著者
福井 晴偉 大瀬戸 清茂 塩谷 正弘 有村 聡美 多久島 匡登 大野 健次 唐沢 秀武 長沼 芳和
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.29-33, 1996-01-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

目的: 椎間関節を支配する各々の脊髄神経後枝内側枝がどの部位に関連痛として腰痛に関与しているか調べる目的で調査を行った. 対象と方法: 腰椎椎間関節症が疑われた患者で, 高周波凝固法による facet rhizotomy の電気刺激時に痛みの部位に放散痛が得られ, かつ疼痛再現性が得られた患者30人とした. 結果: 放散痛の部位を body diagram に記載し, L1~S1までの後枝内側枝の関連痛の部位チャートを作った. 結論: 各々の後枝内側枝の放散痛の部位について, L1はL1/2椎間関節直上を中心とする傍脊柱部, L2は主にL2/3椎間関節直上を中心とする傍脊柱部, 一部がその上下の傍脊柱部, 啓部, L3はL3/4椎間関節直上を中心とする傍脊柱部, 一部がその上下の傍脊柱部, 大腿外側部, L4はL3/4からL4/5椎間関節直上を中心とする傍脊柱部, 一部がその上下の傍脊柱部, 大腿外側部からそけい部, L5はL4/5からL5/S1椎間関節直上を中心とする傍脊柱部, 一部がその上下の傍脊柱部, 臀部, 大腿外側部, S1はL5/S1椎間関節直上を中心とする傍脊柱部, 一部がその上下の傍脊柱部, 臀部, 大腿外側部であった.
著者
高谷 哲夫 安心院 純子 長谷川 純 山崎 一
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.516-518, 2003-10-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
11

星状神経節ブロック (SGB) は網膜の血流を増やし, 視神経炎の治療に有効とされている. SGBで, 視神経炎後の視覚障害が著明に改善した症例を経験した. 症例は60歳の女性で, 左眼の視力低下と両眼の乳頭浮腫, および右眼のマリオット盲点の拡大, 左眼の中心暗点とマリオット盲点の拡大を認め, 両眼の視神経炎と診断された. ステロイド治療によって視力はかなり改善したが, 左眼の色覚異常や変視症などの視覚異常が残った. 視神経炎罹患1年6カ月後, 両手のレイノー現象のために当科外来で左SGBを開始した. 7回目のSGBを行った頃より左眼の変視症と色覚異常の改善を徐々に自覚するようになった. 約半年間の計23回のブロック後には, 色覚異常と変視症は著明に改善し, 視力もさらに改善して軽度の小視症を残すのみとなった. 陳旧性の視神経炎でも積極的にSGBを試みる価値があると考える.
著者
長谷川 守 服部 卓 石埼 恵二
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.5-10, 1997-01-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
17

これまで Minnesota Multiphasic Personality Inventory (MMPI) を用いた性格特性の痛みへの影響を検討する研究が数多く行なわれてきた. しかし, 精神病理学的な性格特性を知る目的で作成されたMMPIを痛みの強さの評価に用いることのむずかしさが問題とされている. そこで今回は, 慢性疼痛患者150人を対象に性格傾向がどれくらい痛みの強さに影響をもたらすかを検討した. 治療や診療期間などの影響を最小限にするため, 初診患者のみを選択した. 患者の疼痛持続期間は6カ月以上で, 疼痛部位は腰部, 頸部, 顔・頭, 肩, その他と慢性疼痛のみられる部位全般を含んでいた. 治療前に interview 形式により McGill Pain Questionnaire (MPQ) 日本語版とその他の疼痛計測尺度 (Visual Analogue Scale: VAS, Verbal Rating Scale: VRS, Numerical Rating Scale: NRS) を施行し痛みの強さを評価した. さらに, MMPIを患者に手渡し施行した. 分析の結果, MMPIの各尺度の示す性格傾向は痛みの強さそのものの予測には役立たないことがわかった. しかし, MPQを用いて痛みの強さを質的側面から検討すると, 性格傾向との関連性が示され注目された.
著者
檜高 育宏 河内 正治
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.126-128, 2004-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
6

右前胸部痛を主訴とし, 肋間神経痛と診断された76歳男性の胃潰瘍の症例を経験した. 右肺上葉切除術と右肋間神経痛の既往があり, 肋間神経痛の診断でペインクリニックに紹介された. 痛みの性状は締め付けられるような痛みで, 夜間に多く, 2~8時間持続する. また非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) の内服で痛みは一時的に減弱し, アロディニアは認めなかった. 不眠と食欲不振の訴えもあり, 体重減少を認めたため, 持続硬膜外鎮痛を行い, 胸部痛は消失したが食欲は戻らなかった. さらに腹痛が出現したため, 上部消化管内視鏡検査を受け巨大胃潰瘍が発見された. 内科に転科し治療を受け, 胸部痛, 腹痛ともに消失し食欲も回復した. 胸痛のみを主訴とする胃潰瘍はまれであるが, NSAIDs服用例では念頭におくべき合併症である.
著者
田中 陽 佐古 博恒 齋藤 繁
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.153-155, 2003-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
4

