著者
大槻 洋二
巻号頁・発行日
1997 (Released:2013-07-09)

近年、日本の近代都市史研究は様々な分野から多様な研究が提出される中で、とりわけ都市空間を問題の中心に据えた分析態度が共有され、近代都市施設や近代都市の制度、規範などを通して、近代都市の空間構造を主に普遍性に重点を置いて捉える「都市を支えるもの」と、都市空間を生きる人々の生活意識のありようを基点に、近代都市の空間構造を主に固有性に重点を置いて追及する「生きられた都市空間」の2点の視座を持つに至った。このうち、建築史学の立場にたつ日本近代都市史は、「都市を支えるもの」への研究に偏在し、その背景として、周辺領域と交流を深めつつ一連の体系をなす近代以前の日本都市史の流れが近代になると途絶え、一転して西洋の建築・都市思想の受容とその変容の歴史としてのみ捉えられるようになる点が挙げられる。今後、この点を解消するためには、都市を計画する主体からの視点を一旦離れ、都市空間を生きる人々の総体として物理的な都市空間そのものを捉え直す作業が求められる。 以上の問題意識を踏まえ、日本の比較的大規模な近代都市に多数存在した自律的形成をみた歓楽街に注目する。なお「盛り場」は、各時代を通じて存在する賑わいの場を全て含む広範な概念であり、歓楽街は近代に見られる「盛り場」の在り方の一つと考えられる。また、歓楽街の自律的形成の実態を解明する為には、これまで建築史の立場からの近代都市史研究に見られた計画理念の抽出とその顛末の分析ではなく、歓楽街の自律的形成から展開にかけての過程及び空間構造を、物理的な都市空間そのものに即して解明する方法をとる必要があり、先に指摘した建築史の立場からの近代都市史研究の問題点を解消する上で、妥当な研究対象及び方法である。 この結果、本研究の目的は、日本近代における自律的形成を見た歓楽街を対象に、その物理的な都市空間の成立から展開までを考察し、歓楽街の都市空間そのものが持つ特質を明かにすることにより、計画原理では捉え得なかった新たな近代都市空間像構築の一助とすることにある。 本論は2編で構成されている。第1編と第2編はそれぞれひとつの歓楽街を対象に、各編の前半、すなわち第1章、第3章では歓楽街成立の前提及び要因を、また後半、すなわち第2章、第4章では歓楽街の実態とその変容を中心に、空間に即して詳細な検討を加えた。 このうち、第1編では、近代になって主要な都市空間が形成された都市における歓楽街の事例として、神戸の新開地の採り上げた。第1章では、新開地を取り巻く緒事象に注目し、地図史料を用いた空間分析や文献史料を用いた空間の成立経緯から、新開地の空間形成要因と歓楽街成立の契機を求めた。第2章では、歓楽街としての新開地の空間構造に注目し、地図史料を中心に空間構成や諸施設の配置構成などから、新開地の歓楽街空間の実態とその変容を明かにした。 第2編では、伝統都市の近代における歓楽街の事例として、京都の新京極を採り上げた。第3章では、新京極の起源である寺町の寺社境内の歓楽的な場に注目し、この空間構成の復元作業を行い、その起源及び実態を解明し、歓楽街成立の前提を探った。第4章では、歓楽街としての新京極の空間構造に注目し、第3章の成果との比較の視点を持ちつつ、地図史料を中心に空間構成や諸施設の配置構成などから、新京極の歓楽街空間の実態とその変容を明らかにした。 結論では、第1編、第2編の成果を用いて、歓楽街の特質を明らかにし、本研究の総括を行った。まず、新開地と新京極の特質をその差異と共通点に注目しつつ整理した後、歓楽街成立における空間的成立条件として、既成の都市空間の内部に位置し、周囲の都市空間とは異質な性格を帯び、かつ自律的に成立した点(近代都市構造における空隙性)、1本の主街路と複数の従街路によって極めて指向性の強い都市空間構成をとる点(線形の都市空間)、線形の都市空間の両端において都市機能上の重要な役割を担う都市空間、都市施設と直接的に結合している点(複数の都市機能上の核の結合)の3点を指摘した。続いて、歓楽街の時間的変遷の傾向として、諸施設が主街路に直面し、かつ隙間無く連続して建ち並び、かつ景観統一が行われる傾向が見られる点(主街路に沿った『街』化)、逆に主街路から歓楽的な機能を持つ施設は漸減し、ひいては小売施設を中心とする商店街へと変質する動きが存在する点(脱歓楽街化)の2点を指摘した。 以上の結果、歓楽街はその母都市の近代化過程によって生起された「空隙性」と「核の結合」による「線形の都市空間構成」を基盤に成立するが、「『街』化」という傾向を示しつつ都市空間として充実すると同時に、「脱歓楽街化」という歓楽機能が漸減する傾向が見られた。
著者
武井 和人 酒井 茂幸
出版者
研究と資料の会
雑誌
研究と資料 (ISSN:03898121)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.1-26, 2013-07 (Released:2013-09-06)

「研究と資料」第69輯(2013・7) より転載
著者
守屋 剛一郎 高野 研一
出版者
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科
雑誌
修士論文
巻号頁・発行日
2011-03 (Released:2010-00-00)

