著者
鈴木 和雄 高士 宗久 小幡 浩司 深津 英捷 大串 典雅 置塩 則彦 栃木 宏水 酒井 俊助 篠田 正幸 牛山 知己
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.96-102, 1990
被引用文献数
3

1980年から1986年の7年間に東海地方会泌尿器腫瘍登録に登録された膀胱腫瘍2,304例について主に治療成績を中心に検討を行った.<br>膀胱腫瘍全体の5年相対 (実測) 生存率は73.8% (61.9%) であった. 深達度別ではTa; 101.9% (88.0%), T1; 87.6% (75.3%), T2; 57.9% (47.8%), T3; 33.7% (28.2%), T4; 6.1% (5.0%) であった. 組織型・異型度別ではG1; 93.7% (78.8%), G2; 87.2% (74.1%), G3; 47.3% (38.9%) となり, 移行上皮癌以外の膀胱悪性腫瘍は48.9% (42.4%), 複数組織型の混在した腫瘍は48.8% (41.3%) となっている. T2, G3以上で明らかに生存率は低下した. 移行上皮癌以外の膀胱悪性腫瘍および複数組織型の混在した腫瘍は移行上皮癌 grade 3とほぼ同様の結果であった. TUR施行症例の5年相対 (実測) 生存率は98.1% (82.2%) であった. 深達度別ではTa; 103.9% (89.7%), T1; 96.0% (82.6%), T2; 61.1% (49.1%), 異型度別ではG1; 102.2% (86.6%), G2; 104.3% (88.3%), G3; 56.9% (48.3%) であり, T1, G2以下がTURの適応と思われた. 膀胱全摘施行症例の5年相対 (実測) 生存率は62.4% (52.3%) であった. 深達度別ではTa; 102.3% (90.6%), T1; 77.8% (68.2%), T2; 56.3% (47.9%), T3; 41.8% (34.9%), T4; 15.2% (13.1%), 異型度別ではG1; 96.9% (80.9%), G2; 63.6% (55.7%), G3; 55.4% (47.1%) となっている. 進行癌症例の相対(実測)生存率は3年5.3% (4.8%), 5年0.87% (0.73%) と極めて予後不良であった.
著者
生間昇一郎 本宮 善〓 常深 邦彦 平田 直也 妻谷 憲一 森田 昇 植村 天受 金子 佳照 守屋 昭 吉田 克法 貴宝院 邦彦 平尾 佳彦 岡島 英五郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日泌尿会誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.903-909, 1988
被引用文献数
1

electroconductivity detectorを用いた高速液体クロマトグラフィー法による新しい尿中蓚酸測定法を開発し,この測定法はディスポタイプカラムを用いることによって前処置を簡便化し,さらに発色剤と反応させることなく直接蓚酸イオンをelectroconductivity detectorで検出できる.本法での測定範囲は1〜100mg/lで,再現性はtriplicate assayで,変動係数2.0±3.9%であり,健康成人10人の24時間尿中蓚酸排泄量の平均は25.6±4.7 mg/dayであった.
著者
大沢 哲雄 中村 章 今井 智之
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:18847110)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1276-1283, 1992
被引用文献数
1 1

