著者
上杉 昌也 浅見 泰司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.345-357, 2011-07-01 (Released:2015-09-28)
参考文献数
25
被引用文献数
1 10

本稿では, 所得格差が広がったとされる1990年代後半以降, 小地域レベルにおいて世帯収入階層による居住分化が進んだかどうかを検証し, その要因や背景について考察した.初めに町丁目単位での所得分布を推定する方法を提示し, 1998年と2003年の東京都大田区を事例にその空間分布を比較した.その結果, 5年間における世帯収入水準は全体的に低下する中で空間的にも居住分化の進展の兆しが見られた.これは持家世帯や単身世帯の居住分化が高まったことに付随するものと考えられるが, 貧困層の空間的隔離が問題視される北米の諸都市と比べればいまだ低い水準である.大田区で居住分化が進んだ要因を居住地移動から分析した結果, 近隣移動が居住分化の進展に寄与している可能性が大きいといえる.他方で大田区では脱工業化を背景として, 地区によっては区外からの流入も含めた短期間で大量の人口流入が居住分化を抑制していることも予想される.
著者
上杉 昌也 矢野 桂司
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.11-22, 2017-06-30 (Released:2019-12-31)
参考文献数
32
被引用文献数
1

This study aims to investigate the association between individual travel behaviors, neighborhood built environment, and social area type based on a geodemographics dataset. Neighborhood environment includes population density, land use mixture, road density, service level of public transportation, destination accessibility, and topography. By using person trip survey data for Kyoto Prefecture residents in 2010, the results of multilevel logistic analysis showed that social area type can explain the variations of travel mode choice for commuting behavior―particularly the use of public transportation and vehicle, even after controlling for neighborhood environment and individual characteristics such as gender, age, occupation, and household vehicle ownership. On the other hand, there was little evidence of association between mode choice for shopping and social area type.
著者
上杉 昌也 樋野 公宏
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.249-266, 2018-05-01 (Released:2022-09-28)
参考文献数
56
被引用文献数
1

犯罪発生の集積パターンの特定やその要因の説明のため,犯罪研究においてミクロな空間単位が重視されつつある.本稿は従来よりもミクロな空間単位である街区レベルの犯罪発生要因を明らかにすることを目的とし,街区レベルの犯罪機会理論と近隣(町丁字)レベルの社会解体理論について検証した.東京都杉並区における空き巣発生を対象としたマルチレベル分析の結果,街区レベルの対象や監視性の違いが近隣内での犯罪率の差異を説明すること,またこれらとは独立に近隣レベルの社会的環境もまた街区レベルの犯罪発生に寄与していることが明らかになり,日本の都市住宅地において,異なる空間レベルで統合された犯罪機会理論と社会解体理論が有効であることが示された.これらの知見は,異なる犯罪発生プロセスがそれぞれの空間レベルで作用することを示唆するものであり,犯罪現象の統合的な理解や解明に加えて,防犯対策など実践面での応用も期待される.
著者
上杉 昌也 矢野 桂司
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.253-271, 2018 (Released:2018-07-02)
参考文献数
51
被引用文献数
1 2

本稿は,都市内での教育水準の空間的不均衡とジオデモグラフィクスに基づく居住者特性との関係を明らかにし,近隣地区における社会経済的要因の影響を除いた教育水準の学校間格差について評価するものである。対象地域として社会経済的な居住分化が比較的明瞭で,2013年から「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の学校別の結果が公表されている大阪市を選んだ。全国学力テストの平均正答率を教育水準とみなすと,都市の空間構造に対応した教育水準の不均衡が存在し,近隣スケールにおいてもジオデモグラフィクスに基づく社会地区類型と通学先の学校の教育水準には一定の関係が見出された。また社会地区類型間で教育水準格差が存在することも示唆され,社会地区類型の差異により学校間の教育水準の変動の約半分が説明された。そのため学校の教育水準の評価においてはその学校の置かれた地域条件を考慮することが不可欠であるといえる。さらに,実際の学力テストに基づいて計測される教育水準からこの地域条件の影響を取り除いた実質的な学校効果は,教育水準が高い学校ほど大きいことも明らかになった。これらの知見は,ジオデモグラフィクスが地域間や社会集団間の教育格差を明らかにするだけでなく,空間的公正の観点からそれらの格差解消に向けた政策ターゲットの特定においても有用であることを示すものであるといえる。
著者
上杉 昌也
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.618-629, 2009-11-01 (Released:2011-08-25)
参考文献数
25
被引用文献数
2 3

本稿では,現在の市街地の原型が形成された高度経済成長期の大阪東北部に注目し,セル・オートマトン(CA)を用いて市街地の面的拡大過程が適切に説明できるかを検証するとともに,その視点から当該地域の市街地拡大の特徴について考察した.CAシミュレーションによって,既成市街地を核とした拡大の過程や膨張した市街地どうしが連坦しさらに大きなかたまりになっていく過程から,局所的な相互作用の集積がマクロなスプロール現象を導いたことが確認された.一方でモデルの限界も見られ,東部丘陵地域および門真市南部などの飛地的な大規模集合住宅については現実に近いパターンを再現できなかった.以上のことから,現在の大阪東北部の市街地は,周囲の市街地とは連坦しない大規模集合住宅地に先導された市街地拡大過程と,既成市街地を基盤にして小規模な土地利用転換が累積した市街地拡大過程によって特徴付けられることが示された.
著者
上杉 昌也
出版者
東京大学大学院新領域創成科学研究科環境学研究系社会文化環境学専攻
巻号頁・発行日
2010-03-24

