著者
芥野 絵理 菊池 幹 百名 洋平 吉村 仁 折口 秀樹 林谷 俊児 毛利 正博 山本 英雄 瀬筒 康弘 山本 雲平 宮田 健二 野間 充 多治見 司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.SUPPL.2, pp.S2_93-S2_97, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
7

急性冠症候群において致死性不整脈が出現し得ることは広く知られており,一般的には虚血心筋の再灌流時に発生すると考えられている.電気生理学的機序により急性冠症候群時の致死性不整脈発生機序は理論づけられているが,臨床的にどのような因子が影響を及ぼしているかは明らかとなっていない.今回,われわれは,2010年1月から2011年6月までの18カ月間に,当院において急性冠症候群に対する緊急経皮的冠動脈形成術を行った208例において,致死性不整脈出現にどのような因子が関与しているかを検討した.208例中18例において,急性期に心室頻拍/心室細動(VT/VF)などの致死性不整脈が出現した.致死性不整脈出現例での責任冠動脈は左冠動脈主幹部(LMT)が1例,左前下行枝(LAD)が5例,左回旋枝(LCX)が2例,右冠動脈(RCA)が10例であった.基礎疾患でのリスクファクターを検討したところ糖尿病を有する症例に多く,左右の冠動脈では右冠動脈を責任病変とする症例で出現しやすいという結果であった.
著者
吉村 仁志 木上 昌己 矢野 宏二
出版者
東京昆蟲學會
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.897-909, 1995-12-25
参考文献数
12

3種の素材(ムシロとビニールムシロ, ダンボール)を使用したバンドトラップを異なる環境のマツに設置し, 捕獲された害虫と天敵, クモを調査して, 慣用されている"こも巻き"法を再検討した.1)全捕獲個体の63.2%が昆虫, 34.6%がクモであった.マツ害虫と天敵はほぼ同個体数が捕獲された.前者ではマツワラジカイガラムシ, マツノホソアブラムシ, マツオオアブラムシとマツカレハが優占種で, 後者の91%はヤニサシガメであった.クモは20科43属51種が確認され, フクログモ科, エビグモ科, ハエトリグモ科が優占的であった.2)設置環境別では, 害虫と天敵, クモはともに林地など植生が比較的豊富で, 下草ないし落葉などで地表がおおわれている環境では捕獲数が少なく, 公園や施設構内など植生が貧弱で地表が落葉などでおおわれていない環境では多く捕獲された.3)害虫はダンボールで圧倒的に多く捕獲された.天敵はムシロで多く捕獲されたものの, ビニールムシロとダンボールでもかなり捕獲され, 有意差はなかった.この傾向は両昆虫群の中の主要種でも同様であった.マツカレハ幼虫はアブラムシとカイガラムシほど素材間で顕著な差はなく, ダンボール, ビニールムシロ, ムシロの順で捕獲された.クモの捕獲数は素材間で有意差はなかった.4)バンドトラップ法の効率化には, 越冬に入る前の早期設置と翌春の脱出前の早期回収が必須であり, ついで, 対象昆虫群に対応した素材の選定が要請される.
著者
吉村 仁志 大場 誠悟 松田 慎平 小林 淳一 石丸 京子 佐野 和生
出版者
一般社団法人 日本顎関節学会
雑誌
日本顎関節学会雑誌 (ISSN:09153004)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.186-191, 2012 (Released:2013-01-21)
参考文献数
14

