著者
菊地 悦子 谷亀 光則 堺 秀人
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.415-421, 2001-05-30
被引用文献数
3

2型糖尿病患者が病気によって感じる負担感について, 重大な合併症がなく, 診断前とほぼ同程度の勤労をしているか, 勤労可能な糖尿病患者234名のアンケート調査の結果を検討した. 負担感に関与している因子として, 基本属性, 治療法, HbA1c値, 合併症, 症状, 日常のつき合い, 食事療法, 運動療法, 薬物療法, 社会的因子, 性格傾向など85因子をとりあげた. 負担感への関与が明らかであったのは, 「糖尿病と共に生きていくことや合併症を起こす不安」「食事療法」「糖尿病のために他人から受ける嫌な思い」「HbA<SUB>1</SUB>c値が高いこと」「インスリンを他人に隠すこと」「手足のしびれ」であった. 今後の人生や合併症への不安は, HbA<SUB>1</SUB>c値や血糖値の自己評価などと関係がみられた. 職業上の役職がない人, 女性, 年齢が低い人が, 糖尿病のために他人から嫌な思いを受けたと感じやすく, 社会の中で療養を行っていく上での負担感が強いことが明らかになった.
著者
谷田貝 利光 六角 久美子 草鹿 育代 中村 友厚 長坂 昌一郎 石川 三衛 斉藤 寿一 石橋 俊
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.325-328, 2002-05-30
被引用文献数
4

糖尿病の既往歴が無く, 分娩7日後に糖尿病性ケトアシドーシス (DKA) で発症した1型糖尿病の症例を経験した. 症例は29歳女性, 2000年3月10日当院で第1子男児を満期産で正常分娩した. 14日から上気道炎症状を認め, 翌15日に尿糖陽性を指摘された. 17日朝から口渇, 多尿, 悪心, 嘔吐が出現し悪化したため入院. 血糖値835mg/d<I>l</I>, 尿ケトン体強陽性, 代謝性アシドーシスからDKAと診断された. HbA<SUB>1c</SUB>は67%と軽度上昇にとどまっていた. 血中・尿中CPRは低値で内因性インスリン分泌能は著しく低下しており, 経過中回復を認めなかった. 入院時Lipase, Elastase 1の軽度上昇を認め, また抗GAD抗体, 抗IA-2抗体などの自己抗体は陰性だった. 本症例を含めて過去に報告された分娩後にDKAで発症した1型糖尿病6例の臨床像は, 劇症1型糖尿病にほぼ合致しており, その成因を考える上で重要と思われた.
著者
岩田 実 山崎 勝也 宇野 立人 薄井 勲 石木 学 小橋 親晃 浦風 雅春 小林 正 戸邉 一之
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.7, pp.609-614, 2008-07-30
被引用文献数
1

症例は81歳男性.1975年より2型糖尿病を指摘され,2001年よりインスリン治療を開始,合併症については2期腎症,単純性網膜症,神経障害を指摘されていた.2004年3月末より,全身倦怠感,発熱が出現し当科入院.白血球尿および顕微鏡的血尿を認め,当初尿路感染症を疑い抗生物質を投与したが,次第に腎機能が悪化し,尿所見も改善しないため急速進行性糸球体腎炎を疑い精査を行った.MPO-ANCA (myeloperoxidase antineutrophil cytoplasmic autoantibody)高値や,腎生検にて細胞性半月体を認めMPO-ANCA関連腎炎と診断,プレドニン40 mg/日より開始し,腎機能障害,尿所見の異常,MPO-ANCA高値は速やかに改善した.ANCA関連血管炎は高齢者に好発するため,罹病歴の長い高齢糖尿病患者であっても,急速な腎機能の悪化や尿所見に異常を認めた場合は,急速進行性糸球体腎炎の合併も疑い,速やかに対処する必要があると考えられた.
著者
田中 昌一郎 粟田 卓也 島田 朗 村尾 敏 丸山 太郎 鴨井 久司 川崎 英二 中西 幸二 永田 正男 藤井 寿美枝 池上 博司 今川 彰久 内潟 安子 大久保 実 大澤 春彦 梶尾 裕 川口 章夫 川畑 由美子 佐藤 譲 清水 一紀 高橋 和眞 牧野 英一 三浦 順之助 花房 俊昭 小林 哲郎 日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-75, 2011-01-30
参考文献数
19
被引用文献数
2

