著者
大塚 智子
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コミュニケーション能力など態度・習慣における高い能力は、良好な医師-患者および他の医療スタッフ関係の構築に重要だと考えられているが、現在の医学生においてはこうした能力の低下が危ぶまれている。高知大学医学部医学科では、態度・習慣領域を評価指標とした入試選抜(AO入試)を行っている。入学後の追跡調査により、同選抜で入学した学生の態度・習慣における高い能力が評価され、同選抜の有効性が示唆された。
著者
阿部 真司
出版者
高知大学
雑誌
高知医科大学一般教育紀要 (ISSN:09123083)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1a-26a, 1991-12-10

Omononushigami-God consisted of three different godheads. The first and basic was that of Mt. Mimoro ; that was also a mountain god, a snake god, a thunder god or an emperor spirit. On it was piled the second godhead ; an plague god or a death spirit which had come from abroad. On the eclectic godhead from the above two, moreover, was piled the third godhead ; a god of the Sueki (Earthenware)-making family who had moved from Sue Mura (Pottery Village) to Yamato Province in order to calm an plague god there. The Omoninushigami-God was put in a position as the representatives of Kunitsukami-Gods at the time of Emperor Temmu. Now we have three legends of Mt. Miwa where Omononushigami-God was worshipped. The earliest one called Hashihaka Legend, as old as Hashihaka Kofun (tumulus), was about an shrined maiden who served Mt. Mimoro's god in the 3rd or 4th century. The next one, Odamaki Legend, was farnily legend of Miwanokimi-Family and later was linked with Mt. Mimoro. The last legend that was about the birth of Emperor Jimmu's wife began to be told at the time of Emperor Temmu so that Emperor Jimmu should be linked with an emperor spirit of Mt. Mimoro.
著者
福元 康文 吉田 徹志 島崎 一彦 土佐 幸雄 西村 安代
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

農薬に頼らない安全な野菜や果実の供給が求められており、新たな殺菌方法としてオゾンが注目されている。しかし、安全性の面から気体でオゾンを利用するには問題があり、オゾンを水と反応させて利用することが有効と考え本研究を行った。マイクロバブルオゾン水は水中でゆっくりと浮上し、オゾンを完全に水中へ溶かし込んで、オゾンが空気中に排出されることがないため安全性が高い。マイクロバブルを用いた場合、水中オゾン溶解濃度は温度が高くなるにつれ低下したが、常に高い溶解能力を示した。水中溶存オゾン濃度の半減期は既存技術と比較すると3倍も長く維持できた。マイクロバブルオゾン水の作物への茎葉への散布ではなんら障害は認められなかった。