著者
須長 史生 小倉 浩 正木 啓子 倉田 知光 堀川 浩之
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.396-421, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
9

本研究は,2016年度から2018年度の3か年にわたって実施した「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の2018年度分実施内容に関する結果の報告である.すなわち,本論文は「セクシュアル・マイノリティに対する大学生の意識と態度:第1報」(須長他[2016])および「性的マイノリティに対する大学生の意識と態度:第2報」(須長他[2017])の続編であるとともに,特に3か年分の調査結果を俯瞰してこれまでに得られた知見をまとめたものである.本研究の目的は18歳から20代前半の男女の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにすることである.調査対象は2016年度,2017年度と同様に,首都圏の医療系A大学一年生とした.3回目の調査である2018年度においては,在籍学生数598名に対して,453名(男子136名,女子315名,その他2名)からの回答が回収され,回収率は75.8%であった.プライバシーの確保と回収率の向上のために,前2回の調査と同様インターネットを活用し,スマートフォンを用いたアンケートに回答する方法で調査を実施した.アンケート回答の集計結果から得られた,主要な知見を列挙する.①性的マイノリティに関する正しい知識を有している割合は2017年度と比較して向上した.②性的マイノリティに関する正しい知識を身に付けたいと考える学生の割合は3か年を通じて増加している.③身近に存在する同性愛者(同じ大学の人,きょうだい)に対する嫌悪感は3か年を通じで漸減傾向にある.本報告では,上記の単純集計から得られる知見以外に,3か年分の回答に対して実施した主成分分析の結果から,性的マイノリティに対する意識や態度における特徴的な応答を抽出し,学生像の把握を試みた.また,戸籍上の性別と性的マイノリティに対する意識や態度に何らかの相関があるかという問いに対しても,統計的な解析を実施した.これらの結果も併せて報告する.
著者
渡辺 一彦 飯倉 洋治 田中 和子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.368-376, 2001-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

1982年から97年の間に魚アレルギーを70例経験した.魚アレルギーは近年増加しているが, その内訳は非即時型アレルギーの増加であった.魚アレルギーの患児には広範な食物ないし吸入抗原のアレルギーが合併していた.発症の好発時期は生後半年から1歳台である.起因魚種は4種類以内が多いが, 非即時型の例には殆どの魚に反応すると考えられる症例もあった.起因主要魚種は即時型, 非即時型でもタラ, サケ, ホッケ, サンマ, カレイ, イワシだった.誘発症状は即時型ではじんましんや口腔アレルギーが主であるが, 一部に喉頭浮腫, 喘鳴を呈する例もあった.非即時型の誘発症状は紅斑や丘疹の出現であり, その症状はアトピー性皮膚炎の患児に出現し, その中には母乳を介した例もあった.そこで魚アレルギーはアトピー性皮膚炎の病因にもつながると推察された.
著者
小堀 正雄 高橋 厳太郎 岡本 健一郎 増田 豊 細山田 明義
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.563-567, 1987-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
6

濃厚赤血球液を使用する場合, 稀釈する溶液として一般に生理食塩水が用いられる.しかし, 大量輸血の場合には稀釈液による電解質の負荷が増す.そのため, 稀釈液に電解質を含まない糖質を使用した場合の赤血球の溶血度および溶液中のカリウム値の変化を測定した.20歳代男性からCPD液用採血バックに採血し, 採血当日血, 保存1週間目, 3週間目の3群に分けた.実験に先立ち, 血漿成分の影響をとり除き, 赤血球の抵抗性を調べるため洗浄赤血球液を作成した.添加する溶液は生理食塩水をコントロールとし, 10%マルトース液, 5%キシリトール液, 5%, 10%グルコース液とした.10%グルコース液以外は血液との浸透圧比は1である.これらの溶液を洗浄赤血球液と同量加え, 室温で2, 6, 24時間放置し, 各溶液の遊離ヘモグロビン値, カリウム値を測定した.その結果, 10%マルトース液, 5%キシリトール液は保存期間, 放置時間をとわず, 遊離ヘモグロビン値, カリウム値は生理食塩水とほぼ同様の傾向を示した.しかし, 5%グルコース液では, 血液の保存期間をとわず, 2時間後にはすでに高度な溶血を示した.一方, 10%グルコース液は比較的溶血が少なく, 溶質の赤血球内への流入により添加溶液の低張化がある程度抑えられたことが示唆された.また, キシリトール液, グルコース液でpHの異った溶液を作成し, 遊離ヘモグロビン値の差を測定した.その結果, 溶液中のpH5~9の範囲内では, 血液の溶血度には何ら影響がないことが示唆された.
著者
九島 巳樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.133-137, 1999-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