三叉神経第1枝の帯状疱疹では, ぶどう膜炎や角膜炎を合併することがまれではない. 今回われわれは, 3例の眼疾患を合併した症例を経験した. 第1例 (透析治療中の77歳の男性) は, 皮疹出現後8日目より角膜潰瘍とぶどう膜炎が発症し, 次第に悪化した. 第2例 (55歳の女性) は, 皮疹出現後8日目より角膜浮腫とぶどう膜炎が発症した. 第3例 (68歳の男性) は, 皮疹出現後15日目より表層性角膜炎と沈着物を伴う毛様ぶどう膜炎が発症し, これらの症状は次第に悪化した. 最初の2例においては, アシクロビル眼軟膏と抗菌剤の局所投与により次第に眼症状が改善した, 第3例目は, 眼症状は軽微で増悪はしなかった. 三叉神経第1枝領域の帯状疱疹では, その治療に際して眼症状の注意深い観察が必要である.
著者
小山 なつ 横田 敏勝
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.103-115, 2000-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
83
被引用文献数
1

各種神経栄養因子とその受容体は, 脊椎動物の神経系の発生を調節する. 神経栄養因子の原型である神経成長因子 (NGF) が胎生期に作用しないと, 生まれる前に一次侵害受容線維が死滅する. ヒトの先天性無痛無汗症は, NGFの受容体TrkAの遺伝子の変異によって発生する. 成熟後も神経栄養因子は一次感覚ニューロンの遺伝子発現を調節する. 例えば, 一次侵害受容ニューロンの約半数がNGF, 残りの約半数がグリア細胞由来神経栄養因子 (GDNF) の作用を受ける. NGFは炎症による痛覚過敏にも関与する. 炎症が起こった局所のNGF産生が増え, 侵害受容線維の熱刺激感受性を直接的, 間接的に高める. 局所の肥満細胞はNGFに反応して増殖し, 活性物質を放出して, 侵害受容線維を過敏化する. NGFは侵害受容線維の中に取り込まれて細胞体に運ばれ, テトロドトキシン抵抗性Naチャネルの遺伝子を発現させて, 侵害受容線維の興奮に影響する. またNGFは脳由来神経栄養因子 (BDNF) の遺伝子発現を高める. BDNFは脊髄内に放出されて, 二次侵害受容ニューロンの伝達物質に対する感受性を高める. 末梢神経が切断されるとNGFの取り込みが止まり, 細胞体での遺伝子発現が伝達型から再生型に変わり, 異常興奮を引き起こす.
著者
長谷川 守 服部 卓 猿木 信裕 石埼 恵二 木谷 泰治 町山 幸輝 藤田 達士
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.85-91, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

McGill Pain Questionnaire (MPQ) は多くの国で標準化された Pain Rating Scale (PRS) であるが, 言語や文化の違いから, わが国では, 標準化されていない. 今回, われわれは慢性疼痛患者105人を対象に Meizack らの方法論に準拠した日本語版MPQ (J-MPQ) (疼痛表現は佐藤らによる) と他のPRSを同時に施行しJ-MPQの信頼性と妥当性を検討した. さらにSTAI (State-Trait Anxiety Inventory: 状態-特性不安尺度) によって状態不安とJ-MPQ得点との関連性を検討した. 検討の結果, J-MPQの信頼性と妥当性は証明されPRSとしての有用性は確認された. 各 subscale 間は比較的高い相関があり, 痛みの構造を評価する尺度としては独立性に問題があることがわかった. そのため, 他のPRSと最も相関が高く, 各 subscale の総得点であるPRI-T (Total score of the Pain Rating Index) をPRSの代表として使用するのが望ましいと考えられた. また, STAIとJ-MPQには低い相関しかみられず不安とJ-MPQ得点との関連性は低いと考えられた.
著者
清水 直子 田代 雅文 須加原 一博
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.138-141, 1998-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
8

異型狭心症の治療中に, 腹痛や腹部膨満などイレウス症状を繰り返し, 腹部症状が狭心症発作を誘発する症例を経験した. 持続硬膜外ブロックによって腹痛や腹部膨満などのイレウス症状はもちろん, 狭心症症状も著明に改善した. しかし, 硬膜外注入を停止するとイレウス症状の増悪だけでなく狭心症発作が頻発するため, 2カ月以上にわたって持続硬膜外ブロックによる管理を必要とした. 入院が長期にわたるため, 外泊および外来通院による管理を余儀なくされた. 硬膜外カテーテルの長期留置による効果の減少, 注入時の背部痛などが生じ, カテーテルを抜去せざるをえなくなった. 保存的治療にて症状が改善せず, 最終的に手術が施行された.
著者
大野 健次 延原 弘明 有村 聡美 唐澤 秀武 多久島 匡登 塩谷 正弘 井関 明生 森下 孝仁
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.92-96, 1996-04-25 (Released:2009-12-21)
参考文献数
16

