著者
武智 学 松永 剛 白石 淳也 徳田 伸二 飛田 健次
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.147-162, 2009-04-25
被引用文献数
1

トカマク型核融合炉の定常化にとって高ベータ化は必須である.この高ベータ化には最終的にはMHD不安定性の一種である"抵抗性壁モード"がボスキャラのごとく立ちはだかる.逆転磁場ピンチに至っては抵抗性壁モードによって寿命が決まってしまう.この十年,閉じ込め改善や加熱装置の進展により高ベータ化の敵,抵抗性壁モードとの実戦が始まった.この敵を駆逐する(安定化する)武器には"プラズマ回転"と"磁場のフィードバック制御"があるが,最近その戦いにちょっとしたどんでん返しがあった.その結構ドラマチックな戦歴を楽しんでもらうために,まずは敵を知ってもらい,これらの武器の説明をしよう.その領域は物理から工学までの広い分野にわたる.現在の戦況は混沌としているが,さらに,問題点や今後の戦い方について考える.さあ,抵抗性壁モードの世界へ,ようこそ.
著者
勝木 淳 高木 浩一 浪平 隆男
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.268-275, 2011-04-25
被引用文献数
12

パルスパワーは,宇宙,慣性核融合,超高エネルギー密度物性研究などの大型科学研究とともに発展してきた.最近では,小型化や高繰り返し化などの電源技術の飛躍的発展によって,光源,環境,医療,食品,農業など,身近なところで利用されつつある.パルスパワー技術入門の最終回となる今回は,パルスパワーの利用形態を述べ,いくつかの特徴的な応用を挙げその概略を述べる.
著者
Sarff John S.
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.84, no.11, pp.800-803, 2008-11-25

RFP核融合炉にとってOscillating Field Current Drive (OFCD)を用いたプラズマ電流の定常維持は魅力的なシナリオである.OFCDは磁力線のストカスティシティを生じ得る磁気的自己組織化に依存する方法なので,核融合炉に要求される高い閉じ込め性能を達成できるかどうかは,閉じ込めスケーリングが磁気乱流(磁場揺動振幅)に対して望ましい依存性をもつかどうかによるが,このスケーリングは現在のところ確実性に欠ける.本稿では,定常電流維持とは異なる,「ほとんど定常的」な核融合炉のシナリオについて述べる.このシナリオではプラズマ電流の駆動にOFCDを用いるが,電流の定常維持ではなく自己相似的な減衰を適用して自己組織化を最低限に抑制し,高い閉じ込め性能への近接性を確保する.核融合出力パワーはパルス的であるが,プラズマ電流が途切れることはない.
著者
北野 勝久 谷口 和成 酒井 道 高木 浩一 浪平 隆男 服部 邦彦
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.19-28, 2008-01-25
被引用文献数
6

近頃の大気圧プラズマ生成技術の進展により,比較的容易,そして安価にプラズマ生成実験が行えるようになってきている.少し前までは,大学の研究室レベルでの研究内容だったが,ハンディー型のプラズマ源が開発され高校の理科教育にまで用いられるなど,大気圧プラズマ研究の裾野は着実に広がりつつある.また,印加電圧波形の制御法に工夫を凝らして,大気圧下で非平衡な低温プラズマを生成する技術も多方面から開発されており,低温プラズマの特徴を生かして熱プラズマでは不可能な高分子表面処理などの研究も精力的に進められている.本章では,簡易に大気圧プラズマを生成できる実施例をいくつか紹介しますが,読者のみなさまに大気圧プラズマに興味を持っていただき,"大気圧プラズマを点けてみよう"と思っていただけると幸いです.
著者
柴田 一成
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.853-856, 2013-12-25

最近,太陽で起きている最大級のフレアの100〜1000倍ものエネルギーを放出するスーパーフレアという現象が,太陽とよく似た星で大量に発見された.現在の太陽の大フレアでも,人工衛星の故障や停電,通信障害など,現代文明に様々な被害を及ぼしているため,もしスーパーフレアが我々の太陽で起きれば,全地球規模の停電や通信障害など現代文明は大惨事になることが予想される.果たしてスーパーフレアは我々の太陽で起きるのか?起きるとすれば頻度はどれくらいか?また,スーパーフレアの発生メカニズムは何か?太陽フレアの磁気リコネクション・モデルに基づき,これらの謎の解明にせまる.
著者
永島 芳彦
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.12, pp.740-746, 2012-12-25

球状トカマクの改善閉じ込めプラズマにおける乱流輸送研究について,NSTXやMASTにおける最近の研究動向を紹介する.球状トカマクコアプラズマの熱輸送については,イオンの熱輸送は新古典輸送が支配的である一方,電子の熱輸送は異常輸送であり,その原因となる不安定モードの特定が急務である.数値計算による線形不安定モードの推定,温度や密度勾配・速度場などの平衡量とモードの不安定性の比較,乱流密度揺動の実測,と段階を踏んで研究が遂行された結果,異常輸送をもたらす不安定性として,電子温度勾配不安定性やマイクロテアリング不安定性が有力となった.
著者
藤本 正樹
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.872-875, 2013-12-25

