は蛹化前に0-3回脱皮した。蛹期間は4月に蛹化した場合には22-35日で,5月に蛹化した場合には16-21日だった.また,野外の壁際の草地に設置したマレーズトラップでは5月中旬に雌成虫1匹が捕獲された.チャバネセセリは北関東の内陸でも,少なくとも暖冬の時には野外越冬していることが明らかになった.
著者
阿江 茂
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.227-235, 1978-12-01

1977年5月20日より7月20日まで,国立科学博物館によるフィリピン動物調査に参加し,主としてアゲハチョウ科の卵・幼虫を採集,飼育したので,その結果について報告する.1.フィリピンモンキアゲハの卵・幼虫は,ルソン島北部山岳においてはサルカケミカン類,ハマセンダン類,およびミカン類のカラマンシー,ポメロから,ミンダナオ島のアポ山ではミカン類から得た.4齢幼虫はすべて黒色の部分が著しく,5齢幼虫の斜帯は両方とも連続であった.2.フィリピンシロオビアゲハの卵・幼虫はルソン,ミンダナオ,パラワン各島においてカラマンシーその他のミカン類から得た.3.オナジアゲハの卵・幼虫は,上記3島で同じくミカン類から採集したが,パラワン島では,マメザンショウMicromelium minutumより幼虫を得,産卵も目撃した.4.アカネアゲハの幼虫は,北部ルソンで野生のミカンAtlantia spinosaより得たが,ミンダナオ島スリガオ地方ではカラマンシーより多数の5齢幼虫と蛹を採集した.5.べンゲットアゲハの古い1♀をパオアイで採集して,ミカン類に数卵を産ませたが,1卵が発生したのみで,それも孵化しなかった.6.パラワンアゲハの幼虫は,パラワン島においてレモンより採集した.7.キべリアゲハの幼虫は,北部ルソンでLitsea sp.より採集した.8.フィリピンキシタアゲハ(マニラ産)は成虫よりArstolockia tagalaで採卵に成功し,南山大で全期間,日本産のウマノスズクサで飼育することに成功した.9.パラワン島産のペニモンアゲハも,成虫よりA. tagalaで採卵に成功し,若齢より南山大で飼育し,中齢より日本産ウマノスズクサに移したが,成虫を得ることができた.10.ルソン島北部山岳では,今回の調査で到達した最北部のボントク付近まで,キャべツ畠が多く,どの畠でもタイワンモンシロチョウが見られたが,野生又は半野生の食草としては,夕ネツケバナ,オランダガラジを発見した.11.パラワン島の原生林で,カキ科植物のDiospyros discolorからユー夕リアの幼虫1頭を発見し,その植物でしばらく飼育したが,蛹化にいたらず死亡した.12.フィリピンシロオビアゲハ,アカネアゲハ,パラワンアゲハ,オナジアゲハを南山大学の23℃,1日11.5時間照明の飼育室で飼育し,非常に低い割合ではあるが,休眠蛹が生じることを確認した.また北部ルソンで幼虫を採集し,現地し蛹化したキべリアゲハ1頭が休眠蛹となったことを確認した.フィリピンでは乾期にこれらの蝶は,成虫の個体数は少なくなるが,全く見られなくなることはない.したがって恐らくこの休眠は乾期に適応して,集団の中の一部の個体が休眠に入る部分的な蛹休眠であろうと推定される.