養液栽培では循環式養液栽培の普及が求められ、培養液のリサイクルでは一部でも病害虫に汚染されると、培養液が循環しているためすべての植物が最悪の場合全滅する恐れがある。マイクロバブルオゾン水によるトマトの青枯れ病予防試験ではオゾン5ppm処理の低濃度接種区で発病を完全に抑制した。なおトマト根部へのオゾン水に対する耐性試験では18ppmの高濃度に対し生育障害は認められなかった。オゾン水の土壌灌注が雑草の発生と生育に及ぼす影響ではオゾン水の土壌灌注回数が増えるにつれ雑草の発芽と生育は抑制された。チンゲンサイの養液哉培(NFT)におけるマイクロバブルオゾン水の利用で生育は促進された。マイクロバブルオゾン水のイチゴへの茎葉散布では生育と果実の収量・品質収量の増加が認められた。これらのことより、マイクロバブルオゾン水を利活用による、農薬に依存しない安心・安全な環境保全型農業の構築への展望が得られた。
著者
池添 隆之 西岡 千恵 楊 晶
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

血管内皮細胞上に発現し、凝固を負に制御しているトロンボモジュリンが、シグナル伝達経路ERKを介して抗アポトーシス蛋白Mcl-1の発現を誘導して、サイトカインや免疫抑制剤による細胞傷害から血管内皮細胞を保護することを明らかにした。また、その活性部位は上皮細胞増殖因子様領域に局在し、抗凝固作用とは無関係であることを明らかにした。
著者
岡村 和明 NIZAMUL Islam
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、既婚女性を対象にある時点での正規労働、非正規労働の経験がその後の働き方に及ぼす効果を検証した。その結果、既婚女性自身の観察されない特性およびランダムな要因等を明示的にコントロールした場合でも、正規労働、非正規労働双方において、ある時点での仕事経験が同じ形態の仕事を経験する確率を高めることが明らかとなった。この結果は、仕事経験の内容が既婚女性自身の能力および選好に長期的な影響を及ぼすことを示唆している。
著者
小槻 日吉三 市川 善康 上田 忠治 中野 啓二
出版者
高知大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、高効率な官能基変換プロセス実現のために、超高圧反応場の有用性を明らかにするとともに、そこから得られる情報を最大限に活用し、革新的な有機合成反応の開発に繋げることにある。その結果、以下の成果を得ることに成功した。1.アセタール類の無触媒的シアノ化反応の開発:アセタール類のシアノ化反応は、通常ルイス酸触媒存在下、アセタールとシアノ化剤との組み合わせで行われる。これに対し、Me_3SiCNをシアノ化剤とし、ニトロメタン溶媒中高圧反応を行うと、無触媒でも望むシアノ化反応がきれいに進行することを見つけた。2.アントラキノン類の高圧縮合反応を基軸とするステントリンの直接合成:我々は、ペリレンキノン系色素の構造と生理活性に興味をもちそれらの合成研究を行っている。今回、アントラキノン誘導体の二量化反応による直接的な合成を検討し、アルカリ条件下、過剰のヒドロキノンを加え高圧反応を行うと、目的とするジメチルステントリンCが好牧率で得られることを見つけた。3.尿素類の高圧縮合反応を基軸とするBiginelliタイプの多成分連結反応:Biginelli反応は尿素と活性メチレン化合物、アルデヒドとの3成分連結反応として、ジヒドロピリミジノン系化合物合成の重要な反応である。今回、低反応性ケトンを基質として、脱水剤となる(MeO)_4Si及び酸触媒存在下高圧縮合反応を行うと、期待する多成分連結生成物が牧率よく得られることを見つけた。4.新規屋根型キラルアリールプロリン触媒の開発:有機不斉触媒の開発と利用を目的とした合成研究の一環として、アントラセンのDiels-Alder反応を出発とする新規屋根型キラルアリールプロリン触媒を分子設計した。この計画を実行に移すため、アントラセンと無水マレイン酸とのDiels-Alder付加物を出発として、光学分割を経由する方法で不斉触媒の開発を行った。
著者
新保 輝幸 三浦 大介 交告 尚史 深見 公雄 山岡 耕作 友野 哲彦 婁 小波 新保 輝幸
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