In histopathologic diagnosis of the endometrium, it is very very difficult to distinguish atypical endometrial hyperplasia from well differentiated endometrioid adenocarcinoma. Some points of histopathologic diagnosis of the endometrium in HE stain and immunohistochemical staining are discussed. Marked proliferation of atypical epithelial cells, such as papillary, confluent or cribriform growth and desmoplasia of stroma are suggested presence of stromal invasion in HE stain. Immunohistochemical stain of p53, CD44 and cyclin A are negative for all reported cases of atypical hyperplasia and positive for some cases of endometrioid carcinoma, but, not all cases of endometrioid carcinoma are positive, so these immunohistochemical stains are not enough for diagnosis of endometrioid adenocarcinoma.In conclusion, stromal invasion in the HE stain is a most important point to diagnose endometrioid adenocarcinoma.
著者
石川 琢也 池田 裕一 布山 正貴 小川 玲 藤本 陽子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.564-570, 2022 (Released:2022-03-23)
参考文献数
22

ヒトの腸管内には多くの細菌が生息しており腸内細菌叢を形成している.近年,腸内細菌叢の変化とさまざまな疾患との関係性が報告されている.今回,われわれは機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児における腸内細菌叢の分布を調査することとした.機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児10名(男児8例女児2例,平均年齢8.1歳)と健常児10名(男児10名,平均年齢7.1歳)の腸内細菌を検索した.検索は培養法で行い,4菌種を評価項目とした.その結果,機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児ではClostridium属とLactobacillus属が有意に増加しており(p<0.05),その他の菌種や総菌数では有意差は認めなかった.腸内細菌叢の変化が排尿排便機能に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆され,プロバイオティクスによって基礎疾患とともに下部尿路障害の改善に期待がもたれる.
著者
小林 玲音
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.56-63, 2011-02-28 (Released:2011-09-01)
参考文献数
20

全身麻酔中の体温の低下により出血量増加,術後感染,周術期心筋梗塞など多くの合併症が発症する.従って,温風吹送式加温器や特殊な被覆類を用いて対処しているが,使用台数が制限され,操作が煩雑であるため常時施行するのは難しい.一方,術中に投与するだけで術中の体温の低下が軽減すると報告されているアミノ酸製剤の輸液は安価で,特殊な操作も一切不要なため簡便である.しかし,その投与によって血清インスリン値が上昇し,低血糖が発症する可能性が示唆されている.そこで,全身麻酔下に股関節手術が予定された39症例において,アミノ酸製剤を麻酔導入前1時間に輸液し,術中の低体温予防効果と血糖値の推移を検討した.対象は人工股関節置換術および回転骨切り術を予定された39名でアミノ酸製剤を5ml・kg-1・h-1で輸液した群(A群)と2.5ml・kg-1・h-1で輸液した群(B群)およびアミノ酸製剤非投与群(C群)の3群に対象患者を無作為に分けた.全群において麻酔導入前1時間に輸液を行ったが,A群は混合アミノ酸製剤(アミパレン®)を5ml・kg-1・h-1,一方,B群は混合アミノ酸製剤(アミパレン®)と酢酸リンゲル液(ヴィーンF®)を同時に2.5ml・kg-1・h-1ずつ投与した.C群は酢酸リンゲル液(ヴィーンF®)5ml・kg-1・h-1だけを投与した.食道温を麻酔導入直後から麻酔導入後120分まで測定し,血糖値,血清インスリン値,血清アドレナリン値,血清ノルアドレナリン値などはアミノ酸製剤投与前,麻酔導入直後,麻酔導入後15分,30分,60分,90分,120分に測定した.体温は3群において麻酔導入後より経時的に低下したが,低下度はA群で最も小さく(p<0.05),A群とC群との間には麻酔導入後15分から120分まで有意差を認めた.血清インスリン値は麻酔導入直後にA群とB群では著しく上昇した.その程度はA群では投与前値の15倍,B群では投与前値の5倍であった.3群における血糖値の推移は近似し,各測定時期の平均値は80-100mg・d-1であった.血清インスリンの増加にもかかわらず,全群において低血糖は見られなかった.血清アドレナリン値,血清ノルアドレナリン値には全測定期間中において3群に有意な差は認められなかった.股関節手術において,麻酔導入前1時間にアミノ酸製剤の輸液投与により,術中の体温低下を軽減でき,また,危惧された低血糖も起こさなかった.術中の低体温予防として,麻酔導入前のアミノ酸投与は有用と思われた.
著者
高橋 敬蔵 関 正純 小崎 俊男 鏡 勲 脇元 敦彦 宮崎 雄一郎 千坂 正毅 坂本 勇人 渡久山 博美 奥富 信博 宮上 順志 瀬尾 文洋
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.307-314, 1976

