著者
金子 茂男 水永 光博 宮田 昌伸 八竹 直 栗田 孝 Bradley William E.
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.1889-1895, 1990
被引用文献数
6

勃起不全の精査のために受診した105名の患者について基礎疾患と Rigiscan による夜間陰茎硬度腫脹連続測定所見との関係について検討した. 夜間陰茎硬度腫脹連続測定所見 (以後 Rigiscan パターン) を正常, 硬度不均一, 硬度腫脹不一致, (硬度持続) 短時間, 低硬度, 平低の6型に分類した. 患者の基礎疾患は基礎疾患なし11名, 中枢神経系疾患15名, 循環器系疾患29名, 糖尿病35名 (インスリン依存14名, 非依存21名), アルコール依存5名, 悪性腫瘍7名, Peyronie 病3名であった. 基礎疾患なし群では Rigiscan パターン正常64%であり, 心因性勃起不全と考えられる症例が過半数を占めた. 循環器系疾患群では低硬度型41%, 平低型35%と硬度・腫脹が低下した症例が多いのにたいし, 中枢神経系疾患群では短時間型が60%と最も多く, 低硬度型47%, 平低型7名であり, 両者間に Rigiscan パターンの違いを認めた. 糖尿病群ではインスリン非依存患者がさまざまな Rigiscan パターンをとるのにたいし, インスリン依存患者では低硬度型, 平低型が多かった. 夜間陰茎硬度腹脹連続測定法はそのパターンの解析と他の検査結果との総合的な判定により, 器質性勃起不全と心因性勃起不全の鑑別診断のみならず器質性勃起不全の原因疾患の診断にも役立つことが期待される.
著者
高橋 正幸 木村 和哲 奈路田 拓史 松下 和弘 宮本 忠幸 川西 泰夫 沼田 明 湯浅 誠 田村 雅人 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1563-1568, 1995-10-20
被引用文献数
1

(背景と目的) 夜間陰茎勃起現象の記録は勃起機能検査法として早くから行われてきた検査であるが, 現在でもその.重要惟、は変っていない.特に器質性インポテンスと心因性インポテンスの鑑別には必須の検査であり, 陰茎周径を測定するため活性炭や水銀を用いたストレインゲージが使用されてきた. (対象と方法) われわれは今回, 水銀ストレインゲージにかわるインジウムとガリウムの合金製のストレインゲージを使用した新しい装置を開発しこのストレインゲージを用いた新しい夜間陰茎勃起現象記録システムが臨床に使用可能かどうかを正常ボランティアを対象に検討した. (結果) インジウム-ガリウムストレインゲージは, 伸展-抵抗の特性が直線的でしかも再現性が高く夜間陰茎勃起現象の記録に充分な性能を有していた.測定データの保存, グラフ化のためのソフトウェアは簡潔で, しかもすべて日本語表示であるため操作が容易である.またこの新しいストレインゲージはディスポーザブルなのでメインテナンスが不要であり, 清潔である. (結論) 本システムは夜間陰茎勃起現象の記録の目的で臨床使用が可能であると考えられる.
著者
河内 明宏 渡辺 泱 中川 修一 三好 邦雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.1811-1820, 1993-10-20
被引用文献数
1 7

一般の小学生と幼稚園児2,033名を対象として,正常児および夜尿児の膀胱容量,夜間尿量と夜尿を含む夜間の排尿行動を,質問紙法により調査した.正常児の朝,昼の膀胱容量と夜間尿量は,年齢との間で直線回帰式にて表せる,有意な相関関係を示した.また体の成長との関係においては,身長,体重および体表面積の3者の内で,体重との間で最も良い相関関係を示した.夜間尿意覚醒時の膀胱容量と朝,昼の膀胱容量を比較すると,朝の膀胱容量が夜間の膀胱容量に近い値を示し,夜尿を論じる際の膀胱容量は朝起床時の膀胱容量を重視すべきであると思われた.夜尿児の朝の膀胱容量は,正常児と比較して,6歳までは小さいが,7歳以上では逆に大きいと考えられた.正常児の間でも10〜15%に夜間多尿であると思われる児童が存在し,これらは覚醒機能が正常で,夜間尿意覚醒するために夜尿とならないと考えられた.夜尿児の頻度は全体で14%であり,9歳までは男が多かったが,10歳以上ではほぼ同じ頻度であった.過去に夜尿があった児童の調査結果より,夜尿の平均自然消失年齢は7.3歳であり,このことより8歳以降持続する夜尿は積極的治療の対象になると考えられた.
著者
関戸 哲利 樋之津 史郎 河合 弘二 赤座 英之 小磯 謙吉
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.1177-1180, 1995-06-20
被引用文献数
3 1

患者は68歳女性で13年前に広汎子宮摘出術と放射線治療を施行された.1992年と1993年に腹膜炎で入院し, 2回目の入院時の腹水の生化学所見が尿の組成に近かったため尿路系からの溢流を疑われ泌尿器科を受診した.IVP上, 上部尿路に異常はなく, 膀胱造影, 膀胱鏡上も明らかな膀胱破裂は認められなかったが, 尿流動態検査上, 多量の残尿と尿意の異常, 低コンプライアンスが認められた.これらの結果から, 広汎子宮摘出術による神経因性膀胱と放射線照射による膀胱障害を基盤とした自然膀胱破裂が腹膜炎の原因として強く疑われた.
著者
馬場 志郎 大東 貴志 橘 政昭 出口 修宏 実川 正道 畠 亮 田崎 寛
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1916-1923, 1991-12-20
被引用文献数
10 2

