著者
勝又 悠太朗
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.64-77, 2023 (Released:2023-07-06)
参考文献数
29

本稿では,奈良県の医薬品産業における企業の存立形態を明らかにした。当地域の医薬品産業は地場産業として成立した配置薬生産を起源とする。しかし,配置薬の生産は減少しており,それを専業で生産する企業は一部に限定されている。他方,配置薬だけでなく一般薬や医薬部外品,健康食品などを生産し,生産品目の多品目化を進める企業がみられるようになった。さらに,大手企業をはじめとする医薬品企業やドラッグストアからの受託生産を主軸とする企業も登場した。こうした企業は,当地域の医薬品産業の中では規模が大きく,医療用薬を主要生産品目とする点に特徴がある。このように,当地域の医薬品生産企業の存立形態には変化が認められる。そして,全医薬品の生産額に占める配置薬の割合が低下する一方で,生産品目の多品目化と受託生産が増加した結果,当地域の医薬品の生産額は2000年代半ば以降も増加傾向を示している。ただし,配置薬生産の減少は企業が奈良県に集積するメリットを低下させている。また,受託生産の拡大は生産額の増加に寄与するが,受託元企業による生産のグローバル化の推進や当産業をめぐる制度の変化などの影響を受けやすいものであるといえる。
著者
熊谷 誠 南 正昭
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.77-93, 2021 (Released:2022-01-14)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

釜石市唐丹町本郷は,三陸の津波常襲地にあって,昭和三陸津波後の高所移転集落として知られる。かつて山口弥一郎は,元の集落位置へ戻る「原地復帰」への懸念を指摘したが,「原地」には防潮堤建設等により居住はできなくなっていた。一方で,昭和津波浸水域を含む「低地」への居住が拡大していた。東日本大震災では,高所移転地では浸水被害を免れた一方で,「低地」は壊滅的な被害を受けた。東日本大震災後の復興事業に伴い,同津波浸水域への居住は法的に禁止され,「低地居住」への懸念も解消された。本稿は,唐丹本郷におけるこのような変遷の過程を,「低地居住」の実態と要因群も含めて,明らかにした。
著者
長井 政太郎
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.7-14, 1953 (Released:2010-10-29)
参考文献数
28

1 0 0 0 OA 書評・紹介

出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.32-39, 1999-03-15 (Released:2010-04-30)

1 0 0 0 OA 書評/学会記事

出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.124-130, 2021 (Released:2022-01-14)
著者
千葉 徳爾
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.167, 1965

The author investigated the relation between insolation and settlement in the Hida mountainland, Central Japan. The distribution of long insolated area on the day of winter solstice in the Azusa Ravine, the head water of the Shinano River. The result is shown in Fig. 1 (white parts are the longest, 8 to 9 hours.). Table 1 tells us the relation between insolated hours and the number of houses in these settlements.
著者
加藤 武雄 米地 文夫
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.36-40, 1965

The Chokai Volcano, which lies on the coast of the Japan Sea, is one of the famous volcanoes of the northeast Japan, and <i>Tori-no-umi</i> is the crater lake near the top of this volcano. This is a report of the limnological survey of this lake.<br>1) This lake has an elliptical shape as is shown by the bathymetric map (Fig. 2).<br>2) As seen from Figs. 4 and 9, the vertical distribution of the water temperature and the chemical quality shows typical features at the periods of the summer stagnation and the autumnal circulation.<br>3) The result of the chemical analysis (Tables 2-4) generally reveals that <i>Tori-no-umi</i> is poor in dissolved substances.<br>4) This lake is characterized by rather high concentration of Na<sup>+</sup> and Cl<sup>-</sup>. (These features are not seen in the several lakes in the Zao and the Shirataka Volcano areas distant from the Japan Sea coast.) The writers inferred that the chemical quality of <i>Tori-no-umi</i> lake is originated from the atmospheric salt in the remaining snow around the lake.
著者
米地 文夫
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.111-118, 1990

磐梯山の1888年噴火は関谷・菊池 (1888) 以降, 長い間「前兆無き, 激しい水蒸気爆発」と言われてきたが, 近年多様な前兆的現象の存在を肯定する見解が出され (菊池1984, 1986, 廣井1988, 八島1988など), また磐梯山が抜けるという風説が噴火を予言していたとする話を信じる人が多くなった。前兆や予言があったとする見解が増えた一因は井上靖の小説「小磐梯」にあるが, 筆者は一次資料を検討し, 資料として小説を用いるのは妥当ではないことを明らかにした。最も信頼性の高い「磐梯山噴火口供進達之義ニ付上申」の検討の結果, 地震以外に前兆らしき確実な変事が無かったという点で23人全員の証言がほぼ一致していた。噴火前の地震に関する証言は, 磐梯山東南麓では「無し」, 東麓の磐梯山よりでは「10日程前に大きな地震があった」と答え, 北方~東北方では噴火数日前に地震を感じている。「山が抜ける」という予言的風評は, 噴火の予言ではなく, 会津地方に多発していた地すべりを指していたと考えられる。以上の結果は同噴火が「小規模な噴火と大規模な崩壊であった」という, 守屋 (1980), Yonechi (1987) らの説と整合的である。
著者
米地 文夫
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.1-6, 1962