自然科学的アプローチ深見は、柏島周辺に設けた測点において、周年に渡って水質や微生物群集に関する調査を行った。その結果、同海域では基本的に貧栄養な環境であるものの、冬季には栄養塩濃度が、また夏季の底層付近では有機物濃度がそれぞれ増加する傾向が見られた。水質の変動は月齢や潮汐でも観察され、小潮の下げ潮時に栄養塩濃度や微生物の生物量が上昇することがわかった。以上の結果から、柏島周辺海域では基本的には貧栄養な黒潮の影響を受けているものの、短期的には貧栄養な内湾水が流入することもあり、これらが同海域の豊かな生物群集を支えている可能性があることが示唆された。山岡らは、後浜西部にラインセンサス区を設定し、底質によってゴロタ区、サンゴ区、死サンゴ区の3区に分け、2002年9月と3月に魚類生態について調査を行った。その結果、9月の調査では137種2,266個体が観察された。この種数は、以布利の同時期の出現数約70種のおよそ2倍に達し、柏島の魚類相の豊かさを証明する結果になった。3区の内では、サンゴ区で最多の種数が観察された。また以上のような調査を通じて調査海域の生物多様性に関する基礎データを蓄積中である。社会科学的アプローチ現地において、地域住民、漁協、ダイビング業者・ダイビング組合、町役場などの地域の利害プレイヤーに対するヒアリング調査と、関係諸機関からのデータ収集を行い、地域の実態の把握を行った上で、次のような研究を行った。交告らは、漁業とダイビング等の海洋レクリエーションの間でどのような利用秩序を構築するのが望ましいかを分析し、主体間で海面の利用調整を行うルールについて検討した。そして、そのルールにどのように法的な効力を持たせるかという点を追究した。新保らは、アンケートを用いた仮想状況評価法(CVM)および仮想旅行費用法によって、それらの自然資源の経済価値を評価するとともに、付け根方程式を推定してデータの信頼性を検証した。アンケートは、近隣で柏島への訪問客が多い岡山市、高松市、高知市の住民に対する郵送調査で行った。また友野は、オンサイトのアンケート調査を行い、これらの自然資源をダイビング等の海洋性レクリエーションで利用する場合の利用価値について、ゾーン・トラベルコスト法により評価した。婁は、柏島にとどまらず、沖縄や三浦半島など漁業とダイビング業の関係が問題となっているその他の地域についても調査を重ね、地域の自然資源を地域住民が多面的かつ持続的に利用して暮らしを立てていく「海業」という概念を提示し、従来の漁業・ダイビングサービス業の枠組みを超えた新たな形に産業構造を転換し、地域振興をはかっていくべきであるとして、その具体案を検討した。
著者
山本 由徳 吉田 徹志 宮崎 彰 坂田 雅正
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

良食味米生産の産地間競合が激化する中で,沖縄県を除く国内で最も早い収穫,出荷を目指して,高知県では早期栽培用極早生品種とさぴか(多収性,良食味)を育成した.しかし,普及を開始した1998年に,農家水田において異常(不時)出穂が多発し,収量,品質が不安定となったため普及面積が伸び悩んでいる.本研究では,極早生品種とさぴかに発生した異常(不時)出穂現象を取り上げて,その発生要因と発生防止のための栽培技術的な方策を明らかにしようとした.得られた結果は以下のように要約される.1.とさぴかは北海道育成品種に比べ,最終主稈葉数が少ないため,早晩性を示す播種から止葉展開までの有効積算温度(基準温度10℃)が低く,播種からの有効積算温度が301〜348℃日で幼穂形成期(平均幼穂長1mm)に達することが明かとなった.また,とさぴかは感光性・感温性および基本栄養生長性程度も比較的小さく,これらの特性は交配母本の高育27号と類似していた..2.とさぴかの幼穂分化苗を移植して,不時出穂(主稈)が発生すると,収量は,不時出穂の発生しなかった幼穂未分化苗区に比べ9〜15%少なかった.これは,m^2当たり穂数は多いが,分げつ穂の発育が劣り,1穂籾数が少なく,m^2当たり籾数が減少したことと,発育停止籾割合が高く,登熟歩合が低くなったためであった.また,玄米品質も青米の増加により低下した.3.不時出穂を防止・軽減するために,育苗期間中での幼穂の分化,発育を遅らせるには,播種から200℃日(3.5齢)以上では窒素追肥は行わず,箱当たり播種量を多くして,地上部乾物重/草丈比を低くする管理が必要であると考えられた.また,育苗時の基肥窒素の増施や育苗期間中の剪葉処理も効果的であることが明らかとなった.
