著者
菊嶋 修示 小林 洋一 蔵野 康造 矢澤 卓 馬場 隆男 向井 英之
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.249-260, 1991-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
27
被引用文献数
3

Adenosine三リン酸 (ATP) は上室性頻拍 (PSVT) の停止薬として用いられるが心停止, 灼熱感などの副作用が多い.ATPの刺激伝導系への作用はATP自身とadenosineに基づき, 副作用もATP自身とadenosineに基づくと思われる.ATP使用に際し, dipyridamole (DIP) (adenosineの細胞内吸収阻害薬) を併用しATP作用のadenosineに依る作用のみ増強させることで, ATPの副作用を軽減し得るか検討した.対象は32例, 内20例がPSVT例である. ATPの半減期は短いため, ATPは漸増注入 (0.025-0.5mg/kg) した.前処置薬としてDIP, aminophylline (adenosineの競合的阻害薬) , atropine, propranolol, isoproterenolを用いた.前研究として洞調律時にATPを注入し, 前後での洞周期と房室伝導時間を経時的に求め, ATP注入前後でcyclic-AMP (c-AMP) , epinephrine, norepinephrine血中濃度を測定した.ATPを洞調律時に注入すると, 一過性の陰性変時作用と陰性変伝導作用が出現, その後陽性変時作用がみられた.陰性変時作用と陰性変伝導作用はDIPで増強, aminophyllineで減弱, atropineでは不変であった.陽性変時作用はaminophyllineで増強された.陰性変時作用はisoproterenolで増強, propranololで抑制された.血中epinephrine, norepinephrine, c-AMPはほぼ全例でATP注入後上昇した.以上より, 陰性変時作用, 陰性変伝導作用は主にadenosineに基づき, 陽性変時作用は自覚症状などに基づく二次的作用と考えられた.少量のATP投与時には陰性変時作用が陰性変伝導作用より早期に出現したことより, ATPでのPSVT停止に際し, 少量のATPほど停止時に洞停止が短かかった.PSVT停止に関しては心房内回帰性頻拍以外のすべてのPSVTで停止が得られ, 停止量は房室ブロック量の約半量であった {ATP単独 (停止量vs房室ブロック量: 0.16±0.07mg/kgvs0.30±0.12mg/kg, p<0.01) , DIP=0.1mg/kg併用 (0.09±0.06mg/kgvs0.15±0.07mg/kg, p<0.05) } .停止量はDIP=0.1mg/kg併用でATP単独投与時の約半量となった (p<0.01) .停止時に房室ブロックを回避でき, ATP量が小であるDIP=0.1mg/kg併用が最適と考えられる.灼熱感, 嘔気などがATP単独投与時には全例にみられたが, DIP併用時には2例で消失, 他の全例で減弱した.ATP-DIP (0.1mg/kg) 併用療法は副作用を軽減し, 有効であると考えられた.
著者
村井 春雄
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3-4, pp.260-264, 1939-12-31 (Released:2010-09-09)

元來オゾンの身體に及ぼす益は何人も認むる處なれ共主として吸入療法に用ひられて居るなり.然るに余は最近硬質硝子製の純粹オゾン發生器を入手せるを以て, 先づ試みにオゾン吸入に依り緩和さるる喘息様疾患及び其の殺菌鎭靜作用の應用に依り效力を思考さるる一二の外科的疾患に應用し見たるに何れに於ても豫想外の成績を納めたり.即ち完全なる氣管枝喘息發作患兒4例中1例は唯1囘, 3例は3囘のオゾン注射 (20.0c.c.宛胸部の皮下に施行す) のみにて全く全治したり.尚百日咳或は氣管枝加答兒の經過中合併し來れる4例の喘息様症状の例に於ては僅か1-2囘の同様注射に依りて明かに其の合併状態を消失せしむるを得たり.且1例の脊椎カリエスは1年有餘の局所疼痛を1-2囘の局所注射に依りて忘れしむるを得, 約10囘にして10糎の右彎を矯正し得たり.又1例の打撲性の股關筋痛をも唯1囘の局所注射に依りて完治せしめ得たり.1例の大腸加答兒に於ては3囘の注射により腹痛を去り, 急激に便性を良好ならしむるを得たり.
著者
佐藤 千佳 辻 まゆみ 木村 謙吾 小口 勝司 中西 孝子 舟橋 久幸 齋藤 雄太 植田 俊彦 小出 良平
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.450-457, 2015 (Released:2016-01-23)
参考文献数
30

