著者
小林 茉利奈 Myers 三恵 W. MYERS Michael 丸岡 靖史
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.45-48, 2014-03-31 (Released:2014-07-31)
参考文献数
13
被引用文献数
1

歯科恐怖症患者は恐怖心により歯科治療が困難となり, 十分な治療を受けられない, 治療を拒否されるなど, 治療を諦める例も少なくない. そのため口腔内の健康が損なわれ, 生活のQOLが低下し大きな問題となっている. 当講座では地域歯科医院や院内から紹介された多くの歯科恐怖症患者に対して個々に適した方法で治療を行い, 患者より満足を得ている. しかし, 歯科恐怖症患者の治療には多くの時間とマンパワーを要するのが現状であり問題点も多い. そこで本稿では, 歯科恐怖症患者の治療の実態と問題点についてその概要を説明する.
著者
中納 治久 大嶋 貴子 中納 淳子 槇 宏太郎
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.129-140, 2003-06-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
23

著しい過蓋咬合を伴う, 下顎の劣成長と著しい上顎前歯の唇側傾斜を伴う上顎前突症例に対し, 5⊥4抜歯による矯正治療を施行し予後の安定を図るためoverjet, overbiteのovercorrectionを行った.保定後2年を経過し継続的な歯周病予防の管理と保定装置の使用, さらに咬唇癖などの習癖に対する指導を行っていたにも関わらずoverbiteの増加を認めた.過蓋咬合であっても中心咬合位における安定した歯の接触があり, 機能的に為害作用が無ければ問題ない.しかし, 前方, 側方滑走の制限による顎関節に対する荷重負担や歯周組織に対する為害作用などがあれば, 安定した状態とは言い難い.本症例は骨格的に下顎角が小さく, 上下顎犬歯, 下顎側切歯に著しい咬耗が認められることから, 咀嚼パターンは過度のgrinding patternであることが予測される.これらの機能的な問題は下顎犬歯間幅径の減少, 下顎前歯の挺出と舌側傾斜, 上顎前歯の挺出を引き起こし, その結果, 下顎前歯が上顎前歯を突き上げ, 正中離開とoverbiteの増加を招き不安定な状態である.つまり, 過蓋咬合におけるoverbiteの後戻りを予防するにはovercorrectionのみならず, 機能・咬合・形態の相互関連を定量的に評価した上で, より正確で安定的な治療目標を設定することが重要であると示唆される.
著者
山本 松男 須田 玲子 小出 容子
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.274-277, 2009-11-25 (Released:2013-08-29)
参考文献数
20

歯周病は歯を失う二大疾患のうちの一つである. 歯周病がやっかいな理由は, 余り痛みを伴うことなく進行してしまうことで, 知らず知らずのうちに歯を支える顎の骨が溶けてしまう病気です. 歯肉は血管が豊富な組織であるため全身のメタボ疾患とも無縁ではなく, 最近の研究によれば, 糖尿病をはじめ動脈硬化症や心筋梗塞, 骨粗鬆症等全身の病気とも何らかの関係があると報告されるようになった. 今回は毎日の生活の中に潜む健康リスク (危険因子) として, 歯周病と全身の関係について最近の話題の中から, (1) 歯周病と高齢者における誤嚥性肺炎, (2) 妊婦さんの歯周病と早産・低体重児出産の関係, (3) 身近な防衛策「歯磨きではなくてブラッシング」について説明する.
著者
山本 綾子 永尾 悦子 浅賀 恵美子 五十嵐 武 佐々 龍二 後藤 延一
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.413-420, 2001-12-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
33