経尿道的前立腺切除術 (TURP) の潅流液排液中の自己血を回収して, 戻し輸血できるものか, 次の項目を検討した. (1) TURPの潅流排液から, どの程度回収できるのか? (2) その血液は戻し輸血するのに値するのか (回収血液性状, 回収赤血球の形態と寿命)? (3) 回収血液は患者に戻し輸血して安全か (細菌汚染, 癌細胞混入)? TURPは, 膀胱瘻による持続潅流式とし, その膀胱瘻に自己血回収装置 (Shiley STATまたは, Cell Saver) の吸引チューブを接続した. 15例 (平均切除重量36g) で, 平均440mlの自己血回収ができた. 回収血液は, RBC469×10<sup>4</sup>/mm<sup>3</sup>, Hb14.6g/dl, Ht44.8%とかなり濃厚で, その形態は良好であった. 血小板は15,400/mm<sup>3</sup>, BUN0.3mg/dl, Cre0.2mg/dl, GOT7.6IU, GPT0IU, LDH649IUであった. <sup>51</sup>Crによる赤血球の寿命 (半減期) は22日であった. 手術前の尿培養では, 10例 (67%) に菌が検出されたが, 回収血の細菌汚染は20%にみられたのみであった. 癌細胞については, 培養癌細胞T24 (膀胱癌) およびACHN (腎癌) の浮遊液を, 白血球除去用フィルター (Pall-RC, Sepacell) にて濾過したところ完全に除去可能であった. TURP潅流液回収自己血は, 極めて良質の血液であり, 若干の工夫で, 安全性にも問題のないことが確認できた.
著者
丹田 勝敏 富樫 正樹 竹内 一郎 力石 辰也 小柳 知彦 金川 匡一 平野 哲夫 関 利盛 坪 俊輔
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.12, pp.1970-1977, 1992
被引用文献数
3

CYAの適正な投与法が移植成績の向上に重要と考え, 移植後早期3ヵ月間の急性拒絶反応とその後の graft の予後に影響を及ぼすと思われる諸因子について retrospective に検討した.<br>対象は1986年3月から北大泌尿器科・市立札幌病院腎移植科及び関連病院にて, CYA中心の免疫抑制法 (2剤: CYA+PRD 10例, 3剤: CYA+PRD+AZAまたはMIZ 44例) で治療した生体腎移植患者54例である. 各症例を治療期間 (1期: 移植日~15日, II期: 16~30日, III期: 31~60日, IV期: 61~90日) に分け, 急性拒絶反応の有無とその後の graft の予後との関係を, CYAの副作用軽減を目的とした併用薬剤 (AZAまたはMIZ) の有無, CYAの初期投与量, CYAの血中 trough level の3項目を中心として検討した.<br>各治療期間においてAZAまたはMIZの有無, CYAの初期投与量は急性拒絶反応出現頻度と有意な関係を認めなかった. しかしCYA trough level がI期で150ng/ml未満, またIII期で100ng/ml未満の場合に有意に急性拒絶反応の発症頻度が高かった (p<0.01).<br>graft の予後については, CYAの初期投与量は有意な関係を認めなかった. また, AZAまたはMIZの併用も2剤治療群と比較して graft 生着率に有意差を認めなかった. 一方CYA trough level がI期で150ng/ml, III期で100ng/ml以上の至適レベル到達症候群の graft の生着率はそれ以外の群と比べ有意に高かった. (p<0;05).<br>以上より特に移植後早期3ヵ月以内のCYA trogh level は移植成績の向上に重要と思われた.
著者
堀田 浩貴 熊本 悦明
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1502-1510, 1994
被引用文献数
4 2

夜間睡眠時勃起現象 (nocturnal penile tumescence: NPT) は, ほとんどの健康男子に認められる生理現象である. NPTの指標を測定することで性機能評価が可能であることから, NPTは臨床応用されてきているが, その基本となるべき年齢別正常値がこれまで整理されていなかった. そこで健康男子189例を対象にNPTの各指標を測定し, 日本人のNPTの加齢性変化について検討した.<br>NPTの各指標は10歳を過ぎる頃急激な増加を示したが, この増加には思春期前後で劇的な変化を遂げる視床下部, 下垂体そして精巣系の加齢性変化の関与が考えられた. またNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間のピーク以後の減少傾向にも androgen の低下の関与が考えられた. 陰茎周最大増加値 (一晩の最大陰茎周変化値), 陰茎周最大増加率 (陰茎周最大増加値の弛緩時の陰茎周値に対する割合) は50歳代後半からその減少傾向が強まったが, これには androgen の低下とともに陰茎血管系および陰茎海綿体の加齢性変化が関与している可能性が考えられた.<br>NPTの各指標は加齢性変化を示すことが明らかとなり, 男性の性成熟あるいはその衰退を表す可能性が示唆された. また本邦におけるNPTの各指標の基準値が形成され, 今後の性機能の臨床において意義深いものと考えられた.
著者
山田 哲夫 船橋 亮 村山 鐵郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.5, pp.554-559, 2005-07-20
参考文献数
14
被引用文献数
1