生直後から12日齢まで80%酸素にて飼育した未熟児網膜症モデルラットと以前,報告された高酸素負荷による酸化ストレス誘発性脳障害モデルと比較し,未熟児網膜症モデルの酸化ストレス誘発性脳障害モデルとしての有効性について検討した.出生直後より12日齢まで80%高酸素負荷ラット(P12)およびその後大気中に移動し24時間飼育したラット(P13)は,脳(海馬)を摘出した.海馬の凍結切片を作製し,DNA酸化損傷マーカーである8-hydroxy-2'-deoxyguanosine(8-OHdG)を免疫染色し,局在を確認した.また,ホモジェネートを作製し,酸化ストレスマーカーであるreactive oxygen species(ROS),脂質過酸化物(malondialdehyde: MDA),酸化型グルタチオン(GSSG)量を,RT-PCR法によりO2-を酸素と過酸化水素へ不均化する酸化還元酵素Cu/Znsuperoxidedismutase(SOD)mRNAを測定し,記憶や学習に関わる海馬への酸化ストレスを確認した.さらに,ROSを積極的に産生する酵素type 4 nicotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADPH)oxidase(Nox4)mRNAを測定し,Nox4の役割について考察した.8-OHdGはコントロール群に比べて,高酸素負荷終了直後(P12)増加していた.特に,CA1,CA3,歯状回(DG)では8-OHdG陽性細胞数の増加は顕著だった.P12海馬内ROS,Cu/Zn SOD mRNA,GSSG,MDA量は高酸素負荷群でコントロール群に比べ有意に増加しており,P13でも同様の結果を示した.P12での海馬内酸化ストレスの結果はこれまでの報告と一致していた.海馬Nox4 mRNAはコントロールに比べP13の酸素負荷群で2.7倍となり,相対的低酸素状態(脳虚血)から低酸素状態への適応(再灌流)による神経変性を増悪する可能性が示唆された.ラット脳,網膜などの神経組織が成熟する生後12日(P12)まで高酸素投与を継続する未熟児網膜症モデルは本研究により初めて酸化ストレス誘発性脳障害モデルとしても応用可能であることが示された.
著者
稲葉 益巳 金箱 房枝
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.177-178, 1953

Utilizing anti-C, anti-D and anti-E sera, which were donated by A. S. Wiener, tthe authors examined 90 Japanese persons for their Rh types. The following is the result of their examinations.<BR>Phenotypc<BR>CDe type 59<BR>CDE type 11<BR>cDE type 7<BR>cdE type 6<BR>Cde type 4<BR>cde type 2<BR>cDe type 1<BR>Total 90
著者
島内 節
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.189-201, 1986-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

パーキンソン病患者は神経難病の中で最多であり, その多くが在宅療養者であるにもかかわらず在宅ケアの実践例からケア課題やケア効果をとらえた研究例は, きわめて少ない.そこでパーキンソン病患者の社会環境条件と在宅ケア顆題の特徴を明らかにし在宅ケアについて評価を行った.東京都立神経病院在宅診療班が1975~1983年の期間に在宅ケアを開始していたパーキンソン病患者69例について在宅ケア開始期を中心として患者の属性・社会環境条件, 症状・障害, 病状経過ADL, 精神能力, 介護実態, 介護困難を分析した.その際, 一般寝たきり老人, 寝たきりでない疾病老人をコントロール群とした.その結果次のようなことが明らかになった. (1) パーキンソン病在宅ケア患者は難病, 障害者, 高齢の条件が重なり身体障害者手帳1, 2級所持者は28例 (40.6%) を占め, 全例にADLが著しく低下し, 大多数にコミュニケーション障害, 精神症状, 痂呆, 意欲低下など精神能力も障害されていた.2) 在宅ケアの対象となり, その効果が期待できる症状・障害は, 失禁・排尿障害, 蒸下障害, 精神症状 (幻覚, 失認, 徘徊など) , 意識障害, 呼吸異常, 褥瘡などであり, また処置としては経管栄養, 膀胱留置カテーテル, 吸引, 呼吸管理などであった. (3) パーキンソン病老人は一般寝たきり老人に較べて, 平均年齢は5.5歳低いにもかかわらず前記症状・障害, 処置の必要度が有意に高く認められ, 介護困難も有意に高い. (4) パーキンソン病患者のADL, 精神能力のいずれも女よりも男において有意に低い.この傾向は他文献とも一致した. (5) 介護能力・介護条件は, 介護者によって異なる.このうち緊急問題解決能力は嫁・娘>妻>夫・その他 (老母, 老姉妹) の順で, 日常介護能力・条件は, 妻・嫁>娘>夫・その他 (老母, 老姉妹) の順である.そこで介護者が男性や高齢者の場合に介護上の問題が多い. (6) 介護上の問題は症状・障害に伴う介護知識や技術に困難度が強い. (7) 在宅ケアにおいては上記の問題への対応の他に, 医療費など諸制度の活用, 専門職・非専門職への照会など医療上, 生活上の諸問題や介護者の心身の健康管理などの対応課題があげられる. (8) 専門家による在宅ケアの効果は患者の医療確保に合わせてケアによって症状・障害の緩和, 病状進行を遅延させうることがわかった.また介護者の健康管理によい結果をもたらしていた.
著者
佐口 健一 田中 佐知子 小林 文 中村 明弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.75-80, 2019-02