太陽周辺の宇宙空間(太陽圏)は,太陽から吹き出すプラズマ流(太陽風)で満たされている.太陽系の惑星の中で固有磁場をもつものは,太陽風との相互作用により,その周辺に「磁気圏」と呼ばれる宇宙空間を形成している.その磁気圏内では様々なプラズマ・ガスのダイナミクスが発展するが,その究極の駆動源は太陽風磁場と惑星磁気圏磁場との磁気リコネクションであると考えられている.その重要性が故に,磁気リコネクションは磁気圏観測を実施する探査機において重要な観測ターゲットとなってきた.ここでは,その流れの中で,(1)比較的大きなリソースを活用することが可能な地球磁気圏観測衛星においては,磁気リコネクションのエンジン部分における電子スケール物理解像が次なる課題となっていること,(2)観測データ性能という意味ではレヴェルは落ちるものの,異なるパラメータ空間における磁気リコネクション物理の観測を可能にする惑星磁気圏観測から多くを学びつつあることを概観する.
著者
田中 学 渡辺 隆行 伊佐 太磨喜 西脇 英夫
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.492-496, 2006-08-25
被引用文献数
3

本稿では,最近の科学技術の進歩に合わせて新展開を見せるアーク放電を利用した溶接および溶射技術に関する最新動向について述べる.アーク溶接では,電極,アークプラズマ,および溶融金属をトータルシステムとして同時に解く数値解析シミュレーションを用いた複雑な溶融池形成現象を定量的に予測した計算例を紹介するとともに,パルスレーザ照射による光電効果を利用した溶接アーク作動中タングステン電極の実効仕事関数の測定についても紹介する.また,溶接や切断用の新しいエネルギー源として開発された可搬式スチームプラズマジェットを紹介し,作動ガスと熱陰極の冷却を同時に兼ね備えたスチームジェットの有効性を示すとともに鋼板の切断やフロンの廃棄物処理などその適用例も述べる.一方,溶射プロセスでは,対向2電極(ツインカソード型もしくはツインアノード型)プラス1電極から構成される新提案のトーチを採用することにより実現された小型・軽量の可搬式プラズマ溶射装置の開発について紹介する.小型化による消費電力の低減化および小型トラックへの装置搭載が可能になった利点とともに,現場での溶射施工の有効性を紹介する.
著者
平田 晃正 藤原 修
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.420-424, 2012-08-25
参考文献数
21

本章では,電磁波の基本的性質について述べた後,非電離放射線に焦点を絞り,電磁界の何が反応の刺激になるかを説明する.この際,電磁界にさらされると人体にはどういう反応が現れるかではなく,電磁界の何が反応の刺激になるかについて概説する.また,電磁界の人体影響と電波防護に関するガイドラインにおいて,数値ドシメトリが果たす役割について説明する.
著者
棚瀬 正和
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.73, no.7, pp.666-670, 1997-07-25
参考文献数
8

Tritium, a developmental fuel for use in fusion reactors, has been produced in fission research reactors in Japan by extraction from neutron-irradiated ^6Li-targets. This paper describes the preliminary design of a large-scale production facility capable of producing 500 g of tritium annually. The present status of tritium production technology in Japan is also discussed.
著者
西山 正吾
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.89-93, 2011-02-25

観測装置の発展に支えられ,20世紀末には宇宙論が精密科学へと成熟していった.今後も装置の進歩は止まらず,観測精度はますます高くなっていくだろう.しかしそれだけで,宇宙を"精密に"とらえられるようになるのだろうか.精密化の鍵をにぎるのは,星間空間にただよう宇宙塵である.天体からの光は星間塵によって減光される.紫外線から赤外線の波長にわたる観測では,特にこの影響が顕著である.近年の研究で,星間塵による減光がいかに"多様か"ということがわかってきた.本節では,星間減光の理解の変遷を,歴史的な経緯を含めて紹介したい.星間減光の多様性を理解すること,赤外線波長域での星間減光の観測を推し進めること,これらが今後,光赤外線天文学をより精密な科学とするために必要な要素である.
著者
冨田 幸博
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.288-289, 2007-03-25

重水素とヘリウム3燃料を用いた核融合炉では中性子の発生が少なく,壁材料の寿命や安全性の観点から魅力ある発電炉である.また,核融合反応生成物のほとんどが荷電粒子であり,これらはロケットの大きな推進力になる.ここでは,重水素とヘリウム3燃料による核融合発電炉の概念設計を参考にして,球状トーラス配位によるプラズマ閉じ込めを用いた核融合ロケットを紹介する.
著者
鈴木 哲 秋場 真人 齊藤 正克
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.699-706, 2006-10-25
被引用文献数
2

核融合装置炉内機器の中で最も高い熱負荷を受けるダイバータについて,必要となる機能やその機能を満たすために要求される条件および構造上の特徴や設計の考え方などを,主として国際熱核融合実験炉ITERを例にとって熱・構造工学的な視点から解説するとともに,核融合原型炉ダイバータへの展望についても述べる.
著者
福山 淳 矢木 雅敏
出版者
社団法人プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.747-754, 2005-10-25
被引用文献数
1 6

The purpose and recent progress of the Burning Plasma Simulation Initiative (BPSI) are discussed. Simulation of burning plasmas requires integrated modeling of various physics phenomena with wide-ranging spatial and time scales. The activities of the BPSI are of three types: development of the framework for integrated simulation codes, development of integrated modeling of multi-scale physics, and implementation of distributed parallel processing. Similar activities have been reported in the United States and the European Union. Features of the integrated transport code, TASK, being developed as a reference code for BPSI, are also described. Finally, a summary is given and future issues are discussed.