著者
里美 佳昭
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.1-13, 1990-01-20
被引用文献数
48 7

腎癌の治療の現況を述べ, 今後検討しなけれはならない問題について言及した.(1) 腎癌の生物学的な特性を念頭において治療方針を決めること(2) 一見, 腎癌の手術はすでに完成しているかに見えるが, まだ問題点が多いこと(3) 転移巣の手術適応に対する考え方(4) インターフェロンが頻用されているが, 理論的裏付けが不十分な現況(5) インターフェロンを中心とした他剤併用療法が今後の課題であること(6) 腎癌のadjuvant therapyの方法などについて述べた.
著者
岩室 紳也 古田 昭 岩永 伸也 野田 賢治郎 波多野 孝史 中條 洋 田代 和也
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.35-39, 1997-01-20
被引用文献数
4 2

(背景と目的)新生男児の大半は包茎であるが,包茎に関しては明瞭な治療指針がない。われわれは新生児期から包皮を翻転し,包皮内の清潔を保つ指導をすることで亀頭部を露出できる可能性について検討した。(対象と方法)1994年1月より1995年10月の間に当院で出生した男児の母親に対して新生児期からパンフレットとビデオで包茎と包皮翻転指導の有用性について説明した後に泌尿器科医が母親に対して包皮翻転指導を実施した。指導内容は1)無理のない範囲で包皮を翻転し,ガーゼ等で包皮内面や亀頭部を陰茎根部に向かって拭く,2)包皮の翻転はおむつを替える度と入浴時に行う,3)操作後は包皮を戻すを原則とした。包皮翻転の進捗状況は1ヵ月健診時に泌尿器科医がチェックし,亀頭部が完全に露出できる状態を完了とした。(結果)初診時の亀頭部の用手的露出度を不可(0)〜亀頭部中間(III)〜完全(VI)の7段階に分類した。新生児538例中,亀頭部を完全に露出できるVI度の症例はなかった。しかし,包皮翻転指導を行った結果,継続的に経過観察し得た372例は埋没陰茎の2例を含め全例亀頭部を完全に露出することができた。亀頭部が完全に露出できるまでに要した期間は,0度は平均2.94月,III度は1.78月,V度は1.22月,全体の平均2.32月であった。指導に伴う特記すべき合併症はなかった。(結論)新生児期から包皮を翻転し亀頭部を露出する指導を徹底することで,真性包茎状態の新生児でも経過観察できた企例が仮性包茎となり,手術を回避することが可能になると思われた。
著者
塚本 拓司 藤岡 俊夫 月脚 靖彦 石川 清仁 波多野 智巳
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.949-952, 1995-04-20
被引用文献数
5

尿管動脈瘻は,ショックや敗血症を伴い,死亡率の高い重篤な疾患である.我々は有カテーテル尿管皮膚癌の患者に合併した,尿管大動脈瘻の一例を経験し,治癒し得たので報告する.患者は膀胱全摘,尿管皮膚癌術を施行した65歳の男性で,手術の6年後に両側ストーマ狭窄の為,尿管カテーテルを留置している.留置16カ月後より,左カテーテルから血尿が出現.左腎出血を疑ったが,画像診断上異常は認めなかった.しかし,カテーテル交換時に大量出血を生じ,更に,CTで尿管と大動脈の癒着が示されたことから,左尿管大動脈瘻と診断した.開腹時,約7mmの瘻孔を腹部大動脈に認めた 左腎尿管を摘出後,瘻孔部は縫合閉鎖し,更に,腹直筋筋膜前鞘を縫着した.痩孔は,膀胱全摘術により尿管と大動脈が癒着し,ここに留置された尿管カテーテルによる圧迫壊死が加わり形成されたものと推察された.術後の経過は良好で,一年後の現在も健在である.尿管動脈瘻は,最近の多くの報告で尿管カテーテル留置例に発症している.近年の尿管カテーテル使用頻度の増加により,本疾患の増加も予想され,我々泌尿器科医は尿管カテーテルの重篤な合併症として,本疾患の存在を念頭に置かなければならないと思われる.
著者
中辻 史好 林 美樹 橋本 雅善 丸山 良夫 馬場谷 勝廣 平尾 佳彦 岡島 英五郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1914-1918, 1985-12-20

膀胱原発のMalignant fibrous histiocytoma(以下MFHと略す)は極めてまれであり,本邦では現在までに1例のみ報告されているにすぎない.本症例は排尿困難を主訴として1982年6月4日当科を受診し,膀胱鏡にて頂部右側に直径約2cmの表面平滑な腫瘍と三角部に小豆大の乳頭状腫瘍を認めた.入院時諸検査に異常を認めなかった.膀胱二重造影,膀胱エコー,膀胱CT及び骨盤動脈造影にて頂部の腫瘍は臨床的深達度T_3a,三角部の腫瘍は臨床的深達度T_1の診断のもとに7月28日TURBtを施行した.病理組織学的に頂部の腫瘍はMFH,三角部の腫瘍はInverted papillomaと診断され,頂部の腫瘍に対しては8月10日膀胱部分切除術を施行した.術後vincristine 1mg,peplomycin 10mg,adriamycin 30mgによる多剤併用化学療法を3コース施行し,liniac 4,200radを照射した.術後28カ月現在,再発転移を認めず,経過観察中である.
著者
上村 博司 里見 佳昭 菅原 敏道 山口 豊明 岸田 健 石橋 克夫 原田 昌興
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.260-267, 1991-02-20