目的: 三叉神経痛に対する小柴胡湯・桂枝加芍薬湯併用療法の有効性を調べるために visual analogue scale (VAS) と4段階評価を用いて prospective study を行った. 対象と方法: 特発性三叉神経痛患者13名を対象とした. 対象患者には朝夕の食前に, 小柴胡湯と桂枝加芍薬湯のエキス顆粒をそれぞれ1包ずつ服用させた. 投与前と2週間後に発作痛の強さをVASで評価し, 痛みの頻度および自覚症状の総合的な強さについて服用開始前を10とする numerical score で回答を求めた. また食事と洗顔について, (1)全く痛まない/(2)軽く痛むが支障なし/(3)痛いがなんとか可能/(3)痛くて不可能/の4段階評価を投与前と2週間後の時点で行った. 結果: 2週間後のVASは有意に低下した (p=0.0030). 食事・洗顔に際しての4段階評価も有意に改善した (それぞれp=0.0158, p=0.0021). 2週間後, 痛みの頻度は平均2.8に, 自覚症状の総合的な強さは平均3.6に低下した. 結論: 小柴胡湯と桂枝加芍薬湯の併用療法は発作痛の強さを軽滅し, その頻度を減少させた. また食事・洗顔に際しての痛みも軽減し, 自覚症状を全体として改善した. 本療法は三叉神経痛の薬物療法として有用であると思われた.
著者
岩倉 健夫 大城 宜哲 宮内 哲 時本 康紘 福永 智栄 柴田 政彦 柳田 敏雄 真下 節
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.46-50, 2003

右中足骨骨折後3週間のギプス固定により右足背部に allodynia を示した患者1名を対象として, allodynia 発現時の患側および健側への非侵害刺激, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激に対する脳賦活領域を functional MRIを用いて比較検討した. 健側への刺激では第一次体性感覚野と頭頂連合野が, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野が反応したのに対し, allodynia 発現時の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野, 島, 頭頂連合野, 前頭前野内側部, 前帯状回, 補足運動野など広い領域で信号の増強がみられた. allodynia は, 神経損傷後や組織障害後にみられる徴候の一つであるが, その痛覚認知機能はまだ明らかではない. 本症例でみられた腫脹, 皮膚温の上昇, allodynia などのCRPS type Iの症状は自然治癒したが, 初期にはCRPS type Iの症状がそろっており, 本症例でみられた allodynia はCRPS type Iと病態は共通している. 本研究によりCRPS type Iにみられた allodynia の痛覚認知機能を知るうえでの重要な知見が得られた.
著者
上野 博司 細川 豊史 山下 智充 廣瀬 宗孝 水野 省司
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.446-450, 2002

Epiduroscopy 施行時では, 癒着剥離のために比較的大量の生理食塩液 (以下: 生食) を硬膜外腔に注入するため, 脳脊髄圧が上昇し頭痛などの合併症が起こるとされている. われわれの施設ではこの合併症を予防するため, 頸部硬膜外カテーテルを挿入し硬膜外腔圧と頭痛発症との相関について検討を行っている. Epiduroscopy 施行中に頭痛を訴えた2症例につき, この頸部硬膜外腔圧変化曲線を解析, 検討した結果, 特に癒着剥離時の痛みに伴う体動, 癒着剥離後の生食の急速注入によって圧が過剰に上昇し, 80mmHg以上になると頭頸部の圧迫感や疼痛を訴えること, 生食の注入を一時的に停止すると1~2分以内に圧は元のレベルまで回復することなどが明らかになった. Epiduroscopy 施行時に頸部硬膜外腔圧をモニターしながら処置を行うことは, 脳脊髄圧元進に伴う合併症の発現とそのメカニズムの解明に有用と考えられた.
著者
水上 奈穂美 新谷 知久 山内 正憲 橘 信子 高橋 三佳 山蔭 道明
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
The journal of the Japan Society of Pain Clinicians = 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.111-114, 2012-06-25

上腕骨悪性腫瘍に対して肩甲帯離断術を施行した患者における,術後の幻肢痛ならびに幻肢感覚に対してガバペンチンが奏効した3症例を経験したので報告する.症例1は切断後5日目にnumerical rating scale(NRS)で2-3/10の幻肢痛が出現し,オキシコドン(10 mg,分2)で対応したが,14日目より幻肢痛がNRSで8/10と増悪したためガバペンチン300 mg/日を開始したところ,痛みはNRSで0-1/10に改善した.症例2は切断前から腫瘍による神経障害痛が出現しており,ガバペンチン300 mg/日の投与によりNRSで5/10から3/10になり痛みの程度の改善を認めた.切断後9日目より生じた右上腕全体の幻肢感覚に対しても,同量のガバペンチンが奏効し幻肢感覚は消失した.症例3は切断後2日目より重量感を伴う幻肢痛が出現したが,ガバペンチン600 mg/日で痛みはNRSで6/10から2/10に改善した.四肢切断後の幻肢痛や幻肢感覚に対して,ガバペンチンは有効であることが示唆された.