著者
守屋 修二
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.179-185, 1991-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

口唇口蓋裂児の外鼻ならびに上顎の成長発育を調べる目的で, 鼻梁線, 耳介付着線および耳介長軸の三者間の角度の検討を行った.研究対象は正常な三カ月児21名と生後三カ月, 一部5~10カ月の片側あるいは両側の口唇口蓋裂児術前例69名である.結果: 1.耳介付着線と鼻梁線とのなす角度は, 正常三カ月児, 片側口唇裂児, 片側唇顎口蓋裂児, 両側唇顎口蓋裂児, の順に小で, 各々の間に有意差が認められ, 口蓋裂を合併するものは外鼻の成長が小となる傾向が認められた.2.耳介付着線と耳介長軸とのなす角度は, 披裂度の増加に伴い減少の傾向が認められ, 三カ月正常児と両側唇顎口蓋裂児との問にのみ有意差が認められ, 何らかによる耳介の発育障害が考えられた.3.耳介長軸と鼻梁線とのなす角度でも上記2者と同様の傾向が認められたが, 三カ月正常児と片側口唇裂児, 片側口唇裂児と片側唇顎口蓋裂児の間には有意差は認められなかった.すなわち, 耳介長軸は基準線として不適当と考えられた.以上のことから, 口唇顎口蓋裂児中とくに口蓋裂児に上顎の劣成長が強く, 外鼻の発育も抑制されている傾向は認められるものの, 耳介長軸を発育の基準にすることは不適当と推測された。
著者
藤城 雅也 佐藤 啓造 祖父江 英明 平 陸郎 大多和 威行 梅澤 宏亘 伊澤 光 李 暁鵬 熊澤 武志 堤 肇
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.175-181, 2008

ヒト及び類人猿は他の哺乳類と異なり, 尿酸 (UA) 酸化酵素が欠損しており, プリンの大部分は最終代謝産物のUAとして尿中に排泄される.この事実に基づき, UAの単独測定がヒト尿斑の証明に広く用いられているが, 濃い動物尿の尿斑やトリの糞斑との鑑別ができない.そこで, 本研究では食事内容に影響を受けないクレアチニン (Cre) を濃度補正の対照としてUAとCreを高速液体クロマトグラフィー (HPLC) で同時分析し, UA/Cre比とUVクロマトグラムを指標とするヒト尿斑証明法の開発を試みた.尿斑5mm×5mmから抽出した抽出液10μ1を島津LC-10AのHPLCに注入し, 5分まで波長293nmで分析し, 以後波長234nmに切り換え, 保持時間4.5分に出現するUAのピーク面積と保持時間5.3分に出現するCreのピーク面積の比を求めるとともにHPLCクロマトグラムを比較した.UAの極大吸収のある293nmにてUAを測定し, 5分後に測定波長を切り換え, Creの極大吸収のある234nmにてCreを測定することにより, HPLC分析で通常用いられる254nmの単一波長で測定した場合に比べ, 約4倍の検出感度が得られた.同時に, 254nmで出現する尿成分由来の夾雑ピークによる干渉も回避することができた.前記の条件で斑痕抽出液の濃度はUA, Creともに20~400μg/mlの範囲で良好な直線性が得られ, 健康成人196名 (男性158名, 女性38名) の尿斑の中央部から得られた抽出液のUA濃度は242.2±149.3μg/ml, Cre濃度は336.3±178.0μg/mlであった.健康成人196名の尿斑の中央部から得た抽出液のUA/Cre比は0.61~2.19に分布し (平均値±標準偏差: 1.06±0.32) , ハムスター, ラット, ウマ, ウサギ, イヌ, ダルメシアン, ブタ, ネコの尿斑は, いずれも0.43以下を示した.一方, トリの糞斑は15.0以上を示し, ヒトの唾液, 鼻汁, 涙, 血清, 母乳精液は4.0以上を示した.また, ヒトの尿以外の体液斑はUA, Creともに非常に小さなピークが検出されただけであり, UA/Cre比を用いず, HPLCクロマトグラムだけからも容易にヒト尿斑と鑑別可能であった.以上の結果よりUA/Cre比が0.5~2.5に分布するものをヒト尿斑と判定することとした.本法は尿斑5mm×5mmを使用するだけで, コンベンショナルなHPLCで従来の方法より簡便, 高感度, 迅速な分析ができるので, 法医鑑識領域において有用な方法となることが期待される.
著者
藤井 三晴 栗原 祐史 代田 達夫 八十 篤聡 武井 良子 高橋 浩二
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.567-572, 2015 (Released:2016-03-09)
参考文献数
7

