著者
佐藤 伸弘 門松 香一 保阪 善昭
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.481-489, 2009-12-28 (Released:2011-05-20)
参考文献数
18

今回われわれは顔面骨骨折の中でも眼窩下神経に障害を及ぼす可能性が大きく,全顔面骨骨折中20~40%と比較的発生率の高い頬骨骨折を研究対象とし,過去16年間で当院を受診した頬骨骨折患者で神経障害残存をきたした症例とその骨折のタイプについて研究した.結果に関しては骨片の転位により分類されたKnight & North分類を用いた.頻度,男女比,左右差,手術比率をそれぞれ調査し,過去の当科疫学統計報告と比較して同様の傾向であった.新たな知見として骨折線の眼窩下神経孔通過の有無により分類(通過群:A群,非通過群:B群)を行い,いずれの骨折も有意差なく存在することが判明した.さらに神経障害の出現はA群に有意に多く,その中でも頬骨回旋転位群により多く出現していることが判明した.また,神経障害改善率はA・B群間では有意差を認めず,それぞれ転位を伴わない骨折の場合は高率であったが,骨片が転位するか粉砕するような場合,改善率が低下することが判明した.加えて,神経障害の出現に関しB群では眼窩下神経孔より近位での損傷が予想され,今後神経障害の改善率を向上させるため,精査や手術操作に関しさらなる研究が必要と思われた.
著者
小松﨑 記妃子 山田 真実子 福宮 智子 佐藤 陽子 山﨑 あや 渡辺 純子 福地本 晴美
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.499-507, 2020 (Released:2021-01-28)
参考文献数
7

看護学生による臨地実習に関する評価尺度の動向を明らかにする.本研究は,臨地実習での教授者の教育能力および学生の看護実践能力の両側面の能力を評価するための資料とする.医中誌Web Ver.  5を用いて,検索対象年は2005年1月〜2015年9月,検索式は「臨地実習」and「看護学生」and「評価」とし原著論文に限定した.その中から看護学実習に関して尺度を用いた評価を行っている文献(独自質問紙のみを使用した文献は除外)を分析対象とした.検索の結果,1,132件が抽出された.このうち本研究の条件に該当する文献は73文献あった.使用されている評価尺度は55種類あり,1文献に対し1〜11の尺度を用いるなど多岐にわたっていた.評価者は,教員,指導者,学生の3つに分類でき,評価対象は,教員,指導者,学生,実習過程(実習全般),実習環境の5種類に分類できた.人を評価対象とした文献のなかで,教員を評価した文献は4件で最も少なく全て2011年以降に確認された.指導者を評価した文献は20件,学生を評価した文献は45件あり,2005年から確認できた.教員を評価対象とした文献のうち,その評価者は,学生3件,教員(自己評価)1件であり,評価尺度は,前者は全て日本語版Effective Clinical Teaching Behaviors(以下ECTB),後者は教授活動自己評価尺度―看護学実習用―が用いられていた.指導者を評価対象とした文献における評価者は,学生14件,指導者(自己評価)6件であった.評価尺度は,前者のうち11件がECTB,3件が授業過程評価スケール―看護学実習用―であり,後者は全てECTBが用いられていた.近年の看護学実習における教育評価に関する研究では,教授者の教育実践能力を評価する尺度には,授業過程評価スケール―看護学実習用―やECTBの共通性が確認されたが,教員を評価対象とした研究は僅かであった.また,評価の時期は,基礎実習後と領域実習の前後などで2時点から3時点で実施されており,基礎看護実習から全ての実習終了後までなど一連の過程を通じた学生の評価に関する研究は見当たらなかった.看護実践能力における要素別の評価尺度を組み合わせて実習を評価していることが明らかになった.
著者
志村 豁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.481-492, 1983-08-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
21