経尿道式前立腺温熱治療器"ブロスタトロン"を用いて31例の前立腺肥大症症例に高温度治療法を試み,自覚的症状,他覚的所見の変化を検討しその効果を判定した。経尿道的に尿道前立腺部に挿入する22Fの治療用バルーンカテーテルはマイクロウエーブアンテナと冷却潅流回路を備えており,高出力で前立腺内部を安全に加熱できる。尿道内最高治療温度は43.3〜45.5℃(44.7±0.96℃:mean±S.D.)で平均出力は27.4Wattであった。治療時間は単回,1時 間ですべて外来通院で行った。1例には治療後尿閉が改善せずTURPを行い切除標本を組織学的に観察した。尿道粘膜はよく保存されているわりに前立腺組織内には,間質の壊死性変化のみならず腺管腔内に脱落した萎縮腺上皮細胞も観察され,プロスタトロンによる温熱効果が組織学的に証明された。のこりの30例の効果判定は自覚的症状,残尿量ならびに最大尿流量率を点数で表し治療後8週目で治療前の点数と比較した。自覚的症状,他覚的所見の両方とも点数の改善が認められたのは13例(43.3%),他覚的所見に改善がみられず自覚的症状のみが改善されたものが14例,自覚的症状scoreが不変で他覚的所見scoreが改善されたもの2例,これらの症例を合計すると29例(96.7%)になんらかの改善が認められた。総合scoreで,25%以上scoreが減少したものを『有効』,24%未満10%以上を『やや有効』とすると有効率は各々53.3%,37%であった。
著者
金子 立 宮崎 一興
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.1479-1488, 1993
被引用文献数
4 2

射精不能者に対して, さまざまな人工的精液採取法が行われているが, Brindley 法とパルス電流を用いるように改良した Seager 改良法による電気射精を, 脊髄損傷40例, 直腸癌根治術後の射精不能例1例に対して行い, その有用性を検討した. Seager 改良法では, 刺激に際して患者に与える電気エネルギーを減じるため, 正弦交流にかえ両極性のパルス電流を用いた. Brindley 法では18例中11例から精子を回収し, Seager 改良法では29例中24例から精子を回収した. 直腸癌根治術後の射精不能例1例も Seager 改良法により精子を回収することができた.<br>電気射精の副作用としては, 自律神経過反射と疼痛がみられた. 自律神経過反射は, 刺激の中止により速やかに消失し, この点でネオスチグミンのくも膜下腔注入法より安全な方法と考えられた.<br>脊髄損傷例の精液所見では, 受傷後経過期間とともに回収できた総精子数は減少する傾向がみられ, 運動率は慢性期のみならず, 受傷後1ヵ月以内の急性期の症例においても低下がみられた. したがって, 脊髄損傷における精巣, 精巣上体等の障害はかなり早期からおこる可能性が示唆された.
著者
池田 大助 福田 護 高島 博 布施 春樹 平野 章治 増田 信二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.94, no.1, pp.29-32, 2003-01-20
被引用文献数
1

病理組織所見が腎結核に極めて似ているが,実際は結核感染症ではない「偽結核性腎盂腎炎」症例を報告する.症例は56歳女性で,主訴は左側腹部痛であった.左さんご状結石に腎膿瘍が形成され,それが後腹膜腔に進展したものと診断された.術前の尿培養では,抗酸菌を含むいかなる細菌も検出されなかった.左腎摘除術が施行された.摘出腎には,乾酪性壊死や類上皮細胞からなる結核結節が認められ,腎結核を示唆する所見であったが,腎病巣および術野で得られた膿を検体とした諸検査では,抗酸菌の存在を証明できなかった.以上の所見より,本症例は偽結核性腎盂腎炎に腎膿瘍が合併したものと診断された.近年本疾患についての報告が散見されるが,十分に認知されているとは言い難い.不必要な抗結核療法を回避するためにも,本疾患についての十分な認識が必要である.
著者
郷司 和男 前田 浩志 藤沢 正人 守殿 貞夫 原田 益善
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.297-301, 1988-02-20

第5腰椎以下の中部および下部尿管結石(以下,原発性中・下部尿管結石と呼ぶ)10例と腎あるいは上部尿管結石に対しextracorporeal shock wave lithotripsy(ESWL)施行後比較的大きな破砕片が仙腸関節部以下に存在する下部尿管結石(以下続発性下部尿管結石と呼ぶ)5例にESWLを施行し,その有用性を検討した.治療中の体位は通常の腎および上部尿管結石の場合と異なり,患者の背にくさび状の枕を挿入し垂直座位をとらせ,衝撃波が骨盤底を通って結石に直接到達するようにした.麻酔は多くの例でL_1〜L_2間の硬膜外麻酔と仙骨麻酔を併用した.4例において,結石の確認を容易にし治療効果を高めるため尿管カテーテルあるいは尿管バルーンカテーテルを留置した.しかし殆どの症例は補助的手段なしに治療を施行した.原発性中・下部尿管結石10例すべてに完全排石がみられた.続発性下部尿管結石5例中4例(80%)に完全排石がみられ残り1例は外来にて経過観察中である.いずれも重篤な副作用を認めていない.本法は腎および上部尿管結石ばかりか中部および下部尿管結石の治療法として有用であることが示唆された.それゆえ少なくとも2回のESWLを施行しその不成功例にTransurethral ureterolithotripsy(TUL)および観血的手術等を施行するのが望ましいと思われた.