今回,われわれは構音障害を主訴に来院した,巨大な口蓋隆起と両側性の下顎隆起の症例を治療する機会を得たので報告する.症例は60歳男性である.口蓋および下顎舌側臼歯部の骨隆起を放置していたところ徐々に増大し,構音障害を生じたため,当科を受診した.初診時,口蓋正中部に約27×20×14mm,上顎右側臼歯部に約16×11×13mmの骨様硬の膨隆を認め,下顎右側前歯部舌側から臼歯部にかけて約6×7×8mm,下顎左側前歯部から臼歯部にかけて約20×14×13mmの骨様硬の膨隆を認めた.全身麻酔下で,口蓋隆起および下顎隆起除去術を施行した.術前と術後で構音障害について,発語明瞭度検査,文章了解度検査,会話明瞭度検査により評価したところ,術後に改善が確認された.また,患者本人も術後に構音障害の改善を自覚し,満足感を得ていた.なお,創部の治癒経過も良好であった.
著者
吉澤 徹 山田 浩樹 堀内 健太郎 中原 正雄 谷 将之 高山 悠子 岩波 明 加藤 進昌 蜂須 貢 山元 俊憲 三村 將 中野 泰子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.459-468, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
23

非定型抗精神病薬は定型抗精神病薬に比べ錐体外路系の副作用などが少なく,また陰性症状にも効果を示すため,統合失調症治療薬の第一選択薬として用いられている.しかし,これら非定型抗精神病薬の副作用として,体重増加や耐糖能異常などが生じることが問題となっている.われわれは抗糖尿病作用,抗動脈硬化作用,抗炎症作用などを示し,脂質代謝異常により減少する高分子量アディポネクチン (HMWアディポネクチン) や増加するとインスリン抵抗性を助長するレチノール結合蛋白4 (RBP4) を指標として非定型抗精神病薬であるオランザピンとブロナンセリンの影響を統合失調症患者において観察した.薬物は通常臨床で使用されている用法・用量に従って投与され,向精神病薬同士の併用は避けた.その結果オランザピンはブロナンセリンに比べ総コレステロールおよびLDLコレステロールに対し有意な増加傾向を示し,HDLコレステロールは有意に増加させた.また,HMWアディポネクチンとRBP4に対してオランザピンは鏡面対称的な経時変化を示した.すなわち,オランザピン投与初期にHMWアディポネクチンは減少し,RBP4は増加した.ブロナンセリンはこれらに対し大きな影響は示さなかった.体重およびBMIに対してはオランザピンは14週以後大きく増加させたが,ブロナンセリンの体重増加はわずかであったが,両薬物間ではその変化は有意な差ではなかった.インスリンの分泌を反映する尿中C-ペプチド濃度に対してはオランザピンはこれを大きく低下し,ブロナンセリンはわずかな平均値の低下であり,有意な差はなかった.血中グルコースおよびヘモグロビンA1c (HbA1c) やグリコアルブミンは両薬剤において有意な影響は認められなかった.このようにオランザピンはコレステロール値や体重,BMIなどを増加させ,さらにインスリンの分泌を抑制し耐糖能異常を示す兆候が認められたが,ブロナンセリンはこれらに大きな影響を与えないことが示された.
著者
安斎 勝行 竹内 治男 青木 明 八田 善夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.493-499, 1991-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
15