線維筋痛症は,全身の慢性疼痛を主徴とする原因不明の疾患で,疲労や筋肉痛などさまざまな症状のため,生活の質(QOL)が著明に損なわれる。口腔顔面領域では,顎関節症,口腔乾燥症,味覚障害などを生じるとされる。今回われわれは開口障害などの症状を呈した患者で,線維筋痛症の診断にいたり,薬物療法にて症状改善を得た1例を経験したので報告する。患者は62歳女性。家族関係に強いストレスを感じていたが,5年前に夫に殴打され左顔面のしびれが出現。3年前より開口障害,左眼瞼・口唇の運動障害を自覚。その後,口腔乾燥や味覚障害も出現したため当科受診となった。全身所見として倦怠感と食欲不振を認めた。局所所見として両側の側頭筋・顎二腹筋・胸鎖乳突筋・僧帽筋・内側翼突筋に圧痛を認め,また開口量31 mmと開口障害を認めた。全身疾患が疑われたため,感染症・膠原病内科を対診した。長期の慢性疼痛と全身18か所中17か所での圧痛から,米国リウマチ学会の診断基準に基づき,線維筋痛症と診断された。全身の慢性疼痛はPregabalin(リリカ®)の内服により半減した。咀嚼筋や頸部の筋圧痛部位も減少し,開口量は42 mmまで増加した。治療開始後1年経過し症状は安定している。本疾患は日常診療でよく遭遇する口腔症状を合併するが,その認知度は低い。本疾患を念頭におき,必要であればすみやかに専門医との連携を取り,症状の改善を目指すことが重要である。
著者
吉村 仁
出版者
日本心理臨床学会
雑誌
心理臨床学研究 (ISSN:02891921)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.121-132, 2016-06
著者
守田 智 吉村 仁 伊東 啓 泰中 啓一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究課題では社会に遍在するネットワーク上での拡散現象に着目している.この1年で,特に知られるようにもなった感染性拡散モデルに対する基本再生産数およびそれを拡張したタイプ別再生産数の定式化を行った.驚くべきことに従来から知られていた公式より正確なものが得られた.実在のネットワークではリンクのつながり具合に相関がみられるが,この相関を考慮した場合についても定式化に成功した.また,上記の研究をリアルな性感染症拡散モデルにも応用している.
著者
伊東 啓 柿嶋 聡 上原 隆司 守田 智 小山 卓也 曽田 貞滋 John Cooley 吉村 仁
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.577-578, 2016-03-10

北米には、13年もしくは17年に一度、大量発生するセミが生息している。このセミはその発生周期から周期ゼミ・素数ゼミと呼ばれており、なぜ素数周期で大発生するセミが誕生したのかは未だに大きな謎である。これまでの研究から、様々な周期が混在したときに、交雑の観点から素数周期だけが生き残ることが数値計算によって導かれていたが、その前段階である周期性そのものの進化は再現されていなかった。我々は、個体ベースのシミュレーションモデルを構築し、氷河期(平均気温の低下)という環境下でセミの周期性が進化する様子を再現することに成功した。これにより、氷河期による成長スピードの低下という危機的状況が周期性進化に大きく関係していることが示唆された。本結果は、環境変動によって進化が引き起こされることを明確に示したものである。
著者
吉村 仁
出版者
日本マインドフルネス学会
雑誌
マインドフルネス研究 (ISSN:24360651)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.28-40, 2016 (Released:2022-02-22)
参考文献数
31

本研究では,女子少年院において79名の少年に対して平均約9ヶ月間,毎日15分間のマインドフルネス瞑想に基づくプログラムを実施し,少年たちがいかなる効果および苦痛を体験するかについて質的調査をした。結果,約84%の者が合計732項目の効果を報告し,「1. 身体」「2. 感情」「3. 記憶」「4. 現実対処」「5. 瞑想観」「6. 人間性」の6カテゴリーに分類された。また約77%の者が合計280項目の苦痛を報告し,「1. 身体」「2. 感情」「3. 記憶」「4. 現実対処」「5. 瞑想技法」「6. 変化への不信」の6カテゴリーに分類された。今後の課題として,体験内容のプロセスについて,苦痛と効果との関連を視野に入れてより詳細に検討することや,各少年の元々の人格の状態と体験内容との関連,再非行防止への有効性の検証などについて明らかにしてゆくことなどが浮かびあがった。
著者
向坂 幸雄 雨甲斐 広康 吉村 仁
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.253, 2004

季節的に出生性比を調節する生物の存在はいくつか知られているが、その適応的意義を解明する上では数理的アプローチが重要である。特に、体サイズも小さく、一回の産仔数が多い両生類では、成長後の繁殖参加の雌雄差を出生時期毎に実際に追跡するのは非常に困難であり、数理的解析によって、調べるべきポイントを明らかにすることは特に重要である。演者らはツチガエル(<i>Rana rugosa</i>)では長期に渡る繁殖期中で季節の進行と共に出生性比の変化が起きていることを明らかにした。また、その傾向が地域集団間で逆転していることも明らかにした(第49回大会発表)。我々はツチガエルの生活史を念頭に置き、シミュレーションのような確率的要素に依らない解析的ESSモデルを構築し、繁殖機会が年に2回あるモデル生物での季節的性比調節の可能性を、雌雄で異なる成長速度などを考慮して検討した。これまでに我々が構築してきたモデルでは、性比を集団内の出生性比とは独立にとれる突然変異個体の侵入条件を考察する際に、出生年とその前後1年づつの非突然変異個体しか背景集団として考えていなかった。しかし、繁殖機会が最大2年に及ぶモデルでは、各年次での背景集団を考慮しなければ正確なESSの解析はできない。今回その範囲を前後それぞれ2年ずつ計5年分を考慮し、さらに突然変異個体が前期と後期のいずれの場合に生まれるかについても分離して考えることで、より詳細な条件推定をすることを可能にした。年2回の繁殖機会相互での出生性比の適応的パターンは8通りでき、大まかに分けると4通りに区別できた。このことから、雌雄間でその後に経験する繁殖機会の数に差ができ、またその違いのでき方が出生時期によって異なるような場合には繁殖時期によって性比を1:1からずらすような形質がESSとなり得ることがわかった。
著者
吉村 仁作
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.1563-1596,1690-, 1977-11-20 (Released:2017-10-05)

