著者
戸邉 俊哉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.403-408, 2013-10-01

近年様々な種類のフリーペーパーが発行されている中で,その転換点となったのは1970年代に新聞社によって発行されたフリーペーパーだとされる。本稿では,なぜ新聞社系フリーペーパーが発行され読者に受容されていったのかを,新聞社の収入構造における広告の位置という経済的要因,フリーペーパーの発行地域である都市郊外の新たな住宅地に住む家族のネットワークという社会的状況から考察した。また,この経済的・社会的要因を架橋するものとして,新聞社系フリーペーパーから生まれ出た「信頼」に関する独自の機制について言及した。特に,新聞社系フリーペーパーにおいて記事体広告が信頼の創出の一翼を担っていたことを,新聞記事と広告の関係を通じて指摘した。
著者
佐藤 義則
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.377-384, 2013-09-01

e-サイエンスあるいはe-リサーチといったデータ集約型の研究がますます広範囲に広がり,重要性を増す中で,データの共有や再利用を前提とした研究データ公開への要求が強まりつつある。研究データサービスとは,こうしたデータ公開を前提に,大学図書館がデータのライフサイクル全般にわたって一連の支援を提供するものである。本稿では,研究データ公開の論拠,資金提供機関による研究データ公開の義務化,問題点について整理したうえで,研究データサービスの現状と今後の課題について検討を行なった。
著者
大石 雅寿
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.363-368, 2013-09-01

半導体技術やネットワーク技術の進展は,世界に分散する大規模データを活用するタイプの天文学という新しい研究パラダイムを生みつつある。ヴァーチャル天文台は,世界の関連するプロジェクトが合同で標準プロトコルを定め,大量のデータを活用する天文学研究を加速できることを示した。一方,将来の天文学において爆発するデータ生産率はテラビット毎秒を越える可能性があり,ペタフロップスクラスのスーパーコンピュータを用いた大規模データ処理が必要となると予想されている。さらには人手を介さない機械学習など情報学や統計科学との連携が非常に重要になってくると考えられる。
著者
スティーン 智子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.358-362, 2013-09-01

1999年の,英国科学技術省のJohn Taylor所長の提唱以来,e-Scienceのアプローチが,色んな科学分野で,使われているという事が確認され,科学の方向性がさらに変わって来た。情報科学分野の方でもそれに見合う対応性が望まれる様になったので,アメリカでは,政府機関,大学,民間企業それぞれに,新しい動きが出て来ている。この論文では,いろんな例を上げて,e-Science時代に情報を提供するアーカイブズや図書館,さらに情報専門家に期待される施設や知識,さらに将来の展望なども,検討してみる。e-Scienceは,国境のない科学で,求められる情報も多言語で供給しなくてはならない。
著者
倉田 正也
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.155-161, 1984-04-01

情報解析という業務に携ることになり,いろいろ戸惑うこと,悟ることがあった。まだ1年にならないが,第一印象的な事柄や,試行錯誤的に得て来た教訓を披露した。-何を覚えるのか-情報解析のたのしみ-化学の特殊性,化学特許の特殊性-情報解析専門家の存在理由-チームワークの心得
著者
稲木 美由紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.222-227, 2011-06-01

神奈川県立川崎図書館は「科学と産業の情報ライブラリー」という愛称を持ち,理工学関係の専門書,専門誌を多く所蔵している公共図書館として知られている。当館は1958年の開館以来,特許公報等を利用者に提供し続けているが,現在では知的財産権分野に関しては,文献提供のみならず,セミナーや相談事業を行う等の独自のビジネス支援サービスを展開している。公共図書館がそのようなサービスを利用者に提供し続けるには,他機関との連携が欠かせない。そのサービスの歴史や国の知財に関する施策との関係に触れつつ,どのような機関と連携して,どのようなサービスを行っているのかを具体的に紹介する。
著者
臼井 裕一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.298-303, 2013-07-01