(目的)線維筋痛症(FM)は米国において間質性膀胱炎(IC)の約10%に合併するとされているが本邦ではほとんど知られていない.我々も米国とほぼ同様な割合で合併例を経験した.合併例の実情と意義について報告する.(患者と方法)患者はICに関する1987年National Institute of Diabetes, Digestive and Kidney Diseases (NIDDK)とFMに関するAmerican College of Rheumatology (ACR)の診断基準を満たした過去4年間における30例で, これらの臨床所見の検討を行った.(結果)ICのsymptom indexとproblem indexの平均は各々14.9と14.6で, ACRの診断基準における圧痛点の平均は16カ所であった.患者全体で9カ所の診療科を受診し, 患者の38%が精神病でないにも関わらず精神科受診を余儀無くされていた.両疾患は疼痛閾値の低下やび漫性の痛み, 症状の増悪因子, 治療法などに類似点が認められた.(結論)ICの約11%がFMを合併し, 合併例は病状を理解されず全身の激しい痛みに耐えていた.ICとFM患者の臨床所見において共通点が多く認められた.
著者
大森章男 永瀬 謙二
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日泌尿会誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.1331-1342, 1986
被引用文献数
1

カルシウム含有尿路結石症のrisk factorである高カルシウム尿症について検討した.まず,本邦健康成人15名を対象として,Ca制限食摂取後,一定の絶食期間をおいた上,経口Ca負荷を行い,その前後におけるCaおよびc-AMPの排泄動態から,当施設における正常域をつぎのごとく設定した.すなわち,絶食時尿中Ca排泄量8.04±6.0mg/100ml GF×100,Ca負荷後尿中Ca排泄量19.02±6.4mg/100ml GF×100,絶食時尿中c-AMP排泄量19.02±6.4mg/100ml GFx100,絶食時尿中c-AMP排泄量3.28±1.44nmol/100ml GF,Ca負荷後尿中c-AMP排泄量2.20±0.88nmol/100ml GFであった.正常Ca尿結石患者(29例)では,健康成人と同様の変動を示し,これらの患者にはCa代謝に異常を思わせる所見がなかった.しかしながら,高Ca尿結石患者(31例)では絶食時尿中Ca,c-AMP共正常で,Ca負荷後尿中Caが増加し,c-AMPは正常のもの(Type1),絶食時尿中Ca,c-AMP共に高値で,Ca負荷後尿中Caはさらに増加し,尿中c-AMPは正常値に戻るもの(type2a),絶食時尿中Caは高値を示すが,c-AMPは正常で,Ca負荷後尿中Caの増加は軽度で,c-AMPは依然正常域にあるもの(type2b),の3つの病型にわけられた.このうち,type1は青壮年の男子に多く,蓚酸Caを主成分とする結石を有し,腸管におけるCa吸収亢進が病因と考えられた.type2aは女子に多く,リン酸Caを主成分とする結石を有し,腎からのCa漏出によるものと思われた.type2bは高年齢層に多くみられ,骨吸収亢進が関与していることが示唆された.さらに結石型原発性上皮小体機能亢進症患者(8例)につき同様の検索を行ったところ,Ca負荷後も尿中c-AMPは高値のままで,上皮小体機能の抑制がみられず,さらに血清Caが対照例,高Ca尿症例に比し有意に高度に増加する特徴を示した.この事実は原発性上皮小体機能亢進症の診断に有用であると思われた.
著者
今田 直樹 河内 明宏 北森 伴人 大嶺 卓司 田中 善之 渡邊 泱
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1114-1119, 1996-09-20
参考文献数
10