著者
長谷川 耕二郎 福田 富幸 北島 宣
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 農学 (ISSN:03890473)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.15-23, 2003-12-25

雌雄同株のカキ'西村早生','禅寺丸'を供試して2年枝単位に満開前2週間と満開時の結縛処理を行い,結縛処理が雄花と雌花の花芽分化と花芽発育,および花芽数に及ぼす影響,ならびに新しょうの乾物率に及ぼす影響について調査した.結縛処理には1.6mmの被覆線を用い,処理開始後50日後に被覆線を取り除いた.1.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'と'禅寺丸'における雄花と雌花の花芽はそれぞれ5月30日と6月9日に分化し,一方,対照区の雌花の花芽はそれぞれ6月9日と6月22日に分化した.2.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'と'禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は6月中旬または下旬までにがく片形成または花弁形成の段階に発達したが,7月初旬以降11月中旬までの花芽の発達は花弁形成以降の段階までは進まず,両結縛処理区と対照区との差違はなくなった.3.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'雌花の花芽数と'禅寺丸'雄花の花芽数は対照区に比べて増加した.4.満開前および満開時の2年枝結縛により,'西村早生'および'禅寺丸'の新しょうの乾物率はそれぞれ5月下旬と6月上旬に急激に増加し,両品種の結縛処理区の乾物率は対照区に比べて,5月上旬から6月中旬まで高くなる傾向がみられた.以上のことより,'西村早生'および'禅寺丸'において,満開前および満開時の2年枝結縛処理が新しょうの乾物率の増加を促進し,両品種の花芽分化を早めるものと考えられた.
著者
長谷川 耕二郎 福田 富幸 北島 宣 尾形 凡生
出版者
高知大学
雑誌
高知大学学術研究報告. 自然科学 (ISSN:03890244)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.41-52, 2004-12-31

カキ枝の永久および一時結縛処理が雄花と雌花の花芽分化・発育と花芽数,新しょうの乾物率ならびに翌春の雄花と雌花の着花数および新しょう生長に及ぼす影響について調査した.なお,給縛処理は11年生と17年生の'西村早生'および'禅寺丸'を供試して,2年枝単位に2000年の満開前2週間に1.6mmの被覆線を用いて行った.一時結縛処理は60日後に被覆線を取り外し,永久結縛処理は被覆線を取り外さなかった.1. 2年枝の永久および一時結縛処理により,'西村早生'ど禅寺丸'における雌花の花芽はそれぞれ6月5日と6月8日に分化し,一方,対照区の雌花の花芽はそれぞれ6月15日と6月18日に分化した.雄花の分化時期も一時結縛および永久結縛区により,10日程度早まった.2. 永久および一時給縛処理により,'西村早生'と禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は6月中旬または下旬までにがく片形成または花弁形成の段階に発達したが,7月中旬以降3月初旬までの花芽の発達は花弁形成以降の段階までは進まず,両結縛処理区と対照無処理区との差違はなくなった.3月初旬から3月下旬にかけて,'西村早生'ど禅寺丸'における雄花と雌花の花芽は雄ずいおよび雌ずい形成期に発達したが,処理間の差異はなかった.3. 永久および一時結縛処理により,花芽分化期以降の'西村早生'雌花ど禅寺丸'雌花と雄花の花芽数は対照区に比べて増加した.4. 永久および一時結縛処理により,'西村早生'および'禅寺丸'の新しょうの乾物率はともに6月上旬以降に対照区に比べて増加し,また,両品種の葉の乾物率は結縛処理により,5月下旬以降著しく高まった.5. '西村早生'および'禅寺丸'両品種において,永久および一時結縛処理により,翌春に萌芽した新しょう上に着生した雌花と雄花はともに増加したが,処理にかかわらず,上位の新しょうでは雌花,下位の新しょうほど雄花の着生が多かった.新しょう長は両結縛区で短くなったが,永久結縛区は一時結締区に比べて,抑制の程度が著しかった.以上のことより,'西村早生'および'禅寺丸'において,満開前の2年枝結縛処理は結縛の取り外しの有無にかかわらず,新しょうの乾物率の増加を促進し,両品種の花芽分化が早まり,花芽数が増加するものと考えられた.なお,結縛を取り外した方が取り外さないよりも,新しょうの発育にとって好適と考えられた.
