著者
奥園 誠之
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.569-575, 2005-03-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
5

切土のり面の崩壊による災害を防ぐためには, 崩壊しそうなのり面を先回りして補強するか, 崩壊する直前に通行止めや避難するかのいずれかである。本小論では道路のり面災害の実態を紹介し, 点検管理, 計測管理, 降雨量管理の考え方について述べたものである。
著者
横山 俊治 水口 真一 藤田 勝代 嘉茂 美佐子 菊山 浩喜
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.30-39, 2002-06-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

本論文では, 花崗岩地域において水平地震動によって引き起こされる落石の発生場所や, 落下方向, 落下距離を予測する方法を考察した。多くの落石は, 地震動がおそらく増幅したと思われる尾根や遷急線近傍で発生した。地震被害は風化した岩石や割れ目の多い岩石よりも比較的新鮮で割れ目の乏しい岩石で大きかった。それで地震時落石の卓越する運動タイプは, 尾根上にあった花崗岩巨礫の転倒・転落と, 遷急線近傍に位置する新鮮な岩石が露出している崖で発生する節理で囲まれた岩塊の横跳び, 道路切土法面の頂部付近で発生する強風化花崗岩中の弱風化岩塊の横跳びであった。落下方向は震源断層に直交する傾向がある。道路切土法面から自由落下した落石の到達距離は落石発生場所の高さとほぼ等しくなる傾向がある。これらの特徴に基づいて, 花崗岩地域の地震時落石発生場所の選定ツールを提案した。
著者
浅野 志穂 落合 博貴 黒川 潮 岡田 康彦
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.457-466, 2006-03-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
18
被引用文献数
7 9

山地における地震鋤の地形効果の特性を明らかにし, 崩壊発生への影響を明らかにするため, 新潟県中越地震時の崩壊を事例として検討した。大規模な斜面崩壊が発生した2つの山体を対象として, 現地調査から三次元モデルを作成し, 弾塑性有限要素法により山体の地震応答解析を行った。その結果, 山体の規模や形状により地震加速度の増幅が変わることや山地の地震動には地形と軟弱な表層土の両者が影響を与えることなどが分かった。また地形効果を受けた地震動による地盤のひずみと崩壊地の関係を検討したところ, 地盤の加速度やひずみ量が大きい位置の近傍に崩壊発生源が位置するなどの特徴が明らかになった。
著者
山野井 徹
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.307-318, 2002-12-25
参考文献数
11
被引用文献数
3

道路開設によって現れた地すべり地の頭部の露頭の堆積物 (砂質層と黒土層) が解析された。地すべりが発生すると頭部のIII Aブロックには, その凹凸を埋めるように砂質層が堆積し, 平坦化されると黒土層が堆積した。それらの堆積物の荷重が次の地すべりを生むというサイクルが数次にわたりくり返されていた。このブロックの地すべりの進展は地すべり地全体が地形的な老年期化に向かう中で位置付けられた。こうした地すべり地の歴史的変遷の解明の上に予防対策について言及された。
著者
岡林 直英 栃木 省二 鈴木 堯士 中村 三郎 井上 公夫
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.3-10_1, 1978

1975年・1976年の台風5号ならびに17号時の豪雨に伴い, 高知県中央部では多数の土砂災害が発生した。この土砂災害について, 地形・地質条件, および2つの台風における降雨状況との関係について, 考察した結果を報告する
著者
井口 隆
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.409-420, 2006-01-25 (Released:2010-06-28)
参考文献数
29
被引用文献数
5 8