A series of 250 cases undergoing Cesarean section under spinal anesthesia were presented and analyzed from the clinical points of view.<BR>Hypotension down to 80 mmHg or less occured in 43.6% of all cases following spinal anesthesia, and the incidence of hypotension was closely related to the level of sensory analgesia (initial level) .<BR>Hypotension could be mostly restored by changing the position from supine to lateral, but the effects of vasopressor was not uniform.<BR>It was seen that the amount of rapid intravenous infusion was influenced by the duration and degree of hypotension.<BR>Associated with anesthesia, Apgar' Score was indicateed 7 to 10 points in 96% of all cases.<BR>Administration of Droperidol, Diazepam and Pentazocine were effectively choiced for any visceral pain after birth and any emesis.
著者
蜂須 貢 大林 真幸 船登 雅彦 落合 裕隆 芳賀 秀郷 上間 裕二 三邊 武幸 向後 麻里
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2188529X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.453-458, 2022-01

デッドリフトはパワーリフティング競技3種目の中で最も重い重量を扱うため,精神統一し試技の終了まで無呼吸で行うことが多く,自律神経活動への影響が大きいと考えられ,デッドリフト直後の自律神経活動は競技者のパフォーマンス発揮を知る上で重要である.一方,デッドリフトは試技の開始から終了まで一般的に歯を噛み締めバーベルを挙上するため,カスタムメイドマウスガード(CMG)の影響を観察するには適していると考えた.被検者は常時ウェイトトレーニングを行っている10名(30.0±15.0歳)とし,心電図から自律神経活動解析ソフト「きりつ名人((株)クロスウエル)」を用い自律神経活動を解析した.測定項目は安静座位(2分間) および立位時の心拍変動係数(CVRR),低頻度と高頻度心拍変動係数比(ccvL/H)および立位継続(1分間)時の高頻度心拍変動係数(ccvHF)である.重量変化による自律神経活動への影響は最大挙上重量の90%を基準とし,これに±5kgの重量を追加した.その後2mmあるいは4mm厚のCMGを口腔内に装着し基準重量である最大挙上重量の90%のデットリフトに対する影響を検討した.CMGは各人の歯列に合わせEthyl vinyl acetate sheetを加熱成形し,第一大臼歯部で厚み2mmおよび4mmとなるように製作した.統計解析は分散分析を行いその後Bonferroniの多重比較を行った.重量依存性の心拍数変化(ΔHR)は90%−5kg時のデッドリフトと比較して,±0kg(90%時)で増加傾向,+5kgで有意な増加を認めた.CMG装着の影響はCMG装着なしに比べCMG 4mm装着の場合ccvHFが増大する傾向を示した.ccvHFの値の低下はトレーニング負荷量やそれによる疲労感と関係することが報告されていることからCMG装着は疲労を軽減する傾向にあると思われる.
著者
蜂須 貢 村居 真琴 田中 正明 瀬川 克己 武重 千冬
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.543-550, 1979-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

