著者
根来 健二 小泉 久則
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.922-927, 1967

p-クレゾール(I),6,6'-ジオキシ-3,3'-ジメチルジブェニルメタン(II)および2,6-ビス(2-オキシ-5-メチルベンジル)-<I>p</I>-クレゾール(III) のそれぞれすべての水酸基をプロパンサルトンおよびγ - ブチロラクトンにより, γ - スルポプロピル化およびγ - カルボキシプロピル化を行なった。得られた6種の試料(I, II, III-PS-NaおよびI, II, III-BL-Na)を精製後,元素分析およびペーパークロマトグラフィーなどにより分析した。ついで,これらの化学的純粋な6種の試料について界面化学的性質を検討し,つぎの結果を得た。<BR>1)表面張力:I, II-PS-NaおよびI, II-BL-Naの少量添加によって表面張力をあまり低下しないが,III-PS-NaおよびIIIBL-Naはかなり表面張力を低下させる。<BR>2)電気伝導度:各試料水溶液の比伝導度と濃度との間には比例関係が成立し,ミセル形成が認められない。<BR>3)粘度:試料の濃度がIII-PS-Naのときには1%,III-BL-Naのときには0.5%以下であるとき還元粘度が増大し,高分子電解質的挙動を示す。<BR>4)分散性:6試料水溶液中における炭酸カルシウム粉末の沈降試験の結果,0.1% III-PS-Na溶液中ではかなりよい分散性を示したが,0.1% III-BL-Naおよび6つのすべての試料の0.01,水溶液は凝集的に働き,速やかにCaCO<SUB>3</SUB>が沈降した。<BR>5)乳化力:流動パラフィンに対する乳化性を沸騰水浴中で求めたところ,すべての試料のうちでIII-PS-Naのみがすぐれた水中油乳化持続性を示した。
著者
山下 雄也 布本 貞明 三浦 定美
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.317-320, 1966
被引用文献数
7

ジメチルケテンとアセトンとの交互共重合で,高融点脂肪族ポリエステルを合成する条件を検討した結果,トルエン,エーテルなどの溶媒中ブチルリチウム,グリニャール試薬などの触媒系が適当であった。ナトリウム,カリウム化合物系触媒や,ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒は, ジメチルケテン単独重合体を生成しやすい, 三元共重合の結果からカルボニル化合物の共重合性がベンズアルデヒド> アセトン~ ギ酸メチル> ジメチルケテンの順序にしたがうことがわかった。エチレンオキドシは交互共重合せず,イソシヤナートはランダム共重合することを認めた。これらの結果から,ジメチルケテンとカルボニル化合物との交互共重合は対カチオンにカルボニル基が配位したキレート中間体を通って起こることを推定した。
著者
岩間 文男 広瀬 典子 中村 司 丸田 詮二朗
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.1387-1389, 1971

渡り鳥の一種であるオオヨシキリを, 渡りの直後 (春) および渡りの直前 (秋) に捕獲して, 皮下部分と体内部分に分けて, エーテルで脂質を抽出し, 抽出物をアセトン可溶部と難溶部に分けた。可溶部をケン化し, 不ケン化物を抽出して, アルミナを用いるカラムクロマトグラフィーを行なって, 炭化水素とアルコ一ルに分離した。分離した各部分について, ガスクロマトグラフィー, 薄層クロマトグラフィー, 赤外吸収スペクトル測定, 諸特数測定などを行ない, 春と秋とについて脂質の変化を比較検討した。<BR>その結果春秋ともに脂肪酸の主成分は C<SUB>16</SUB>, C<SUB>18</SUB><SUP>1</SUP>であり, アルコールの主成分はC<SUB>10</SUB>, C<SUB>14</SUB>, C<SUB>15</SUB>, C<SUB>16</SUB>, C<SUB>17</SUB>, C<SUB>18</SUB>であることを明らかにした。またリン脂質としてレシチン, リゾレシチン, スフィゴメリン, ケファリンが, 糖脂質としてサッカローズ, ガラクトーズ, D(-)-リボース, L(+)-ラムノーズなどを構成成分とする糖脂質が存在することを認めた。さらに共役酸として, ジエン酸と少量のトリエン酸が含有されていることを明らかにした。
著者
雨宮 稔起 平田 寛
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1, pp.58-62, 1968
被引用文献数
1

