著者
井上 能行
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.21-26, 2015-01-01

東日本大震災から4年近くが経つ。岩手,宮城の津波被災地では復興が進む一方,福島第一原発事故を抱える福島県では未だに12万人を超える人が避難を余儀なくされている。福島県内では政治不信,科学者不信に加えて,マスコミへの不信感も強い。不信の理由は,福島県の現状が伝わっていない,というものだ。象徴的な出来事がマンガ「美味しんぼ」騒動だ。作者の意図はどうであれ,マスコミが大騒ぎし,残ったのは風評被害だけだった。マスコミが伝えていることと,住民が伝えてほしいと考えることのギャップはどこから生まれるのか。解消法はないのか。福島市に住んでいる記者の視点から考察する。
著者
高山 正也
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.178-182, 2005-04-01

情報プロフェッショナルになるには, 検索系情報サービスの専門資格としての司書や学芸員は有利な立場にあると言える。しかし日本の現状ではそこにいくつかの問題点がある。すなわち司書や学芸員に加えて, アーキビストの世界は不可欠であるが, この分野の専門資格がない。また現状の資格のレベルでは, 時代の要求する能力レベルには達していない。このためには自己開発の場としての専門職大学院の活用が考えられるが, 自己責任で専門職大学院で自己開発を行うためのビジネスモデルの開発が不可欠である。
著者
芝 忠
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.281-290, 1982-06-01
被引用文献数
1

神奈川県は1982年4月から横浜市金沢区にある工業試験所敷地内に県立技術情報センターを開設する。施設は3階建て,1,420?の広さで技術相談・図書閲覧・情報交流・情報検索等の諸機能をもち,工業試験所全組織の支援をうけ,県内中小企業や技術者,一般県民のため,役立つ技術情報を収集・加工・提供しようとするものである。本施設で展開される主要事業は,(1)文献・人材・特許情報の提供,(2)各種の技術相談,(3)フォーラム活動による情報交流の促進,(4)産・学・行政の連携と各種情報団体・商工団体等との密接な情報交流ネットワークづくり,である。
著者
立石 亜紀子 餌取 直子 庄司 三千子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.9, pp.379-385, 2015-09-01

千葉大学・お茶の水女子大学・横浜国立大学の三大学連携プロジェクトの一環として,2015年4月〜9月にかけて実施中の電子書籍PDA実験について報告する。三大学は規模や大学の特徴が異なり,選書方針,電子書籍の収集状況,蔵書構築における課題などにも違いがみられる。一方で,和書の電子書籍購入を促進したいという共通の課題があり,丸善(株)の協力のもと,連携事業として実験に取り組むことになった。2015年5月末時点で,電子書籍に対するニーズの把握,利用促進効果などの成果が得られた。今後の課題としては,購読決定の条件について,提供側と図書館側の両者が納得できる適切な条件の設定が挙げられた。
著者
船守 美穂
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.6, pp.258-263, 2015-06-01

大規模公開オンライン講座(MOOC)は2012年に米国のエリート大学を中心に生み出され,世界的に一世を風靡した。この動きは,cMOOC,反転授業,パーソナライズド学習,ラーニング・アナリティクス,高等教育のアンバンドリングなど,デジタル時代の新たな学習方法にスポットライトを当てていったが,これは振り返ってみると,これまでの計算機やインターネットの発達とともに幾たびとなく取り上げられては,消え入っていた取り組みであった。しかし時代の進行とともに,これら取り組みは実質度を増し,着実に社会に定着している。本稿では,MOOCを軸に,これらデジタル時代における大学教育の学習形態等について紹介し,近未来の大学教育像を提示する。
著者
後藤 嘉宏
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.519-525, 2007-11-01
被引用文献数
1

本稿では国立国会図書館の納本制度を考え,その際,初代副館長の中井正一(1900-1952)の思想を手がかりにした。中井は納本制度と表裏一体の関係にある支部図書館制度の産みの親の一人ともされる。中井の「機能概念の美学への寄与」(1930)での「機能概念」,「委員会の論理」(1936)での「印刷される論理」,『美学入門』(1951)での映画のカットの議論(「コプラの不在」)を紹介し,それらと彼の図書館思想との関係を考察した。その上で彼の描く支部図書館制度は,それを通じての納入の仕組みとは異なるということを,彼の商品としての本(書籍)に対する二律背反的な態度を踏まえつつ考察した。さらに納入物として望ましいものと情報アクセスの射程として望ましいものとの区別を考えていく必要性があると指摘した。
著者
手塚 敏廣
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.690-700, 1993-08-01

特許を代表とする知的財産に関する最近の状況変化はめまぐるしく,その管理部門の強化などが叫ばれる中,特許情報などの情報を企業活動に如何に有効的,効率的に活用していくかが問われている。パテント・クリアランスと言った総合的特許管理体制の中で知的財産情報としての特許情報というものの本質を十分に理解し,その戦略的活用として研究開発,営業活動,ひいては経営戦略などの状況に応じた情報の提供と評価,判断が必要となってきており,場面,状況に応じて要求される特許情報とは何か,どのようにして実際に活用しているのか,などを述べるとともに,特許情報以外の知的財産情報や企業秘密との関係についても述べている。
著者
田淵 利明
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.29, no.6, pp.221-227, 1979-06-01