口腔トリコモナス (Trichomonas tenax : T. tenax) は, 歯周疾患患者から非常に高率に分離されることから歯周疾患との関連性が疑われている.また, 口腔領域以外の種々の病巣から分離されそれぞれの疾患との関連性が推定されているが, 従来は純培養が困難であったことから, 研究が進まずT. tenaxが保有する病原因子は解明されていない.我々は, 病原性に関連する種々の生化学的性状を明らかにしてきている.今回は, 病原体に対する重要な防御因子である免疫グロブリン, すなわちIgG, IgM, IgAおよびSIgAの分解能について検討した.T. tenax細胞の滲出液は, IgGを著明に分解し, IgMは僅かに分解した.その両者の分解活性はDTTによって促進され, E-64によって著しく阻害されたが, EDTA, pepstatin AおよびAEBSFによっては影響を受けなかった.血清型IgAは, 完全に分解されためにDTTによる活性化は不明であるが, E-64によって活性が明らかに阻害された.以上の阻害剤および活性化剤の影響から判断して, IgG, IgMおよび血清型IgA分解は, T. tenaxが保有するシステインプロテアーゼによるものと考えられた.SIgAのSC成分は著しく分解され, その活性はEDTAおよびAEBSFによって阻害されたが, DTTおよびE-64によっては影響を受けなかった.このことから, SlgAのSC分解に関与する酵素は, IgG, IgMおよび血清型IgA分解に関与するものとは異なるプロテアーゼであることが推定できる.以上の結果から, T. tenaxは, 歯周ポケットや唾液中に存在する各クラスの免疫グロブリンを分解できることがわかった.
著者
船登 雅彦 小野 康寛 馬場 一美
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.209-213, 2013

覚醒時の上下歯列接触癖(Tooth Contacting Habit; TCH)は顎関節症の原因因子として注目されてきている.TCH の評価は質問票や問診に基づくため信頼性が低く,TCH を客観的に評価することができなかった.著者らはTCH を客観的に定量化するために「TCH 測定システム」を開発し,臨床への導入をすすめている.<br/>このTCH 測定システムはコンピューターと専用ソフトウェアからなり,E メール機能を有する市販の携帯電話さえあれば,ランダムに送信されるE メールを受信した時にTCH の有無を確認し,空メールを返信するだけで,データが蓄積され,TCH の出現頻度や出現状況を自動分析することができる.<br/>本稿ではTCH 測定システムの概要と初期の運用実績および今後の発展性について紹介する.
著者
山本 舞 久保田 雅人 槇 宏太郎
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.167-177, 2010-07-31 (Released:2013-03-26)
参考文献数
15

骨格性の要素が強い下顎前突症の矯正治療において, 外科手術を併用する方法がしばしば選択される. しかし, 現在外科手術を併用するか否かを判別する明確な基準はなく, また患者の外科手術に対する希望の有無により, 治療法を決定しなくてはならない. そこで今回は骨格形態的所見, 歯列・顎堤の特徴的所見, 顔貌所見の類似する2症例において, 一方は矯正治療単独で, もう一方は外科矯正併用治療を選択した症例について比較検討を行った. 矯正治療単独症例は上下顎両側小臼歯を抜去し, マルチブラケット装置にて動的治療を行った. 外科矯正併用治療症例では術前矯正後, 下顎後退術を施行した. その後, 術後矯正と頤形成術を行い, 保定治療へ移行した. 治療の結果, 矯正治療単独症例では, 主に下顎前歯の舌側傾斜により被蓋は改善したが, 下顎正中矢状断面 (以下Symphysisと称す) に対し過度の舌側傾斜を与えたため下顎前歯唇側に歯肉退縮を認めた.外科矯正併用治療症例では, 初診時若干の歯肉退縮を全体的に認めたが, 矯正治療および外科手術により, 上下顎の前後的不調和が改善し, さらに上下顎前歯の歯軸傾斜を適正に近づけることができたため歯周組織の負担が軽減し, 歯肉退縮が改善した. これらの結果をふまえて, 過去の報告に, 上下顎の大きさや位置の不調和の補正を, Symphysisの形態が自らの厚みや形を変化させることで対応しているという報告よりSymphysisの形態的特徴と, 頭蓋に対する下顎前歯の傾斜の違いに着目し考察を行った. さらに, 両症例の審美的観点, 歯周組織的観点, 咬合機能的観点から加えて考察を行った.

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出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.375, 2013-11-30 (Released:2014-04-01)
著者
渡辺 仁資 井上 理 金塚 文子 栗原 祐史 松浦 光洋 吉濱 泰斗 代田 達夫 羽鳥 仁志 新谷 悟
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.57-62, 2010-03-31 (Released:2013-03-26)
参考文献数
12

公 告掲載論文の取り下げについて 本誌,Vol.30 No.1 (2010年 3月号)に掲載された「当科における過去 3年間の口腔悪性腫瘍症例の臨床統計的検討」渡辺仁資,井上 理,金塚文子,栗原祐史,松浦光洋,吉濱泰斗,代田達夫,羽鳥仁志,新谷 悟 上記論文につきましては,データ解析のための統計学的方法とその解釈に不備があっため,著者本人の依頼により取り下げに致します.なお,論文審査過程において指摘できなかったことを真摯に受け止めて,今後の論文審査を実践いたします.2013年 10月 30日 Dental Medicine Research編集委員長 中村雅典
著者
宇田川 信之 高見 正道 自見 英治郎 伊藤 雅波 小林 幹一郎 須沢 徹夫 片桐 岳信 新木 敏正 高橋 直之
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.64-69, 2001-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
10