In the southern part of the Shonai Plain, there are several surfaces of river terraces and terrace-like surfaces. These surfaces are classified and shown in Table and Figure 1.<BR>The Iwanoyama, Etchuyama Settlement and Otori Nursery-garden Surfaces, thus named respectively, are covered with &ldquo;Tsuruoka Loam&rdquo; (volcanic ash as eolian deposits), and their surfaces are wavy due to the dissection. A part of the Matsune Surface is covered with secondarily deposited loam. The Matsune and Nakano-shinden Surfaces preserve the flat terrace surfaces.<BR>The Etchuyama Sites are located on the Etchuyama Settlement Surface and Otori Nursery-garden Surface. Stone implements of the Non-ceramic Age are discovered from the level between black soil (humus) and the Tsuruoka Loam.<BR>After all, the writer supposes that the Tsuruoka Loam was derived from the upper Pleistocene Age, and that the time of the formation of the surfaces from the Iwanoyama to the Otori Nursery-garden Surface was the Pleistocene. The Matsune Surface is a landform of slightly elevated fan-like delta formed in the lower Holocene Age.
著者
米地 文夫 菊池 強一
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.23-27, 1966
被引用文献数
4

&ldquo;Obanazawa pumice bed&rdquo; is extensively distributed in Obanazawa basin and its vicinity along the middle-stream of the Mogami river. This deposit was first described by Prof. Y. Tomita as the deposit under the fluvial agency of the Niu river at the time of the explosion of Funagata volcano (in Ou mountains), at the source of this river.<br>The writers exmained about 160 exposures and made the isopach map of the deposit. From this map, the volume of Obanazawa pumice was roughly estimated 0.19km. The deposit attains a maximum exposed thickness in the western border of its distribution area, namely in the vicinity of Hijiori spa. Further, Obanazawa pumcie bed is found on the surfaces of hill-land and higher-middle terraces (Sabane-Obanazawa surfaces).<br>These observations about the distribution of Obanazawa pumcie and some other evidences indicate that Obanazawa pumcie was deposited as a fallen tephra originated from Hijiori cladera (Dewa range). In the writers' opinion taking the result of pollen analyses and archeological sruvey into consideration, Obanazawa pumice bed belongs to the upper Pleistocene or lowest Holocene age.
著者
杉浦 直 小田 隆史
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.157-177, 2009-09-15
参考文献数
27
被引用文献数
3 3

本論文は,サンフランシスコ・ジャパンタウン(日本町)における一施設「ジャパンタウンボウル」の売却問題(2000年)及びその跡地に建った住・商混合施設「1600ウェブスター」への大手コーヒーショップ・チェイン「スターバックス」店舗進出問題(2005年)の経緯とそこにおける諸活動主体(アクター)間の対立を分析・検討し,それを通じてエスニック都市空間における場所をめぐる葛藤の性質・構造とその意味を考察したものである。このサンフランシスコ日本町における一連の場所をめぐる葛藤の過程のなかで最も強い対立を示したアクター関係は,日本町に進出を企てる外部資本と日本町諸組織との間であり,それは地価にふさわしい経済的開発と地域経済再編を志向する資本主義的都市過程とローカル・エスニック・コミュニティの維持・保全を志向するエスニックに意味付けられた特殊な都市過程との対立として捉えられる。そしてその意味を地理学的に考察するとき,上記の対抗関係はMerrifield (1993) が提示した資本による「想像された空間(conceived space)」とコミュニティの現実の「生きられた場所(lived place)」との対抗関係であり,それらの間の弁証法的調整の過程であると言うことができる。
著者
杉浦 直
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.1-23, 2007-04-30
被引用文献数
4 3

