- 著者
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土佐 泰祥
- 出版者
- 昭和大学学士会
- 雑誌
- 昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
- 巻号頁・発行日
- vol.52, no.2, pp.148-157, 1992-04-28 (Released:2010-09-09)
- 参考文献数
- 29
今日, 鼻副鼻腔炎の原因として鼻腔形態異常が重視されてきており, また口唇口蓋裂患者の術後に鼻閉感を訴える場合があり, 鼻腔形態や鼻腔容積の異常が鼻腔通気度・鼻閉感に影響していることが考えられている.しかし, 鼻腔形態について詳細に調査した報告は少なく, 鼻腔容積についての報告はみあたらなかった.今回, 鼻腔領域疾患の診断・治療あるいは口唇口蓋裂患者の術前・術後の検討への応用の前段階として, 8~23歳の健康ボランティア69例 (男性: 17例, 女性: 52例) 平均年齢16.3±4.1歳に, MRIを用いて鼻腔領域の撮影を行ない, 鼻腔容積を求め, 年齢・身長・体重に対する相関関係について調査・検討を加えた.使用機種は, シーメンス社製のマグネトームM10で, 1.0テスラの磁場強度の超伝導型装置で, 撮像条件はT1強調像, 繰り返し時間TR 600msec, TE 19msecのshortスピンエコー法で, スライス幅は3mmまたは4mmでギャップレスとし, 断層面は横断面を撮影した.鼻腔としては, 前方は梨状口部まで, 後方は後鼻孔部まで, 側方は上・中・下鼻甲介および鼻道を含み, 前頭洞・上顎洞などの開口部までとし, 上方は脳頭蓋の一部まで, 下方は口蓋の上面までとした.横断面の基準線としては, 正中矢状断面像で鼻根部最陥凹点と橋延髄移行部を結んだ線を選んだ.これはCTでよく用いられるCMラインとほぼ一致するからである.鼻腔容積は, 各々の横断面の断面積をMRI装置付属のディスプレイコンソールを用いて直接トレースし, スライス幅を掛けて柱状の容積を出し, これらを積み重ねて容積を算出した.8~23歳の対象を5つの年齢群 (1) 8~10歳, (2) 11~13歳, (3) 14~16歳, (4) 17~19歳, (5) 20~23歳に分けた.鼻腔容積・身長・体重の平均を年齢群別でみると, 身長・体重の伸びは16歳ころでほぼプラトーとなっているのに比べ, 鼻腔容積の増加は, 20歳ころまで続いていた.統計学的解析として, 鼻腔容積と年齢, 身長, 体重, について, ピアソンの相関係数・回帰直線を求め, 有意の相関係数・回帰直線を得た (p<0.05) .また, 男性群と女性群との間で相関係数と回帰直線の傾きで有意の差を認めなかった.統計学的処理では鼻腔容積に対して年齢, 身長, 体重で比較的強い相関関係が認められ, 体重との相関に比べ身長との相関がより強いという結果を得た.