This article is intended to examine the basic agrarian policy executed in the end of the 18th century and the early part of the 19th century in the Shonai clan, and through it to throw light upon the characteristics of the social structure of the rural community at the period. The Shonai clan at that period, especially in the end of the 18th century when the Kansei Reform was started, saw the devastation of the rural community so terrible that an expression of a "structural crisis" is given to it. The devastation was concretely shown in the collapse of agriculture management under the severe exploitation, the joint management by the village community of the lands whose occupiers ran off, the exploitation by the usurious capital, the yoke of the organization for tax collection, the accumulation of land by landowners, and so on. The clan confronted with those problems tried to restore the village community by the adjustment of the government organization, the reorganization of the mercantile and usurious capitalists, the policy of land redemption, that is the one of settling occupiers on their lands, and so forth. The social structure of the village community at that period was characterized by the joint operation of deserted lands according to the village customs (mura-sozukuri) and the landowner-tenant relations through the village community. Both were the two manifestations or ways of the same conflict in the village social structure. The policy of settling occupiers on their lands was the basic policy adopted in the reform for maintaining the system of the peasant proper (hon-byakusho). The policy was intended to meet the conflict in the village, but at the same time it could not help being restricted by the village customs. The peasantry had "struggles" by relying upon the customs, and this was the basic form of class conflict at this period. Therefore, however, the decisive aggravation of class conflict waited till the closing years of the Bakufu and the Restoration period when the village community began to gravely disintegrate and reorganize itself. And the trend of poor peasants with various forms of existence in landowner-tenant relations can be used as an index of the aggravation of class conflict.
著者
吉村 仁志 門田 直也 赤峰 修一 大久保 利一
出版者
電気・情報関係学会九州支部連合大会委員会
雑誌
電気関係学会九州支部連合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.210-211, 2010

我々の研究室では,液体を使わない全固体によるEC素子の作製を目指している.全固体型EC素子では液漏れや発火の恐れがなく,素子の厚さを薄くすることが出来る.これに使われる透明電極をこれまではITO薄膜によって作製, 研究してきた.しかし,ITOに含まれるインジウムの生産量は世界的に限られていることや,それにともなう価格の高騰などの問題がある.そのためITO以外の材料でも透明電極の作製を目指している.新しく透明電極として使用するための素材として酸化亜鉛アルミニウム(AZO)に注目した.PLD法によってAZOの薄膜を作製,研究した.
著者
田中 裕美 渥美 良太 吉村 仁 泰中 啓一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.71, pp.377-378, 2009-03-10
参考文献数
3

米国の中西部から南部:東部にかけて存在する周期ゼミは,13及び17年の素数年の周期で大発生することがよく知られている.その理由として,同時発生による交雑が素数でない周期の絶滅を引き起こしたという仮説がある.近年,私たちは,交雑によって素数周期が選択される事を整数数値シミュレーションモデルによって実証した.今回,新たに素数周期が選択される為の重要な要因として,ある限界個体数以下に個体数が減少した場合絶滅が促進されるという効果が必要であるということがわかった.本報告では数値シミュレーションモデルを用いてこれを検証する.
著者
吉村 仁
出版者
浜松科学技術研究振興会
雑誌
財団ニュース
巻号頁・発行日
vol.13, pp.33-35, 2012-01-10

山田亮三基金研究助成
著者
潮田 浩作 吉村 仁秀 海藤 宏志 木村 謙
出版者
一般社団法人 日本鉄鋼協会
雑誌
鉄と鋼 (ISSN:00211575)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.716-727, 2014 (Released:2014-05-31)
参考文献数
67
被引用文献数
7

