著者
金沢 定一 大谷 昌朗 佐藤 徹雄
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.517-521, 1959
被引用文献数
1

メチル-β-D-リボフラノシドをトシル化し生成物をカラムクロマトグラフィーによって分離したところモノ,ジおよびトリトシル誘導体が得られた・これらの化合物のうちモノトシル体のアセタートをヨウ化ナトリウムと反応させメチル-2,3-ジ-O-アセチル-5-デオキシ-5-ヨ一ド-β-D-リボフラノシドとしたのち,これに塩化水素を作用させたところ2,3-ジ-O-アセチル-5-デオキシ-5-ヨード-Dリボフラノシルクロリド(リボースの1,5-ジハロゲン体)が得られた。また・ジおよびトリトシル体もヨウ化ナトリウムと反応させたところ,5位のトシル基のみがヨウ素で置換され,相当する5-デオキシ-5-ヨード体が得られた。同様にして・ベンジル-β-D-リボフラノシドからも同じようなトシル誘導体および5-デオキシ-5-ヨ_ド誘導体が得られた。これらの5-ヨード誘導体のうちベンジル-2,3-ジ-O-アセチル-5-デオキシ-5-ヨード-β-Dリボフラノシドに塩化水素を作用させたところ・メチルーリボシドの場合と同様にリボ一スの1,5-ジハロゲン体をうることができた。
著者
黒崎 正三 大間 〓 初田 隆 中村 篤司
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.488-491, 1968
被引用文献数
2

塩化ビニルを工業的に製造するさいに,多種類の不純物が副生する。アセチレンと塩化水素を原料とする塩化ビニル製造工程において, 副生する不純物のうち, 塩化ビニルよりも沸点の高い成分を濃縮し, 分取ガスクロマトグラフにより高沸点物を分取した。<BR>この高沸点物のスペクトロメトリー(赤外吸収スペクトル,質量スペクトル)および元素分析,その他物理恒数の測定を行なうとともに,他方,化学定性反応処理(臭素付加反応,重亜硫酸ナトリウム付加反応)した高沸点物の濃縮試料のクロマトグラムおよびガスクロマトグラフより分離溶出する成分の炎色反応から高沸点物を定性的に分類した。それより,推定される物質を合成し,スペクトロメトリーおよびガスクロマトグラフィーにより, 同定確認した結果, 高沸点物質として検出した26 成分のうち, 19 成分を定性することができた。
著者
松崎 啓 守屋 正夫 祖父江 寛
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.869-871, 1959
被引用文献数
1

トド松パルプ中の銅アン=モニア液に不溶な部分を精製し,グルコマンナンを単離した。そのマンノース基/グルコース基(M/G)は約4で,少量のギシロース基を含む。パルプをアルカリ抽出し,抽出したヘミセルロースをフェーリング液で精製をくり返すと,M/Gが3~3.5のグルコマンナンと,グルコマンナンおよびセルロースを混じているキシランを主成分とする部分が得られた。酸加水分解したグルコマンナンのM/Gは3.65で結晶性のX線図を示した。キシラン中のアルドバイウロン酸の構造につき考察を加えた。
著者
中村 徳郎 大熊 純一 佐々木 郁生 北浦 貞夫
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.1073-1077, 1958

脱脂絶乾トド松木粉に, 常温減圧下, 暗所において臭素ガスを反応させると, 臭素は木材中のリグニン( プロトリグニン)の芳香核および側鎖に主として置換反応を起す。このようにしてえられた臭素化木粉を水酸化第二コバルトと酸素によって酸化し,6-ブロムバニリンをえた。このことからリグニンの芳香核に置換した臭素はメトキシ基のパラの位置に入ったことがわかる。6-ブロムバニリンのほか少量の4,5-ジブロムグアヤコールと5-ブロムバニリン酸もえられた。また水素化ホウ素ナトリウムによってリグニン中のカルボニル基を還元した木粉も未処理の木粉とほとんど同様に臭素化される。すなわち,プロトリグニンの側鎖に存在するカルボニル基の有無は臭素の置換量にあまり大きな影響を与えないことがわかった。
著者
土橋 力太 榛澤 亨
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1041-1047, 1940
被引用文献数
2

トド松,エゾ松を原料とせるサルファイト・テレビン油を試料として之を分溜に附し高沸點部(〓化價約200)を〓化して融點58.5°を示す結晶酸を得たり.本酸はトド松材中に含有せられ居る可きを推斷してトドマツ酸と命名せり.本酸は分子式C<sub>15</sub>H<sub>24</sub>O<sub>3</sub>なるケトン酸にして炭素間の二重結合1個を有す.而して試油中に於てトドマツ酸のメチルエステルとして存在し其含量は鹸化價より計算する時は原油に對し約20%を示す.<br>次にトドマツ酸の諸誘導體を生成し該酸がセスキテルペンの酸化成果體なる可きを記述せり.
著者
横山 晋 岡本 毅彦 石井 忠雄 武谷 愿
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.353-358, 1969
被引用文献数
1