著者
西岡 千惠 (2008-2009) 西岡 千恵 (2007)
出版者
高知大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病細胞株HL60、NB4について、既存の抗癌剤(シタラビン、ATRA)とチロシンキナーゼの下流シグナル阻害剤(MEK阻害剤AZD6244)との併用により、単剤に暴露されたときよりも更に効果的に細胞増殖が抑制されることをMTTアッセイやコロニーアッセイで明らかにした。また、併用の際、薬剤の投与の順番を変えることによっても相乗効果の程度に変化が見られ、薬剤投与の順番も重要であることを確認した。またこれらの薬剤を併用することによって、相乗的に細胞増殖抑制やアポトーシス誘導能が高められることを明らかにした。さらに、MEK/ERKシグナルが恒常的に活性化している白血病患者の末梢血から採取した白血病細胞においても、これらの薬剤の併用による相乗的な細胞増殖抑制効果を確認し、このような薬剤の組み合わせが実際の臨床の現場においても効果的ではないかと思われる。また、長期間のチロシンキナーゼ阻害剤投与による薬剤耐性化のメカニズムを検討し、臨床の現場における問題点の克服につなげていきたいと考えた。まず、チロシンキナーゼ阻害剤(sunitinib)を白血病細胞株に長期間投与し、薬剤耐性株を樹立した。そして、この耐性株を用いて耐性化の機序の検討を行った。その結果、親株ではsunitinibによって抑制されるJAK2-STAT5シグナル活性が耐性株では抑制されないことを確認した。また、耐性株では親株に比べてJAK2を活性化させるIL-6と、IL-6のプロモーター領域に結合する核内転写因子c-Junの量が増加していた。そこで耐性株をIL-6阻害剤やJAK2阻害剤で前処理しその後sunitinibを投与してみたところ、薬剤耐性株は親株同様suitinibへの感受性を取り戻した。以上の結果から、sunitinibによってc-Junを介してIL-6が誘導され、このIL-6によってJAK2-STAT5シグナルが活性化、薬剤耐性化を引き起こしたのではないかと考えられる。このようなケースでは、IL-6やJAK2の阻害によって耐性化が克服される可能性が示唆された。このように症例の状態に合わせて適切な薬剤を組み合わせることでより効果的な治療法となりえることを見出した。
著者
吉田 勝平
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

エネルギー変換用蛍光色素の開発を目的として新規複素多環系固体発光性色素を分子設計・合成し、これら色素の溶液状態および固体状態における光物性を測定し、固体発光性とX線結晶構造の相関性を追究した。さらに、色素を高分子樹脂中に含有させた蛍光フィルムを試作し、それら光物性や耐光性を評価した。蛍光フィルムは優れた波長変換機能と良好な耐光性を示し、太陽光や人工光の波長分布を簡便に調整できることがわかった。
著者
西岡 孝
出版者
高知大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本年度は,CeRu2Al10の相転移の異常性を明らかにするため,正常な反強磁性転移を引き起こすRFe2Al10(R=Ce以外の希土類元素)の磁性を調べて比較した。それを実行するために,7T横磁場無冷媒マグネットを用いた全自動角度回転磁化・ホール効果システムの開発を行い,RFe2Al10の単結晶を9種類フラックス法で作成し,それらの電気抵抗,磁化の測定を行った。RFe2Al10はCeRu2Al10と同じYbFe2Al10型結晶構造を持っている。CeRu2Al10の相転移の主要な特徴を列挙すると次のようになる。(1) 高い相転移温度 (2) 半導体的挙動 (3) 巨大な結晶場分裂 (4) 転移温度以下でギャップの解放 (5) 転移温度以下で電気抵抗のとび (6) 磁性は2次元的 (7) 磁気秩序の伝搬ベクトルはb軸 (8) 磁性は一軸異方性を示すがa,c両軸でメタ磁性。RFe2Al10の電気抵抗はすべて転移温度以下でとびを示した。