火山体では多様な斜面変動が多く発生している。中でも岩屑なだれを伴う山体崩壊は最も悲惨な災害を引き起こす。火山体に発生する山体崩壊・岩屑なだれの特徴を明らかにするため, 日本列島における発生状況について可能な限り多くの事例を収集し検討した。その結果, 日本列島の第四紀火山のうち67火山において128件の発生事例が確認できた。これは日本列島に分布する火山のうち約4割に相当する。火山体における大規模崩壊-岩屑なだれの発生頻度は最近500年間では見ると60年に1回程度である。大部分の山体崩壊の規模は0.2km3より大きい。岩屑なだれは横方向へも広く拡散する特徴を有するため, 被災範囲が極めて広い。火山体において発生する山体崩壊-岩屑なだれの規模は他の地質地域と比べると大きく, しかも流動性があり, 発生頻度が高いなど他の地域で起こる大規模崩壊より危険度が大きい。およそ3分の1の岩屑なだれ堆積物において流れ山が確認できた。また65件の岩屑なだれの崩壊源の位置を推定したところ, 山体崩壊は火山体の山頂付近など山体上部で発生する傾向が見られる。約3分の2の岩屑なだれの崩壊源は確認できなかったことから, 山体崩壊の跡地は容易に開析されるか埋積されて不明瞭となる。岩屑なだれの流動性は他の土砂移動現象と比べて高く, その等価摩擦係数は (H/L) は0.2から0.08と極めて小さい。山体崩壊・岩屑なだれは第四紀火山において必ずしも特異な現象ではなく, 火山体の開析過程の1つである。特に円錐形の山体を持つ活火山では, 山体崩壊-岩屑なだれを多く発生させてきた。多数の火山を有する我国では今後も山体崩壊・岩屑なだれが発生する危険性を考慮しておく必要がある。
著者
山本 哲朗 瀬原 洋一 中森 克己 森岡 研三
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.41-50_1, 1997-12-15 (Released:2011-02-25)
参考文献数
16

山口県宇部市における三郡変成岩からなる丘陵地の斜面で発生した地すべりの特徴を明らかにするために, 地質学・岩石学・土質工学の立場から斜面の調査を行った。その結果, 斜面地盤は蛇紋岩のホルンフェルス, 透角閃石岩の破砕片と風化土が互層をなす透水性が比較的高いことが素因となり, また斜面末端部の切取りと豪雨が誘因となって, 地すべりが発生したと判断された。地すべり面の緑泥石からなる粘土の不撹乱試料の残留強度は, 通常の逆算法で求めた値と一致した。最後にスケンプトンの残留係数を用いてすべりの発生機構を考察した。
著者
河野 勝宣 前田 寛之
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
日本地すべり学会誌 : 地すべり = Journal of the Japan Landslide Society : landslides (ISSN:13483986)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.121-129, 2013-05-25
被引用文献数
1

本論文は,北海道黄壁沢-シケレベンベツ川地すべり地域における全斜面の地形,地質,地質構造および熱水変質帯に加えて,岩石の強さを簡便かつ迅速に評価できる不定形点載荷強さ試験に基づく熱水変質岩の力学特性を考慮し,AHP法に基づくランドスライドハザードマップを作成し,ランドスライドハザードアセスメントを試みた。<br>  斜面におけるランドスライド危険度は,素因分析項目からAHP法による評点累計によって評価し,I~Vのハザードランクに分類した。ランクIは安定硬岩盤斜面,ランクIIは安定軟岩盤斜面,ランクIIIは不安定軟岩盤斜面,ランクIVは新規の地すべり発生が懸念される不安定な区域およびランクVは再活動型地すべりが懸念される最も不安定な古期地すべり地である。
著者
福本 安正
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.30-37, 1995-03-15 (Released:2010-03-16)
参考文献数
67
被引用文献数
2

地すべりの対策技術と調査研究が戦前どのように創められ, どのような経過・発展を辿って終戦を迎えたかについての歴史の解明を試みた。地すべり災害の歴史は極めて古いが, 地すべり防止対策は200-300年前から始められた。また地すべりの調査研究は19世紀末から開始され, 最初は主として地質学者や砂防工学者によって発展してきた。しかし, 1930年ころから土質工学的調査・研究がなされはじめ, 地すべりの発生機構の解明がようやく科学的発展の端緒の段階で終戦となる。
著者
小林 芳正
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.30-38, 1980-06-30 (Released:2011-02-25)
参考文献数
23

The causes of the casualties in the off-Izu-Peninsula earthquake 1974, the near-Izu-Oshima earthquake 1978 and the off-Miyagi-Prefecture earthquake 1978 are investigated and it revealed that the importance of slope hazards has increased remarkably in recent times. Slope hazards classified into those in cuts and fills for hig hways, those in newly developed residential lands and those in almost natural slopes are discussed. It is poin ted out that a more careful planning and designing is desirable not to increase hazard potential unreasonably, and also that an administrative control is necessary in locating various projects or in other respects where technical improvement at present is difficult. Further progress in recognizing slopes with high hazard potential is desirable for minimizing hazards in natural-slopes.
著者
亀井 健史 榎本 雅夫
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.10-16, 1996-09-15
参考文献数
12
被引用文献数
3