トド松,ブナ,ナラ樹皮の各MWリグニンおよび赤松チオリグニン等の原リグニンにはDMSO-<I>d</I><SUB>6</SUB>を,また原リグニンのアセチル化誘導体にはクロロホルム-<I>d</I>を,それぞれNMR溶媒に用いて,高分解能NMRスペクトルを測定した。次いでアセチル化誘導体のNMRスペクトルから求めたフェノール性,アルコール性水酸基含量の測定結果を併用して,原リグニンのNMRスペクトルから各種結合形態の水素の含量を測定した。<BR>その結果MWリグニンとチオリグニンとの間の各種水素の分布には特徴的な差異が見られた。すなわちMWリグニンはチオリグニンと比べてアルコール性水酸基水素および芳香族環側鎖の脂肪族水素H<SUB>α</SUB>,H<SUB>β</SUB>(側鎖脂肪族α,β,γ位炭素に酸素が結合する)の含量が多い。これに対してチオリグニンはフェノール性水酸基水素および芳香族環側鎖の脂肪族水素H<SUB>α'</SUB>,H<SUB>β'</SUB>(側鎖脂肪族α,β,γ位炭素に酸素が結合していない)の含量が多い。<BR>高分解能NMRスペクトル分析によって求めた各種結合形態水素の含量および元素分析値を用いて,リグニンの基本構造単位に関する構造指数を求める新たな構造解析法を導入した。
著者
三井 生喜雄 斎藤 秀世
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.577-581, 1957
被引用文献数
9

レブリン酸エチルエステルにヒドラジンヒドラートを作用させて 6-メチルビリダジノン-(3)(II)を得,これを臭素で脱水素して3-オキシ-6-メチルピリダジン(III)を合成した。これにオキシ塩化リンを作用させて3-クロル-6-メチルピリダジン(IV)を得,これを酸化して3-クロルピリダジ<BR>ン-6-カルボン酸(V)を作った。これに液安を作用させて3-アミノビリダジン-6-カルボン酸(VI)を合成,さらにその種々のエステル(VII)を作り,またこれからそのアミド(XII)を得た。一方IIIを酸化して3-オキシピリダジン-6-ヵルボン酸(VIII)を作り,その各種エステル(IX)にオキシ塩化リンを作用させて3-クロルピリダジン-6-カルボン酸エステル類(X)を合成した。Xにヒドラジンヒドラートを作用させて3-ヒドラジノビリダジン-6-カルボン酸ヒドラジド(XIII)を得た。これにロダンカリウムを作用させて3-チオセミヵルバジノピリダジン-6-カルボン酸チオセミカルバジド(XIV)を合成した。
著者
野崎 秀俊 古賀 昭人 川上 弘泰
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1285-1287, 1958

第11報と同じ温泉で40℃と60℃について採水後の比抑圧係数とベンジジン反応の時間的変動を調べた。その結果,地蔵湯 (酸性硫化水素泉) では硫化水素が逃げると共に比抑圧係数の値も減少する。その速度は高温ほどはやい。人工泉との違いも前報と同様にはっきり現われている。竹瓦温泉 (含食塩重曹泉) はその変化がきわめてはやく値も地蔵湯の約1/10である。この場合, 地蔵湯ほど含有ガスの量に比例しておらず, 遊離炭酸のみならず水酸イオン, 炭酸イオンなどが比抑圧係数の老化現象として現われると思われ, 温度の違いは,さほどではない。またベンジジン反応は急速に消失した。
著者
古川 淳二 鶴田 禎二 森本 和久
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.60, no.11, pp.1402-1406, 1957
被引用文献数
2

イソアミルナトリウムと四塩化チタンとを種々のモル比に混合反応させて, 重合触媒を調製し, これを用いて, 各種ビニルモノマー, すなわち, ビニルエーテル, プロピレン, 酢酸ビニル, エチレン, スチレン, ブタジエン, メタクリル酸メチルおよびアクリロニトリルの重合反応性を調べたところ, 四塩化チタンの相対濃度が小さい触媒系に対しては, アクリロニトリルおよびメタクリル酸メチルの反応性が大きく, 四塩化チタンの相対濃度の大きいものに対しては, ビニルエーテルの反応性が増大することがわかった。スチレンはいずれの場合にもよく重合する。これらの事実は各モノマーの既知の反応特性から予期できるところであるが, 上記触媒成分が別個にモノマーに作用しているのではないことを確かめておいた。上記四塩化チタンのかわりに, 四塩化スズあるいはチタンテトラエトキシドを用いた触媒系, またはアルフィン系触媒についても, ほぼ同様の実験を行い, 比較検討した。
著者
西川 幸利 大津 隆行
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.1836-1841, 1969
被引用文献数
16