破骨細胞は高度に石灰化した骨組織を破壊・吸収する唯一の細胞である.骨吸収を司る多核の破骨細胞はマクロファージ系の前駆細胞より分化する.この破骨細胞の分化と機能は, 骨形成を司る骨芽細胞あるいは骨髄細胞由来のストローマ細胞により厳格に調節されている.大理石骨病を呈するop/opマウスの解析より, 骨芽細胞が産生するマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF) が破骨細胞前駆細胞の分化に必須な因子であることが示された.更に最近, 骨芽細胞が発現し破骨細胞の分化と機能を調節する腫瘍壊死因子 (TNF) ファミリーに属する破骨細胞分化因子 (osteoclast differentiation factor, ODF/receptor activator of NF-κB ligand, RANKL) がクローニングされ, 骨芽細胞による骨吸収の調節メカニズムのほぼ全容が解明された.骨吸収の調節は, Ca代謝調節ホルモンと共に局所で産生される各種のサイトカインが重要な役割を担っている.骨吸収促進因子は骨芽細胞あるいは間質細胞に作用してRANKLの発現を促進する.しかし, TNFαやIL-1は破骨細胞前駆細胞や破骨細胞に直接作用し, RANKLのシグナルを介さずに破骨細胞の分化や骨吸収機能を促進することも明らかにされた.さらに, 骨形成因子 (BMP) をはじめとするTGF-βスーパーファミリーに属するサイトカインがRANKLの存在下で破骨細胞の分化と機能を促進する結果も得られた.現在, これらのサイトカインとRANKLとのシグナル伝達のクロストークに関する解析が活発に行われている.
著者
江黒 節子 篠原 親 柴崎 好伸 中村 篤 大野 康亮 道 健一
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.68-73, 1997-03-31
参考文献数
3
被引用文献数
1

上顎前歯歯槽部が過度に露出した上顎前突症患者 (Angle Class II division 1) に対し, 矯正治療に加えLe Fort I型骨切り術と下顎枝矢状分割術を併用することで, 顔貌と咬合の改善を計った.Le Fort I型骨切り術は, 術直前に, 上顎左右第二大臼歯を抜去することで得られた抜去空隙を利用し, 後方移動量を増大させた.結果, 上顎中切歯切縁にて, 上方に7.0mm, 後方に5.0mm, 上顎第一大臼歯近心咬頭頂にて, 上方に4.5mm, 後方に7.0mmの移動が可能となり, 更に, 下顎枝矢状分割術の併用により, ANB角は7.0度から3.9度へ改善された.これより本法は, 著しい上顎前突症患者に対し, 良好な顔貌および咬合状態を得る有用な方法と考えられたので, その概要を若干の考察を交え報告する.
著者
鄭 宗義 今村 一信 大塚 純正 柴崎 好伸
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.48-54, 1997-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
28

審美的な顔貌の獲得のための矯正治療のゴール設定を目的として, 顔面形態と下顎前歯の位置について以下の検討を行った.研究対象は, 矯正治療を終了した88名で, これらについて審美的観点から調和群, 不調和群の2群に分類し, Rickettsの分析法を用いて, 顔面形態ならびに歯の比較検討を行った.特に, 側面頭部X線規格写真の計測からA-Pog線に対する下顎中切歯の植立状態と顔面形態が, 審美性に対してどのように関連しているのかを検討し, 以下の結果を得た.1.調和群の側貌の上唇は, Esthetic lineより0.2mm後方, 下唇は1.0mm前方に位置していた.一方, 不調和群では上唇は0.9mm前方, 下唇は3.0mm前方に位置しており, 不調和群の下唇は調和群に比べ有意に前方位を取っていた.2.下唇の前後的位置と下顎前歯の位置とに有意な相関が認められ, 側貌の調和には下顎中切歯の位置が関与していることが示された.3.A-Pog線に対する下顎中切歯の切端の位置は, 中顔型で3.7±1.4mm, 短顔型は3.6±1.6mm, 長顔型は4.7±2.0mmであった.一方, 下顎中切歯の歯軸傾斜には, 顔面形態による有意な相違は認められず, 平均25.6°であった.以上, 審美性の見地から矯正治療の目標を設定する際には, 顔面形態による相違を考慮に入れる必要があり, 特に長顔型の場合, 他に比べ下顎前歯の位置をやや唇側に植立するように留意すべきであることが示された.
著者
長谷川 篤司 木下 潤一朗
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.169-175, 2009-07-31 (Released:2013-08-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