1.D-フェニルアラニンのペプチダーゼ阻害作用を生物学的に検定した.モルモット空腸の収縮はエンケファリンで抑制されるが, この抑制はペプチダーゼを含む脳の抽出液が存在する時は消失するが, D-フェニルアラニンを添加すると消失しないで, 脳の抽出液を熱処理して酵素活性を失わせた時と同じになる.2.ラットの脳室内に投与したエンケファリンによる鎮痛はD-フェニルアラニンの腹腔内投与によって著しく増強される.3.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛覚の閾値として, 針麻酔の刺激を加えると, 5%の危険率で有意の差のある鎮痛が現われるラットと現われないラットがあり, それぞれ針鎮痛有効群, 無効群とに区分できる.4.D-フェニルアラニンを投与すると, 針鎮痛無効動物の針鎮痛は著しく増強され, 有効群にD-フェニルアラニンを投与した時のわづかに増強された針鎮痛とほぼ等しくなり, 針鎮痛の有効性の個体差は消失する.5.針鎮痛有効群ラットは中脳中心灰白質刺激による鎮痛も有効で, 針鎮痛の有効性の個体差と中脳中心灰白質刺激による鎮痛の有効性の個体差はよく並行する.D-フェニルアラニンを投与すると, 針刺激ならびに中脳中心灰白質刺激無効群ラットの, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛は増強し, D-フェニルアラニン投与後わづかに増強された針刺激有効群ラットの中脳中心灰白質刺激による鎮痛とほぼ等しくなり, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛の有効性の個体差は消失する.6.モルヒネ鎮痛の有効性の個体差も針鎮痛の有効性の個体差と並行するが, D-フェニルアラニン投与後はモルヒネ鎮痛は増強され, 鎮痛の程度は両群ともほぼ等しくなり, モルヒネ鎮痛の有効性の個体差は消失する.7.針鎮痛, 中脳中心灰白質刺激による鎮痛, モルヒネ鎮痛何れにも鎮痛性ペプタイドの内因性モルヒネ様物質が関与し, これら鎮痛の有効性の個体差はぺプチダーゼの活性の個体差に依存していると考察した.
著者
福留 厚
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.425-435, 1977

Fot the determination of lactose by galactose-oxidase peroxidase (GOP) method, it is necessary to measure the amount of galactose liberated after the hydrolysis of lactose.<BR>(1) Hydrolysis of lactose-Lactose was hydrolyzed with 0.2% H<SUB>2</SUB>SO<SUB>4</SUB>or with living cells of <I>Escherichia coli</I>3-MT (a mutbile-type variant which decomposes lactose but not galactose) . By H<SUB>2</SUB>SO<SUB>4</SUB>method, the calculated dose of galactose was liberated after 2 hours. By MT method, free galactose increased rapidly after 2 hours and reached maximum after 3 hours. The volume of lactose solution was diluted to 1: 4 in the procedures of acid hydrolysis and neutralization, but not in MT method.<BR>(2) Determination of galactose liberated from lactose after hydrolysis- (i) Free galactose in the H<SUB>2</SUB>SO<SUB>4</SUB>hydrolysate of standard solution of lactose was measured by GOP or a cup-plate method using M (galactose-sensitive mutant of enteric bacteria) as the test organism. The amount of galactose was measurable in the range of 25-200&gamma;/2 ml in the case of GOP method, and 1.25-10&gamma;/0.1 ml in the case of M-cup method. (ii) Galactose in the MT hydrolysate was measured by GOP or M-cup method. The amount of galactose could be estimated in the range of 25-100 &gamma;/2 ml by GOP method, but the volume of MT hydrolysate was diluted to 1: 8 because of the necessity of deproteinizing. On the contrary, the amount of 1.25-10&gamma;/0.1 ml could be estimated by M-cup method without the need of deproteinizing.<BR>(3) Determination of lactose in the biological material- (i) Free galactose in the H<SUB>2</SUB>SO<SUB>4</SUB> hydrolysate of milk was measured by GOP or M-cup method. Although deproteinizing of the hydrolysate was necessary, the determination of galactose in the range of 25-100&gamma;/2 ml was possible by GOP method. By M-cup method, 1.25-10&gamma;/0.1 ml of galactose could be determined without the need of deproteinizing. (ii) The amount of galactose in the MT hydrolysate of milk was measured by GOP or M-cup method. While the estimation of 25-100&gamma;/2 ml of galactose was possible by GOP method after deproteinizing, 1.25-10 &gamma;/0.1 ml of galactose could be estimated by M-cup method without deproteinizing.<BR>From these experimental results, the combination of MT hydrolysis and M-cup method proved to be most sensitive for the determination of lactose in the biological material.
著者
朴 東錫 神田 美喜男 石川 自然 STEDING Gerd
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.863-869, 1987