また,それらの磁化測定はすべてac面内の2次元性を示した。特に,DyFe2Al10のac面内の磁化の角度依存性は,らせん磁性を反映して,結晶構造の4回対称性とは異なる2回対称性が現れていることが明らかになった。これらの測定結果はCeRu2Al10の上で述べた(4)~(8)の特徴はCe以外の希土類にも現れていることがわかった。一方でCeRu2Al10および関連物質のCeOs2Al10のNQR測定により(1)~(3) の特徴は大きな伝導電子とf電子の交換相互作用Jcfに起因するものであることがわかった。したがって,CeRu2Al10の相転移は全く新しいものではなくて,結晶構造に密接に関係した相転移が大きな伝導電子とf電子の交換相互作用Jcfによってエンハンスされたものと理解することができることが明らかになった。
著者
刈谷 三郎 上野 行一 小島 郷子 笹野 恵理子
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、「遊び」の活動に着目して、日本と韓国の子どもの日常生活や「遊び」の現状を調査し、子どもの置かれている実態を把握する。そして、いわゆる「実技教科」と呼ばれる、音楽科、図画工作科、体育科、家庭の学校での教科カリキュラムと子どもの日常生活における「遊び」の経験がどのように関連しているかを分析し、「遊び」と実技教科カリキュラムとの関係を考察することを目的とした。これまで私たちが行ってきた「教科教育における授業評価システムに関する教科横断的研究」(平成13-15年科学研究費助成)及び、戦後の教育課程比較や学習指導方法の比較をまとめた「日韓教科教育入門」(平成17年)の研究において比較的似通った教育課程を持つ両国で、子どもたちの「遊び」と実技系教科がどのように関わり、結びついているかの比較を行った。これまでの研究成果を元に、まず、子どもの「遊び」の日韓比較を、合計約2000名の児童を対象として都市部と地方に分け調査を行い、当該調査の分析と考察を行った。これについては「日本・韓国の子どもの遊び比較研究」と題し、刈谷三郎が2007年12月2007International Leisure Recreation Seminar(ソウル)において、その成果を発表した。韓国における高学歴志向、少子化、受験といった社会的背景が、子どもの「遊び」に深く投影されていることを指摘した。質疑の中で東北アジアでの研究への発展が示唆された。引き続き、子どもの「遊び」の実態把握からよみとれる日常生活経験を軸に、実技教科カリキュラムとの関連において考察を行い、遊びを自発的な自己完結的な子どもの日常生活文化として考えると、日本の子どもは実技教科が形成する学校教科文化と子どもの日常生活文化の乖離を強く意識し、韓国の子どもの方が、日常生活文化と学校の実技教科文化との接続を認識し、融合的に把握していること論証した。これらの研究成果は韓国・日本教育学会誌(韓国・日本教育学研究)において「実技系教科と遊びの日韓比較研究」として掲載予定(2008年8月)である。しかしながら、現時点では当初の目的の一つであった、新たな実技教科カリキュラムモデルの提案には至らなかったことが課題として残された。
著者
長谷川 耕二郎 北島 宣
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

カキ果実の離脱過程は"誘導段階"→"決定段階"→"実行段階"と考えられるが、離脱過程に関与する要因は明らかではない。本研究は、離脱過程に関与する要因を明らかにするとともに、離層細胞の形態形成と離脱過程における形態的変化を明らかにし、"実行段階"を分子細胞生物学的に捉えようとした。離層細胞は満開6週間前から識別されはじめ、満開4週間前には離層組織が観察でき、満開1週間後にはほぼ完成していた。樹上環状剥皮処理果実と室内水差し処理果実の離脱の推移はほぼ同様であり、両者の離脱過程はほぼ同様であると考えられた。20℃→5℃の変温処理では子房より果梗が顕著に早く離脱するので果梗と子房の離脱過程は異なると考えられた。エチレン発生量は離脱前に増加し、果肉部より果梗部から発生していた。