通信と放送の融合が本格化する今日において、情報システム開発とコンテンツ制作の技術融合は、さらに促進されるものと思われる。ウェブサイトの開発・制作者がこの技術融合に順応し、互いのクリエイティビティを向上させ、ユーザに満足を与える、といった結果が望まれる。しかし、その一方で、ウェブサイト開発・制作の複雑化の影響もあり、(品質、予算、工期における)プロジェクトの失敗、長時間労働、離職・転職といった問題も生じている。これらの問題の多くは、ウェブサイト開発・制作に係る組織が、プロジェクトマネジメントや関連技術の進歩に組織的に対応できていない場合に起因するものと考える。プロジェクトマネジメント対策として、プロジェクトマネジメント知識体系や組織のプロセス改善成熟度モデルであるCMMI(Capability Maturity Model Integration)などすでに確立された有効的な取り組みが存在するが、本研究では、ウェブサイト開発・制作者のプロジェクトや組織に対する意識の把握を試み、プロジェクトマネジメントを実践し得るための組織の内部要因を探索した。方法として、ウェブサイト開発・制作者を対象とした、「人がやめる」ことと「プロジェクトの失敗」という問題に係る要因を確認する92問の設問によるアンケート調査を実施した。そして、アンケート調査結果の596有効回答に対して多変量統計分析を行った。抽出した因子を用いて共分散構造分析を行った結果、「人がやめる」、「プロジェクトの失敗」を表した尺度に負荷をかける因子と、負荷を軽減する因子の関係を確認した。負荷を軽減する因子は「経営・管理陣への信頼」、「技術・情報の共有」、「処遇への満足」であった。それらの分析結果を基に、ウェブサイト開発・制作に係る組織が、プロジェクトマネジメントや関連技術の進歩に組織的に対応するための提言を作成した。
著者
牛尾 弘孝
出版者
九州大学中国哲学研究会
雑誌
中国哲学論集 (ISSN:03856224)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.1-22, 2008-12-25 (Released:2010-09-14)
著者
金子 佳代子 伊藤 千夏 北島 光子
雑誌
横浜国立大学教育人間科学部紀要I(教育科学) (ISSN:13444611)
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-10, 2009-02-28 (Released:2016-09-14)

骨粗鬆症は高齢者のQOLを著しく低下させることから、その予防に大きな関心がもたれている。骨粗鬆症の予防として若年期に獲得される最大骨量を高めることが重要とされ1)、そのために栄養バランスの良い食生活と適度な運動を習慣化することが望ましいと考えられている。若年期において骨量と食習慣との関わりについて検討した報告はあるものの2-13)、両者に関連がみられたとするものと関連がみられなかったとするものがあり、見解は一致していない。我々はこれまで、9~22歳の成長期の男女を対象として骨量の年齢別推移を調査した結果、骨量は9歳から14歳までは男女間に差はなく年齢と共に増加すること、15歳以降は女子よりも男子のほうが有意に高値を示すようになること、女子は15歳、男子は18歳で成人と同レベルに達することを報告した14)。また、中学生期における骨量と生活習慣との関わりを検討し、運動習慣のある人及び体力の指標の得点が高い人の骨量が高かったこと、骨量と食習慣には関連はみられなかったことを報告している13)。本報ではさらに、高校生期の骨量と、体格の指標、カルシウムを多く含む食品の摂取状況、運動習慣などとの関連について検討を行った。 The purpose of this study was to investigate the relationship between bone mass and intake of calcium-rich foods, habitual exercise, body composition and grip strength in 496 Japanese high school students of both genders aged 15-17y. Transmission index (TI) and speed of sound (SOS) at the calcaneus measured by using AOS-100 (ALOKA Co., Ltd, Tokyo). Osteo sono-assessment index (OSI) is given by OSI = TI × SOS2, used as an index of bone mass. OSI was significantly higher in male than in female. Weight, BMI, lean body mass and grip strength had a significant association with OSI in both males and females. In females, weight, habitual exercise during junior high school, current milk consumption, consumed dairy products during junior high school, habitual exercise for last one year had significant increasing effects on OSI in multiple regression analysis. On the other hand, in male, current milk consumption, grip strength, habitual exercise during junior high school had significant increasing effects on OSI in multiple regression analysis. The present finding suggest that OSI is significantly related to intake of calcium-rich foods such as milk and dairy products, and to habitual exercise since junior high school students. Furthermore, it is important to continue such lifestyle for acquisition of high peak bone mass.
著者
暁 晴
出版者
江戸 : 山城屋佐兵衛
巻号頁・発行日
1863-03

文久3年(1863)3月,刊 17.3×12.0cm 2巻2冊 上: 23丁, 26コマ 下: 25丁, 28コマ 序: 文久元年(1861)8月,芳樹 画図: 松川半山 傭筆(筆耕): 鎌田醉
著者
丸山 公一
巻号頁・発行日
(Released:2013-02-18)

平成24年度最終講義

3 0 0 0 OA 妬みと自由

著者
内藤朝雄
出版者
明治大学文学部心理社会学科
雑誌
明治大学心理社会学研究
巻号頁・発行日
vol.3, pp.76-81, 2008-03-26
著者
中山 大将
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
2010-03-23

新制・課程博士 甲第15417号 農博第1802号