著者
福地 惇
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告 人文科学編 (ISSN:03890457)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.89-110, 1995-12-25
著者
市村 高男 松田 直則
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

土佐国幡多荘は、16世紀末から約1世紀の間、京都下りの公家一条氏が支配していた。本研究では、一条氏が幡多へ下向した理由、そこでの役割を考えるため、文献史学と考古学の両面から基礎資料の収集と検討を進めた。今回、幡多地域出土の遺物については、あまり報告書に収録できなかったが、中世城郭跡を中心とした一条氏・幡多地域の考古学的考察の中で活用している。文書・記録などの文献史料については可能な限り報告書に収録し、研究者が共有できるようにした。これらの史料や遺跡・遺物の調査・検討を通じて、次のようなことが明らかになった。(1)一条氏は土佐に在住したまま公卿に列した希有な存在であり、恒常的に京都の公家社会と交流する一方、16世紀前半から地域の領主や地侍を家臣団に編成し、支配領域の拡大を試みるなど戦国大名化への動きを見せた。(2)一条氏は本願寺や堺の商人と結んで大船を建造し、遠隔地交易への強い関心を示していた。この事実は、一条氏の贈答品に南方の産物が多く見られること、幡多地域から多量の貿易陶磁器が出土すること、一条氏が加久見氏(海賊)と婚姻関係を結んでいたことなどと合わせて、同氏が対外交易に関与していたことを暗示する。一条氏が京都から幡多に下向し、そのままこの土地に住み着いた理由もこの辺にあると考えられる。(3)一条氏は戦国前半期から幡多地域に多くの城郭を築いているが、その技術がやがて長宗我部氏に継承・発展されるなど、想像以上に土佐の社会や文化に大きな影響を与えていた。以上のように、一条氏や幡多地域の役割は正しく評価されるべきであり、土佐国を越えた視点で見直していく必要がある。
著者
市村 高男
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、土佐国幡多荘が四国随一の貿易陶磁器出土地である点に着目し、その荘園領主一条氏による海外貿易の可能性を探り、合わせて中世日本における幡多地域の歴史的な役割について考察した。その基本的な作業として、一条氏の外戚となった加久見氏の屋敷跡の発掘調査を実施し、建物跡や中国産陶磁器や国産の陶器・土器など多数の遺物を検出、土佐でも有数の存在であったことを確認した。加久見氏屋敷跡は、城跡や菩提寺・家臣団屋敷などを伴う小世界の中心であり、川を媒介に港湾・港町とも直結する海の領主の本拠に相応しいものであった。一条氏は、こうした海の領主たちを広く組織し、海上における彼らの日常的な活動を取り込むことによって、広域的な交易活動に参画していた。一条氏は実際に唐船を建造しており、しばしば舶来品を朝廷や京都の一条氏へ贈るなど、海外貿易に関与していた様子を明確に示している。畿内の一角からブランド石材で作られた多数の石造物が搬入されていたことも明らかになってきた。幡多地域で多量の中国産等の陶磁器類が出土するのも、一条氏の広域的な交易活動によるものと考えてよさそうである。また、一条氏は、防長の大内氏、豊後の大友氏、日向の伊東氏と婚姻関係を結び、豊後水道から瀬戸内海にかけての航路の安全を確保し、この航路を頻繁に使用していた様子も確認できる。さらに本願寺や紀州の雑賀門徒とも結んで紀淡海峡から太平洋を通って幡多や九州へ通じる航路も確保していた。土佐国幡多荘は、瀬戸内海・豊後水道ルートと太平洋ルートとが合流するところに位置しているが、それによってこの地域の海運上の位置が決定的に高まることになった。一条氏が幡多荘を重視したのはこのような理由によるものであった。
著者
山下 興作
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告 人文科学編 (ISSN:03890457)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.157-166, 1996-12-25
著者
後藤 真琴
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 人文科学 (ISSN:03890457)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.155-170, 2002-12-25