精神病者の自殺に関し, 諸家の報告があるが, 開放管理下の自殺についてのものはない.現下, 精神医療は開放療法, 地域医療の時代にあり病者の生活圏は拡大している.この状況下で精神病者の自殺の実体を知ることは自殺防止の観点からも重要なことである.昭和大学烏山病院における開放療法20年間の在院者の自殺28例 (うち分裂病25例) 通院者の自殺36例 (うち分裂病20例) であった.本研究では分裂病の自殺例について年齢, 季節, 開放体制との関係, 自殺の場所, 手段, 動機について分析, 検討した.正確なデータはないが, 一般に精神病者の自殺率は一般人 (0.015~0.02%) の20倍あるいはそれ以上という報告に比べると当院在院者のうち10数%に自殺未遂歴のある者が年々漸増しているにもかかわらず, 自殺者は調査期間中年間0~2名とかなり少い.自殺者の年齢は20歳~30代に多く, 罹病期間でみても5年未満と15年未満に多い.これは分裂病の初発時の不安定期と, 妄想型, 緊張型の発病時期, 再発型分裂病の自殺が関連している.閉鎖体制から開放体制となり生活圏が拡大しても自殺数は変らなかった.開放療法当初に, 閉鎖病棟での自殺が見られたが, 開放体制の完成した昭和42年以降は閉鎖病棟での分裂病の自殺は0である, 季節との関係については, 春秋が多いとされる一般の自殺が分裂病の場合は特徴はみられなかった.自殺時間では開放病棟の場合は昼間帯に多く, 閉鎖体制の病院との違いを示し, 自殺場所については, 開放下では外出, 外泊の盛んな関係もあり院外の自殺が多く, 手段は交通機関, 墜落などがみられた.これは死を決した病者がおかれた環境下で選べる手近で確実な手段を実行した結果であり, 閉鎖環境の縊死の多いのとの差が見られた.手段と年齢, 疾病とには特徴的関係はない, 自殺の動機は (1) 精神病状による自殺 (2) 了解可能な自殺, (3) 了解不能な自殺に分類した.通院者の自殺は, 1例の了解可能な自殺以外は精神病状による自殺で地域での治療体制が重要なポイントであることが明らかとなった.精神症状の改善により自殺の危険性は減ずるが, 了解可能な自殺例では家族をはじめ病者をとりまく人々の協力が重要であり, 了解不能な自殺は病者の直前の言動を分析すると何らかの「自殺のサイン」がみられ, 看過することなく対応することが最重要であることが判る, なお, 今回の調査以降, 烏山病院のデータによると自殺事故はない, 他方, 外来通院者の自殺事故が増加する傾向にあることは地域精神医療の重大なテーマであろう.
著者
石野 尚吾
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.5-14, 2004-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
6
著者
齊川 真聰 小口 勝司 中山 貞男
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.360-369, 2006-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の治療に臨床的に使用されている漢方薬 (黄連解毒湯: OGT, 温清飲: USI, 十全大補湯: JTT, 当帰飲子: TI, 荊芥連翹湯: KRT, 四物湯: SMT) の塩化ピクリル (PC) およびオキサゾロン (Oxa) で誘発した遅延型過敏性皮膚炎 (DTH) の急性ならびに慢性皮膚病変に対する影響を検討した.PCを感作・誘発物質とした急性皮膚炎はBALB/c系雌マウスを用い, PC感作7日後に1回チャレンジで誘発した.Oxaを感作・誘発物質とした急性皮膚炎はBDF1系雌マウスを用い, Oxa感作後7日後に1回のチャレンジで誘発した.Oxa誘発慢性皮膚炎はOxa感作7日後から7日ごとに4回のチャレンジを行い誘発した.6種類の漢方薬はPC誘発耳介腫脹を抑制したが, OGT, USI, JTT, TIの抑制は用量依存的作用ではなかった.KRT, SMTは用量依存的抑制作用を示した.Oxa誘発耳介腫脹に対しても6種類の漢方薬は抑制作用を示したが, 用量依存性は認められなかった.Oxa4回チャレンジによる耳介腫脹に対してはOGT, USI, JTT, KRT4種類の漢方薬の作用を検討した.4種漢方薬の用量依存性はないが耳介腫脹の抑制を示した.耳介組織のサイトカインはOxa対照で減少し, OGT, USI, JTT, KRTの投与で減少が強められた.Oxa対照で増加した耳介組織のIgEはOGT, USI, JTTで抑制された.以上の結果から, OGT, USI, JTT, KRTは急性および慢性皮膚炎に対して有効であり, その抑制作用にはIgE産崖抑制が関係することが示唆された.
著者
大下 優介 八木 敏雄 平林 幸大 石川 紘司 江黒 剛 逸見 範幸
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.6, pp.752-756, 2020