良好な根管治療予後のためは, 治療過程のすべてのステップで根管内無菌化のための努力がもとめられている. これらのステップのうち, 根管壁の化学的清掃, すなわち根管洗浄には, 従来から次亜塩素酸ナトリウムと過酸化水素水による交互洗浄が用いられてきた. また, 近年ではEDTAの使用や, 超音波発生装置の併用などが取り上げられている. では従来からの根管洗浄法の問題点は何か. 新たな薬剤や器材によって何がどう改善され, どのような効果が見られるのか. これらを導入する際には, 臨床上どのようなことに配慮すべきか. 現状でどの程度の臨床現場で使用されているのかなどを簡単に解説した.
著者
中山 裕司 高橋 浩二 宇山 理紗 平野 薫 深澤 美樹 南雲 正男
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.163-174, 2006-06-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
23
被引用文献数
2

音響特性による嚥下障害診断の重要な手掛かりとなる嚥下音について, その産生部位や部位に対応した音響特性は明らかとされていない.そこで嚥下音の産生部位と音響特性を明らかにする目的で, 画像・音響分析プログラムを新たに構築し, 健常者を対象として嚥下音産生時の造影画像と嚥下音音響信号データの同期解析を行った.対象は健常成人12名で, 各被験者8嚥下ずっ計96嚥下にっいて食塊通過時間の測定, 食塊通過音の識別と出現頻度の解析, および最大ピーク周波数の評価を行った.食塊通過時間は喉頭蓋通過時間 (121.7±92.4msec), 舌根部通過時間 (184.8±70.6msec), 食道入口部通過時間 (342.9±61.1msec) の順で長くなり, 舌根部通過音, 喉頭蓋通過音, 食道入口部通過開始音, 食道入口部通過途中音および食道入口部通過終了音が識別された.このうち喉頭蓋通過音が最も出現頻度が高く (96嚥下中94嚥下), 嚥下ごとの通過音の出現状況では舌根部通過音, 喉頭蓋通過音, 食道入口部通過開始音, 食道入口部通過途中音の4音が出現するパターンが96嚥下中22嚥下 (22.9%) と最も多くみられた.また最大ピーク周波数の平均値の比較では食道入口部通過開始音 (370.7±222.2Hz) が最も高く, 続いて食道入口部通過途中音 (349.1±205.4Hz), 舌根部通過音 (341.2±191.3Hz), 喉頭蓋通過音 (258.6±208.2Hz), 食道入口部通過終了音 (231.2±149.8Hz) の順であった.本研究により嚥下音の産生部位と産生喜附に対応した音響特性が明らかとなった.
著者
菅沼 岳史 螺澤 庸博 小野 康寛 伊東 令華 馬場 一美
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental medicine research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.111-116, 2012-07-31
参考文献数
2

本学では学生のコミュニケーション能力,自学自習能力,問題解決能力,臨床推論・判断能力などに代表される基礎的臨床能力を向上させるために,南カリフォルニア大学歯学部にて開発された仮想患者 Virtual Patient(以下VP)システムをべースにした VP システムを開発し,導入を進めている.このシステムは,学習者がいつでもどこからでもWebにより学内サーバにアクセスして学習することができ,テキストベースで行う医療面接,歯科基本セットから器具選択して行う診査部分と,検査法,診断,治療法の選択を行う5つのパートで構成されている.現在運用されているVP症例は,昭和大学教育研究推進事業として各講座,診療科に提出していただいた症例の中から,医療面接から治療法の選択までのフルバージョンの3症例と医療面接のみの5症例を作成,運用している.本稿では,最新版のシステムの概要と現在までの運用実績とその評価および今後の展開について紹介する.
著者
柴垣 博一 若月 英三
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.449-465, 2000-12-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
40