メキシコ(Mexico)がD. H. ロレンス(David Herbert Lawrence)とその文学に与えた影響を考える場合,メキシコを舞台とする小説『ケツァルコアトル』(Quetzalcoatl)の原稿とその改訂版『羽鱗の蛇』(The Plumed Serpent)の考察は欠かせない。本稿では,その考察のための準備として,『ケツァルコアトル』の書き直しを進めている合間に書かれたエッセイを基に考えてみたい。そのエッセイとは,『メキシコの朝J (Mornings in Mexico)の前半に収められている四篇のエッセイ,「コラスミンとオウム」('Corasmin and the Parrots'),「ワヤパヘの散歩」('Walk to Huayapa'),「モソ(召使いの若者)」('The Mozo')と「市の日」('Market day')である。 L. D. Clarkが指摘しているように,これらのエッセイはメキシコのアメリカ先住民の性格とコスモロジーに関して触れていて,『羽鱗の蛇』での同じテーマの扱い方と密接に関連しているのである。
著者
角 忍
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告 人文科学編 (ISSN:03890457)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.305-316, 1989-12
著者
西尾 美穂
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告 (ISSN:18847714)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.45-53, 2017
著者
吉尾 寛 堀 美菜 松浦 章
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

①代表者吉尾寛が、昨年度研究協力者公文豪氏(高知近代史研究会会長)との調査、又土佐清水郷土史研究会の支援を得て見出すにいたった、当該の漁民の出身地就中高知県土佐清水市(松尾等)ならびに同黒潮町の複数の当事者・遺族に対して、2018年6月(2度)、7月、2019年1月に聞き取り調査を行った。その中で、南方澳出生を確認できる戸籍謄本など本テーマに直結する資料(PDF)を把握するとともに、当地で生まれ現在も当時の事情を具体的に語っていただける方(1名)に辿り着いた。そこで得た情報は、昨年訪問した南方澳郷土史家から聞いた内容と符号するものであり(沖縄漁民の雇用等)、加えて、居住地(一戸建てと集合住宅)の位置、移住した婦人の副業(鰹節工場での労働等)、原住民(「生蕃」)との関わり、当時南方澳に在った日本軍兵営の関係者との交流、米軍の空襲下の状況、日本への「引き揚げ」等に関する新たな事実であった。そして、それらは他の高知県関係者の話と基本的に合致するものであった。②2018年8月台湾側の研究協力者台湾海洋大学卞鳳圭教授と、宜蘭大学の教授(漁業史)の協力を得て南方澳を再訪した。前年同様当地の郷土史家(南方澳 商圏発展協会理事長兼南方澳文史工作室・三剛鉄工廠文物館長、元南興社区発展協会理事長)に対して、上記②の高知県側の調査内容を紹介した。今年度は、高知県での調査に対応する形で、南方澳の側で当時の日本人漁民に関して記憶のある方(1名)が紹介され、始めて聞き取りを行った。蘇澳鎮に在った小学校の事、鰹節工場の位置等の情報を得た。吉尾は当日から翌日にかけて南方澳のほぼ全市街地街を踏査した。③本年度は代表者、分担者、研究協力者がそれぞれ本テーマの直接的な研究成果を発表することができた。
著者
岩崎 泰正
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

T3がエネルギー代謝全般を促進する分子機序解明のため,T3応答遺伝子の網羅的解析を行った。その結果解糖系/PPP(GK,PFK2,G6PD),ミドコンドリア(POLG1,NRF2,Tfam,CYC1,UCPs,ANTs),FFA合成(CS,ACLY,ACC,FAS,SCD),TG代謝(ME,THRP,GPD1,GPAT3,HSL)を同定した.特に新規標的遺伝子GPAT3を詳細に解析し,プロモーター上のTRE(DR4,-447/-432bp)を介したT3の直接効果を変異解析およびEMSAで確認した.T3は糖脂質ミトコンドリア代謝関連遺伝子を幅広く誘導しエネルギー代謝を促進することを明らかにした.
著者
山岡 耕作 堀 道雄 関 伸吾
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

