著者
大野 重雄 丸山 崇 吉村 充弘 梅津 祐一 浜村 明徳 佐伯 覚 上田 陽一
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.119-129, 2020 (Released:2020-07-15)
参考文献数
50

オキシトシン(OXT)は,分娩や射乳反射だけではなく,様々な調節(鎮痛,不安,信頼,絆,社会的認知,向社会的行動,骨・骨格筋)に関わることが報告されている.我々は加齢とOXTの関係を明らかにするために,OXT-monomeric red fluorescent protein 1(mRFP1)トランスジェニックラットを用いて下垂体後葉(PP),視索上核(SON),室傍核(PVN)におけるOXT-mRFP1蛍光強度の加齢変化を調べた.その結果,加齢群でPP,SON,PVNでのmRFP1の集積増加と視床下部でのウロコルチン増加を認めた.また増化したウロコルチンはOXTニューロンにほぼ共発現していた.今後,加齢とOXT発現の機序が解明されることにより,高齢者のサルコペニアや孤独/社会的孤立の予防にも役立つ可能性がある.OXTの加齢との関係を含めて文献をもとにこれまでの知見をまとめ概説した.
著者
上田 陽彦 伊藤 奏 右梅 貴信 能見 勇人 日下 守 東 治人 柴原 伸久 勝岡 洋治
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.139-143, 2000-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
15

症例は82歳男性. 1997年9月頃から全身倦怠感および食欲不振が出現し, 近医で高窒素血症 (BUN49mg/dl, 血清Cr値5.3mg/dl) を指摘された. 腹部CTにて両側水腎症が存在し, 第2腰椎から第5腰椎レベルの大動脈周囲に軟部組織陰影が認められた. 逆行性腎盂撮影にて両側中部~下部尿管の著しい狭窄像を認めた. 同年10月28日, 左腎瘻造設術および後腹膜組織生検術を施行した. 病理組織学的に後腹膜線維症と診断した. ステロイド療法を行ったところ, 1か月後に左尿管の狭窄は改善された. 治療開始後6か月目に左腎瘻力テーテルを抜去可能となった. 現在BUN 25mg/dl, 血清Cr値1.3-1.4mg/dlである.本症は, 腎不全を伴った特発性後腹膜線維症と考えられたが, ステロイド療法が病変部の縮小と腎機能の改善に有効であった.
著者
鈴木 直弥 上田 陽平 高垣 直尚 植木 巌 池田 篤俊
出版者
Advanced Marine Science and Technology Society
雑誌
海洋理工学会誌 (ISSN:13412752)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.73-79, 2022-07-30 (Released:2022-08-27)
参考文献数
23

Drag coefficient on the ocean surface is determined by various studies based on different mechanisms, such as turbulence and wave breaking, closely related to wind speed. The global ocean datasets of wind speed are distributed by various temporal resolutions based on reanalysis, assimilation, and satellite data. Recently, the wind speed data with higher temporal resolution have been provided. Using 6-hourly and hourly wind datasets, the air-sea momentum fluxes were estimated by several drag coefficient models proposed by Large & Yeager (2009), Andreas et al. (2012), Takagaki et al. (2012), & Hwang (2018). The globally averaged annual mean air-sea momentum fluxes were derived from the different drag coefficient models. The maximum difference of the annual mean values among the models reaches approximately 30% of annual mean values. The meridional structure of zonally averaged annual mean air-sea momentum flux has double peak at relatively higher latitudes from 40°S/N to 60°N/S. At those peaks maximum difference among the models reaches more than 30% of the zonally averaged annual mean. In terms of differences in temporal resolution on the wind speed datasets on each grid, the differences between hourly and 6-hourly wind data became larger with decreasing average period. The maximum difference of 66.7% was recognized on daily mean. The large difference was remarkable in higher wind speed regions, such as typhoon’s paths in the western Pacific. The effects of wind variability on different temporal resolution datasets are significant for estimating the air-sea momentum flux.
著者
大西 巖 延原 久雄 上田 陽
出版者
一般社団法人 溶接学会
雑誌
溶接学会誌 (ISSN:00214787)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.76-81, 1956