10年以上経過をみた前立腺癌症例70例を対象として, その予後調査を行った. 治療は内分泌療法を施行した. また, 除睾術を70例中54例 (77%) に施行した. 生存10例, 死亡60例で, 癌死は31例と半数を占めた. stageA, Bでは, 癌死は少なく, stageC, Dは癌死が10例と18例で高率にみられた. 一方, 長期生存例は, stageA_1 1例, A_2例, B1例, C4例, D2例とどのstageにおいても存在した. 病理組織別では, 高分化型群に癌死がみられず, またstageA, Bでは高分化・中分化型群に同様に癌死がなかった. ホルモン剤中断例では, 高分化型群で癌死は存在せず, 中分化型群でstageC, Dに癌死がみられた. 低分化型群は予後が悪く, とくに中断後は短期間内に癌死した. 高分化型群では癌死がいないと, stageA, Bでは高分化・中分化型群で癌死はなく, またホルモン剤中断後も癌死がないことより, 除睾術施行後の高分化型腺癌でstageA, Bの症例では, ある一定期間の継続的内分泌療法を施行後に, ホルモン剤の中断・中止の可能性が推察され, 一定の条件下でホルモン剤の中止ができるのではないかということを提唱した.
著者
布施 秀樹 秋元 晋 伊藤 晴夫 島崎 淳 石川 堯夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.8, pp.1280-1287, 1984-08-20

1962年より1981年までの20年間にクッシング症候群21例を経験した。年齢は20歳、30歳台で全体の80%を占めた。男女比は1:6であった。原疾患は腺腫が16例、過形成が5例であった。満月様顔貌、中心性肥満、高血圧がいずれも1OO%の出現率であった。赤血球増多症、白血球増多症は、それぞれ1例、6例にみられた。低K血症は5例に、低Ca血症は3例にみとめた。24時間尿中17-OHCSおよび血中コルチソルは全例で高値、血中ACTHは過形成は全例高値、腺腫例は、正常ないし低値を示した。メトピロン^[○!R]試験、デキサメサゾン抑制試験の適中率は、それぞれ80%、88%であった。局在診断法のうちPRPは50%、CTスキャン、超音波断層法はそれぞれ75%、80%、副腎スキャンは93%の例で診断可能であり、副腎スキャンが最も有用と思われた。
著者
松崎 純一 千葉 喜美男 岩崎 晧 石塚 栄一 田口 裕功
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.4, pp.953-956, 1995-04-20
参考文献数
7
被引用文献数
1

1997年田口らは膀胱全摘術及び尿管皮膚瘻術後の新しい尿路再変更の術式を発表した.この方法は仮性尿道を造設し,和紙を一時的に用いて膀胱部に腹膜腔を形成し,それに回腸を吻合して,尿路を再建したものであった.術後13年間は異常をみとめられなかったが,定期検査にて再建した膀胱部の腸管部に結石を認めた.リザーバーの形態と仮性尿道の可動性のないことから内視鏡的な治療は適応にならなかった.この結石にESWLを行ない良好な成績を得た.
著者
島田 憲次 細川 尚三 東田 章
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.2097-2102, 1993-12-20
被引用文献数
5 5

出生前診断される腎尿路異常症例が増加するに従い,その治療法として胎児治療を真剣に考えねばならない症例にも遭遇している.今回はヒト胎児水腎症を組織学的に検討し,先に報告した正常胎児の腎発育と比較しながら,胎児治療に対する病理学的背景を考察した.対象は過去約10年間に剖検が加えられた胎児水腎症21例32腎で,基礎疾患,は尿道閉鎖/狭窄7例,腸裂3例,水子宮膣症2例などであった.腎皮質の嚢胞形成は12例に見られ,主として糸球体嚢胞と考えられた.大小の嚢胞が多数見られた7例は,いずれも両側の高度の水腎症であった.ネフロン形成層は軽〜中等度の水腎症ではGW33週頃まで見られたが,嚢胞形成が著しい腎ではすでにGW28週でも消失していた.尿細管・集合管の所見としては,管腔の拡大あるいは逆に間質の増生が著しいための管腔萎縮像が見られた.拡張した管腔や腎皮質の嚢胞は腎実質に均等に見られるのではなく,腎の区域により差が見られた.腎異形成は6例10腎に見られ,いずれもGW30週以降の症例であった.高度の水腎症ではGW30週近くになると糸球体数の減少が明らかであった.以上の結果から,胎児の腎機能が回復するか否かはネフロン形成層が残されているか,あるいは腎異形成が完成しているか,の2点にかかっており,尿路を減圧する胎児治療はGW20週を越えた頃,あるいはそれ以前に適応される必要がある.
著者
田中 成美 原 暢助 森田 辰男 石川 真也 森口 英男 小林 裕 戸塚 一彦 大場 修司 徳江 章彦 米瀬 泰行
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.12, pp.1927-1932, 1984-12-20