地すべり発生のメカニズムに関しては, すべり面に作用している間隙水圧の上昇がその主要因の一つとして考えられており, 地すべり斜面の安定性を検討する際には, 斜面内の間隙水圧を定量的に把握することが重要となる。このことから, 本研究では降雨および斜面上流から流れ込む地下水が斜面内の間隙水圧変動に与える影響を調べるため, 砂および粘性土から構成される四つのモデル斜面を対象に飽和-不飽和浸透流解析を行った。その結果, 斜面の土性および地層構成, 降雨量, 上流側方からの地下水流入量が斜面内の間隙水圧挙動に与える影響を定量的な観点から検討している。
著者
Shoji UENO
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
Landslides (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.32-39, 2000-03-15 (Released:2010-03-16)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

一般に地すべり地の地下水は複雑に流れている。この地下水の流れを把握するために, 地下水検層法が標準的な方法として普及している。筆者は, 孔内微流速計を用いたボーリング孔内水の上下方向流の流速測定に取り組んできた。そしてこの方法を2箇所の活動的な地すべりで昨年実施した。測定結果は, 孔内水の明瞭な流速結果をとらえており, 各透水層の透水係数や水圧を算定することが出来た。これらの透水性の情報は, 地すべり地の地下水流動機構の解明を容易にした。結論としては, 孔内微流速計は, 地すべり地の地下水調査に有力な機器といえる。
著者
森脇 寛
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.115-122, 2001-09-25
参考文献数
11
被引用文献数
5 5

新しく滑動し始めた地すべり斜面の崩壊危険度を評価するための指標として主滑落崖における地表面移動量に着目し, その有効性を検討した。降雨装置を用いた崩壊実験により, 地表面移動量がある限界を越えると崩壊を生じる, つまり限界移動量の存在を明らかにした。次に, 既往の崩壊実験ならびに現地観測資料を用いて, 崩壊に至るまでの限界移動量を解析し, 限界移動量は崩壊源の斜面長に比例すること, ならびに限界移動量を崩壊斜面長で除した限界ヒズミはおよそ0.006~0.02の範囲に収まることを明らかにした。この限界ヒズミの範囲をもとに, 現場斜面における地表面のヒズミが0.003以下を前兆領域, 0.003~0.006の範囲を警戒領域, 0.006~0.02の範囲を破壊領域, 0.02以上を完全破壊領域として4つに区分けし, 危険度評価を行う手法を提案した。次いで, この指標を用いた現地地すべり事例への応用例をいくつか示した。また, 過去に滑動した形跡を示す地すべり地形の評価にも有効であることを示した。
著者
JIAN LI
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.15-17, 1985-06-15 (Released:2010-03-16)
著者
川原谷 浩 松田 英裕 松葉谷 治
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.48-55, 1999-03-15
被引用文献数
7 8

地すべりが活動する誘因の1つに地すべり崩積土中の間隙水圧の増加が挙げられる。間隙水圧の増加は集中豪雨や融雪水などに起因する場合が多く, 降雨 (雪) 水の地下への浸透や地下水との混合のプロセスを解明することは, 地すべりの防止や予知に重要な情報を提供することが期待される。本論文では様々な水の挙動を把握するために有効な追跡子である酸素・水素安定同位体比を用い, 降水が地下に浸透し涵養域に至るまでの過程を検討した。<br>調査地域として, 地質状況が把握され, 水抜き用集水井が数多く設置されている秋田県・谷地地すべりを選び, 集水井から排水される地下水や周辺の地表水の同位体比を測定した。その結果, 集水井ごとに岡位体比の変化幅がそれぞれ異なることが判明した。このことは降水が地下に浸透してからの地質状況や浸透距離 (時聞) を反映しているものと推定される。そこで降水の季節変動を利用したモデル計算で平均滞留時間を試算したところ, 短期間の地下水で2ヶ月程度, 長期間の地下水で1年程度で流入から排水に至ることが判明した。
著者
山岸 宏光 伊藤 陽司
出版者
The Japan Landslide Society
雑誌
地すべり (ISSN:02852926)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.1-9_1, 1993-09-15 (Released:2011-02-25)
参考文献数
15

筆者らは4万分の1空中写真判読により北海道全域で12, 843個の地すべり地形を認定し, その分布図を基礎に地質分帯を試みた。結果として, 19地質区に区分し, さらにつぎの4地質帯に要約できた;1) 火山岩地帯, 2) “グリーンタフ” 地帯, 3) 泥岩地帯, 4) 蛇紋岩- “緑色岩” 地帯。