人工流水環境下、人工採苗、琵琶湖産、海産のアユ3系統81個体について、摂食観察を行った。観察は朝夕の1日2回、摂食行動を連続50回、計100回行った。観察後、アユは氷水中で死亡させた後、重力等の外圧に影響されないよう、個体を吊り下げる様にした固定装置を用いて10%ホルマリンで固定し、保存した。形態的利き手の判定は、ホルマリン固定した個体について、下顎関節が前方に位置する側を利き手として判定した。体軸の歪みも判定に用いた52個体で左右の顎の使用頻度に有意差が認められた(人工、右利き9個体、左利き10個体:琵琶湖、右10、左10:海産、右7、左6)。摂食行動に関して、3系統間に差はみられなかった。全ての個体について形態的利き手の判定を行った結果、摂食行動が右利きの個体では体軸が右に歪み、科学関節部位の左側が前方に位置し、形態的利き手は左利きとなった。それに対して摂食行動が左利きの個体は、体軸が左に歪み、下顎関節部位は右側が前方に位置し、形態的には右利きとなった。これらのことから、摂食行動の利き手と形態的利き手は逆の関係になることが明らかとなった。従って、下顎関節部の位置、体軸の歪み、説食行動の3形質が密な関係にあることが示された。左右の顎の使用頻度、顎部形態、体軸の歪みに関して、3系統間に差はみられなかった。3系統81個体の外部形態の計測を行った結果、胸鰭長、腹鰭長に左右差が全ての個体で認められた。胸鰭長は81個対中61個体において形態的利き手と胸鰭の短側が一致した。腹鰭長では81個体中55個体において形態的利き手と腹鰭短側が一致し、胸鰭、腹鰭ともに利き手側が短い傾向がみられた。形態的利き手と対鰭との密な関係がうかがわれる.。左右の腹鰭位置を測定した結果、81個体中65個体において形態的利き手側の腹鰭が後方に位置した。形態的利き手と腹鰭関節の位置は密接な関係にある可能性がある。櫛状歯、眼径及び左右の眼の位置については、形態的利き手との間には明確な関係は認められなかった。又、調べられた全ての外部形態の左右差に関して、3系統間で有意差は認められなかった。
著者
石井 盛次
出版者
高知大学
雑誌
高知大学研究報告 自然科学 (ISSN:04506197)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.103-123, 1952-03
著者
今井 典子 高島 英幸 杉浦 理恵
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

平成30年度は研究2年目にあたり,H29年度に実施したPilot 調査を基に,実施する文法問題の精査,調査グループ(3グループ)の授業内容の変更・修正を行い,本調査を実施した。具体的には,平成30年9月28日(金)~ 12月3日(月)の期間,本調査をPilot 調査とは異なる中学校で実施した。手順は,①pre-test(アンケート調査,文法テスト),②検証授業,③Post-test(文法テスト),④Delayed post-test(アンケート調査,文法テスト)であった。②の検証授業では,ビデオ撮影も行い記録した。検証授業の最後には,自由記述を含めた「振り返り」を生徒に記入させ,授業に対する取り組みや意識を調査した。文法テストで使用した28問に関しては,Pilot 調査でのデータ結果を項目弁別力指数(あるテスト項目が英語能力の高い受験者とそうでない受験者を弁別,あるいは識別することができたかどうかを検討するための指数)を考慮し精選した問題である。9月12日(水)に実施する中学校を訪問し,学校長,副校長,英語科教員3名に対し,調査の目的や内容,3グループそれぞれの学習指導案,事前事後のアンケートと文法問題,授業の振り返りシート,言語活動,などを実際に示し,質問なども受けながら説明させていただいた。調査から得られた分析結果・考察を平成31年2月15~17日に開催された,30カ国よりおよそ1700名の参加者のあった国際学会15th Annual Cam TESOL Conference on English Language Teaching(審査有)で研究内容を口頭発表した。また詳細に記述した報告書(全29 ページ)をもとに,3月下旬に実施中学校にて結果報告を行った。3月には,最終年度である平成31年度の計画を検討し,確認した。