原発性肝細胞癌 (肝癌) を中心とした各種疾患において血中PIVKA-II (protein induced by vitamin K absence or antagonist-II) 濃度を測定し, その臨床的意義について検討した.肝癌におけるPIVKA-IIの陽性率は56.1%で, α-fetoprotein (AFP) の73.7%に比して低値であった.しかし他の疾患での陽性率は極めて低く, PIVKA-II陽性症例の91%が肝癌であった.PIVKA-IIはAFPとは相関せず, 両者を組み合わせることにより肝癌の診断率は向上した.またAFP非産生肝癌の26.7%にPIVKA-IIが陽性を示した.以上よりPIVKA-IIは肝癌に特異性の高い腫瘍マーカーであり, 肝癌のスクリーニング検査に不可欠であると考えられた.一方PIVKA-IIは, ある程度進行した症例に陽性となる傾向がみられ, 肝癌の早期診断のマーカーとしては限界があると考えられた.PIVKA-IIは肝癌治療によって低下することから治療効果判定や経過観察のモニタリングの指標として応用され得るものと考えられ, とくにAFP非産生肝癌には有用と思われた.PIVKA-IIはビタミンKの投与により低下することから, 判定に際してはこの点を留意する必要があると考えられた.
著者
吉川 泰司 中村 正則 助崎 文雄 澤田 貴稔 宮岡 英世 稲垣 克記
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.727-737, 2016 (Released:2017-06-08)
参考文献数
29

小児期の保存療法に抵抗した発育性股関節形成不全に対して,観血的に三宅の広範囲展開法で整復した症例の長期術後経過を検討した.1992年から,当科で広範囲展開法を施行した手術時年齢が3歳以下の症例で,14歳以降まで経過観察が可能であった22例24股を対象とした.全例が女児で,手術時平均月齢は20か月,調査時平均年齢は17歳で,経過観察期間は平均189か月であった.追跡調査率は90%であった.最終診察時に寛骨臼形成不全が軽度であったSeverin分類I,II群に該当するものは17股70%であった.最終診察時に骨頭変形が残存した重症例のうち,Kalamchi&MacEwen分類II,III,IV群で大腿骨頭壊死が術後に生じたと考えられたものは3股12.5%であった.関節症変化は3股12.5%に認められた.術後に行われた補正手術は4股であった.6歳時から最終診察までの間にSeverin分類III群からII群へ臼蓋被覆改善を認めた症例が存在し,就学前の股関節補正手術は慎重に行うべきであると考えられた.今後,乳幼児の股関節脱臼治療の成績を向上させるためには,脱臼の早期診断,術前の保存療法の改善,手術侵襲の低減と手技の改善が必要である.
著者
福井 章 韓 啓司 長嶺 安哉 狩野 充二 羽山 忠良 風間 和男 後藤 晃
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.31, no.9, pp.495-499, 1971-09-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
14

A 50 year-old man was admitted to our clinic because of abrupt severe headache and vomitting.The diagnosis of subdural hemorrhage was made.Results of examination on admission, : hemoglobin concentration 14.5gr per 100 ml, red blood count (RBC) 5, 410, 000, white blood count (WBC) 5, 100, platelet count 194, 790.Another laboratory studies were not remarkable except that occult blood test was positive in feces. He had past history of hemorrhoid.Hemorrhages in the skin and mucous menbranes were absent.From the second days after admission, the patient was treated with chloramphenicol (CP) Igr daily for nineteen days because of fever.The patient improved gradually and could walk alone.Twenty-six days after admission, he had fever again, and then RBC (3, 010, 000) and WBC (1, 900) showed the striking decrement comparing with these on admission.At that time, the myelogram demostrated that myeloblasts were 21.8% and lymphocytes were 62%.The nucleated cells was 19, 000.In spite of being treated with adreno-corticosteroid hormones and blood tranf usions, platelet (5, 500) and WBC (1, 300) decreased markedly.Explosively, hemorrhagic manifestations were aggravated and the patient died.The autopay performed. Aleukemic-leukemia was made in view of the pathologic findings of widespread necrosis of bone marrow and immature leukocytes in the various organs. But, there were no immature leukocytes in the organs of hemorrhages.In the present case, we suggest that the onset of leukemia might be caused by CP.
著者
久代 裕史 岡松 孝男 八塚 正四 角田 ゆう子 岡本 信也 松村 光芳 五味 明 菅野 壮太郎 鈴木 誠 飯島 忠 中田 雅弘
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.445-449, 1990-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