近年,教育現場における学習成果の評価方法として,パフォーマンス評価が求められており,その評価方法の一つとしてポートフォリオ評価が挙げられる.ポートフォリオには学生が学修カリキュラムを通した振り返りとして,成長した点や反省点などが記述されている振り返りシートが含まれる.そこで本研究ではテキストマイニングの手法を用いて振り返りシートの記述内容の分析を試みた.2018年度の2〜4年次の学生582名の内,本研究に参加の同意が得られた557名を対象とし,各学生が2年次3月初めのオリエンテーションの際に提出した1年次振り返りシートを解析した.調査項目は,1年次を振り返り,自分の「成長した点」と 「反省点」についての自由記載とした.解析の結果,「成長した点」として最も多かったカテゴリは「寮生活」で,次いで「友達」,「コミュニケーション」であった.これらの抽出されたカテゴリから,本学の特徴である初年次全寮制教育において学生はコミュニケーション能力が高まったと感じていることが明らかとなった.また,「反省点」として最も多かったカテゴリは「勉強」で,次いで「テスト」,「予習復習」であり,集中して勉強できなかったことや,勉強開始がテスト直前になってしまったことなどを挙げている.これらの結果から,テキストマイニングの手法を用いてポートフォリオの振り返りシートの記載内容を解析することにより,学生が初年次全寮制教育プログラムで学んだと感じている内容を,教員が根拠をもって認識できることが明らかとなった.
著者
佐口 健一 田中 佐知子 小林 文 中村 明弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.75-80, 2019 (Released:2019-08-10)
参考文献数
4

近年,教育現場における学習成果の評価方法として,パフォーマンス評価が求められており,その評価方法の一つとしてポートフォリオ評価が挙げられる.ポートフォリオには学生が学修カリキュラムを通した振り返りとして,成長した点や反省点などが記述されている振り返りシートが含まれる.そこで本研究ではテキストマイニングの手法を用いて振り返りシートの記述内容の分析を試みた.2018年度の2〜4年次の学生582名の内,本研究に参加の同意が得られた557名を対象とし,各学生が2年次3月初めのオリエンテーションの際に提出した1年次振り返りシートを解析した.調査項目は,1年次を振り返り,自分の「成長した点」と 「反省点」についての自由記載とした.解析の結果,「成長した点」として最も多かったカテゴリは「寮生活」で,次いで「友達」,「コミュニケーション」であった.これらの抽出されたカテゴリから,本学の特徴である初年次全寮制教育において学生はコミュニケーション能力が高まったと感じていることが明らかとなった.また,「反省点」として最も多かったカテゴリは「勉強」で,次いで「テスト」,「予習復習」であり,集中して勉強できなかったことや,勉強開始がテスト直前になってしまったことなどを挙げている.これらの結果から,テキストマイニングの手法を用いてポートフォリオの振り返りシートの記載内容を解析することにより,学生が初年次全寮制教育プログラムで学んだと感じている内容を,教員が根拠をもって認識できることが明らかとなった.
著者
鈴木 慎太郎 本間 哲也 眞鍋 亮 木村 友之 桑原 直太 田中 明彦 相良 博典 柳川 容子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 = Journal of the Showa University Society (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.282-288, 2018-06

