著者
田代 正之
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告 自然科学編 (ISSN:03890244)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.29-44, 1990-12-26
被引用文献数
2
著者
深澤 太郎
出版者
高知大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

Tumor Necrosis Factor-α(TNF-α)/RelAダブルノックアウト(TA-KO)マウスは出生後自己免疫様病態を呈し生後3週までに致死となる。このTA-KOマウスでは、胸腺においては制御性T細胞(Treg)分画を認めるが、脾臓・末梢血中でのTreg分画は痕跡程度の非常に微弱なものとなっており、我々はこれまでにこの表現型は胸腺からの成熟Tregの流出不全に因ること、またこの流出不全はTreg側ではなく胸腺環境側の細胞でのRelA欠損に因ることを見出した。これより成熟Tregの流出が胸腺環境側に制御されていると考え、この流出に関与する胸腺環境側機構の解析を行った。本研究では、胸腺からのT細胞の流出に関わることが既知であるSphingosine-1-phosphate に対する走化性はTA-KO Tregにおいても正常であることを見出した。次に、胸腺環境側のどの細胞種がTreg流出におけるRelA依存性を示すのか絞込むため、デオキシグアノシン処理TA-KO胎児胸腺の、ヌードマウス腎皮膜下への移植を行った。このマウスではTregの流出不全は再現されなかったことから、RelA依存性を示す細胞種は胸腺ストロマのうちの胸腺上皮以外の細胞種であることがわかった。そこでTA-KO胸腺ストロマを(1)胸腺上皮細胞と(2)その他の細胞とに分け発現遺伝子プロファイルを作成したところ、TA-KO胸腺では(2)において形質細胞様樹状細胞(pDC)に特徴的な遺伝子群の発現低下が見られ、実際にTA-KO胸腺ではpDC分画の著しい減少が観察された。TA-KO胎児肝移植による血球系キメラマウスでは胸腺Treg流出は観察されるが、このとき胸腺pDC分画も認められることから、現時点ではTreg流出不全とpDC不在は相関しており、pDCがこの過程に関わる可能性を考えている。
著者
松下 憲司 松崎 茂展 大畑 雅典
出版者
高知大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

セラチア菌 (Serratia marscecens) は多剤耐性化の進行により、感染症の治療が困難になりつつある。我々は、本菌感染症に対するバクテリオファージ(ファージ)が保有する溶菌酵素を利用するファージ療法の可能性を検討した。まず、我々が分離した2種のセラチア菌ファージKSP90、KSP100の全ゲノム塩基配列を解読したが、相同性検索では溶菌酵素ドメインをもつ遺伝子は特定できなかった。そこで、データバンクに登録されているセラチアファージETAの推定溶菌酵素をBacillus属ファージ の溶菌酵素の推定外膜透過ドメインと融合させた融合タンパク質の遺伝子を合成し、溶菌活性の検討を進めている。
著者
池内 和代 祖父江 育子
出版者
高知大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

「Mixed methods research」を用いて,子どもが思春期を迎える「家族の発達危機」に対するシングルマザーの「生きる力の源泉」の体験を明らかにした。対象者は,思春期の子どもの子育てに苦悩し子どもの将来への心配を持っていた。しかし,責任ある養育への惜しみない努力と前向きに暮らす毎日の工夫を基盤に周囲の力を借りる力を持ちながら,対象者其々の形で苦悩を乗り越えようとする強い力があった。その力の支えは,子どもの成長への期待と自身の展望,それでいいという承認を引き出す肯定的感情であった。これらの体験がシングルマザーの「生きる力の源泉」であり,そこに対する支援が必要であると考える。
著者
川本 真浩
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、スポーツ史及び帝国=コモンウェルス史の観点から、英連邦大会の初期の歴史を見直し、その新たな局面を明らかにした。同大会は、帝国=コモンウェルス史のなかのスポーツ文化の一つにとどまるものではなかった。同大会とその開催事業によって、政治の世界でいうコモンウェルスとは別の「もうひとつのコモンウェルス」がつくりだされ、しかも政治とも関わりあう形で一定の社会的機能を果たしたのである。さらに、本研究では、グローバルなスポーツ大会と本国の地域ナショナリズムの相互関係を視野に入れつつ、スコットランドの事例を探ることによって、スポーツの世界でナショナリズムと帝国意識が交錯する様子をも明らかにした。
著者
阿部 眞司
出版者
高知大学
雑誌
高知医科大学一般教育紀要 (ISSN:09123083)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1a-24a, 1993-12-10

Omononushigami-God, who had been the most powerful evil-god in the Japanese myths, was transformed into the guardian god of the Imperial Court by the Miwa-no-kimi Family. This family, a sueki (earthenware)-making and religious-service family, was since the sixth century loyal to the Court, willing to sacrifice their lives and status for Emperors and Empresses. The above is what I made clear in this paper through examining all the members of the Miwa-no-kimi Family found in Nihonshoki.
著者
大畑 雅典
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