小児の異物誤飲に遭遇する機会は少なくない.特に, 最近ではボタン型電池に代表される金属性の異物が増加の傾向にあって, その対処にはさまざまな方法がある.私どもは過去6年間に10例の金属性胃内異物に対してマグネットチューブを使用し, 全例入院を要さずに摘出でき, その有用性が確認できた.この摘出法は透視下で施行する必要があるものの, 簡便で安全に誰もが習得でき, 多くの磁性体金属性異物に対して推奨すべき摘出法と考える.
著者
長谷川 幸祐 諸星 利男 福井 俊哉 河村 満 杉田 幸二郎
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.69-78, 1997-02-28 (Released:2010-11-19)
参考文献数
30

パーキンソン病の運動及び知的精神機能障害には数多くの修飾因子が関与している.今回, われわれはパーキンソン病の臨床症状に関わる諸因子; (1) パーキンソン病患者の生活機能予後の悪化に関与する因子, (2) 痴呆を伴うパーキンソン病患者にかかわる因子, (3) 死因について, 1992年~1996年の4年間にわたり追跡し, 検討を加えた.対象は昭和大学神経内科に受診中のパーキンソン病患者, 49例, 平均年齢67.9歳 (51~89歳) .男性16例, 女性33例 (男女比1: 2.1) である.方法は (1) 1992年時に初発症状, 罹病期間, Hoehn-Yahr重症度, 抗パーキンソン病薬の内容と用量, X線CT上の脳萎縮所見, MRIT2強調画像上の高信号病変 (大脳基底核は除く) , 及び知的精神機能を検討し, 1996年の生活機能を障害程度から5段階に区分し, 上記諸因子と生活機能予後の関連性について重回帰分析を用いて分析した. (2) 4年間の観察期間中に, 新たに痴呆が発症した群における上記諸因子の特徴, 死亡例の死因を検索した.4年間の追跡の結果, 加齢, 高い重症度, かな拾いテストの低得点が生活機能予後を悪化させる要因であった.受診時高齢者・高齢発症者に痴呆の発現率が高く, 運動機能の低下に伴い知的機能が平行して高率に低下した.死亡例は10例, 死因発症前のHoehn-Yahr重症度は, いずれもIII度以上で, IV度以上が50%を占めていた.直接死因は肺炎6例, くも膜下出血2例, 転倒による急性硬膜下血腫1例, 麻痺性イレウス1例であった.以上よりパーキンソン病の予後悪化には, 加齢や運動機能の低下の他に前頭葉機能の低下が関与すると結論づけられた.
著者
斎藤 隆三 横山 定助
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.141-146, 1957-05-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