症例は38歳男性.自家製のお好み焼きを食べている最中から喉頭違和感,呼吸困難,眼球結膜の充血などを訴え救急搬送された.アナフィラキシーの診断で加療し,後日当科へ精査目的で来院した.患者には著しいダニ・ハウスダストによるアレルギー性鼻炎の既往があった.お好み焼きの具材に対する抗原特異性IgEによるアレルギー検査とプリックテストを行ったが全て陰性だった.問診上,開封後密封せずに常温で6か月以上経過した市販のお好み焼き粉を用いて調理したことが判明し,お好み焼き粉に混入したダニによるアナフィラキシーを強く疑った.お好み焼き粉を鏡検した結果,多数のコナヒョウヒダニが検出され,さらに,Dani Scan?(生活環境中のダニアレルゲン検出を目的とする簡易型検査キット)を用いた検査においても強陽性を示した.近年,お好み焼きやパンケーキ等の小麦粉製品に混入したダニを経口摂取して生じるアナフィラキシーの報告が急増している.診断のためには,調理に用いた小麦粉製品の保管状況の聞き取りと,感作が成立した同種のダニを発症前に摂取した調理材料中に証明することが求められる.今回,使用したDani Scan?は,一般家庭においても食品中のダニ汚染を検知する簡便なキットであり,本病態の診断や発症の予防に一定の効果が期待できるものと推察した.
著者
奥村 昌恵 齊川 真聰 山浦 卓 小口 勝司 中山 貞男
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.229-236, 2002-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

アトピー性疾患は, 近年増加の一途をたり, その難治化は世界中で大きな問題となっている.特に, アトピー性皮膚炎はTh1型, Th2型アンバランスにより起こる皮膚アレルギー炎症で, 再発性のある事が知られており, その治療法も多岐にわたっている.今回我々は, 鍼刺激の, 皮膚アレルギー炎症モデルマウスに対する効果について検討を行った.まず, ICRマウスをオキサゾロンによって感作した後, 誘発時より鍼刺激を開始した.皮膚アレルギー炎症の指標として, マウスの耳介腫脹率の変化, 耳介重量及び, サイトカイン類はELISA法にて測定した.その結果, 鍼刺激群は対照群と比べ, マウスの耳介腫脹率及び耳介重量を抑制した.血清サイトカイン類の検討では, 鍼刺激群ではIL-2, IFN-γ, 及びIL-10産生を抑制した.また, 耳介組織サイトカイン類の検討では, IL-4, Ig-E及びIFN-γ産生の抑制を示した.以上の結果から, 鍼刺激はICRマウスの皮膚アレルギー炎症に対して抑制的に作用することが示唆された.
著者
中村 直文
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.321-334, 1982-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
33

急性膵障害を作製し, その初期像から進転に至る過程を明らかにする目的で実験病理学的研究を行なった.膵障害作製の為に高アミラーゼ血症を来たすことで知られるサソリ毒 (Leiurus quin-questriatus) を家兎に対しては耳静脈より致死量に近い量の2.44×10-4mg/gとその1/2量を3時間, 6時間, 12時間, 24時間間隔で投与した計8群, モルモットに対しては皮下より2.44×10-4mg/g, その1/2量, 1/4量の連日投与および1/2量を隔日にて週3回注射し, 1カ月後に1/4量を増量した計4群, 総計12群に対して投与した.これら投与群に対して, 膵を中心として病理組織学的検索を行なうとともに, 生化学, 電顕的検索, 数種の膵刺激剤を用いた対照実験を加えて行なった.病理組織学的には, 静脈投与では各群において膵における間質の水腫, 毛細血管および導管の拡張, 部分的には腺房細胞の濃縮, 膨化を認め12時間間隔2.44×10-4mg/g投与群, 3時間, 6時間間隔の1/2量投与群では, これらの所見に加えて腺房細胞の空胞形成から崩壊に至る組織像が認められた.皮下投与群では, 恒常的変化は毛細血管網の拡張による目立ちと腺房細胞の変性性障害であり, 長期投与群になるに従いこれら変化が高度になり, 多数の腺房細胞の空胞形成, 脂肪浸潤を認めた.電顕的には耳静脈投与家兎, 皮下投与モルモットの両方に, チモーゲン顆粒の減少, 腺房腟拡大, 粗面小胞体, ミトコンドリアの変性, 空胞形成が種々の程度で認められた.生化学的検索では, 膵腺房細胞の変性性病変が高度の場合には血清および尿アミラーゼ値が漸次上昇する傾向がみられ, 上昇したアミラーゼは3: 8程度で唾液腺型アミラーゼの優位な上昇を示した.以上.サソリ毒投与により, 主に膵においてその腺房細胞に変性性病変を主体とする過分泌を伴う膵障害を起こさしめ得ることを確認した.そしてサソリ毒の短期大量投与群では, 主に水腫を中心とする変性性病変を認め, 長期投与の場合は緩徐な持続分泌による機能亢進の為の細胞疲労, 消耗と思われる変性性変化の過程であり, 両者とも急性膵炎の組織表現と思考する.また当教室における膵障害分類では, 急性障害の内の変性型, すなわち急性実質性膵炎に相当するものである。
著者
渡邉 壮一郎 大坪 天平 田中 克俊 中込 和幸 上島 国利 鳥居 成夫 吉邨 善孝 宮岡 等
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.340-350, 2001
被引用文献数
2