先天性心疾患の成因は, 現在のところ不明な部分が多く, 成因を明らかにするために, 種々の研究がなされてきた.先天性心奇形の原因として遺伝的要因および環境的要因があるが多因性生物学的閾域説が最も有力である.近年臨床ならびに病理学的研究, 疫学的調査, 実験的研究により次第に先天性心奇形の成因が解明されつつある.われわれは, その一環として機械的物理学的因子である電気shockを鶏胚心に加えることによって, 両大血管右室起始を中心とした一連の心奇形spectrumを作成してきた.今回, われわれは, 電気shockによる生理学的変動を観察するために, 心電図, 超音波, ドプラーおよびComputed Echospecを用いた.<BR>実験方法と結果; 受精後3日以内, 100C以下に保存された白色レグホン卵をIncubatorで孵卵開始した.孵卵後3~4日目にHamburger-Hamilton24~27stageに直径10×8mmの穴を開け, 血管に損傷を与えないように卵殻膜を除去した.卵殻の周囲の温度は38℃以下には下がらないように保った.心電計の特長として.脳波, 筋電図, 心電図をはじめ, 各種生体電気現象を観察するためのアンプが用いられたことである.また, 各測定用の低域フィルター, および高域フィルターを内臓している.さらに交流障害を排除するハムフィルターも内臓されている.もう一つは超音波を応用した.ドプラーProbeは, 連続波10mHzのものである.Probeを直接Conotruncusに当て血流変動をみた.血流の変動をComputed Echospecに連結し, パワースペトラムによる解析が行われた.電気shock後心電図の所見として心拍数は210/min.から120~100に低下しPRの間隔も0.16~0.18sec.に延長した.心拍数が低下するに従い, 心室性の期外収縮, ΩRSのvoltage低下が認められた.その他QT間隔の延長も認められた.これらの変化は電気shock後3~15分の間が著明である.ドプラーの流速変動をみると, 電気shock3分後, 平均4674Hzで上昇するが, 30分には低値を示した.もう一つのParameterとして%Windowを分析してみると, 電気Shock3分後著しい上昇を示し, 15分後から低くなって来る.<BR>結論; 従来, われわれは, 電気Shockによって, 組織学的変化として, 細胞壊死, 変性などがみられたことを報告し心奇形との相関を示した.今回の実験Dataとして, 生理学的に, 組織学的変動を反映する心電図, ドプラーの変化が認められ, これらの総合した所見が心奇形を作成せしめる要因になるものと示唆された.

1 0 0 0 OA 認知療法

著者
平島 奈津子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.26-29, 2003-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
9
著者
平沼 直人 藤城 雅也 佐藤 啓造
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.628-636, 2012

医療訴訟においては,いかにして適切な医学的知見や意見を取り込むかということが重要な課題である.従来,医療過誤を理由とする損害賠償請求訴訟においては,裁判所の選任した鑑定人による裁判上の鑑定がその中核をなしてきた.ところが,近年,裁判上の鑑定に代わり,訴訟当事者すなわち原告ないし被告の提出する,いわゆる私的意見書が重要な地位を占めるようになった.本研究では,医学的意見を訴訟に反映させる方法として,鑑定,私的意見書,専門委員,付調停,事故調査報告書,死体検案書,後医の診断書,ドクターヒアリング,聴取書を取り上げ,その運用の実態と優劣を検討する.筆頭著者が医療側被告訴訟代理人として一審判決を受け確定した直近の12件につき,事案の概要・争点,診療科目,裁判所所在地・医療集中部と通常部の別,判決年月日,患者側原告代理人の有無,患者側原告私的意見書提出の有無・有の場合の意見書作成者に対する証人尋問実施の有無,医療側被告私的意見書提出の有無・有の場合の意見書作成者に対する証人尋問実施の有無,鑑定実施の有無,判決結果,控訴の有無,特記事項をまとめて表にした.わが国の民事訴訟制度は,利害の鮮明に対立する当事者が主張・立証を闘わすことによって真実が明らかになるという当事者主義の訴訟構造をとっている.裁判上の鑑定が白衣を着た裁判官とも言うべき鑑定人による職権主義的な色彩を持つのに対し,私的意見書は当事者主義の訴訟構造によく適合している.また,鑑定には,公平・中立性を十分に担保する仕組みがない,時間がかかるといった問題があり,これを解決すべく創設された複数医師によるカンファレンス方式鑑定にも法律上の疑義が呈されており,やはり私的意見書を審理の中心に据えることにより解決すべきであることが12件の実例の検討により明らかとなった.このように訴訟は私的意見書を巡る攻防となるべきであるから,原告患者側は訴状提出の際は私的意見書を添付すべきであり,これに対し,被告医療側はまず,反論と医学文献による反証をなし,それで不十分な場合には私的意見書の提出を検討すべきである.双方から私的意見書が提出された場合,裁判所はこの段階で心証に従って和解を試みるべきであるが,和解不成立の場合には集中証拠調べに移行し,原・被告本人尋問に加え,原告側協力医の証人尋問を実施すべきである.鑑定はこうして万策尽きた際の伝家の宝刀たるべきである.このような私的意見書の役割に即して,今後はこれを当事者鑑定と呼称すべきことを提言する.
著者
龍 家圭 小口 勝司 三邉 武彦 天野 均 亀井 大輔 岩井 信市
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.333-339, 2014 (Released:2014-11-21)
参考文献数
25