In the present work, a few observations were made on the fixation of the tissues, particularly on the time between the collection and fixation of the tissues and its procedures, and the preparation of extra-thin sections with ultramicrotome, which are most essential for obtaining superior histological pictures in the electron microscopy.In the cases of the tissues obtained in the animal experiments, several drops of OsO4 solution were dripped on the tissue when the material was collected and the tissue shall be cut into oblong slices; slices shall be placed in OsO4 solution and cut into fine blocks of approximately 1 mm3 20-30 minutes later. The fine blocks of approximately 1 mm3 shall be obtained by 2-3 cuts with razor blade. On some occasions, autolytic changes are observed in the picture of the material prepared from the centre of the fine blocks fixed for 1-2 minutes. This is considered due to the time required for the OsO4 solution to penetrate the tissue. When mechanical force was added to this, the picture thus obtained might be misinterpreted. In the case of human tissue, surgical specimen is preferable, but, if too long time was spent for the operation, fine structures of the cells was lost, and conglomeration and sissolution of the granules contained in the nucleus were observed. These phenomena were particularly eminent in the cases of tumor cells. In the cases of autopsy material, unless the material was collected within 1 hour at the latest from the death, the significance of electron microscopy will be lost.
著者
石原 里美 有泉 裕嗣 矢持 淑子 塩沢 英輔 佐々木 陽介 瀧本 雅文 太田 秀一
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.71-78, 2011-02-28 (Released:2011-09-01)
参考文献数
28

成人T細胞性白血病/リンパ腫(adult T-cell leukemia/lymphoma; ATLL)は, 臨床的にヒトT細胞好性ウイルス(human T-cell lymphotropic virus type-1; HTLV-1)感染細胞のモノクローナルな増殖を証明しない限り,組織形態学的には末梢性T細胞リンパ腫–非特定型(PTCL-NOS)との鑑別は困難である.しかし免疫組織学的にATLLとPTCL-NOSの発現に違いがあれば,HTLV-1の感染情報がない場合でも,両者の鑑別が可能と考えられる.1983年11月~2009年9月末までに昭和大学病院でWHO造血器・リンパ系腫瘍分類第4版に基づきATLL又はPTCL-NOSと診断された37例のホルマリン固定パラフィン包埋組織切片を免疫組織化学的に以下の抗体を用いて発現の違いを検討した.CD7,CD25,CD56,CCR4,TIA-1においてATLLとPTCL-NOS間で有意差が認められた.ATLL症例は全例でCD7の減弱が見られた.CD25はATLL症例の72%で陽性で,PTCL-NOSより有意に多かった(P=0.005).CCR4はATLL症例の72%で陽性で,PTCL-NOSより有意に多かった(P<0.001).PTCL-NOS症例はATLL症例に比べてCD56,TIA-1陽性例が有意に多かった(CD56,P=0.01; TIA-1,P=0.03).以上より,ATLLとPTCL-NOSを鑑別する上でCD7,CD25,CD56,CCR4,TIA-1の免疫組織化学検索が有用と考えられた.またATLLのCD25およびCCR4発現率は高く,ATLLの治療法として抗CD25抗体,抗CCR4抗体の有効性が期待された.
著者
渡辺 喬 高木 康 五味 邦英 岩田 隆信
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.512-517, 1995-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
16

脳神経疾患における血清CKおよびCKアイソザイムの変動をクモ膜下出血, 脳内出血, 脳梗塞, 脳腫瘍, および頭部外傷を対象として検討した.診断は, 病歴, 症状, 髄液所見やCTスキャン, 脳動脈撮影により行った.血清総CK活性は, クモ膜下出血, 脳内出血では症例によるバラツキが大きく, 健常基準値より異常高値となる症例はそれぞれ4例 (20%) , 3例 (33.3%) であった.これはCKアイソザイムについても同様であり, 非CK-M活性はクモ膜下出血では症例によるバラツキは大きいが, 平均値は健常対照群の約2倍であり, 3例 (15%) に電気泳動法でCK-BBが検出された.これらに対して脳腫瘍や脳梗塞では血清総CK活性は健常対照群とほぼ同値であり, 異常高値となる症例もほとんどなかった.また, 外科的治療による経時的変動では術後1~1.5日で血清総CK活性は1, 500~2, 500IU/lの極値となった後に漸次低下し, 術後1週間でほぼ健常基準値に復する経過であった.これは非CK-M活性, CK-MB蛋白量も同様であり, 症例によっては術後1~2日に電気泳動上でCK-BBが検出された.CK-BBと疾患の重症度, あるいは手術時の侵襲の程度との間の関係については詳細な分類による検討は行わなかったが, 直接的な因果関係はないように思われた.
著者
伊藤 良子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.463-467, 2010-12-28 (Released:2011-06-30)
参考文献数
20
著者
飯田 有作
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-6,64, 1953-03-01 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1