パニック障害患者の6年後の転帰を調査し, パニック障害の転帰に関連する因子について検討した.1993年9月から12月に昭和大学病院精神科を初診で受診し, DSM-III-Rのパニック (恐慌性) 障害の診断基準を満たした166例のうち, 我々が1994年10月から12月に行った1年後の転帰調査に回答を得た100例 (男性37例, 女性63例, 初診時年齢39.5±13.6歳) を今回の調査対象とした.6年後の転帰調査は2000年4月から5月に行った.当科に通院中の患者には担当医が本研究の主旨を説明し文書による同意を得た上で評価した.当科に通院していない患者には手紙により本研究の主旨を説明し, 同意を返信にて確認した後, 指定の日時に電話調査を実施した.評価項目は調査前3カ月間のパニック発作の頻度, 広場恐怖症性回避と予期不安の重症度, 服薬状況, 受診状況, 心理社会的ストレスの強さなどである.当科に通院中の6例と電話調査の51例, 計57例 (男性15例, 女性42例, 年齢47, 5±15.6歳) から回答が得られた.そのうち, 36例 (63.1%) が調査前3ヵ月間に症状限定発作を含むパニック発作を1回以上認め, 38例 (66.7%) が広場恐怖症性回避を認め, 42例 (73.7%) が予期不安を認めた.24例 (42.1%) が当科を含めた精神科に通院中であり, 14例 (24.6%) が他の診療科に通院中であった.41例 (71.9%) が抗不安薬か抗うつ薬を何らかのかたちで服用していた.調査前3ヵ月に1回以上のパニック発作を認めるか, 中等度以上の広場恐怖症性回避か予期不安を認めることを転帰不良の指標とすると, 57例中25例 (43.9%, 95%信頼区間: 31.0~56.8%) が転帰不良と判定された.この転帰不良・良好を目的変数とし, 性別, 初診時の婚姻状況, 初診までの罹病期間, 初診時のパニック障害関連症状の重症度, 性格傾向を説明変数としてlogistic回帰分析を行ったところ, 「初診時に未婚であること」, 「初診時の息切れ感または息苦しさが強いこと」, 「初診時の動悸, 心悸亢進または心拍数の増加が弱いこと」が転帰不良と関連があった.
著者
齋藤 克幸 坂本 英雄 七条 武志 小川 良雄 吉田 英機
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.141-148, 2007-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

精漿inhibin Bと造精機能の関係を評価し, 精漿inhibin Bが造精機能の有用な指標であるか検討した.対象は不妊症患者81名 (平均年齢36.4歳) で, 精液検査で13名は無精子症33名は乏精子症, 35名は精子濃度が正常であった.血清inhibin B, LH, FSH, testosterone, 精漿inhibin B, transferrin濃度を測定し, 精液検査を行い総精子数精子濃度を検討に用いた.精漿inhibin B濃度は1111±1665pg/ml, 血清inhibin B濃度は149.4±83.42pg/ml, 精漿transferirn濃度は86.88±99.87ng/mlであった.無精子症群, 乏精子症群, 正常精子群の3群間の比較で血清inhibin B濃度, 精漿inhibin B濃度transferrin濃度に有意差 (p<0.001) を認めた.血清inhibin Bは総精子数 (r=0.33) , 精子濃度 (r=0.451) , 血清LH (r=-0.434) , 血清FSH (r=-0.580) , 精漿transferrin (r=0.370) と有意な相関を認めた.精漿inhibin Bは精子濃度 (r=0.395) , 血清FSH (r=-0.259) , 精漿transferrin (r=0.647) と有意な相関を認め, 精漿inhibin Bは造精機能の指標と考えられた.しかし, 精漿inhibin Bは血清inhibin Bより精漿transferrinと強い相関を示していたが, 血清inhibin Bに比べ血清FSHと精子濃度との相関は弱く, 血清inhibin Bに比し造精機能を評価する上で有用性に欠けると考えられた.
著者
友安 茂
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.554-559, 2000-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
7