さらに、35℃、20℃で離脱前に急激に多量のエチレンが発生し、変温処理では少量ではあるが離脱前にピークを示しており、少量のエチレンが離脱に密接に関係していると考えられた。採取果実のジベレリンとサイトカイニン様物質処理による、離脱、呼吸量、エチレン発生量の違いはみられず、これらは離脱過程に関係していないと考えられた。35℃処理、20℃処理、20℃36時間後5℃処理、20℃24時間後5℃処理、20℃12時間後5℃処理の順に自然離脱と強制離脱の差が小さく、離脱の実行段階の進行は温度に依存していると考えられた。35℃、20℃、20℃48時間後→5℃、20℃36時間後→5℃、20℃24時間後→5℃処理ですべて離脱したが5℃処理は離脱せず、20℃では24時間までに決定段階に入っていると考えられた。20℃処理果実の離層細胞は処理24時間後から凝縮した核が散在的に観察でき、時間の経過に伴ってその数は増加した。このことから、果実の離脱は核の断片化によるアポトーシスである可能性が示唆され、実行段階は核の断片化で捉えられると考えられた。
著者
深見 公雄 山岡 耕作 西島 敏隆
出版者
高知大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

魚類の種苗生産における初期餌料として現在多用されているS型ワムシは、魚種によっては孵化後の摂餌開始時期の口径に比較して大きすぎるため仔魚は効率よく摂食することができず、その初期減耗の大きな原因になっている。このため本研究では、S型ワムシに代わるより小型でかつ安定大量培養が可能な餌料の開発を目的とし、原生動物(鞭毛虫・繊毛虫)の仔魚初期餌料としての可能性について検討した。また、天然海域に生息する仔魚の消化管内容物を調べ、原生動物プランクトンの消費者としての仔魚の役割について調べた。まず稚魚ネットにより土佐湾や伊予灘で採取された全長数mm程度の仔魚の消化管内容物を、微生物学的な手法を用いて詳細に観察した。その結果、大きさが10〜40μm程度の原生動物が仔魚によって捕食されているのが確認された。約47属319個体の仔魚について、その消化管内部を観察した結果、魚種によって、(1)観察した個体のほとんどすべてで原生動物が多量に観察されたもの、(2)観察されないかされても比較的少量であったもの、および(3)全く原生動物の捕食がみられなかったものの3群に分かれることが明らかとなった。(1)のグループにはカワハギ・アミメハギ・ヒメダラ等が、また(2)のグループにはシロギスやタチウオ等が、(3)のグループにはカタクチイワシ・マイワシ・クロサギ等が該当した。天然仔魚が原生動物を摂餌していることが明らかとなったため、種苗生産により得られた孵化後2〜3日の摂餌開始期にあたる仔魚を約24時間飢餓させたのち、海水中より分離した鞭毛虫および繊毛虫を与えた。その結果、孵化後3日齢のアユ仔魚や孵化後4日齢のヒラメ仔魚ではまったく繊毛虫を摂食していないことを示す結果しか得られなかった。またマダイにおいては、孵化後3日齢の仔魚はほとんど摂食しなかったものの6日齢仔魚ではわずかながら仔魚添加実験区での繊毛虫の密度が無添加対照区に比較して減少しており、マダイ仔魚による繊毛虫の摂餌が示唆された。また前記の魚種に比較してより口径の小さい2日齢のキジハタ仔魚では、繊毛虫を捕食していることを示唆する結果が得られた。以上の観察・実験結果から、魚種によっては孵化直後の初期餌料として繊毛虫等の原生動物プランクトンが有効であることが示唆された。
著者
藤田 尚文
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