報告番号: ; 学位授与年月日: 2010-03-24 ; 学位の種別: 修士 ; 学位の種類: 修士(環境学) ; 学位記番号: 修創域第3542号 ; 研究科・専攻: 新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻
著者
上杉 昌也 上村 要司 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.153-160, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
39

人口減少期にある日本では,大都市圏においても急速な高齢化や転出に伴う空き家・空き地の増大が予想される.本研究では,人口動態の異なる東京・大阪・広島・福岡の4つの都市圏を対象に,空き家予防の観点から,将来(2030年)の空き家の立地状況について推計し,その空間構造を小地域単位かつ都市圏規模で明らかにした.特に,ミクロな空間スケールでの地理的および社会人口学的特性が把握できるジオデモグラフィクスを活用することで,都市圏内部の多様性や都市圏間の特徴の違いが定量的に示された.地区特性によって空き家化の進行の度合いや要因は異なることから,空き家問題に携わる自治体や民間事業者等においては,将来的に空き家対策に取り組むべき優先地域を特定し,地区レベルの特性に応じた空き家予防策を展開してくことが求められる.
著者
埴淵 知哉 中谷 友樹 上杉 昌也 井上 茂
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.173-192, 2020-05-01 (Released:2023-02-19)
参考文献数
49

本研究は,個人の意識・行動・属性と人々が居住する地域環境の情報を併せもつ統計データ(地理的マルチレベルデータ)を,新たな調査法の組合せによって構築する試みである.東京都文京区の住民を対象に,回収数の最大化を意図したインターネット調査を実施した結果,すべての郵便番号界から一定数の回答が得られた.次に,Google Street Viewを用いて効率化した系統的社会観察を実施し,街路景観評価に基づく近隣特性の面的把握を行った.そして,これらを結合した地理的マルチレベルデータを分析し,近隣のミクロスケール・ウォーカビリティと住民の余暇歩行の間に有意な正の関連性がみられることを確認した.従来型の社会調査や国勢調査を利用したデータ構築が困難さを増す中,本研究が提案した方法は,地理的マルチレベル分析を近隣単位かつ広域的に実現しうる一つの有用な選択肢となる.
著者
上杉 昌也 矢野 桂司
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.253-271, 2018
被引用文献数
2

<p>本稿は,都市内での教育水準の空間的不均衡とジオデモグラフィクスに基づく居住者特性との関係を明らかにし,近隣地区における社会経済的要因の影響を除いた教育水準の学校間格差について評価するものである。対象地域として社会経済的な居住分化が比較的明瞭で,2013年から「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の学校別の結果が公表されている大阪市を選んだ。全国学力テストの平均正答率を教育水準とみなすと,都市の空間構造に対応した教育水準の不均衡が存在し,近隣スケールにおいてもジオデモグラフィクスに基づく社会地区類型と通学先の学校の教育水準には一定の関係が見出された。また社会地区類型間で教育水準格差が存在することも示唆され,社会地区類型の差異により学校間の教育水準の変動の約半分が説明された。そのため学校の教育水準の評価においてはその学校の置かれた地域条件を考慮することが不可欠であるといえる。さらに,実際の学力テストに基づいて計測される教育水準からこの地域条件の影響を取り除いた実質的な学校効果は,教育水準が高い学校ほど大きいことも明らかになった。これらの知見は,ジオデモグラフィクスが地域間や社会集団間の教育格差を明らかにするだけでなく,空間的公正の観点からそれらの格差解消に向けた政策ターゲットの特定においても有用であることを示すものであるといえる。</p>
著者
上杉 昌也 樋野 公宏 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-23, 2018
被引用文献数
2

<p>本研究は,居住者の社会経済的な属性に基づいて近隣地区を類型化したジオデモグラフィクスデータを用いて,社会地区類型による手口別の窃盗犯発生パターンの特徴を明らかにするものである.東京都市圏の12都市を対象とした分析の結果,社会地区類型による空き巣・ひったくり・車上狙いの窃盗犯の発生パターンの違いを明らかにした.またこの社会地区類型は,地区の建造環境や都市間の差を統制しても犯罪発生に対して一定の説明力をもっており,特に空き巣において顕著であった.これらの知見は手口に応じた防犯施策の重点地区の特定など,近隣防犯活動へのジオデモグラフィクスの活用可能性を示すものといえる.</p>
著者
上杉 昌也 樋野 公宏 矢野 桂司
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.11-23, 2018 (Released:2018-03-16)
参考文献数
25
被引用文献数
2

本研究は,居住者の社会経済的な属性に基づいて近隣地区を類型化したジオデモグラフィクスデータを用いて,社会地区類型による手口別の窃盗犯発生パターンの特徴を明らかにするものである.東京都市圏の12都市を対象とした分析の結果,社会地区類型による空き巣・ひったくり・車上狙いの窃盗犯の発生パターンの違いを明らかにした.またこの社会地区類型は,地区の建造環境や都市間の差を統制しても犯罪発生に対して一定の説明力をもっており,特に空き巣において顕著であった.これらの知見は手口に応じた防犯施策の重点地区の特定など,近隣防犯活動へのジオデモグラフィクスの活用可能性を示すものといえる.