水酸化カリウム溶液中のマンガンーマンニットのク形波ポーラログラム(-0.35Vvs,SCE)はトリエタノールアミンのアルカリ溶液よりも検出感度が高く,またこの溶液の280mμ 付近における吸収極大は分子吸光係数(12000)がかなり大きい。しかし,この溶液は光照射や加熱により容易に変化し,かつ共存イオンの影響も大きいので,分析法としての取り扱いには困難な場合が多い。この溶液の変化を直流ポーラログラム,可視部,紫外部の吸収スペクトルおよび鉄(II)による滴定などの結果から推定すると,暗所ではマンガン(IV)の生成量が多いが,明所では生じたマンガン(IV)がマンニヅトによつて還元される速度が増すので,マンガン(III)の存在量が多くなる。また,マンニットが過剰にある間は上記の酸化還元反応をくり返すが,ついには酸化マンガン(IV)となって沈殿する。なお,直流ポ一ラログラフの波は拡散律速の比較的可逆性のよい一電子反応(Mn(III)〓Mn(IV))に基づくもの.であり,またマンガンとマンニットの結合比は,ク形波および直流ポーラログラムのモル比法による波高変化と吸収スペクトルの連続変化法による吸光度変化とから,1:2と推定した。
著者
園田 昭男 守谷 一郎
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.566-571, 1970
被引用文献数
9

クロルフェロセン(2),1,1-ジク導ルフェロセン(7)およびプロムフェロセン(10)へのn-ブチルリチウムならびにフェニルリチウムの反応を検討し,(2),(7)ではリチウム化は優先的にクロルの隣接位に起こり,ハロゲン-金属交換反応はわずかであることを,カルボキシル化反応での生成物の構造などから明らかにした。一方,ブロムフェロセンは圧倒的にハロゲン-金属交換反応を行なってフェロセン(1)を高収率で生成する。(2)のリチウム化を加熱下にフェニルリチウムによつて行なうと,若干のフェニルフェロセン(6)が生成する。これはハライドの脱離によるフェロサイン中間体の生成を示唆するように思われるが,o-リチオハロベンゼンの場合にくらべて脱離はきわめて困難である。また,(2)および(7)のリチウム化を経て,それぞれビス(2-クロルフェロセニル)水銀(12)およびビス(2,1'ジクロルフェロセニル)水銀(14)を合成した。(12)のテトラサイクロン中での熱分解反応を検討したところ,生成物は予想外にもフェロセン(1)であつた。
著者
藤田 安二 南野 治
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1017-1020, 1958

シトラールを含むイヌコウジュが見いだされ, その精油の検索が行われた。本種にレモンイヌコウジュなる和名とOrthodon citraliferum Fujitaなる仮称を与えるが, このものは系統的には<I>l</I>-リナロールを主成分とするニンチョウジオヤイヌコウジュOrthodon linalooliferam Fujitavar. laevolinalooliferum Fujitaとゲラニルアセテートを主成分とするショウガイヌコウジュOrthodon geranylacetatiferum Fujitaとの中間に位するものである。
著者
新倉 勇 渡辺 健一 畑 一夫
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.923-924, 1959

芳香族ニトリルの水素化におよぼす置換基の影響の一つとして, p-メトキシベンゾニトリルの水素化反応を行ない,その結果を前に報告したオルト化合物の場合と比較検討した。p-メトキシベンゾニトリルは 240°~300℃ で水素化すると主として p-クレシルメチルエーテルを生成し,このほかつねに少量のトレエン,アミン,フェノール類などが得られる。反応温度が高くなると副反応が多くなり,アニソールの生成がいちじるしくなる。これらの反応結果はオルト化合物の場合と似ていて,メトキシル基自身が水素化されて変化するためにニトリル基の水素化能率は幾分低下することを示している。
著者
堀 素夫 早川 宗八郎 鞆津 武 牧島 象二
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.638-641, 1958

本研究はセメント焼塊のような不定形の焼結物の焼結度を迅速かつ連続的に推定する目的で,これらの焼結粒子充填試料についてγ 線吸収ならびに超音波吸収の測定を行い, 従来の方法によるカサ密度, 見掛け密度, 気孔率ないし固結強度等の測定結果を比較検討したものである。まずγ 線吸収については,充填粒子の形状,粒度,密度等のいかんにかかわらず,同一組成の試料のγ 線吸収係数とカサ密度との間にはほぼ完全な比例関係が成立するので,γ 線吸収実験結果からただちにそのカサ密度を推定することができる。ただし充填試料自体の見掛け密度を推定するためには,充填粒子間の空隙部分を適当な媒質でおきかえる必要があり,置換媒液の浸透性等に問題が残る。次に超音波吸収の場合には,測定結果が試料の粒度によって著しく変動するため, γ 線吸収の場合のように簡単な関係はえられないが, 一般的な傾向として吸収係数は焼結度の増加とともに減少するといえる。
著者
奈良 賢一 真鍋 修
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.1866-1869, 1971

o-, m-, p-ベンゼンジスルホン酸塩 (BDS), ベンゼントリスルホン酸塩 (BTS) のアルカリ融解反応において, アルカリの濃度, 温度の反応速度に与える影響をしらべた結果, いずれの場合もスルホン基のモル濃度を [S], 水酸化アルカリの活量濃度を a<SUB>MOH</SUB> とすると, アルカリ融解反応の速度は次式で表わされた。<BR>-d[S]/dt=k[S]・a<SUP>2</SUP><SUB>MOH</SUB><BR>示差熱分析の測定から BTS〓フェノールジスルホン酸〓レゾルシンスルホン酸〓フロログルシンへの段階的融解反応の温度は I 150℃, II 250℃, III 300℃ であった。ベンゼンスルホン酸塩 (BS) および置換 BS の水酸化カリウム中での融解反応の活性化エネルギーと活性化エントロピーとの間には補償効果があり, またメタ位のスルホン基の1個の増加は活性化エネルギーを約 8kcal 減少することがわかった。アルカリ融解反応における置換基の影響についても検討した。
著者
日下 譲
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.78, no.5, pp.570-573, 1957