Some deposit metals were made on the mild steel plate and high carbon steel block by A. C arc welding process. Several types of coated electrodes showed in Tablel were used.<BR>Manganese and carbon contents of the deposit made by electrode B were not enough as an austenitic manganese steel. But concerning to the hardness distribution, it was more homogeneous than that of deposit made by electrode A. The microstructures of bottom parts of these deposits adjacent to the mother metal were consist of martensite, sorbite or fine pearlite. Cracks oftenly occured in these parts. Sometimes these crack tendensies were seen at the bottom of the single bead deposited by electrode D or E. But multiplying the deposit three layers or more with electrode D or E, dilution effect by mother metal could be avoided, chemical compositions and (micro structures) of deposit became ideal as the anstenitic high manganese steel.<BR>The single layered bead made by electrode F or C had an anstenitic structure in spite of the dilution by mother metal and cracks at the bottom of the bead seldom occured. But in multilayered deposit cracks occured along dendritic structure oftenly. For these cracks the precipitation of super saturated carbon and the red shortness of the anstenitic manganese steel were considered to be important causes.<BR>The practical manipulation of the electrode became harder with increasing nanganese in electrode core and it's coating. Electrode for single layer use only, therefore, higher manganese content as far as possible to keep the good operating quality is desirable. Electrode such as D and E were suitable to the multi layers uses.<BR>In addition, allowable lover welding current and shorter arc length with constant travelling speed of moderate value were desired in this surfacing.
著者
森重 健一郎 竹中 基記 上田 陽子 鈴木 紀子 森 美奈子
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

卵巣がん細胞株TOV21, KOC-7CでRAS変異が確認され、OVISEでは確認されなかった。RAS変異のある細胞では、フェロトーシス誘導剤エラスチンを添加したところ、WST-1アッセイにより細胞死が誘導されていることがわかった。鉄のキレート剤であるDFO添加により、その細胞死が解除されたたため、エラスチン添加による細胞死は鉄依存性細胞死=フェロトーシスであることが考えられる。一方、RAS変異のない細胞株ではフェロトーシスは誘導されなかった。RAS変異のある卵巣がん細胞株でさらに検討したところ、エラスチン添加時に細胞内ROS量は上昇、GSH量は低下しており、その結果として細胞死が引き起こされていることが予想された。一方、RAS変異のない細胞ではエラスチン添加時にはROS量の若干の上昇が見られたが、元々の細胞内ROS量が高いためフェロトーシスに抵抗性があると考えられる。フェロトーシス誘導剤はいくつか報告されているが、その中でもアルテスネートは抗マラリア薬であるため、臨床応用が速やかに行える利点がある。現在、我々はアルテスネートを用いて上記同様の実験を行っている最中であるが、エラスチンとは効果が異なる点も見られ、同じフェロトーシスでも異なるメカニズムで作用していることが考えられる。引き続き検討していきたい。またフェロトーシス誘導時には膜の脂質酸化が引き起こされることが知られているため、脂質酸化マーカーであるBODIPYを用いたイメージング実験を試みているところである。
著者
上田 陽平 小原 盛幹
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.17, 2020-01-29

Webアプリケーション開発においては,動的コンパイル言語やスクリプト言語が実装言語として選択されることが多い.これは,静的コンパイル言語に比べてデプロイに必要な時間が短く,新しい機能やバグ修正を迅速にリリースでき,開発生産性の向上に寄与するためと考えられる.しかし,近年のコンテナ技術や継続的インテグレーション・継続的デリバリーの普及により,静的コンパイル言語を用いたWebアプリケーションの開発においても動的コンパイル言語やスクリプト言語と遜色ない生産性を実現する環境が整いつつある.本発表では,静的コンパイル言語のGoと動的コンパイル言語のJavaおよびJavaScriptで実装されたWebアプリケーションの性能評価結果を報告する.WebアプリケーションであるAcme Airベンチマークの各言語での実装を使用して性能評価を行い,Goによる実装はJavaScriptに対して約1.6倍,Javaに対して約1.8倍のスループットを達成することを確認した.性能プロファイルの分析によると,GoのWebフレームワークはJavaのWebフレームワークに比べてREST型Webリクエストの処理に必要なコードフットプリントが少なく,また,動的型付けのJavaScriptと比較して静的型付けのGoはランタイム検査のオーバヘッドが少ないことが判明した.GoはJavaおよびJavaScriptに対して優位な性能を示しており,Webアプリケーションにおいても静的コンパイル言語の普及が期待される.
著者
川崎 展 上田 陽一 酒井 昭典 森 俊陽 佐羽内 研 橋本 弘史
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