モンゴロイド集団というのは, 大きく分けて2つのグループに分けられるという.1つはSinodont (中国型歯形質) とよばれるもの, もう1つはSundadont (スンダ型歯形質) である.日本では, このSundadontをもつ縄文人が1万年ほど前に渡来した.しかし, その後, 約2000年前にSinodontをもつ弥生人が朝鮮半島経由で渡来し, 混血して現在のようなSinodontが優性な日本人が形成されたといわれている.そこで著者らは, モンゴロイドの基盤となる集団と近縁であると考えられるSundadontに属する南方系のフィリピン人とSinodontに属する日本人と日本人の起源と関係の深い北方系の中国人の各々の上顎口腔内石膏模型を作製した.これらの上顎口腔内石膏模型をレーザー計測装置SURFLACER VMS-150R-D (UNISN社) を用いて三次元的に計測し, パソコン上で画像解析ソフトSURFACER (米国IMAGEWARE, INC) で, 歯列弓の大きさと口蓋の深さ (前頭断面, 矢状断面) について解析し, これらを統計学的に検討した.その結果, 日本人が中国人に近い項目は歯列弓の大きさの項目が多く, 日本人がフィリピン人に近い項目は口蓋の前頭断面の中央部と口蓋の矢状断面の後方部で, 日本人が両者の中間の項目は第二大臼歯の歯列弓幅で, 日本人が大きい項目は, 前歯列弓長, 犬歯弦であった.以上を要約すると, 現在の日本人の歯列弓の大きさと口蓋の深さは北方系の中国人と南方系のフィリピン人の要素が複雑に混血しているが, 歯列弓の大きさは中国人に近く, 北方系弥生人の要素が強く, 口蓋の深さ (前頭断面の中央部, 矢状断面の後方部) はフィリピン人に近く, 南方系縄文人の要素が強い.さらに, 日本人の口元は出っ張り気味で北方系弥生人の要素が強いことが示唆された.
著者
真鍋 厚史
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.260-263, 2010-11-30 (Released:2013-03-26)
参考文献数
7

最近アンチエイジング, すなわち若返りや抗加齢ということが注目されている. アンチエイジングには, 大がかりなものからわずかな若返りなど幅があり, また患者個人が独自の考え方で若返りを追求するいわゆるサプリメント療法やエクササイズ等, また特に本人はアンチエイジングなどを気にしていないが他人から観察すると本来の年齢よりも若く写る場合がある. 昭和大学歯科病院は歯, 歯肉の病気や発声等の機能障害, 食事機能障害などの治療を専門としている. そこで患者が簡単にかつ清潔で美しく若返れる方法を実際の症例を例に説明する.
著者
高田 嘉尚 高橋 浩二 中山 裕司 宇山 理紗 平野 薫 深澤 美樹 南雲 正男
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.68-74, 2006-03-31 (Released:2012-08-27)
参考文献数
11

本研究は嚥下音と呼気音の音響特性を利用して嚥下障害を客観的に鑑別することを目的として企画されたものである.対象は嚥下障害を有する頭頚部腫瘍患者26名である.VF検査中嚥下音ならびに嚥下直後に意識的に産生した呼気音をわれわれの方法によって採取し, 嚥下と呼気産生時の動態のVF画像とともにデジタルビデオレコーダーに記録した.嚥下音と呼気音の音響信号はわれわれの音響解析コンピュータシステムによって分析を行い, 嚥下音については持続時間を計測し, 呼気音については1/3オクターブバンド分析により, 中心周波数63Hzから200Hzまでの6帯域の平均補正音圧レベルを求めた.嚥下音と嚥下後に意識的に産生した呼気音92サンプルずつについて, これらの分析が行われ, VF所見との比較が行われた.その結果, 嚥下音の持続時間では, Abnorma1群 (誤嚥あるいは喉頭侵入のVF所見を示した群) はSafety群 (前記のVF所見のない群) に比べ, 持続時間が延長する傾向がみられ, 呼気音の補正音圧レベルでは, Abnorma1群はSafety群に比べ, 音圧レベルが大きい傾向を示した.次に嚥下障害を鑑別するために嚥下音の音響信号の持続時間の臨界値として0.88秒を設定し, 同様に呼気音の音響信号の補正音圧レベルの臨界値として17.2dBを設定した.嚥下音と呼気音の分析値の両者がともにこれらの臨界値を超えた場合, そのときの嚥下は障害があると評価した.これらの評価とVF所見との判定一致率は感度82.6% (38/46), 特異度100% (46/46), 陽性反応的中度100% (38/38), 陰性反応的中度85.2% (46/54), 判定-致率91.3% (84/92) となった.以上の結果より嚥下音の持続時間と呼気音の補正音圧レベルは嚥下障害を検出するために利用できることが示唆された.
著者
北村 徹
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.211-230, 1989-06-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
26
被引用文献数
1