自治医科大学泌尿器科において,1974年4月15日の開院より9年間に尿路変向術が施行された症例は100例で,男子78例,女子22例,男女比は3.5対1であった.最年少者は4歳,最年長は84歳,平均年齢は60.2歳であった.原因疾患は膀胱腫瘍76例,子宮癌6例,尿道癌4例,前立腺癌3例その他の悪性腫瘍3例で良性疾患は8例であった.施行された尿路変向術は,膀胱瘻造設術8例,腎瘻造設術7例,カテーテル尿管皮膚瘻造設術56例,回腸導管造設術9例,尿管S状結腸吻合例であった.100例全例の5年相対生存率は51.2%で,膀胱移行上皮癌のため膀胱全摘術を施行した53例の5年相対生存率は58.7%であった.膀胱全摘術とともに尿路変向術を行った61例の術後死亡率は4.9%であった.これらの膀胱全摘術の症例の術後早期合併症及び晩期合併症について尿路変向術式別に比較,検討した.
著者
小泉 孔二 入江 恭子 横山 仁 保坂 恭子 竹崎 徹 小山 敏雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.99, no.5, pp.652-655, 2008-07-20
被引用文献数
2

67歳,女性.近医での膀胱鏡にて膀胱癌を疑われ,2003年4月5日当科を紹介受診.膀胱鏡にて栂指頭大広基性乳頭状腫瘍を認めた.2003年4月22日TUR-Btを施行.病理はUC,G3,pTlであった.その後膀胱内に再発は認めなかったが,2006年11月CA19-9およびCEA高値を指摘され当科再診.CTにて骨盤内リンパ節腫大を認めたため2006年12月5日開腹生検を施行.病理診断はmicropapillary patternを有するUCであった.小骨盤腔に放射線照射60Gyを行い画像上CR,マーカーも正常化した.2007年7月時点では再発を認めず経過観察中である.
著者
五十嵐 辰男 村上 信乃 富岡 進 阿部 功一 井坂 茂夫 岡野 達弛 島崎 淳松 嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1310-1315, 1989-09-20
被引用文献数
7 1

1978年1月より,1988年7月までに,千葉大学および旭中央病院泌尿器科で腎摘除術を施行した151例を集計した.偶然に発見された腎癌(「偶然発見癌」)は41例であり,受診動機としては他疾患治療中が28例,人間ドックが10例,集団検診3例であった.このうち,34例(82.9%)が超音波断層法で,4例がCTスキャンで,3例が排泄性腎盂造影で最初に発見された.「偶然発見癌」の腎癌全体に占める割合は,年次を経るにつれて有意に増加した(p<0.001).初診時または発見時,顕微鏡的血尿を認めたのは8例(19.5%)に過ぎず,スクリーニングとして検尿のみでは不十分で,超音波断層法も必要であると思われた.なんらかの症候を有する「症候癌」は102例,転移巣が最初に診断される「オカルト癌」は8例であった.「偶然発見癌」はこれらに比し有意にlow stage(p<0,001),low grade(p<0.001)であった.さらに,pT1〜2b,または長径10cm以下の症例において「偶然発見癌」の生存率は「症候癌」より良好であり(p<0.05),このような症例では腫瘍の早期発見による治療効果があったと思われた.
著者
原 靖 郡 健二郎 高田 昌彦 児玉 光正 石川 泰章 栗田 孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.7, pp.1124-1129, 1992-07-20
被引用文献数
4

近畿大学医学部泌尿器科において,1988年9月から1990年10月までに950例の上部尿路結石に対してESWL治療を施行した.2回以上ESWLを要した症例(以下難渋群と記す)は110例であった.また,1回のみのESWL治療で完全排石を見た症例のうち無作為に抽出した97症例を対照群とし,2群間を比較し2回以上ESWLを要した原因を統計学的に検討した. その結果,難渋群で有意を持って高かったものは,ESWL以前の自然排石歴(3回以上),水腎症の程度の違い,サンゴ状結石の頻度,中下部尿管結石の頻度であった.また,有意差がないものの両群間において差がみられたものは,難渋群においての結石介在期問が長くPNLの既往が多いことであった. 以上のことより,上記のような状態にある結石で,1回目のESWL治療で砕石が不良であった症例に対しては,ESWL単独治療には限界があると思われ,併用処置や,他の治療法も適時行う治療方針が必要であると考えられた.