曲面の違いの影響について調べた。また、図形の向き(上向きか下向きか右向きか左向きか)の違い、比べる曲面(同じ曲面か異なる曲面か)の違い、図形の置く位置(右と左か上と下か)の違いの影響についても調べた。3次元の曲面では他の要因の影響を受けやすいため、曲面を2次元のものに限定して実験を行った。実験において被験者はアイマスクをして机の前に座り、提示された刺激図形を右手の人さし指で触れる。被験者には1個の標準図形と1個の比較図形が提示される。被験者の課題はそれらの提示された図形を比べてより高い図形(より深い図形)を選ぶかあるいは両者が同じかを判断することである。極限法により主観的等価値(PSE)を測定した。実験で用いた標準図形と比較図形には山曲面を持つ図形と谷曲面を持つ図形の2種類がある。山曲面と谷曲面は、一山または一谷のsin曲線であった。標準図形の曲面の幅は5.1cmの1種類;高さ(深さ)は1.0cmの1種類。比較図形の曲面の幅は3.4cmの1種類;高さ(深さ)は0.1cmから1.5cmまで0.1cm刻みで15種類。実験1〜4において以下の4点が影響を及ぼしていることが分かった。この4点は、図形の位置(右と左か上と下か)に関係なく影響を及ぼしていた。図形の位置については、標準図形の位置が右(上)の時と左(下)の時の数値には差がないことから、影響はないと考えられる。(1)幅5.1cmと幅3.4cmでは幅3.4cmを高く(深く)知覚し、幅5.1cmを低く(浅く)知覚する。(2)標準図形の向きを下向きにした時に高く(深く)知覚し、標準図形の向きを左向きにした時、低く(浅く)知覚する。(3)幅3.4cmの山曲面と谷曲面では山曲面を高く(深く)知覚し、谷曲面を低く(浅く)知覚する。(4)比べる曲面、比べる曲面の幅が異なる時、比較図形を高く(深く)知覚する。(山曲面と谷曲面、幅3.4cmと幅5.1cmを比べた時、比較図形を高く(深く)知覚する。)比較図形(幅3.4cm)の山曲面、谷曲面の影響の原因については、山曲面の時は指が外側を通り、谷曲面の時は指が内側を通るためと思われる。標準図形(幅5.1cm)では影響がなかったことから、曲面の幅が広くなる程、影響力はなくなると推測される。向きの影響については、前後の平地の高さをずれて知覚するためだと思われる。上、下、右向きの時は、後ろの平地を低く感じるために高く知覚し、左向きの時は、後ろの平地を高く感じるために低く知覚すると考えられる。図形の触りやすさ、触りにくさも影響していると思われる。
著者
是永 かな子
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は多文化共生社会スウェーデンにおけるインクルージョン教育の展開を、実践的、制度的、歴史的観点から分析することを目的とする。本年度は、主にインクルージョン教育が成立する背景と展開過程を検討した。具体的にはノーマライゼーションが提唱され、義務教育学校としての基礎学校が創出された1960年代以降現在に至る、通常学級での個のニーズに応じた教育の展開を分析した。本年度の研究活動は、スウェーデンでの実地調査および研究交流と、日本国内での国際交流と学会発表および論文執筆であった。まず、平成19年4月にはスウェーデン・パティレ市の知的障害特別学校長、特別教育家らを高知大学に招聘し、附属特別支援学校の教員や通常小学校の教員を交えて、日本の特別支援教育とスウェーデンのインクルージョン教育について意見交換を行った。次に平成19年10月22日-31日に渡瑞して、実地調査および資料収集を行った。それらは第一にスウェーデン・パティレ市のインクルージョン教育の実践についての調査研究であり、第二にマルメ市の大学病院内ハビリテーリングにおける障害をもつ子どもを支援する個別サービスチームの編成など医療と教育の連携体制の整備の検討、第三に自閉症学校を訪問して分離的教育措置による個に応じた教育の保障の考察、第四にイェーテボリ大学教育学部図書館におけるインクルージョン教育関連文献の収集、第五にイェーテボリ大学教育学部のJan-Åke Klassonらと意見交換を行いインクルージョン教育に関する最新の研究動向を把握すること、である。最後に、平成20年3月にも渡瑞して、同様の内容で学会発表、実地調査および資料収集を行った。日本国内での学会発表は8月4,5日の日本発達障害学会、2007年9月22,23,24日の日本特殊教育学会、2007年9月29,30日の日本教師教育学会であった。日本国外での学会発表は2008年3月6,7,8日の北欧教育学会であった。また、研究の成果を分担執筆として公表した。