2013年6月に富士山が世界遺産に登録されて以降訪日観光客が増加しそれに伴い救急受診される症例臨床の現場で経験される.しかし,旅行者がどのような病態で受診されているのかの詳細な報告は無い.本研究の目的は,訪日旅行客の受診内容を調査し,今後の対策を検討する事である.2015,2016,2017年度に当院に受診された訪日旅行客をretrospectiveに調査した.それぞれの年度に受診された患者総数は154人,149人,171人であった.平均年齢は36歳(0-89)であり,男性223人・女性251人であった.受診時間は平日の一般診療時間内が205人(43.2%)であり,269人(56.8%)は夜間や休日祝日の受診であった.受診の原因となった疾患は感冒などの内科系疾患が168例,骨折や脱臼などの外傷が166例,膀胱炎や尿路結石などの泌尿器科系疾患が22例,不正性器出血などの婦人科疾患が21例で,小児科受診が64例であった.また来院時CPAが1例にあった.近隣住民であれば翌日まで経過を見ることも可能な症例も旅程のため,夜間の受診を余儀なくされている状態であった.一般的に入院精査を行っていたと考えられる症例も移動の予定などのため再診予定も立てられず応急処置のみとなっている症例もあった.海外からの訪日外国人の受診状況を調査した.夜間休日であっても,さまざまな疾患で受診されておりGeneralistとしての対応が求められている現状であった.今後さらに外国人旅行者が増えると考えられ,その対策は急務である.
著者
江戸 由佳子 髙木 睦子 太田 千春 川嶋 昌美 浅野 和仁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.325-330, 2017 (Released:2017-12-19)
参考文献数
24

妊婦では,妊娠の継続や胎児の発育のために非妊婦と比較し,著明な物質代謝の変動やホルモンバランスの変化が観察される.また,分娩に際しては断続的な強い痛みが認められる.これら妊娠・出産に伴う一連の反応によって母体は酸化ストレス反応に曝されていることが推察されるものの,妊娠と母体の酸化ストレス反応に関しては十分に検討されていない.そこで,本研究では非妊婦と正常な経過を辿っている妊婦から尿を採取し,尿中に含まれる酸化ストレスマーカーの検出を試み,その結果から妊娠と酸化ストレスの変動について検討した.対象とした酸化ストレスマーカーは脂質過酸化物であるイソプラスタン,ヘキサノイルリジン,ビリルビンの過酸化物であるバイオピリンならびにDNAの酸化障害産物である8-OHdGであった.対象妊婦を妊娠初期,妊娠中期,妊娠後期そして産後1か月に区分し,上記酸化ストレスマーカーを測定したところ,すべてのマーカーの尿中含有量が非妊婦,妊娠初期ならびに中期と比較し妊娠後期においてのみ統計学的に有意に増加した.また,これら酸化ストレスマーカーは産後1か月で非妊婦のそれらと同濃度にまで減少した.胚胞が子宮に着床すると胎盤が形成され,徐々に発育,妊娠後期ではその機能や胎盤構成細胞の活性化が最大となる.胎盤そのものの機能や構成細胞の活性化は大量の活性酸素を産生するとされていると考えられていることから,妊娠後期の母体では非常に強い酸化ストレス反応が惹起された可能性が推察された.