The author took measurements in 5 heights and 3 widths on the faces of 2, 374 boys and 2, 350 girls raging from 4 to 12 years of age who are residing in Yokohama, thereyr after he worked out the indices and the primary and the secondary both facial formulae derived therefrom according to Ogawara's method, thereby to observe the pattern of the morphological changes of the face by the infants' development. When the morphology of the face was studied by means of the facial formulae, the author learnt that it is changing slightly by the development of the infants, but it was found to be not in conformity with the formulae of the adults. The difference by sex was also not recognized. When the facial formulae were worked out by the author basing on the earlier anthropometric reports, the formulae of the above infants were found to be quite similar to those of the infants residing in the south western part of Shikoku Island, but they were found to be remarkably different from those of the “ Frutigtaler Kinder” indicating that the shape of the Japanese children is not more slender compared with the former. Thus, the presence of the racial difference in the morphology of the face even in the childhood is easily and clearly expressed. Consequently, it is concluded that this formulae is one of the extremely significant ones for the morphological study.
著者
森田 亮 森 雄作 李 相翔 平野 勉
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.490-498, 2009-12-28 (Released:2011-05-20)
参考文献数
34

Chronic kidney disease(CKD)の治療に,スタチンの腎保護作用が注目されている.スタチンは主作用の血清コレステロール低下と独立して腎保護的に働く多面的作用を有するが,各スタチン間の差は明らかではない点が多い.本邦で開発された強力なコレステロール低下作用を有するピタバスタチンの多面的作用としての腎保護作用を検討した.スタチンはラットではコレステロール低下を示さないため,コレステロール低下作用を介さない腎保護効果の検討が可能である.CKDモデルとして左腎臓2/3と右全腎臓を摘出して5/6腎臓摘出ラットを作成し,スタチン群(ピタバスタチン3mg/kg/day)と非スタチン群に割り振り12週間観察した.非スタチン群とスタチン群で食事摂取,体重,および血清脂質の差を認めなかったが,スタチン群は血清クレアチニン値(1.1±0.8 vs. 1.9±0.7mg/dl),尿蛋白量(175±45 vs. 273±35mg/ml・Cre),尿アルブミン量(968±95 vs. 1483±214μg/ml・Cre)が低値,クレアチニンクリアランス(23±7 vs. 13±4ml/min/g)が高値であった.残腎の組織学的所見ではスタチン群は糸球体硬化指数(2.5±0.4 vs. 3.2±0.4)と間質線維化度(24.3±3.8 vs. 34.8±5.8)の改善を認めた.Quantitative real-time PCR法による検討では非スタチン群で認められたtransforming growth factor-beta (TGF-β)とconnective tissue growth factor (CTGF)の過剰発現がスタチン群では抑制された(TGF-β:1.52±0.33 vs. 2.32±0.56,CTGF:1.32±0.34 vs. 2.16±0.52).組織学的所見と血清クレアチニン値,クレアチニンクリアランス,尿蛋白量,尿アルブミン量は有意な相関を示し(r=0.684~0.913クレアチニンクリアランスのみ負の相関),TGF-β,CTGF mRNAの間にも相関を認めた(r=0.469~0.690).5/6腎臓摘出ラットにおいてピタバスタチンは血清脂質の変動を伴わない腎保護作用を示し,TGF-βとCTGFの過剰発現是正を介した糸球体硬化と間質線維化の抑制による効果であることを示している.