2008年にヒトポリオーマウイルスとしては初の腫瘍ウイルスであるメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCPyV)が報告された。欧米ではMCPyVと慢性リンパ性白血病(CLL)との病因的関与について報告がなされているが、我が国でのMCPyVとCLLの関係については明らかにされていなかった。本研究において一部の本邦発症CLLでMCPyVが検出されたが、CLL発症に直接的な役割を果たしているかは不明である。MCPyVは単球にも持続感染することが報告されている。この持続感染が細胞の腫瘍化へと発展させるのかどうかは不明であった。そこで、単球性白血病におけるMCPyVの感染有無について解析した。
著者
芦内 誠
出版者
高知大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は、ポリ-γ-グルタミン酸(PGA)合成酵素複合体PgsBCAの精密解析のための基盤技術となる酵素効率生産系について検討を加えるとともに、PGA生産に関わる遺伝子解析及び大量生産システムの構築に有用な新規PGA生産菌を検索した。以下に得られた成果を示す。1、PGA合成酵素複合体PgsBCAの大量発現は宿主に対して著しい生育阻害をもたらすことが判明した。そこで、各々の成分、つまりPgsB、-C、及び-Aを単独で生産できる宿主ベクター系を検討した。GST融合ベクターを基本に、PgsBは分子シャペロン共生産システムで、PgsCはPGA生産菌を宿主とする系で、また、PgsAは培養温度の急激な低温シフトが本タンパク質の成熟化に重要であることを見い出した。リポソーム膜を利用したPgsBCAの再構成についても検討し、これにより本酵素複合体の精密解析が可能となった。2、有用PGA生産菌として戦国醤菌を単離した。本菌の膜成分を利用し巨大PGAの酵素合成に世界で初めて成功した。極めてユニークな基質特異性を明らかにするなど、PGA合成に関する重要かつ新奇な情報を得るに至った。また、pgsBCA遺伝子破壊株はPGAの生産能を完全に失ったことから、PgsBCAのPGA合成における必須性が証明された。3、PGAを環境適応因子として生産する生物、ここでは好アルカリ細菌と好塩古細菌のPGAの構造解析を行い、これらが従来知られていなかった新奇なポリアミノ酸であることを明らかにした。さらに、好アルカリ細菌のPGAは納豆菌などのそれとは全く異なる新奇な機構で合成されていることを明らかにした。これらの結果の一部はすでにいくつかの英文誌、和文誌で発表し現在印刷中のものもある。投稿準備中の論文も複数あり、今回の研究成果は、これまでは手探りの感のあったPGA研究の発展に少なからず寄与できたものと考えている。
著者
清水 惠司 梶 豪雄
出版者
高知大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

神経幹細胞(NSC)は、自己複製を行いながら非対称性分裂を行うことでニューロンやグリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト)を生み出すとされているが、どのようなメカニズムによって分化・誘導されているか解明されていない。bHLH型転写因子であるOlig2は、オリゴデンドロサイト前駆細胞(OLP)と運動ニューロン(MN)の発生に必須の因子であり、ニューロン/グリア分化制御機構の鍵を握る因子であると考えられている。Olig2は抑制型の転写因子で、下流因子を抑制することによりOLP/MNの発生を誘導すると考えられているが、いまだ直接的な下流因子は同定されていない。オリゴデンドロサイトは、胎生12.5日(E12.5)頃より前脳ではganglionic eminence(GE)、脊髄では腹側のpMNドメインの脳室下層から生じることが証明されている。そこで、E12.5のOlig2ノックアウトマウスと野生型マウスから前脳のGE、および脊髄を採取し、cDNA subtraction法により野生型で発現されているが、ノックアウトマウスで発現しなくなった因子、すなわちOlig2の下流因子を現在も懸命に探索し続けている。一方、最も悪性度の高い神経膠芽腫(GBM)はOlig2転写因子を高率に発現しているとの報告もなされている。そこで我々は、各種グリオーマ細胞株に対し、DNAマイクロアレイを用いて転写因子発現差異について網羅的解析を続けており、現在英文投稿の準備中である。今後とも本研究を継続する事で、腫瘍化に至る過程でのOlig2の役割を解明すると共に、首尾よくOlig2下流因子が同定できれば、パッケージング細胞を改変する事で得られた高力価レトロウイルスベクターを用いて、Olig2下流因子をGBM細胞に導入することで高分化しうるかどうか検証する計画である。
著者
原田 哲夫 樋口 重和 石橋 圭太
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

「朝食摂取トリプトファンを原料に,天然抗うつ剤のセロトニンが午前中合成され,精神衛生が改善,更にセロトニンは夜間入眠物質メラトニンに変換され,入眠や睡眠の質の改善をもたらす.」という理論的背景を基に「早寝、早起き、朝ごはんで3つのお得!」リーフレットシリーズを作成,幼児、中学生、大学生を対象とした,5種類の介入実験の結果,何れも朝型化や睡眠健康・精神衛生の向上をもたらすのに概ね有効であった.
著者
竹内 保
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