富士写真フイルムの科学技術情報処理システムは,主として三つの検索システムからなる。第一は,画像工学とその周辺技術分野の学術論文や特許文献を抄録し,国際十進分類法で分類するシステムで,洩れの少ない,かつ網羅的調査に適している。第二は,画像工学分野の特許文献をディスクリプタ(descriptor)により索引化するシステムで,狭い範囲の概念について,ノイズの少ない効率的検索をすることができる。第三は,二次資料利用システムで,抄録誌を利用目的に合わせて加工・編集したものである。これは画像工学以外の広範な科学技術分野の調査に利用価値が高い。これら三つのシステムを,研究者・技術者と情報処理担当者が一体となった調査システムによって利用し,効率的な検索を行っている。
著者
林 和弘
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.496-500, 2014-12-01

計量書誌学は,学術ジャーナルを中心として発展し,引用をベースにしたネットワーク解析は,現在学術・科学技術研究のインパクトを測る上でもっとも信頼性が高い手法となった。Webの情報流通基盤が整うことで,計量書誌学は,短期的にはデータベースの連携やリンクを中心としたインパクト分析が進む。一方,長期的には研究成果の公開の在り方そのものの変化に応じた手法が開発され,科学計量学の再構成が行われ,研究活動計量学と呼べるものに発展する可能性がある。変動期にある学術情報流通基盤を踏まえ,短期的,長期的展望を能動的に持った上で,短いサイクルで行う実践と評価の繰り返しと新しい計量に対するコンセンサスの形成が求められる。
著者
南崎 紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.270-275, 2011-07-01

新事業や新製品の開発現場では,知財部門との協働・連携は欠かせない。開発の初期から上市に至るまでの各段階で,各種の情報調査,出願・権利化,障害特許対応などの知財アクション,知的財産戦略の策定など様々な知財機能が関わってくる。事業サイドで新事業・新製品開発を担当する部門から知財機能に期待することは,高品質な実務に加えて,情報分析やアドバイス,提言といった戦略策定に関わる支援機能である。本稿では,情報部門から,事業部門に異動して,異なった視座から見た知財機能への期待を,特に情報調査機能を中心に述べる。
著者
南山 宏之
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.177-186, 1996-04-01

プレゼンテーションは,受け手が自らの力で「発見」「創作」できる状況を意図的,計画的に送り手が仕掛けることである。プレゼンテーションのポイントは,伝えたい「概念(concept)」「信念(belief)」を,プライマリー・オリジネーションとして創作するその在り方にある。プレゼンテーションの基本フレームは, E.H.エリクソンのアイデンティティ・モデルで説明できる。我々は,「認識スキーマ」「記号とメタファー」「プレゼンツルギー」といった技術を現実世界の経験として磨く必要がある。時代環境変化の中で, 日本固有のプレゼンテーション法の研究教育体系の開発と実現が期待されている。
著者
住 太陽
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.72-77, 2004-02-01

インターネット検索エンジン業界の勢力地図について解説する。検索エンジン市場の,検索プロバイダ,ディレクトリプロバイダ,広告ブロバイダ,ポータルサイトの4者のプレーヤーの業務提携や企業買収,検索技術の開発などの話題について述べる。
著者
吉田 新一郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 = The journal of Information Science and Technology Association (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.414-419, 2014

・そもそも個人的な活動である読書体験を共有することに,どのような「意識/メリット/効果」があるのか? ・ブッククラブは,実際どのように運営されているのか? 上記2点に絞って,その理論的な裏づけなども交えながら,ブッククラブという楽しく,かつ人とつながることで得られる読み/学びの広がりと深さを紹介する。
著者
時実 象一
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.435-441, 2014-10-01

この記事は,ここ数年のオープンアクセスの動向について詳述するもので,前後編に分かれる。この後編では,PLOS ONEの成功によってもたらされた,新しいオープンアクセス・ビジネスについて,PLOS ONE型メガジャーナル,カスケード型雑誌の2種類について,実例を挙げて解説した。また,人文・社会科学分野のオープンアクセス雑誌,学位論文のオープンアクセスの動きについて述べた。最後に,最近進みつつあるデータのオープンアクセスとそのリポジトリについて述べた。
著者
渡邊 由紀子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.265-270, 2005-06-01

電子ジャーナルの導入が, 図書館の利用者サービスと管理業務にどのような影響を与えたかについて, 九州大学の事例を報告する。まず, 電子ジャーナル導入の経緯について振り返る。次に, 利用支援のためのワーキンググループ体制, ナビゲーションのためのOPACやリンク集, 新しく導入した管理ツールやリンクリゾルバー等について紹介する。続いて, 電子ジャーナルの利用動向を, ILL依頼件数やフルテキストのダウンロード件数をもとに概観する。最後に, 雑誌管理業務の変化とその変化に対応するための事務組織再編等の取り組みについて述べる。
著者
福田 都代
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.486-491, 2008-10-01
被引用文献数
1

日本の図書館は大半が親組織からの財源に依存している。しかし,近年の経済状況の悪化は資料費や人件費を含む図書館の予算削減を招いている。予算削減への対策として,代替的な財源を外部に求める図書館はまだ少ないが,多様なサービスを提供するために,追加財源の確保は重要な課題である。アメリカの図書館は図書館友の会組織や図書館財団などを通じて,個人や財団からの資金を調達してきた。インターネットを使ったネット募金方式が導入された1990年代以降,図書館の資金調達活動はますます活発になりつつある。本稿では図書館における様々な資金調達方法を提示し,積極的に資金調達活動を実践しているアメリカ図書館界の動向を概説し,日本の図書館における資金調達の可能性を考察する。