1 0 0 0 OA 中枢神経

著者
浮洲 龍太郎
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.230-239, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
31
著者
黒田 佑介 堀内 一哉 笠原 慶太 酒井 翔吾 諸星 晴菜 蘒原 洋輔 藤崎 恭子 石井 源 松倉 聡 門倉 光隆
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.508-513, 2018-10-20 (Released:2018-03-13)
参考文献数
20

われわれは細菌性肺炎を契機とした慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease:COPD)増悪期の患者に対するステロイド治療について後方視的に検討した.当院で入院加療を行ったCOPD増悪患者についてステロイド投与群と非投与群を比較検討した.結果は入院期間がステロイド投与群で短い結果であり,感染症の再燃や高血糖などの副作用に差を認めなかった.細菌性肺炎を契機としたCOPD増悪期に対しても全身性ステロイドの投与が有効である可能性が示唆された.
著者
村上 雅彦 清水 喜徳 普光江 嘉広 李 雨元 李 雅弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.334-336, 1993

上部消化管内視鏡検査後に発症した急性胃粘膜病変の1例を経験したので報告する.症例は37歳男性.検診にて上部消化管内視鏡検査施行したが, 4日後突然に激しい上腹部痛出現し当院来院.再度内視鏡検査施行し, 前庭部を中心に出血性, 多発性の浅い小潰瘍が観察された.絶食, 補液, 抗潰瘍剤投与により1週間後には症状消失し, 1カ月後にはわずかな瘢痕を残すのみで, ほぼ完全に治癒した.近年, 上部消化管内視鏡検査の普及により, 本症は増加の傾向にあり, その発症に関してH.P.感染が有力視されており, 今後内視鏡機器の洗浄, 消毒に対し十分な注意が必要と思われた.
著者
武冨 麻恵 信太 賢治 大嶽 浩司 泉山 舞 山元 俊憲 蜂須 貢 増田 豊 亀井 大輔
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.514-519, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
14

神経因性疼痛の治療にSSRIが有効であるという報告がある.加えて近年新しく臨床使用されているノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(noradrenergic and specific serotonergic antidepressant:NaSSA)であるミルタザピンは三環系抗うつ薬やSSRIと異なる機序により脳内でノルアドレナリンとセロトニン神経を活性化する抗うつ薬である.本研究の目的は帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain:ZAP)に対するミルタザピンの除痛効果を明らかにすることである.2010年〜2013年にZAPによるアロデニアを発症している患者を前向きに調査した.SSRIであるフルボキサミンを50mg/日で一週間内服し,その後NaSSAのミルタザピンを15mg/日で一週間内服し効果を確認した.評価項目は視覚アナログスケール(visual analogue scale:VAS),嘔気,眠気の発生率とした.エントリー症例12例(男性8例.女性4例)の平均年齢は70歳(58〜79歳)であり,うちミルタザピンを7日間服用できたのは8例であった.ミルタザピンを内服中に中止となった3例はいずれも眠気とふらつきとが主な理由であり,7日間服用できた症例の中でも1例,眠気のため半量しか服用できなかった症例があった.ミルタザピン服用の8例中4例でVASは減少し,嘔気が問題となった症例はなかった.抗うつ薬にはさまざまな種類があり,どの薬を選択するかは難しいが,ミルタザピンは眠気の副作用があるもののフルボキサミン無効例にも効果があった.
著者
山口 正志
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.621-627, 1980

近年の医学の急激な進歩により感染性疾患による死亡率が激減し, 遺伝性, 体質性, 先天性疾患による死亡率が徐々に増加している.<BR>現在遺伝性疾患は約3, 000種類近く報告されている.<BR>今回著者は過去2年2カ月間に亘り遺伝相談センター (東京市が谷) に於て実際に相談にたずさわった155例をまとめ報告した.<BR>内訳は, 近親婚がもっとも多く24例, 続いて精神分裂病・そううつ病が20例, 精神薄弱が15例, 口蓋裂・唇裂が14例の順であった.内興味ある3, 4例について詳述し遺伝相談の必要性を強調した.