多発性骨髄腫細胞増殖に重要な骨髄微小環境、ミエローマニッチ、におけるNotch system異常の検討をおこない、その異常により、ひきおこされる下流の分子経路、特にTMEM207発現過剰を明らかにした。さらに種々の癌増殖微小環境における異常発現を検討しTMEM207が腫瘍抑制因子、WWOXと結合し、その機能を抑制することを明らかにし報告した。
著者
津野 倫明
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は慶長の役における諸大名の軍事行動を解明することであり、本年度はとくに水軍に編成されていた諸大名(藤堂氏・伊予加藤氏・来島氏など)と朝鮮半島南部の駐留部隊であった諸大名(小早川氏など)およびこれらの軍事行動と密接にかかわる軍目付(熊谷直盛ら7名)に関する史料の調査・分析をした。具体的には研究実施計画にそって以下のような史料調査等を実施した。11月に東京大学史料編纂所で水軍関係の史料を閲覧・筆写し、近江水口加藤文書の影写本については複製も入手した。12月には秋月郷土館で軍目付発給の「鼻請取状」を撮影した。また、1月には東京大学史料編纂所で小早川秀秋に関する文書などを閲覧・筆写した。史料所蔵機関の耐震工事などにとまどい、遅れがでたものの研究実施計画に掲げた調査は遂行した。なお、史料の調査・分析と補完関係にある朝鮮出兵関係図書・日本中近世政治史関係図書も随時、精力的に蒐集していった。上記を含む3年間の調査・分析により、従来未解明であった慶長の役における諸大名の進軍ルート・部隊編成など基本的な動向を解明する所期の目的はある程度達成されたと考えるが、依然として後半の倭城在番体制・帰国時期などに関しては不明な部分が残されている。よって、諸大名の軍事行動と密接にかかわる軍目付にも注目して、これらの点を解明してゆくことが当面の課題と考えられる。なお、これまでの成果もふまえて本年度は裏面に掲載した「朝鮮出兵と長宗我部氏」、『前近代の日本列島と朝鮮半島』(津野執筆は「朝鮮出兵と西国大名」)を発表した。また、とくに本年度の対象とした水軍に関しては口頭報告「慶長の役における四国衆について」を発表し、これにもとづく学術論文「慶長の役における『四国衆』」も、大会成果論集(平成20年度予定)に掲載予定である。
著者
波田 重煕 吉倉 紳一
出版者
高知大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

最近、秩父累帯は、複数のテレ-ンからなる複合地帯であると考えられるようになってきた。そのようなテレ-ンの中でも、黒瀬川テレ-ンは先シルル紀基盤岩類を含み、古地磁気のデ-タなどに基づくと、それが、ゴンドワナ大陸に起源を持つ可能性がでてくるなど、西南日本のテクトニクスを解明するためには鍵となるテレ-ンであると考えられる。そこで、黒瀬川テレ-ンが本当に先シルル紀基盤岩類からなる大陸と、そこから由来した屑物を含む大陸被覆層からなるStratigraphic terraneなのかと明らかにしようとして2年間このプロジェクトと取り組んだ。そのために、主に、(1)花崗岩質岩礫で特徴づけられる“薄衣式礫岩"の年代を放散虫化石を用いて再検討する。(2)年代の明らかになった礫岩の花崗岩質岩礫の岩石化学的特徴を明らかにし、基盤岩類との類線性を比較検討する。(3)花崗岩質岩礫及び基盤の花崗岩質岩よりジルコンを抽出し、U-pb年代を測定する研究方法を取った。その結果、(1)については、ペルム紀中世からジュラ紀中世にわたる種々の年代の薄衣式礫岩層が存在すること,それらが、大陸地域の成層岩層であること、(2)については、礫には黒瀬川構造帯の基盤岩類に対応するものが存在すると同時に、風化変質の影響があるとはいえ、それらと特徴を異にする花崗岩質岩礫も含まれること、そして、(3)については、最終的な結果がまだ出ていないが、薄衣式礫岩の花崗岩質岩の礫には、予想もしていなかった程若いものが含まれることが明らかになってきた。(3)の点は新しい大変重要な事実で、その解釈としては種々の考え方が可能と思われるが、1つの重要な可能性として、従来、黒瀬川陸塊への海洋プレ-トの沈み込みが、例えば、古生代末からトリアス紀初期の時代に想定されていたが、花崗岩質岩礫の年代は、その直接的な証拠となるかもしれないことを指摘しておきたい。
著者
大浦 学
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

E-多項式はテータ写像により、モジュラー形式へと写される。ここで得られるモジュラー形式について、種数1の場合に次のようなことが知見された。 もともと E-多項式はアイゼンシュタイン級数に対応するものとして導入したが、アイゼンシュタイン級数と似た性質を持つことが観察できた。すなわち、基本領域内におけるゼロ点は原点から距離1の部分にあり、適当な重さの差がある場合、それらのモジュラー形式のゼロ点は分離的と呼ばれる性質を持つ。ただし、一般的には証明されておらず、これからの研究課題である。