1 0 0 0 OA 褥瘡と栄養

著者
鈴木 文
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.120-127, 2014 (Released:2014-09-27)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
高野 和郎 坂田 暉英 福山 公基 太田 宏 前田 洋 李 雅弘 尾上 保夫 青木 隆一 高場 利博 岩堀 嘉和 松下 功 金子 和義 三富 静夫 唐沢 弘文 藤井 浩一 森本 和大 石井 淳一 上村 正吉 藤巻 悦夫 村田 恒雄 森 義明 菅谷 修一 西堀 実 薄井 武人 安藤 公信 清田 卓也 熊谷 日出丸 前田 正雄 鈴木 庸之 本多 儀一 門馬 満 藤本 昇 安藤 光彦 口石 将博 崔 相羽 高須 克弥 平井 啓 小池 勝 平塚 進 鈴木 武松 土持 喬 初鹿野 誠彦 津田 紘輔 諸岡 俊彦 藤井 陽三 清水 一功 八田 善夫 直江 史郎 坂木 洋 海老原 為博 太田 繁興 佐々木 彰 村山 義治 塚田 政明 清水 晃 山口 明志 江頭 亨 坂本 利正 渡辺 佐 加藤 水木 片桐 敬 吉田 文英 小島 昭輔 新谷 博一 鈴木 孝臣 金沢 英夫 落合 泰彦 堀坂 和敬 藤巻 忠夫 平木 誠一 橋本 敏夫 加藤 国之 石井 靖夫 菅 孝幸 赤坂 裕 今村 一男 甲斐 祥生 中西 欽也 太田 繁興 近藤 常郎 落合 元宏 松井 恒雄 依田 丞司 吉田 英機 丸山 邦夫 池内 隆夫 入江 邦夫 佐々木 彰 清水 晃 鈴木 周一 坂木 洋 塚田 政明 秋田 泰正 森 弘道 天野 長久 本多 平吉 山口 明志 坂本 利正 安達 浩行 草ケ谷 雅志 高野 和郎 中川 克宣 鶴岡 延熹 小野 充 阿万 修二 植原 哲 渋谷 徹 桑原 紘一郎 小黒 由里子 後藤 晋 島袋 良夫 安藤 彰彦 国枝 武幸 今西 耕一 小田切 光男 鄭 政男 佐川 文明 田代 浩二 大瀬戸 隆 菅沼 明人 町田 信夫 前田 尚武 小泉 和雄 鈴木 一 安藤 弘 山崎 健二 井出 宏嗣 福山 公基 木村 明夫 小林 祐一郎 狩野 充二 長嶺 安哉 木村 明夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.820-825, 1970
著者
石川 大樹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.265-272, 1996-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18

膝関節における半月板の機能的役割が明らかになるにつれ, 半月板損傷の治療に際して損傷半月板の温存が重要であることは諸家の一致した意見であり, 血管が分布する半月板辺縁部での損傷に対して, 今日では半月板縫合術が積極的に行われるようになった.しかし, 修復された損傷半月板が機能的にも正常化するかどうかは不明な点が多い.また, 半月板には神経分布もあると言われているが, 諸家の文献はまちまちであり, 一致した意見がない.そこで今回我々は, 微細血管および末梢神経線維を同一切片上で同時に観察できるneurovascular double staining法 (以後NVDS法と略す) を開発し, イヌ膝関節の半月板における神経線維と血管の分布を観察した.また, 人工的に内側半月板辺縁部損傷を作製した後, 半月板縫合術を行った雑種犬18頭を術後2, 4, 6, 8, 12, 24週で屠殺し, 半刀板辺縁部において断裂された神経と血管の修復過程を, NVDS法をもちいて経時的に観察した.正常半月板では血管は半月板辺縁部より1/2~1/3程度まで内側へ分布していた.しかし神経は1/5程度内側までしか分布していなく, またその数も極めて少なかった.なお神経終末は全て自由神経終末であり, mechanoreceptorは存在しなかった.半月板修復過程において血管系の再生は術後約6週でみられたが, 神経線維の再生は術後24週までみられなかった.NV-DS法は, 半月板の神経・血管分布および両者の相互関係を検索するのに有用な方法であることが実証された.また, 辺縁部断裂縫合後の修復半月板は短期的には完全に再生されていないことが明らかとなった.
著者
佐野 徹
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.585-593, 1988-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

