著者
出口 弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.122-132, 2014-04-01

本稿では日本の漫画を広く絵物語のコンテクストの中で位置づけ,その文化史的な意義と可能性を明らかにする。日本の絵巻や浮世絵,絵草紙,漫画などの諸コンテンツは社会階級に依存せず創作され,また複製や二次創作を積極的に是認する文化を持つ。これは欧州型の,オリジナル作品にオーラがあるとみなし二次創作を是認せず,権威による作品の評価を基軸とするアートの文化とは大きく異なる。本稿では,絵物語の歴史を概観しながら,あらゆる社会の場から表出され,異なる立ち位置の人々の世界観を混淆循環させる力と多様性を持つメディアとしての絵物語空間に着目する。その上で,漫画の様な絵物語を日本のサブカルチャーではなくメインカルチャーとして位置づけその可能性を論じる。
著者
佐渡島 紗織
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.22-28, 2014

本稿の目的は,アカデミック・ライティング教育において情報リテラシーに関する問題はどのような点にあるかを検討し,今後,求められる指導の方向を示すことである。国語科教科書や小論文演習教材などをみると,日本の小・中・高・大学と受験塾では,情報を自分の文章にどのように取り込むかの,十分な指導,一貫した指導がなされていないことがわかる。引用・参考文献明記の学習を通して,《情報を再定義させる》学習をさせることが必要である。それによって,多様な立場・意見を検討した上で自身の立場を確立し,明確な意見を発信できる学生を育成したい。
著者
井田 浩之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.8-14, 2014-01-01

本稿では,学習者の知識創造を可能にする情報リテラシーの条件として,(1)学習者の情報リテラシー能力を向上させるための「問い」を共有するプラットフォームの必要性,(2)情報リテラシーのスキル的側面を考えたときに,「脱文脈」化されたスキルに意味があるのか,換言すれば,学習者にとっての情報リテラシー能力とは知識創造に結びついていること,(3)学習者の情報探索行動のメカニズムが解明されていない中,情報行動に制約をかける取り組みへの疑問を呈する。今後情報リテラシー教育を図書館側が牽引するには,カリキュラム,教育内容,その評価方法を含め,学習者の視点で一からデザインすることが求められていることを指摘する。
著者
山地 一禎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.54-59, 2014-02-01

大学や研究機関では,多くのオープンソースソフトウェアが公開されている。その多くは,個人やチームで利用するものを単に公開しているにとどまり,大きなコミュニティにまで発展している例は数少ない。あるいは,日本の学術関係者が海外のオープンソースソフトウェアの開発に積極的に関与している例も多くない。諸外国に比べ日本では,オープンソースソフトウェアに対する理解や活動が低いのが現状である。本稿では,学術機関においてオープンソースソフトウェアを開発・活用する意義を概説するとともに,これまでに開発してきたリポジトリソフトウエアWEKOの開発事例を紹介する。さらに,筆者が関係しているオープンソースコミュニティの活動状況や,その背景にある政治的な側面についても言及する。
著者
高久 雅生
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.48-53, 2014-02-01

15年間にわたるオープンソース運動を振り返りながら,図書館サービスとの接点,オープンソースソフトウェアの利用事例を紹介する。図書館サービスにおけるオープンソースソフトウェアの例として,図書館管理システム,機関リポジトリ,次世代OPACといつた分野を取り上げ,国内及び海外の事例を紹介する。近年の図書館サービスの文脈におけるオープンソースソフトウェアの課題として,クラウドコンピューティングの進展やオープンデータ,人材育成などの観点から考察し,今後の課題を述べる。
著者
仲本 秀四郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.161-168, 1981-04-01
被引用文献数
1

情報の挙動を計量化し,数学的に取扱うことによって,その現象や特性を記述しようとする計量情報学の理論と実際の両面にわたる活動を要約して紹介する。60年にわたる歩みを概説した後,測度,諸概念ならびに法則性をのべ,それぞれの内容を明確にした。図書館や情報管理に応用できるばかりでなく、科学や科学者の研究にも適用した例をあげ,批判にも言及した。データベース化と電算機解析が,この分野の発展の重要な手段となり,情報学での重要な領域となることが期待されている。
著者
越智 泰子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.254-259, 2004-05-01
被引用文献数
1

特許検索で困ったときや,スキルアップのためには,ヒューマンネットワークから得られる情報も欠かせません。特許検索に関する情報交換ができる各団体にアンケートをお願いし,連絡先や活動状況などをまとめました。形式の統一を除き,各団体からのアンケート結果をそのまま掲載しています。アンケートに御協力いただきました各団体の皆様,誠にありがとうございました。なお読者の皆様にお願いですが,運営方法や代表者及び事務局の役割は各団体により異なり,組織的運営が行われている団体もボランティア運営が行われている団体もありますので,問い合わせ等の際は御配慮くださいますようお願いいたします。
著者
竹之内 禎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.505-510, 2013-12-01

本稿では,基礎情報学の観点から,図書館・情報サービスの一環としての情報発信において,留意すべき情報倫理の問題として,4つの点について論じた。第一に,情報の受け手は「心」であり,心は「自律的システム」であるため,同じ情報(刺激)を受け取っても,一人ひとりの心に形成される意味内容は異なっている。第二に,高齢者,障害者などの利用に配慮した「情報のユニバーサルデザイン」への配慮が必要である。第三に,情報発信の内容に含まれる人格への配慮が必要である。第四に,歴史研究,科学研究における定説と異説の存在を考慮することが必要である。
著者
橋元 良明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.12, pp.480-485, 2013-12-01

インターネットは,1)それまでのメディアでやりとりされたすべての情報種を受発信でき,受信情報の編集・保存も容易であること,2)ほとんどの地域で国家等の「制度」の制約を受けないこと,3)情報の発信に大きな資本力を必要とせず,対価なしで多くの情報を受容できること,等の点で画期的なメディアである。橋元研究室で継続的に実施している「日本人の情報行動調査」によれば,2012年には,10代においてネット利用時間がテレビ視聴時間を上回った。ネットの普及により情報の受容という側面では,コミュニケーション系情報の受容量が増え,それによって個々人の「主観的現実」の多様化・個性化が進行した。また,関心領域の狭小化などの現象も進みつつある。一方で,若年層の文字情報の受容量はむしろ他の年層より多くなっている。情報の発信という側面では,誰もが自分の作品や意見を発信でき,音楽や文芸の世界でも変化の兆しがある。しかし,CGMはアクセス数やリンク数が評価の基準になることが多く,既存のメディア経由のものと比べ,質的な面では不安定である。