有歯顎者20名 (男10名, 女10名) について, 無声破裂音 [P, t, k], 有声破裂音 [b, d, g], 弾音 [r], 鼻音 [m, n] の周波数分析および時間波形の拡大描記をDigitalSonagraph (7800型KAY社製) によって行い, 先行子音継続時間および後続母音移行部の第2ホルマント周波数を計測した.1.時間要素の観察および計測は, 時間波形の時間軸を最大96倍まで延長して行った.子音発音区間をDI, DII, DT, BZに区分し, それぞれの時間およびDI/DT (%) 求めた.すなわち, 子音の開始から後続母音成分の出現までをDT, さらに, この中で, spike創e減衰までを (DI), それ以降を (DH) とした.その結果, (1) 調音方法の違いによって時間波形に差異が認められた. (2) [k]では後続母音の違いによる差異が認められた. (3) 無声破裂音間および有声破裂音間では調音部位が後方のものほどDTは長い. (4) 対応する無声破裂音より有声破裂音はDI, DTとも有意に短い.2.第2ホルマント始端周波数については各被験者の [a] の定常的な部分の第2ホルマントの周波数 (FHa) を基準値として, これに対する各被験音の第2ホルマント始端周波i数 (FHT) の差 (ΔTa) を求めた.また, 各後続母音の定常的な部分の周波数(FIIT)との差 (Δa) を求めた.その結果, (1) FIITの平均値は, [P, b, m] は低く, [t, d, r] は中間, [n, k, g] は高い. (2) 第2ホルマント始端から後続母音への遷移の軌跡を延長した仮想線は, [t, d] では, 子音発音時点で一点に集束し, [r, n] も同様の傾向がみられる.また, [p, m]では下方に, [k, 9] では, 上方に向かっている.以上のように, それぞれの音について時間要素および第FH遷移での特性が認められた.
著者
長澤 郁子 岩崎 多恵 増田 陸雄 五島 衣子 岡 秀一郎 吉村 節
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.142-145, 2005-06-30 (Released:2012-08-27)
参考文献数
11

静脈内鎮静法の施行時に, フルマゼニルの投与直後に血圧上昇, 頻脈および不穏状態をきたした症例を経験した.患者は59歳女性, 体重60kg.2種類の降圧薬を服用している.静脈内鎮静法下で, 下顎デンタルインプラント埋入手術を施行した.手術終了まで良好な鎮静状態で経過した.手術終了後, 鎮静状態からの回復が不十分だったため, フルマゼニルを0.1mgずつ総投与量0.2mgを静脈内投与した.その直後からめまい, 胸部不快症状を訴え, 血圧と脈拍の急激な上昇と一過性の不穏状態をきたした.約30分後には, 不快症状は緩解し, 発症から1時間後には帰宅可能となった.後日, 既往歴の再確認を行った結果, 精神安定薬の服用中であることが判明し, 今回の不快症状はフルマゼニル投与後の一過性の離脱症状と推測された
著者
浅川 剛吉 坂田 一恵 嘉手納 未季 船津 敬弘
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.41-44, 2014-03-31 (Released:2014-07-31)
参考文献数
5

我々が, 日常の臨床にて向き合っている歯 (歯根膜・歯髄) から獲得出来る細胞は再生医療の分野においても注目され, 歯根膜や歯髄そのものを再生する研究や有効活用する研究は盛んに行われている. 歯 (歯根膜・歯髄) 由来細胞はheterogeneityな細胞集団でありそれらの能力について未だ解明されていない部分も多い. また, 歯の形態異常や重度の歯周疾患を特徴とする全身疾患のある患者において歯 (歯根膜・歯髄) を採取し, 細胞の特徴を把握することが出来れば, 歯周疾患や外傷, 矯正歯科治療などにおける歯周組織の再生および恒常性の維持に必要な間葉系幹細胞の遊走制御やrecruitmentの機構を解明することも期待できる. そこで本稿は, 歯 (歯根膜・歯髄) 由来細胞の分離培養方法について報告する.