α-およびβ-置換アセチルアセトンを合成し,その銅(II)キレートによるメタクリル酸メチルの重合を,60℃,塊状で行なった。α-位にメチルおよびフェニル基を導入した場合には,重合活性は増大し,またフェニル置換体についてはつぎのような順であった:<I>p</I>-CH<SUB>3</SUB>O><I>p</I>-H><I>p</I>-CH<SUB>3</SUB>><I>p</I>-Cl。一方,β位に置換基を導入した場合には,つぎの順であった:C<SUB>2</SUB>H<SUB>5</SUB>O>CH<SUB>3</SUB>>C<SUB>6</SUB>H<SUB>5</SUB>。このような重合活性におよぼす置換基の効果は,主として置換基のI効果と生成リガンドラジカルの安定性によって理解された。<BR>また,これらキレートによる開始機構をさらに明らかにするためにアセト酢酸エチル銅(II)キレート([Cu(eacac)2])によるスチレンの重合(60℃)を動力学的に研究した。ベンゼン中では重合速度(<I>R</I>p)は次式で表わされた:<I>R</I>p=k[Cu(eacac)<SUB>2</SUB>]<SUP>0.5</SUP>[St]<SUP>1.9</SUP>。<BR>ベンゼン以外の他の溶媒を用いた場合には,<I>R</I>pに対するみかけのモノマー次数は1.3から2.4まで変化した。このことは,開始過程においてキレートとモノマーあるいは溶媒との間での錯体形成が重要であることを示している。得られた置換基効果ならびに動力学的結果から,金属キレートによるビニル重合の開始機構について考察した。
著者
大原 英一
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學會誌 (ISSN:03694208)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.657-666, 1940
被引用文献数
2

既に報告した如く水蒸氣流に放電を施して之を液態酸素に浸けたトラツプに通じる時には水素原子と酸素分子との反應に酷似した幾多の現象を見た.本報に於てはGeib, Hart_??_k<sup>1)</sup>の行つた水素原子と酸素分子との實驗を繰返し,更に彼等の實驗以外の異りたる二三の實驗を試みて次の如き結果を得た.<br>1) 用ひる水素と酸素との容量比を約2:1とすれば,トラツプに得られる生成物を室温にまで温めるときには後に約68%の濃厚なる過酸化水素が殘り,此の際分解して發生する酸素の量は後に殘る過酸化水素の量に對して48cc/g H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>であり(即ち發生酸素と過酸化水素とのモル比は0.0728),水蒸氣放電の場合よりも著しく小である.<br>2) トラツプに於ける生成物が温まる際に分解し始める温度は約-117°Cにして,この温度は水蒸氣放電により得たる生成物が分解し始める温度-110°~〓115°C(第七報)と大體一致する.<br>3) 放出される酸素の分量は温め方の遲速には全く無關係に同一である.此の點も水蒸氣放電の場合と全く一致する.トラツプの温度上昇速度が同一である場合には(放出酸素-時間)-曲線は水蒸氣放電の場合と全く同一の型である.<br>4) 反應管の温度を-130°Cにする時には平均濃度11%の過酸化水素を得, Geib等の實驗と一致してゐる.<br>5) トラツプ内の過酸化水素生成の場所に水蒸氣を吹き付け共に凝固させると過酸化水素の生成量及び放出酸素の量を増加する.水蒸氣放電による場合にも同様の結果を生じる.<br>此等の實驗結果はGeib, Har_??_kの水素原子と酸素分子との低温反應と放電水蒸氣の低温反應との酷似を益々明瞭にする.故に大體に於て後者の反應も亦放電によつて水から水素原子と酸素分子とが生じ,之等が低温に於てGeib, Harte_??_kの反應を起すものであると推定する.
著者
後藤 忠俊 室谷 寛 笹本 興児
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.1172-1175, 1965

塩基性炭酸マグネシウム(炭マグと略称)の製造では,良質の製品を得るために結晶状態が重視される。これは結晶化の過程に直接関係している問題である。塩化マグネシウムと炭酸ナトリウムとの80℃ 程度の溶液反応で,炭マグを生成するとき他の物質が副生する。これらの物質として,正炭酸マグネシウムが知られているが,この外に(1)無定形物質,(2)従来未知のX線回折を示す物質がある。反応の初めに無定形物質が,遅れて(2)の物質が生成し,炭マグに同伴する。このような場合,炭マグ結晶は[001]方向に余り成長しない。常温反応では正炭酸マグネシウムが生成するが,希薄溶液の条件では無定形物質が得られる。これは徐々に変化して上の(2)の物質を含む複雑な状態となる。80℃ 反応の副生物は当量反応で高濃度の場合に避けられる。また熟成によって炭マグに変化させられる。しかし,この副生物は炭マグの結晶化に直接あるいは間接に影響するらしい。