下垂体後葉ホルモンの一つであるオキシトシン (OXT)は疼痛調整に関与していることが示唆されている。本研究の目的は、OXT-単量体赤色蛍光タンパク1 (mRFP1)トランスジェニックラットを用いて、急性ならびに慢性炎症・疼痛モデルラットを作製し、視床下部・下垂体後葉・脊髄におけるOXT-mRFP1融合遺伝子の発現動態を可視化・定量化し、OXTの役割を検討した。その結果、急性および慢性疼痛・炎症モデルラット、いずれにおいても下垂体後葉系におけるOXTの産生・分泌の亢進および視床下部室傍核-脊髄経路のOXT系が活性化しており、温痛覚の感受性に関わっていることが示唆された。
著者
上田 陽平 池田 心
雑誌
研究報告ゲーム情報学(GI)
巻号頁・発行日
vol.2012-GI-27, no.5, pp.1-8, 2012-02-24

AI 技術の進展に伴い,多くのゲームで人間より強いAIを作成することが可能になった.一方で,初級中級者プレイヤにちょうどよい強さの,かつ不自然でない AI を多様に構成することは容易ではなく,課題となっている.本研究では,遺伝的アルゴリズムを用い,ちょうどよい強さと多様さを兼ねた “ライバルAI群” を構成する手法を提案する.さらにオセロにこれを適用し,被験者実験によって評価を行った.
著者
香野 敬喜 小川 千穂子 下村 由紀子 矢野 弘重 上田 陽
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.301-307, 1981-02-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
11 13

The interaction between imidazole and p-benzoquinone in acetonitrile was investigated at both low temperature (below 0°) and room temperature. The step of formation of the charge-transfer complex between two intact molecules could not be detected. Instead, the two compounds were found to react with each other fairly quickly at room temperature to form 2, 5-bis (imidazol-1-yl) hydroquinone, 2, 3-bis (imidazol-1-yl) hydroquinone and hydroquinone.
著者
上田 陽一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.3, pp.179-183, 2005 (Released:2005-11-01)
参考文献数
49
被引用文献数
1 1

生体がストレスを受けると,脳を介して血圧・心拍の変化や気分・行動の変容など様々な生体反応が引き起こされる.生体のストレス反応のうち,自律神経系を介した生体反応や内分泌系の生体反応は,自律神経系と内分泌系の統合中枢である視床下部を介して引き起こされていることはよく知られている.視床下部ニューロンの神経活動の指標として前初期遺伝子群の発現が汎用されている.我々は,定量化の容易な浸透圧ストレスを用いて,ストレス研究への前初期遺伝子群の有用性について検討したところ,前初期遺伝子群の中でもc-fos遺伝子の発現動態がよい指標となることを見出した.また,ストレスが食欲低下や過食を引き起こすことは経験的によく知られていることである.最近,視床下部の摂食関連ペプチドであるオレキシンとニューロメジンUのストレス反応との関与が注目されており,摂食に対してはオレキシンは促進作用,ニューロメジンUは抑制作用とまったく逆の作用を有する.ところが,脳内のオレキシン・ニューロメジンUは共にストレスに対する内分泌反応の中軸である視床下部-下垂体-副腎軸に対して賦活作用を有する.ストレス反応と視床下部に存在する神経ペプチドの生理作用との関連を調べることにより,ストレス反応の分子基盤の一端を解明できるかもしれない.
著者
横山 徹 南 浩一郎 上田 陽 岡本 隆史
出版者
自治医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

腰痛をはじめとする疼痛機序解明を目的にTRPチャネルを中心に細胞内痛みセンサーの解析を行った。皮膚や脊髄などでは、痛み刺激に反応するTRPV1やTRPA1が中枢神経系では、水分調節に関係する視索上核の存在するバゾプレッシン産生細胞に興奮性に作用することをはじめて見出した。また、下肢の痛みなどではバゾプレッシンの分泌が増加し、痛みとバゾプレッシンに密接な関係がある可能性を明らかにした。
著者
石倉 透 鈴木 仁士 松浦 孝紀 大西 英生 中村 利孝 上田 陽一
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.315-321, 2012-12-01

生体にとって疼痛に対する生理的防御反応は極めて重要である.我々はアルギニンバゾプレッシン(arginine vasopressin: AVP)を緑色蛍光タンパク(enhanced green fluorescent protein: eGFP)で標識したAVP-eGFPトランスジェニックラットおよび神経活動の指標として汎用されているc-fos遺伝子産物であるFosタンパクを赤色蛍光タンパク(monomeric red fluorescent protein 1 : mRFP1)で標識したc-fos-mRFP1トランスジェニックラットを作出し,侵害受容反応を可視化することに成功した.これらを用いて疼痛ストレス負荷時におけるAVP系の生理的役割を解明することを手がかりに,作業関連疼痛の新たな病態解明を目指している.これまでの遺伝子改変動物を用いた侵害受容反応に関する知見を述べる.