日本において特許分類の付与は具体的にどのようになされているのか,また審査室の担当技術との関係はどのようになっているのかについて説明し,FIとIPCとのコンコーダンスの不備によってヒット件数0件のIPCが生じていることを示した。また,IPCの方がFIよりも細分化されている実例についても例示した。このような分類付与の問題点に対しては,やはりFI・Fタームを中心に検索すべきである旨指摘し,あわせてFI・Fタームのメインテナンスが適切になされているかについても触れた。なお,現在進行中のIPC細分化のCHCプロジェクトの進展も含めて今後の動向を注視する必要がある。
著者
酒井 美里
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.292-297, 2013-07-01

2013年1月より,欧州と米国との共通特許分類,CPC(Cooperative Patent Classification)が発足している。従来,米国特許庁は独自性の高い米国特許分類(USPC)を長く利用してきた。今回,共通特許分類の発足に伴い,米国特許庁は国際特許分類(IPC)の流れを汲む分類体系に歩み寄った,と捉えることもできよう。欧州/米国の二庁間では重複作業の排除と情報共有が期待されている,といわれる。また一般ユーザーにとっては分類体系の理解,調査分類の決定などの面で,負担軽減のメリットがあると考えられる。本稿ではCPC分類に至る流れや,分類体系の概要を概説した上で,Espacenet,USPTOにおける検索方法と留意点について概説する。
著者
上野 京子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.288-291, 2013-07-01

2013年1月に発効した共通特許分類CPCが今後の特許調査に大きな影響を与えることは必至である。STNには多くの特許データベースが搭載されており,特許分類を利用した検索をより正確に実施するには,各データベースのCPC収録状況やSTNでの特許分類の検索・表示に関する知識が不可欠である.本稿では,STNにおけるCPCへの対応をまとめて解説し,また特許分類を検索に利用する上での注意点も合わせて紹介した。
著者
野崎 篤志
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.282-287, 2013-07-01

2013年1月1日より新しい特許分類である欧米共同特許分類CPCが発効された。欧州特許分類ECLA・ICOをベースとしたCPCについて,導入の背景・概要およびその詳細について述べる。欧州特許庁・米国特許商標局審査官のみならず特許情報ユーザーである企業としても,CPC導入により特許調査の効率化が図れる側面がありながらも,ユーザーの立場から見ると付与体系・付与精度やタイムラグについて詳細が明らかになっていない点も多く,当面はIPC・USPCやFI・Fタームなどの特許分類およびキーワードと併用しながら検索・調査を行うことが望ましい。
著者
太田 良隆
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.277-281, 2013-07-01

日米欧中韓の五大特許庁は,特許分類に関する取組として共通ハイブリッド分類(CHC)プロジェクトを実施してきた。本プロジェクトは,各庁の既存の内部分類(JPOのFI・Fターム,EPO・USPTOのCPC)を調和するものであり,国際特許分類(IPC)を迅速に詳細化することが期待され,日本国特許庁としてもその推進のために多くの労力を費やしてきたが,その進捗は芳しいとは言えない。そして,最近,五庁は,このCHCプロジェクトに代えて,新たな枠組みによってIPCの詳細化を図っていこうとしている。本稿では,CHCプロジェクトの現状およびその行く末について説明する。
著者
都築 泉
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.270-276, 2013-07-01

多数の特許出願を審査・調査するために,特許分類は必須である。世界共通の特許分類として国際特許分類(International Patent Classification;IPC)が,また,日本のFI(ファイルインデックス;File Index),Fターム(File Forming Term)をはじめ,各国特許庁独自の分類も長年にわたり利用されてきた。しかし,経済のグローバル化,技術の発展に伴い,IPCにも限界があることから,米国・欧州の両特許庁での共通分類としてCPC特許分類(Cooperative Patent Classification)の運用が開始され,また,日本,中国,韓国を加えた五大特許庁でのCHC特許分類(Common Hybrid Classification)プロジェクトが推進されているが,政治的な思惑もあり,行き詰まりも指摘されている。これら特許分類の歴史・経緯・現状と課題を概説する。