酸化トリウムより発生するトロンを固体吸着剤に吸着させ,トロンより生成する放射性沈積物を有効に採取する方法につき検討した。そのため酸化トリウムを電気炉中で加熱してトロン発生を良好にし,乾燥空気を流入して流出気流を固体吸着剤相に通過させる。吸着剤として活性炭,シリカゲル,酸性白土,活性アルミナ,酸化鉄および二酸化マンガン等を使用した。<BR>実験結果によれば本法による卜ロンの放射性沈積物の収集能は活性炭が著しくすぐれており,シリカゲルおよび酸性白土が多少の収集能を有するが他はほとんど有しない。<BR>吸着剤に活性炭を使用した場合は定量的にトロンを吸着捕捉することができ,さらに本法によれば高電圧電源等は不要になる。活性炭上に集積された放射性沈積物すなわちThBおよびThC等は1N硝酸でしばらく煮沸することによりほとんど定量的に活性炭より溶離することができ,その溶液は鉛およびビスマスのトレサ一実験に使用できる。
著者
服部 健一 谷野 幸雄
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.55-58, 1963
被引用文献数
1 10

本品は重要な分散剤であるがその基礎的知見に乏しく分散機構,水溶液の性質に至っては全然知られていない。また成分についても多くの成書が2核体として取扱っているが,はたして2核体が主成分とみなせるかどうかは疑わしい。当然その多分子性,高分子性が分散性と密接な関係があるものと予想されるので,この組成,構造を明らかにすることは分散性を解明する上に重要な問題と考えられる。組成を明らかにするため先ず精製β-ナフタリンスルホン酸のホルマリン縮合物ナトリウム塩を合成し,ペーパークロマトグラフィーによって<I>Rf</I>を異にする9個のスポットに分けた。おのおのスポットの核数を決定するためZollingerの方法によってスルホクロリドにかえアセトフェノン中における氷点降下法によってその分子量を測定した。その結果Rfが小さくなるにつれ順次分子量は増加しており,それぞれ1,2,3,……9核体(原点)に相当することを確認した。同時に従来の2核体が主成分であるかのような取扱いは誤りであることが明らかになった
著者
橋田 洋二 中島 欣也 関口 自然 松井 弘次
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.1132-1138, 1969
被引用文献数
5

非対称型ジスアゾ染料合成のための基礎資料と,二つの別々な芳香環にある二つの官能基間の相互作用についての知見を得るため,各種のテトラゾ化ジアミンとR酸(2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸)とのアゾカップリング反応の第1段反応の速度定数(k<SUB>1</SUB>),第2段反応の速度定数(K<SUB>2</SUB>)を分光光度計を用いて測定した。<BR>テトラゾ化ベンジジンの場合,K<SUB>1</SUB>/K<SUB>2</SUB>が約650であるが,ベンジジンの二つのべンゼン環の間に-O-,-S-,-SO-,-SO<SUB>2</SUB>-,-CH<SUB>2</SUB>-,-CO-などの架橋基を導入すると,K<SUB>1</SUB>/K<SUB>2</SUB>はかなり小さくなる。しかし,O-トリジン,O-ジアニシジンのテトラゾ化物の場合には大きなK<SUB>1</SUB>/K<SUB>2</SUB>の値が観測されることがわかった。<BR>以上の結果の理由について分光学的資料とも関連して考察を行なった。
著者
橋田 洋二 中島 欣也 関口 自然 松井 弘次
出版者
社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.180-183, 1970
被引用文献数
1

オルト効果に関する知見を得る目的で, (1) 式のような構造を持つベンゼンジアゾニウム塩とR酸 (2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸) とのカップリング反応速度を測定した。<BR>X : オルト置換基 (H, CH<SUB>3</SUB>, OCH<SUB>3</SUB>, Cl, NO<SUB>2</SUB>)<BR>Y : 4あるいは5位の置換基 (H, CH<SUB>3</SUB>,OCH<SUB>3</SUB>, Cl, NO<SUB>2</SUB>)<BR>同じオルト置換基を有するおのおののジアゾニウム塩の携合において自由エネルギーの直線関係が認められるが, しかし Hamnett の反応定数 (ρ) は置換基 (X) の種類により, かなり変化する。<BR>テトラゾ化置換ベンジジン (2) の場合の速度定数の比 (<I>k</I>1/<I>k</I>2)(<I>k</I>1,<I>k</I>2 はそれぞれ第1段, 第2段反応の速度定数) の相違は, この反応定数の変化のためと考えられる。