Steels have made remarkable progress in order to meet the strict requirements of today’s society. Such progress is based on scientific elucidation of the functions of alloying elements, their effective utilization, and the innovative production processes.Since natural resources are limited, it is important to increase their productivity for the continuous development of our society. Therefore, proper management taking into account the element strategy is becoming extremely important.Steel industries are highly dependent on rare metals. Therefore, they are easily influenced by the hazards of rare metals, avoidance of which is extremely crucial.This paper focuses on steels such as flat-rolled product, plate, pipe & tube and stainless steel, and historically reviews them from the aspect of changes in the surrounding market together with the technological developments such as new steel products and exploitation of rare metals for them. The functions of rare metals are classified into three types, i.e. the control of a) microstructures, b) mechanical properties and c) anti-corrosion properties, and the present understanding of them is discussed from a scientific perspective. Furthermore, the concrete future scientific and technological problems are surveyed. It is revealed that there are still many issues that need to be addressed. Exploitation of the advanced analytical techniques together with computational science is expected to contribute to solving the long standing problems and to stimulate a breakthrough in this field.
著者
吉村 仁 曽田 貞滋
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本課題では、理論研究と実証研究を同時に進めたが、とくに周期ゼミ全7種のほぼ全ブルード(発生年の異なる集団)の系統解析を実施、アレキサンダーらが提唱していたdecim, cassini, deculaの3系統で17年と13年が独立に進化したという仮説が正しいことを明らかにした。さらに、理論研究では、decim系統で13年が2種確認された問題で、新種記載されたM. neotredecimが17年の個体群に13年のM. tredecimが少数飛来して混入することにより13年周期にシフトする可能性をシミュレーションで示した。さらに人間の経済活動を含む様々な事例で環境変化・変動への適応研究を展開した。
著者
松田 源 吉村 安郎 原田 利夫 吉村 仁志 尾原 清司
出版者
特定非営利活動法人 日本口腔科学会
雑誌
日本口腔科学会雑誌 (ISSN:00290297)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.171-177, 2002-05-10 (Released:2011-09-07)
参考文献数
16

One hundred forty-six teeth on the fracture lines of mandibular fractures (85 patients) treated at the Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Shimane Medical University Hospital, from 1980 to 1998, were clinicostatistically analyzed. The results were as follows:1. The age of patients was widely distributed. The peak incidence was the second and third decades (74.1%). The male and female ratio was 4 to 1.2. The cause of fracture was 26 cases (30.6%) in the traffic accident, 21 cases (24.1%) in falls, 17 cases (20.0%) in sports, 10 cases (11.7%) in beating, 9 cases (10.6%) in work accidents and 2 cases (2.4%) in others.3. Teeth on the lines of mandibular fractures were found in 35 teeth (20.4%) in the wisdom teeth and in 34 teeth (23.4%) in the canine teeth and in 77 teeth (56.2%) in the others.4. Seventy-three teeth (85.6%) out of all teeth were preserved without teeth extractions.5. Teeth on the mandibular fracture lines could be classified into four types (I-IV) according to our original classification ; type I was 19.2%, type II was 49.4%, type III was 19.2%, and type N was 12.2%.6. We investigated whether the teeth on the lines of the mandibular fractures were preserved or not after treatments-91.3% of the teeth had been preserved for more than one year after treatments.
著者
飯田 弘之 吉村 仁
出版者
静岡大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

本研究ではゲーム情報学的な解析によってチェス種(特に将棋種)を相互比較した.顕著な貢献を以下に整理する.(1)原将棋として知られる平安小将棋では,「王金対王」終盤戦のコンピュータ解析によって,盤サイズの進化論的変遷を合理的に説明できた.将棋種の変遷を考察する上で,歴史的文献資料による調査を補佐する重要な役割を担い得る可能性を示した.(2)ゲーム情報学的にゲームを比較するための指標を考案した.探索空間複雑性(search-space complexity)と決定複雑性(decision complexity)の二つの指標に基づいて、ゲームを比較する.前者は,ミニマックス木の最小サイズに相当し,そのゲームの平均終了手数Dと平均合法手数Bに対してB^Dで近似される.後者はD/(√<B>)という指標である.つまり,平均合法手数と平均終了手数のバランスのとれたゲームほどより洗練されている.(3)チェス種は,進化の大きな流れとして,ルールがより洗練される方向へと向かっている.チェス,将棋,象棋でそれが異なる手法で実現されてきたが,それは,歴史的な文化背景と密接な関係がある.