本論文は, カリフォルニア州サンフランシスコのジャパンタウン (日本町) における都市再開発事業の進展を, そこに絡む活動主体 (アクター) の動きと相互の関係に焦点をあてて分析し, 当該再開発の構造とエスニック都市空間の建造環境の変容におけるその役割を考察したものである。日本町が位置するサンフランシスコのウェスターン・アディッション地区は, 第二次世界大戦の後, 建造環境が荒廃し都市再開発の対象となった。実際の再開発はA-1プロジェクトとA-2プバロジェクトに分かれる。A-1プロジェクトにおいてはサンフランシスコ再開発公社 (SFRA) の強い指導の下に経済活性化優先のスラムクリアランス型の再開発が行われ, 日本町域では近鉄アメリカなどによる大型商業施設 (ジャパンセンター) の開発が行われた。A-2プロジェクトは少し性格を異にし, コミュニティ・グループの参与の下に再開発が企画・実施され, 日本町域では日系ビジネス経営者を中心に構成された日本町コミュニティ開発会社 (NCDC) による「4プロツク日本町」再開発が行われたほか, 日系アメリカ人宗教連盟 (JARF) による中低所得者向きの住宅も開発された。なお, プロジェクトの初期において草の根的コミュニティ・グループ (CANE) による立ち退き反対闘争が行われたことも特筆される。このような再開発を経てジャパンタウン域の建造環境は大きく変容したが, その変化はかつての伝統的な総合型エスニック・タウンからツーリスト向けのエスニック・タウンに在来の現地コミュニティ向けエスニック・タウンの要素が混在した複合型のエスニック・タウンへの変化であったと要約されよう。こうした変化は, 前述した諸アクターの相互関係によって規定される再開発の加構造がもたらした必然的な帰結と言える。
著者
岩動 志乃夫
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.34-49, 2017

<p>秋田県大仙市は人口減少,少子高齢化等の進展による地域の衰退に危機感を抱き,地域再生へ積極的に取り組むため,角間川地域活性化協議会を組織した。特に観光面での充実を図るため,外国人留学生を対象としたモニターツアーを実施した。初めて大仙市を訪れる参加者に花火大会鑑賞,花火工場見学と模擬花火玉制作体験,古民家見学,茶道体験,花火寿司創作体験,角間川盆踊り体験といった内容について評価してもらった。その結果,ほぼどのツアーでも評価が高いのは花火大会鑑賞,花火工場見学と模擬花火玉制作体験, 茶道体験,個別評価に差がみられるのは古民家見学,花火寿司創作体験,比較的評価が低いのは盆踊り体験であった。同協議会は知名度のある花火関連内容の高評価に自信を深め,個別評価に差がみられる内容や評価の低い内容については今後の観光化の展開に修正や再考をしていくことになった。大学との連携によるモニターツアーの実施は今後の事業展開に向けてたいへん有意であり,今後の地域振興促進に向けて同協議会の意欲向上へと結びついた。</p>
著者
桑島 勝雄
出版者
東北地理学会
雑誌
東北地理 (ISSN:03872777)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-131, 1986
被引用文献数
1

東北6県における保育所の分布を, その定員数, 児童収容率を指標として, 各市町村単位でみると, 次のような傾向や関係が表われている。<br>1) 保育所定員数および同児童収容率において, 県単位では, 両者の値の高い市町村のその県に占める割合は, 青森県が最も高く, 次いで, 岩手, 秋田, 山形の各県がほぼ並び, その下に宮城, 福島両県が位置しているという, 北高南低の傾向がみられた。<br>2) また, これらの地域格差の生ずる要因として, 0~4歳児人口, 共稼夫婦核家族世帯数 (0~6歳児を有する), 児童福祉予算の3要素が, 保育所定員数と正の相関を有していることが判明した。<br>3) 保育所児童収容率において, 全般的に市部は低率であり, 町村部は高率を示している。そして, 高率町村の大部分は過疎地域に位置している。<br>4) 保育所定員数に大きな影響を与える幼稚園の在園児童収容率においては, 高率市町村のその県に占める割合は, 宮城, 福島両県がともに高く, 次いで, 山形, 秋田, 岩手各県がほぼ並び, そして, 青森県が最低という, 南高北低の傾向を示している。<br>5) また, ベビー・ルームなどの無認可保育施設が, 中心都市およびその周辺の市町村に進出し, 保育所機能の一端を担っている。<br>6) そして, 各県において, 保育所定員および幼稚園, 無認可保育施設在籍児童の3施設の総和の児童数は, 0~6歳児数に対する割合においては, 各県とも, ほぼ総数の3分の1が, 上記施設のいずれかに在籍している割合になっている。
著者
岩鼻 通明
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 = Quarterly journal of geography (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.19-27, 1999-03-15
参考文献数
4
被引用文献数
2

本研究の目的は, 長野県戸隠村中社集落の観光地化について, 1975年までの10年間の動向を報告した第1報, および1985年までの10年間の動向を報告した第2報に引き続いて, 1985年から1995年までの10年間の動向を明らかにすることにある。<br>この10年間の動向として, 前半のバブル経済期は観光客数が急増したが, 後半の経済不況期に入って, 宿泊客数の減少傾向が顕著になりつつある。とりわけ, 1995年に発生した阪神大震災と豪雨災害の影響が大きい。それにともない, 高齢化を主たる理由に廃業する宿泊・飲食施設も現れ始め, これまで拡大の一途をたどってきた戸隠観光にも変化が生じつつあることが明らかになった。また, 併せて1998年に開催の長野五輪への期待や, スキー場とゴルフ場の必要性に関しても調査を行ったが, 総じて長野五輪への期待感には乏しく, ゴルフ場の誘致やスキー場の拡大についても消極的な意見が多くみられた。