隆鼻術において, 固形シリコンインプラントの使用は, ますます増大してきている.インプラントの挿入は, 骨・軟骨の容積を補う目的であるので, 土台となる骨面との固定性は重要なことである.術後に患者が指で鼻を押さえて, 鼻筋と一体となってグラグラ動くようでは, 本来の目的を達していないと思われる.ひいてはこの固定性の良否が術後の合併症を予防する上でも重要な点であると考えられる.隆鼻術は無視野の手術であるため, インプラントの挿入された部位の確認が明確でなく, 骨膜下に挿入すべきものであるのか, 骨膜上でよいのかは, 従来議論の別れるところであった.ラットを用いた実験で, 骨面にじかにインプラントを置いたものと, 骨膜上に置いたものとに分けて, その固定性を比べてみたが, あたかも骨と一体化したように固定されるのは, 前者であった.このことから, 隆鼻術の際の骨膜剥離操作の重要性が確認された.次に, 隆鼻術の際に骨膜下に, インプラントの先端を挿入し得るポケットの作成が可能であるか否かの問題点である.肉眼的には, 鼻部腫瘍の手術の際, 骨膜剥離子の先端で鼻骨骨膜の剥離は可能であり, 光顕的には, 骨膜および周辺の組織を2倍の長さに牽引しても, 伸びた骨膜は連続しており, 結果として骨膜下の剥離そのポケットの作成は可能であった.しかし, 骨膜が破壊されても, その結果, 骨面に接してインプラントがあれば, 同様に良い固定性を得ることができると思われる.いずれにしても, 隆鼻術の際の鼻骨剥離操作を十分に行うことが重要となる.
著者
小川 竜平 真鍋 厚史 中山 貞男 小口 勝司
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.118-127, 1994-04-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
18

カルシウム (Ca) とリン (P) の吸収, 排泄ならびに実験的骨粗鬆症の骨代謝に対するシュウ酸 (OA) , 酒石酸 (TA) の影響をWistar系雌性ラットを用いて検討した.1または3%のOAあるいはTAを含む飲料水を1~3週間自由に摂取させCa, Pの糞中, 尿中排泄量を測定した.OAおよびTAともCaの糞中排泄をいずれの摂取期間においても明らかに増加させた.Pの糞中排泄もOAおよびTA摂取により増加あるいは増加傾向を示した.一方, CaおよびPの尿中排泄には明らかな変化は認められなかった.すなわちOAおよびTAはCa, Pの腸管からの吸収阻害により糞中排泄を増加させたと考えられる.卵巣摘出 (OVX) による実験的骨粗鬆症に対する影響は, 1%OA (OVX・OA) , 1%TA (OVX・TA) を6カ月間自由摂取させ検討した.大腿骨と脛骨の灰分重量と乾燥重量の比は灰分重量の減少によってShamに比較しOVX, OVX・OA, OVX・TAにおいても低下したが, 3群問に差は認められなかった.大腿骨, 脛骨のCaはOVXで減少を示し, OVX・OAとOVX・TAではこの減少が著明に促進された.骨中PはOVXで有意な減少を示さなかったが, OVX・OAとOVX・TAではSham, OVXに比べて減少を示した.組織学的にはOVX・OA, OVX・TAで脛骨骨幹端部の骨梁の減少および単位骨量の減少を認めた.以上の結果より, OAとTAは腸管からのCaとPの吸収を阻害し骨粗鬆症を悪化させる可能性が示唆された.
著者
真野 英寿
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.372-377, 2014 (Released:2014-12-23)
参考文献数
8
著者
堀之内 達郎 副島 和彦 神田 実喜男 吉村 誠 福島 一雄 阪本 桂造 藤巻 悦夫
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.111-115, 1993

血管腫は, 良性腫瘍としては比較的多い腫瘍であるが, 筋肉内血管腫は比較的まれな腫瘍で, 臨床的に特徴的な所見に乏しく病変が深部にあることが多いため, 診断が困難である.今回我々は, 大腿中間広筋内にびまん性に発生した筋肉内血管腫を経験した.症例は, 28歳, 男性, 左大腿部腫瘤と疼痛を主訴に来院.左大腿部に8×6cmの弾性硬, 境界不鮮明で圧痛のある腫瘤を触知した.CT, MRIで同部に境界不明瞭な腫瘍陰影を認めた.血管造影では, 静脈相で不整な集積像を認めた.手術所見は, 中間広筋内に1~2cmの腫瘍を数個認め, 内容は暗赤色を呈しており, 一部正常組織を含めて一塊として摘出した.病理組織所見では, 筋肉内血管腫の混合型で主に海綿型を呈し, 一部に毛細管型を伴っていた.