日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会の緩徐進行1型糖尿病分科会(旧日本糖尿病学会緩徐進行1型糖尿病調査委員会)では委員会委員の所属する施設において発症から5年以内の新規受診糖尿病687例を前向き(2004年4月~2009年12月)に登録し膵島関連自己抗体(glutamic acid decarboxylase[GAD]抗体,insulinoma-associated protein 2[IA-2]抗体およびinsulin autoantibodies[IAA])の測定を行った.2型糖尿病と思われる症例で膵島関連自己抗体が一種でも陽性の場合には緩徐進行1型糖尿病:slowly progressive IDDM(以下SPIDDM)と病型区分した.その結果,1)2型糖尿病と思われる症例の10%(49/474, 95%信頼区間:8-13%)にSPIDDMが認められた.2)膵島関連自己抗体陰性の2型糖尿病に比しSPIDDM例の自己免疫性甲状腺疾患の合併頻度,HbA1c値,初診時のインスリン治療の頻度は有意に高く,BMIは有意に低かった.3)SPIDDMではGAD抗体の頻度(69%,34/49)はIA-2抗体の頻度(39%,19/49)やIAA(29%,14/44)の頻度に比し有意に高かった.4)SPIDDMでは急性発症1型糖尿病に比し膵島関連自己抗体の単独陽性例が高頻度だった.以上の結果から2型糖尿病と思われる症例に高頻度にSPIDDM症例が含まれる可能性があること,SPIDDMは2型糖尿病や急性発症1型糖尿病と異なる臨床的特徴を呈することが全国規模調査で明らかとなった.<br>
著者
黒瀬 聖司 今井 優 別府 浩毅 内藤 玲 宮本 雅子 桝田 出
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.631-635, 2010-08-30

心拍数減衰応答(HRR)を用いた糖尿病患者の運動強度設定法について検討した.対象は糖尿病教育入院患者45名である.HRRはトレッドミル運動負荷試験終了時から直後1分目の心拍数減衰値と定義し,HRR>18拍/分を正常群,≦18拍/分を低下群に分類した.また心肺運動負荷試験から嫌気性代謝閾値(AT)を測定し,Karvonen法によりATに相当するestimated-kを求めた.その結果,HRRの低下は48.9%に認めた.estimated-kは正常群0.37±0.12,低下群0.27±0.14であり有意な差を認めた(p<0.05).HRRはestimated-kとの間に正の相関関係(r=0.39,p<0.01)を認めた.またestimated-kに影響する因子の多変量解析の結果,HRRが抽出された.以上から,HRRが低い症例ではk値すなわち目標心拍数を低めに設定することが必要と考えられ,HRR低下群ではk=0.27が適当と考えられた.<br>
著者
坂根 直樹 松井 浩 澤入 房子 森 直樹 平澤 勇 竹村 智子 村上 博之 小暮 彰典 高倉 康人 梅川 常和 吉岡 敬治 吉田 俊秀
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.521-524, 2001-06-30

われわれは健康学習 (患者の生き方や価値観を重視し, 行動科学手法を用いた保健指導論) を用いた「楽しくてためになる糖尿病教室」の普及を目指し, 全国でグループワークやロールプレイを中心とした糖尿病教育ワークショップを実施し, 糖尿病医療スタッフ995名の意識や態度に与える影響を検討した. プログラム内容検討, 参加者の目標設定, グループワークや体験学習の必要性の有無で有意差が認められた. 従来は講義時間が大半を占めていたが, 終了後はグループワークや実技の必要性が再認識された.
著者
石橋 理恵子 丸山 千寿子 田中 利枝 南 昌江 島田 朗 内潟 安子 黒田 暁生 横野 浩一 筒井 理裕 目黒 周 小山 一憲 大村 栄治 清水 一紀 高橋 和眞 中村 佳子 益子 茂 丸山 太郎
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 = JOurnal of the Japan Diabetes Society (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.189-195, 2005-03-30
被引用文献数
1

1型糖尿病患者の治療および, 食生活の実態を明らかにすることを目的に調査を行った. 糖尿病専門医14名に計463部の調査票を配布し, 外来時に1型糖尿病患者に渡してもらい, 留め置き法で回収者に直接郵送してもらった (回収率54.4%). コントロールとして, 健常者166名に食生活習慣調査を実施した. 健常者に比べ, 1型糖尿病患者は望ましい食生活習慣が形成されていたが, 食事にストレスを感じる者が多かった. さらに, 1型糖尿病患者を食事療法実践意識により4群に分類したところ, 食事療法実践意識が高い者は他群に比較して有意にカロリーに配慮する者が多く, 野菜摂取量も多く, 海藻や果物, 低脂肪乳摂取頻度も高かったことから, 食事療法を遵守していると考えられた. しかし, 食事療法実践意識によりHbA<sub>1</sub>cや低血糖回数に差はみられず, 1型糖尿病の食事療法の教育内容を検討しなおし, ストレス軽減に考慮した栄養教育を展開していく必要があると思われた.