炎症性サイトカインや機械的刺激により誘導されるプロスタグランジン合成酵素であるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は,骨代謝に重要な役割を持つことが報告されている.COX-2により生成されるプロスタグランジンE2(PGE2)は,骨芽細胞を介して間接的に破骨細胞形成に作用するばかりでなく,その受容体を介して破骨細胞分化に直接影響するとされる.本研究は,選択的COX-2阻害薬であるセレコキシブのin vitroでの破骨細胞分化抑制過程の機序を明らかにすることを目的として行った.マクロファージ株細胞であるRAW264.7細胞に,可溶型NF-κBリガンド(sRANKL;100ng/ml)を添加し6日間培養することによって,破骨細胞へ分化誘導する実験系を使用した.酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(TRAP)染色陽性の核が3個以上の多核細胞を破骨細胞として,形成された破骨細胞数を測定した.セレコキシブ添加群(2.5~10µM)は,濃度依存的に破骨細胞形成数が減少した.活性化破骨細胞の指標となるアクチンリングを持つ破骨細胞数も顕著に濃度依存的に減少した.ハイドロキシアパタイトコーティングした培養皿を用いた実験系においても,セレコキシブは濃度依存的にマウス骨髄細胞由来破骨細胞による吸収窩形成を抑制した.本研究により,COX-2活性阻害を介して,マクロファージ系株細胞から破骨細胞への分化を抑制する経路が明らかにされた.
著者
須長 史生 小倉 浩 正木 啓子 倉田 知光 堀川 浩之
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.396-421, 2020

本研究は,2016年度から2018年度の3か年にわたって実施した「インターネットを活用したセクシュアル・マイノリティに関する学生の意識調査」の2018年度分実施内容に関する結果の報告である.すなわち,本論文は「セクシュアル・マイノリティに対する大学生の意識と態度:第1報」(須長他[2016])および「性的マイノリティに対する大学生の意識と態度:第2報」(須長他[2017])の続編であるとともに,特に3か年分の調査結果を俯瞰してこれまでに得られた知見をまとめたものである.本研究の目的は18歳から20代前半の男女の,性的マイノリティに対する意識や態度を明らかにすることである.調査対象は2016年度,2017年度と同様に,首都圏の医療系A大学一年生とした.3回目の調査である2018年度においては,在籍学生数598名に対して,453名(男子136名,女子315名,その他2名)からの回答が回収され,回収率は75.8%であった.プライバシーの確保と回収率の向上のために,前2回の調査と同様インターネットを活用し,スマートフォンを用いたアンケートに回答する方法で調査を実施した.アンケート回答の集計結果から得られた,主要な知見を列挙する.①性的マイノリティに関する正しい知識を有している割合は2017年度と比較して向上した.②性的マイノリティに関する正しい知識を身に付けたいと考える学生の割合は3か年を通じて増加している.③身近に存在する同性愛者(同じ大学の人,きょうだい)に対する嫌悪感は3か年を通じで漸減傾向にある.本報告では,上記の単純集計から得られる知見以外に,3か年分の回答に対して実施した主成分分析の結果から,性的マイノリティに対する意識や態度における特徴的な応答を抽出し,学生像の把握を試みた.また,戸籍上の性別と性的マイノリティに対する意識や態度に何らかの相関があるかという問いに対しても,統計的な解析を実施した.これらの結果も併せて報告する.