(背景と目的) 膀胱内圧脳波終夜同時測定に基づいた体系的治療を施行し, 2年間経過観察が可能であった夜尿症患者の長期治療成績を検討した.<br>(対象と方法) 対象は1990年1月から1991年12月までに, 膀胱内圧脳波終夜同時測定を施行した213例で, その病型分類は1型夜尿症136例 (64%), IIa型夜尿症20例 (9%), IIb型夜尿症57例 (27%) であった.<br>(結果) 2年後の体系的治療の治療成績は夜尿症患者全体で, 治癒44%, 有効38%, 無効18%であった. 2年後のI型夜尿症に対する治療成績は, 治癒52%, 有効37%, 無効11%であり, IIa型夜尿症に対する治療成績は, 治癒40%, 有効45%, 無効15%であり, IIb型夜尿症に対する治療成績は, 治癒26%, 有効39%, 無効35%であった. 有効群と無効群を比較すると, 有効群が有意に年齢が高かった. I型夜尿症において, 無効群に有意に昼間遺尿を有する症例が多かった. 夜尿回数と尿意覚醒の有無は両群で有意差を認めなかった.<br>(結論) 夜尿症分類ではI型夜尿症が最も軽症で, IIb型夜尿症が最も重症であると考えられた. 病型移行したものも有効に含めれば, 2年間の体系的治療に全く反応がみられない症例は全体の約1割であり, この1割が難治性の夜尿症と考えられた.
著者
槙山 和秀 藤浪 潔 鈴木 康太郎 杉浦 晋平 寺西 淳一 佐野 太 斎藤 和男 野口 和美 窪田 吉信
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.669-674, 2004-05-20
参考文献数
12
被引用文献数
2

(目的) 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター泌尿器科では後腹膜鏡下根治的腎摘除術を2002年5月から開始した. 当院で採用した術式により3名の術者が安全に後腹膜鏡手術を施行可能であったので, その手術成績を検討した.<br>(対象と方法) 2002年5月から2003年6月までに当院で腎細胞癌の診断で後腹膜鏡下根治的腎摘除術を施行した14例を対象とした. 術式は側臥位で, 6cmの腰部斜切開で後腹膜腔にアプローチ. 円錐外側筋膜を腎下極レベルまで切開, 尿管を確保し, Gerota 筋膜と腹膜, Gerota 筋膜と腸腰筋の間を鏡視下でメルクマールになるように剥離したうえで, 小切開に hand port device を装着し12mmトロッカーを3本留置し, 気腹して後腹膜鏡下に根治的腎摘除術を施行. 先の6cmの切開創から腎を摘出する. 本術式の手術成績を検討した.<br>(結果) 平均手術時間は244.4分, 平均出血量は, 217.9mlだった. 1例は出血のため, 1例は小動脈の処理が不十分と思われたために開放手術に移行したが, 輸血を施行した症例はなかった. 大きな合併症も認めなかった.<br>(結論) 本術式で3名の術者が安全に後腹膜鏡下根治的腎摘除術を施行し得た.
著者
黒川 公平 今井 強一 柴山 勝太郎 山中 英寿 篠崎 忠利 登丸 行雄 北浦 宏一 高橋 溥朋
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.659-666, 1986
被引用文献数
7

上部尿路外溢流の5例を報告し診断治療について論じた.5例のうち3例が原因不明であり,うち2例は数日の安静で治癒し,他1例も約2週の安静で治癒した.残り2例は尿管結石,子宮癌術後の尿管狭窄の症例であり,前者は持続した疼痛,微熱のため切石術を行ない,後者は溢流尿による麻痺性イレウスを伴なったため狭窄部の手術を行なった.1968年〜1984年までの上部尿路外溢流の報告のうち記載の不十分な症例を除き,自験例を含む104例を検討した.腎盂自然破裂,自然腎盂外尿溢流,あるいは尿管自然破裂は鑑別することが非常に困難であるため,経皮的腎手術の経験をもとに,それらの新しい臨床的診断基準を提唱し,104例を再集計し診断治療にも言及した.